生産者インタビュー – 平出油屋
「出来るだけ自然に、香り良く美味しい油を」という信念のもと、
福島は会津若松の地で昔ながらの製法にこだわった油づくりをされています。
素材の菜種やごまの風味、香り、色を活かした美味しい油は、一度炒めものや
揚げ物に使うと、もう他の油は使えないというお客様も多いとか。
この平出油屋で6代目をつとめる平出祐一社長に、その成り立ちや、油づくりの
こだわり、スーパーで販売されている油とどう違うのか、などを聞いてみました。
- 第1回 平出油屋のはじまり。
- 第2回 こだわりの玉締め製法。
- 第3回 スーパーの油とはここが違う!
- 第4回 同じ品質のものを作る。
2017-01-30
第1回 平出油屋のはじまり。
- 河島
- 今、平出祐一社長でここは何代目になりますか。
- 平出
- 6代目です私。で、そこにのれんがありますけど、
かわしまさんからいうと右のほうに、
創業天保12年て書いてありますけど。
ちょうどその柱で見えないかな?
- 河島
- 見えます。
- 平出
- 恐らく江戸時代は油屋でなかったと思います。
絹の糸をお城に納めて、裃なんかもありますから、
それでもってお城に納めたっちゅうことで。それから戊辰戦争がありまして、
そして明治になってお城がなくなったっていうことで、
じゃあ何しようかなっていうことで、
うちの今の屋敷の裏のほうも全部家建ってますけど、
私の小学校から中学校頃までですから、
大体昭和30年代頃までは、全部田んぼだったんですよ。ずっと見渡す限り田んぼで、
そこの大部分が一つの町内くらいはうちの田んぼで。
小作米っていうのが、例えばうちの田んぼを農家の方が
借りてるから、今で言うと10俵取れたらそのうちの
3俵はっていうことで、その小作米っていうのが
入ってきたもんですから、それがあって、
じゃあ米屋を始めようかなっていうことで明治になって
農家から米を買って、米屋を始めたんですね。
- 河島
- なるほど、なるほど。
穏やかな口調で、丁寧に説明してくださる平出社長。
- 平出
- そのうち間もなく、米だけじゃなくていろんな雑穀も
一緒に買うようになって。
大豆とかささげとかいろいろあるんでしょうけども、
その中で菜種が増えてきたんですよ、どんどん。
で、明治の何年頃からは分かりませんけども、
菜種を絞るようになって。そして油屋と米屋をやってて、今度は戦時中に、
昭和16~17年頃だと思うんですけども、
統制令っていうのがあって、お塩と同じように
みんなが使うものだから個人で持ってっていうの
駄目だからっていう、どっちか一つにしなさいって
言ったにとき油屋を始めたんですね。だから17~18年頃からは油屋っていうようなことで、
あとずーっとこれまでいきました。
で、今までは会津以外に油出るってことは
なかったんですけども、最初。
私が30代ですから、昭和50年頃どんどんスーパーが
出来てきて、そしてサラダ油とかそういうのが
安売するようになって、どんどん油屋として
成り立っていかないっていうことで。
- 河島
- 大変そうですね…
- 平出
- で、もうどん底っていうか、平出油屋としては、
もうどん底でどうしようもないっていうようなことで、
じゃあ切り替えて。昔、昭和30年頃は会津にも菜種生産組合っていう
協同組合が油屋さんでつくって、
猪苗代からこちら会津地方っていうんですけども、
中通り、浜通りってあるんですけども、
新幹線とか東北自動車道って。
その会津地方、猪苗代湖から西の方で
14軒あったんですよ、油屋さんが。で、どんどん皆さん商売がガソリンスタンドをやったり
あとスーパーマーケットをしたりなんかで、
今残っているのは、平出油屋とみつたやさんっていう所、
まん(満)、満ちる、田んぼの屋って書いた満田屋さんと、
会津では2軒になっちゃったんですけども。
- 河島
- 随分少なくなってしまいましたね。
- 平出
- はい。それで、県外に出そうっていうことになって、
私が37歳だから昭和50年、60年くらいからですかね。昭和60年くらいから県外に少しずつ出すようになって、
そしてオーサワジャパンさんとかナチュラルハウスさんとか、
あと神奈川県の川崎に片山商店さんってあるんです。
そこがうちの主な問屋さんで、そこから広がっていって、
そして今は98%が県外ですね。そういうふうにして、会津はほとんどお得意様っていうか、
お店に買いに来る方は別ですけど、
商店に油を納めるってことはなくなりました。
- 河島
- なるほど。
平出油屋の菜種油。美しい琥珀色と芳醇な香りが特長です。
- 平出
- で、今から20年くらい前からごま油もやるようになって、
ごま油のときには全部1日かけて掃除をして、
そしてマットだけ交換して、そして絞るんですけどね。
ごま油も少しは出るようになりましたね。
皆さん暮らしが良くなったんだと思いますね。最初はとても高くて、ましてやスーパーに
置いてあるものからすると、倍以上しますので、
そんな高いごま油はとてもじゃないけど使えない
っていうようなことだったんですけども。皆さん暮らしが良くなったっていうことが
一番だと思うんです。
少し高いけど買おうかっていうことで、
結構ごま油も出るようになったんですけどね。
- 河島
- 今では大変人気がありますよね。
2017-01-30
第2回 こだわりの玉締め製法。
- 河島
- 今、菜種とごまを違う曜日に絞ってらっしゃる?
- 平出
- 違う曜日って言うよりも、ある程度、例えば
1カ月なら1カ月とか、1カ月半とか菜種を絞ったらば、
あと半月くらいごまを絞るっていうようなことですね。
量からすると菜種が8割のごまが2割くらいですか、
割合からするとね。
- 河島
- 原料はどういうふうに探して・・・。
- 平出
- 原料は今は北海道産が多いです。函館がありまして、
札幌があると、函館のちょうど「くの字」のような、
大体そのせたな地方、檜山地方って言うんですかね。
そのおおよそ真ん中あたりで、あとは下北半島の横浜町、
要するに青森県の菜種ですね。それが何割かありますけど、
お店屋さんにお送りしてるのは、北海道産がほとんどです。9月から10月の初めに菜種が入ってくるんですけども、
年に一度ですね、菜種は。
東京で入札がありまして、うち直接ではないんですけども、
業者さんが、北海道とか青森の業者さんが入札してこちらに
来るっていうやり方ですね。
北海道産の菜種を原料にしています。
- 河島
- この今の玉締め(※)というのは。
※玉締め…玉締め機という機械を使い、常温で極力圧力をかけずに
ゆっくりと油を搾り取る製法。菜種やごまなどの素材の栄養や香りが
そのまま残るため、香りが良く、上質な油に仕上がります。
- 平出
- 玉締め。
- 河島
- これはもういつぐらいからずっとやってらっしゃるんですか。
- 平出
- 昭和13~14年頃からが今の機械です。
その前はやっぱ同じような、油圧は油圧なんですけども、
ああいうマットじゃなくて、麻袋みたいなので
やってたみたいですね。
麻袋に少しずつ入れて、こう入れる。
麻袋、また入れて、こう入れるって。
それは、分かんないんですけど、
四つか五つくらいこう入れて、
そしてジューッと絞るみたいなやり方をしてたみたいですね。今はマットでくるんで、要するに一つですけどね。
だから昭和十何年ですから、75年くらい前の機械って
いうふうになりますかね。で、修理しながら、歯車が減ったとか芯棒が減ったとか
ベアリングがどうしたっていうのは、今でも普通の、
そこの赤い屋根がそのボーリングって言って、
井戸掘りが専門なんですけども、いろいろやってますので、
もともとが鉄工所さんだったんで、そこで修理してもらって。
- 河島
- 今その玉締めでやっている所は、平出さん以外の所、
日本にどのぐらいあるのでしょうか?
- 平出
- この機械を持ってる人は、
私詳しく調べたわけじゃないんですけども、
おおよそ15軒くらいあると思います。
ただ、大島の椿油を絞るとかっていうのは、
1台で絞ってるなんていう方もいますし、
あと九州あたりでも1台2台で絞ってるっていう方もいます。
で、だいたい15軒くらいのうち、そういうのも含めて
10軒くらいだと思います。
日本で10軒もあるかないかなあ。
で、うちとか、あと千葉のほうでごま油を。
ごま油を絞ってる方が多いですね。
菜種はあんまりいないですね。
大体都会のほうに行くとごま油絞ってますね。九州の方でも菜種絞ってる方と、ごま油絞ってる方は半々
くらいじゃないですかね。
菜種取れるのは北海道、それから青森、それから九州の、
この3カ所ですから、九州にも何軒か油屋さん
あるんですけども、持ってても放さないんですよね。
- 河島
- なるほど。
- 平出
- 私、うちでもう少しジューッというか、
長い時間絞りたいんで、もう1台欲しいなって
かわしま屋さんが撮ってた窓側の所に、
もう1台欲しいと思ってるんですけど、
(持ち主は)使ってなくても手放さないんですよね。こういう機械っていうのは掃除さえすれば、
あと点検さえすれば、何十年置いといても使えるんですよ。
で、今のコンピューター式みたいなのは
使わないで置いとくと、もうだめになるっていうことが
あるんですけども。
先程申しましたように歯車がどうした、
芯棒がどうしたベアリングがどうした、あとは掃除をすれば
動くっていうものですから、なかなか手放さないんですね。
もう1台あればいいかなあと思うんですけどね。で、全部、下から上がるあれ全部作るとなると、
1台そっくりですと500万でもできないと思いますね。
お金の問題じゃなく、作るっていうのは
なかなか大変なんですよね。
上の部分はできると思うんですけど、
油圧で上がってくるのとか、
それが地面の所にあるんですけど、
理屈としてはできないことはないんですけど、
なかなか作るほうも1台だけを作るってなってくると
なかなか。
- 河島
- へぇ~・・・。
長年大切に使用している玉締め機。これで菜種やごまを絞ります。
- 平出
- 鉄ですけどね、真ん中のは。あと両側は鋳物なんですよね。
だから鋳物だったら大変なことになっちゃうから、
これからだったら鉄でつくる他ないと思うんですけども、
そのある程度のものを削ってどうのこうのっていって、
器一つにしてもまっすぐじゃないですので、
いくらか上のほうが広くなって、
下のほうが狭いもんですから、
ある程度の厚みの穴を削るんですね。
斜めになるように削るんですね。だからそれがなかなか手間暇かかるっていうことで。
いくつかを作るっていうんだと作ってもらえるかも
しれないんですけど、1台だけとかってなったら
なかなか作るっていうのは鉄工所のほうでも大変。
新潟でやってもらってるんですけどね。
2017-01-30
第3回 スーパーの油とはここが違う!
- 河島
- 今、スーパーに並んでる油と、作ってらっしゃる油の違いを
お教えいただけないでしょうか?
- 平出
- まず製法が全く違いますね。
ここはちょっとお話したと思うんですけど、
(スーパーなどで扱っている油は)抽出法っていうやり方で、
ヘキサンっていうので抽出して、
乾燥と圧偏までは同じなんですけど、
もちろん機械の大きさが全く違いますけど、
それをタンクの中に入れてそこに溶剤を入れて、
そしてにじみ出すって言いますか、
そういうやり方で油が溶剤を入れると
ブチュブチュっていうふうにしてにじみ出てくるんですね。それをある程度の時間を置いて、タンクそのものを
遠心分離機に置きまして、遠心分離機するとかすが残って
外にヘキサンと油が出る。
で、温度をかけて蒸発して、機械を今度冷却して液体にして
また使うっていうやり方なんですけども。
それで油を採る。そこから脱酸とか脱ガムとか。
例えば脱色だとソーダ1%から2%ぐらいですかね、
飛ばしたものもって脱色する。あと脱臭っていうのがありまして、真空でもって
200度から250度くらいでもって洗うんですよね。
そうすると脱臭されます。
で、ご存知とは思うんですけども、高い温度をかけると、
オメガ何って言いますか、今話題になってるオメガ3とか6とか
何とかっていろいろありまして、
そのいいのと悪いのがありまして、
悪いのが出ちゃうんですよね、高温で処理すると。
それが今問題っていうか話題になってますけども。
それがないっていうこと。
- 河島
- なるほど。なるほど。
スーパーに並んでいる油との製法の違いを話してくださいました。
- 平出
- (平出油屋では)蒸気かけますけども、
あれは高温っていうようなふうには捉えてないですので、
うちのですと低温圧搾っていう言い方をします。で、あと高温なのはエキスペラーっていう機械があるんです。
同じ圧搾でエキスペラー。電信柱を立てるときにらせん状に、
ワカサギ釣りとかなんかで氷を穴開けるときにらせん状に、
あれの大きくしたものが横にあって、
その先のほうが細くなってて手前のほうが広くなってて、
そしてそれと同じように、大きさに羽の部分が
作られてるんですけども、鉄は1センチ以上ありますね。それの器になってて、どんどん先のほうにらせん状に
なってますから、どんどん送って行って、
そして絞るっていうやり方なんですけども。
それは大体その機械が手で触られないくらい熱くなります。
圧がかかってその圧でもって温度が出るんですね。
こういうふうに摩擦でもって。
それですと、結構高温になりますから、
それだと高温圧搾っていう言い方をしてますね。そのエキスペラーっていう場合は水洗いっていう工程が
必要なんです。
どうしても鉄が焼けたような臭いとか残りますので、
水洗いっていうことです。
で、その原油にぬるま湯、水でもいいんですけど、
ぬるま湯を入れて、そして攪拌して、
扇風機の羽みたいなのついてて、それで一晩、
1日置いとくと油と水とかすっていうふうに、
かすって言っても大したことはないんですけど、
油と水が分かれまして、そしてその水を抜くか、
その油は温度をかけてその油の中に溜まった水分を
蒸発させるっていうことで。
- 河島
- なるほど。
- 平出
- うちもそうですし、その満田屋さんってもう1軒の油屋さんも
そうなんですけども、
なぜその3倍も効率のあるエキスペラーっていう機械を
しなかったかっていうと、
温度をかけるっていうこと、それから、水を入れて
その水にいろんなあく分とかそういうようなものを溶かせる、
染み込ませるんですけども、
食べ物が悪くなるっていうのは温度があるか、
それとも水分があるか。
水分が全くなければ、酸化しないですし、
温度をかけるっていうのが、
油を力を弱めることになるっていうようなことで、
そういうふうに踏み切れなかったんですね。昭和40年か50年頃にその機械が出来てきたんですけども、
結局、それをやらなかったうちら2軒が残って、
それを採用した人たちがやめていったっていうこと
なんですけどもね。結果的にはそうなりましたけどね。だから油の絞り方が違う、それから精製、
うちだと和紙で濾すだけ、っていうようなことで、
その油のいい部分を残す、温度をかけたり脱色したり
何だかんだり、そういうことを手を加えることによって、
せっかくのいいものが、ある事をやったために
変化したりなくなったりっていうようなことのないように、
絞ってそのままっていうのが一番いい商品に
なるんじゃないかなっていうことなんですけども。
大手のと違うっていうと、そういう点ですかね。
- 河島
- その搾油の効率はどれぐらい、
今50kg の原料を1回やって・・・。
- 平出
- 例えばうちですと800kg、夏ですと日が伸びますので
500kgやる場合もあります。
大体500kgですと、例えば一升瓶で9本だと
すっと90本っていうようなことになりますね。
一斗缶で大体9本から10本、1日一斗缶にすると
9本から10本くらいっていうようなことになりますね。
- 河島
- その原料の3分の1ぐらいになりますか、割合でいうと。
- 平出
- 500kgで、そうですね、3分の1ですね。
大体重量でいくと3分の1くらいですね。
効率よりも、素材の味を損なわない製法にこだわっています。
- 河島
- 大手の場合はどれぐらいの割合?
- 平出
- ほぼ、あれ、かすがどのくらい出ますかね。
うちの場合ですと半分以上かすになりますけども、
大手の場合、菜種で例えば40%の油分があるってなると
20kgですからね。
だから1tにすると400kgくらい、
400kgまではいかないかもしれないけど
おおよそ400kg、1tで。
1日何十tもやりますからね。
だから、大手ですと一斗缶で700本800本くらいは
1日やるでしょうね。だからその大手の抽出法から、会社規模が全然違うから、
大手だから何とかだっていうことは、
規模が全然違うからあれなんですけども、
80倍から100倍くらい。
で、先程言いましたその同じ圧搾でエキスペラーっていう
機械ですと、間違いなく3倍は効率あります。1日に例えば1t用、1.5t用、2t用、5t用って機械が
大きくなるに従ってあるんですけども、
1日で5tくらい絞ってる、エキスペラーっていう機械はね。
それも1人でやっちゃうんですね。
ただ、後処理が大変だから、次の日に後処理やるとすれば
2日かかるってことになりますけどね。
普通の規模、私らあたりが扱えるような規模のですと、
3倍くらいの効率はあります。
うちで大体500kg絞ると2人で500kg絞る。
と、1.5tを1人で絞ります、そのエキスペラーっていう機械、
同じ圧搾ですね。だから効率はすごくいいんですけどね。
ただ先程申しましたような、
ちょっとどうかなっていうふうのがあるもんですから、
うちではやれませんでしたけど。
2017-01-30
第4回 同じ品質のものを作る。
- 河島
- もう何十年にわたって油を絞ってこられて、
いつもどんなことに気を付けながら
やってらっしゃるんですか。
- 平出
- 同じものを作ろうっていうことなんですけども。
例えば色が濃かったり薄かったりっていう
お叱りっていいますか、そういう指摘は1年に1人か
2年で1人かあるんですけども、煎り方次第でもって
色が変わるんで。
煎りが強ければ色が濃いいの出るし、
煎りが弱ければ薄い色になってくるし。だからかわしま屋さんがお客様から
「なんか今回の色が濃い」とか「今回の色薄い」、
薄いっていうのはあんまり電話がないんですけど、
以前買ったのよりも色が濃いっていう、それは煎り方が違う。
去年、一昨年の2月か3月頃、色が濃いときあったんですよ。
私電話しなかったですか?
- 河島
- 一度いただきました。
- 平出
- あのとき、釜を、中をいじったんですよね。
あれ、ただボーってなってるじゃなくて、
火が回って出るようになってるんですよ、
中が煉瓦でもって道をつくってんですけど。
それをちょっと広くして、そして早く乾燥させるようにって
いうことでちょっと直したらば、毎回毎回焦がしちゃって、
それで色が濃い色ができて。それである所から苦情というか、色がこんなに違うんでは
困るっていうようなことで。
製品的にどうのっていうことではないんですけども。
それで何軒かに電話して、こうこうこういうような事情って
いうようなことで電話したかもしれないですけどね。
同じ品物を作るっていうのがまず一番ですね。機械が同じでこれ以外の方法がないんで
同じ品物をなるべく変わりなくっていうふうに、
ただそれだけ思ってますけどね。
それ以外の油屋のほうのやり方が分からないから、
この機械のことだと分かりますけど。
- 河島
- なるほど、なるほど。
「同じ品質のものを作り続けること」がモットーと仰います。
- 河島
- 僕もいつも使わせていただいてて、
炒めたりしてるんですけど、
平出さんのお薦めの使い方ってありますか?
- 平出
- 一番は、やはり菜種油っていうのは熱に強いので、
天ぷらと炒め物です。
それこそ天ぷら油っていうくらいですから、
天ぷらと炒め物、熱に強いので。
で、あと菜種油のいいのは、色素が菜種そのものが
持ってる化学的とか人工的なもんじゃない、
菜種がそのもの持ってる色合いなんで、
衣が黄色く揚がりますので、
まずそれが見た目がいいと思いますね、菜種油は。
普通の大豆油、サラダ油より。
- 河島
- そうなんですね。
- 平出
- はい。で、やわらかくするっていう性質がありまして、
豆腐屋さんの油揚げなんかは機械でやるんじゃなくて、
本当に揚げる。油、揚げるとやわらかくなりますね、衣が。
衣って言わない、皮がやわらかくなりますね。
やわらかになるっていう性質があるっていうのと。
あと、思った以上にくどくない。
油そのものはドロっとしてますけども、
普通のサラダ油から見ると。
でも天ぷら揚げて食べたときに、口の中にいくらかずつ
油が残りますよね、もちろん。で、お茶とか何か飲み物を飲んで
口の中をいくらか油を少なくして、
そしてまた次のっていうようなふうにした場合に、
意外にサラダ油よりも菜種油が口の中に残らない。
そのために菜種油で揚げた天ぷらのほうが結構入るんですね。
サラダ油みたいなほうが、かえって口の中に油残って
いっぱいになってくるっていうようなことで。だから菜種油は熱に強いっていうことと、
やわらかくするっていうことで、
今お菓子屋さんでお菓子を作る方が、
シフォンケーキとかクッキーとか、
しっとりできますよっていうことで、
結構お菓子作ってるって方がここ5年、7年くらい前から
増えてきましたけども。
- 河島
- (作業場をさして)今あちらにいらした方は、
いろいろ作り方を学んでらっしゃる?
- 平出
- あの一緒に絞ってる方?
あの方は主に絞り方のほうだけです。
もう一人いた人男性が、例えば私が出かけたり、
何かいないときは、全体を見てる人があの人ですね。私も70歳です。それでこの後っていうことで、
うちの子どもは3人とも公務員なんで、
学校の先生なんですよね、高校の。
で、あと10年、私が体を動かすっていうことじゃなくて、
お店のことでも何でも10年やってくれると、
うちの息子が、今長男が42歳なんですね。
で、50歳になったならば、校長とかそういうのをやるか、
油屋をやるか、なんては言ってるんですけども、
なかなかそんな簡単に、こっち辞めてこっちやります、
みたいなふうにはできないと思うし
やってもらいたくもないし。だから、今のあの方を育ててるっていう
ところなんですけども。
仕事そのものはできるんです、私いなくても
全部できますけども、あと、お客様のやりとりとか、
菜種の微妙な加減とか。例えば何か、もう古いですから機械が。
何かトラブルが起きたときにパパっと対処できるかとか、
そういったものはまだ分からないので、
そういったもの、だんだんこれから教えたり、
こちらの伝票とかなんかも最近覚えてきて発送なんかも
できることはできるんですけども。
ま、徐々にですね。
最後まで朗らかにお話しくださいました。
- 河島
- ひと月、大体菜種はどれぐらいを平均絞っているんですか?
- 平出
- おおよそ一斗缶で大体100本くらいは絞るかな。
ああ、100本じゃない、150から大体200本近く絞ります、
平均してね。
でも1カ月菜種ばかりやってる場合もありますから、
あと、ごまを絞るっていう月もあるので、
平均すれば200本あるかないかくらいです、
一斗缶にしてね。
- 河島
- ありがとうございました。
- 平出
- どうも。
平出油屋さんの菜種油 - 伝統が息づく日本の手仕事 –
“一度ひらいでの菜種油を使うと、他の油は使えなくなる”そんなお声を多くいただきます。
福島県会津若松市で、明治時代より菜種油の製造を行う、平出油屋さんを訪ねました。。
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