北海道 平譯さんの自然栽培大豆と小豆
平譯優 (ひらわけまさる)さんの大豆と小豆。どちらもかわしま屋創業間もない頃から今までずっと人気の逸品です。かわしま屋ではたくさんの豆を扱っておりますが、その中でも圧倒的にファンが多いのが平譯さんの豆たち。中でも大豆「トヨマサリ/トヨムスメ」と小豆「えりも小豆(えりもしょうず)」の2つの人気が不動で毎年夏には在庫切れになる事も多いです。
平譯さんは、北海道十勝平野にある幕別町(まくべつちょう)という地で40年近く、農薬も化学肥料も使わずに豆を栽培してきました。豆が完熟するまでじっくり待ち、乾燥機をつかわずに自然の風で乾燥させた後に収穫をしているのが特徴。自然栽培で完熟した豆たち。それを十勝平野の冷たい風がゆっくり乾燥させる。そうして仕上げられた平譯さんの豆たちの風味と味わいには、大地の奥深い力強さが宿っているようです。
平譯さんの大豆
大豆は粒が大きく甘みも強く、茹でて軽く塩をふるだけで美味しい。それだけで乙なおつまみになります。強い甘みがまるで栗のようで、ご飯にまぜて炊いても美味しいです。
平譯さんの小豆
小豆はつややかで見た目も美しく、これもお米と一緒に炊いて食べるのがおすすめです。あんこに使う和菓子職人さんも数多くいます。
たくさんの人達に愛される平譯さんの豆たちが、今年はどんなふうに育っているのかを覗きに幕別町にお邪魔をしてきました。
北海道帯広空港からレンタカーを走らすこと小一時間。平譯さんの農場がある幕別町が見えてきます。
帯広空港
幕別町の山並み
幕別町の畑
幕別町は帯広市の隣りにある、大豆や小豆、じゃがいも、人参などが豊富に栽培される土地です。平譯さんも畑の一部でじゃかいもと人参の栽培をしています。
ちなみに幕別町の由来はアイヌ語の「マクンベツ:山際を流れる川という意味」から来ているそうです。(行きの飛行機に乗る前にwikipediaで調べました。)
幕別町の市街地から車で5分ほどの所に平譯さんの農園はあります。
北海道幕別町の市街地。帯広空港から車で小一時間ほどの場所。市街地といってもガソリンスタンドとセイコーマートが一軒づつあるだけの寂しい街
平譯さんの畑
平譯さんの畑の大きさは全部で40ヘクタール(東京ドーム約9個分)。そのうち30ヘクタールを栽培に使い、残り10ヘクタールの畑は1年使わずにゆっくり休ませる。ローテーションで畑を休ませる事で、豆たちが病気にかかるのを防いでくれるそうです。平譯さんいわく「人と同じで、土も休みなくずっと働かせ続けてると病気になっちゃうんだよ。」
平譯優さん
豆は毎年5月10-20頃に畑に種を植え、10月~11月の終わり頃の豆が完熟したタイミングで収穫というスケジュールで行われます。豆の栽培でもっとも大変なのが雑草取り。毎年夏の時期には100人以上パートの方々とともに、手作業で抜いています。
「一ヶ月ぐらいかけてみんなで雑草を抜いていくんだ。これが本当に大変でねぇ。」
-大豆の畑
さやから大豆の生豆を出して様子を確認
小豆の畑(収穫を終えたばかり)
黒豆の畑
平譯さんは豆が完熟するまで収穫をしません。秋になると、毎日天気と豆の様子を見て、時には生豆を食べてみて状態を確認します。そして豆が完熟状態(水分量15%程度)になるのを見計らい収穫します。
黒豆の状態も確認
生豆を食べてみると、乾燥の度合いが良くわかる
通常の豆の栽培では、大豆の水分量が20%以上ある成長途中の段階で早々に収穫し、乾燥機で強制的に乾燥させるのがほとんど。大多数の農家はそうする事で大量の豆を効率的に出荷しています。一方で平譯さんは、台風や長雨のリスクを避けながら毎年豆たちがしっかり成長しきるまでじっくり待っています。
機械乾燥のほうが圧倒的に楽だし効率的ですが、豆の風味と美味しさを引き出すためには完熟させた後、風で自然乾燥させてじっくり待つのが一番。幕別町の冷たい北風が、豆たちの美味しさをさらに引き出してくれます。
この日も大地に冷たく強い風が吹いて豆を揺らしていました
毎年夏が終わると幕別町の大地には強い北風が吹きます。
風速5メートルから10メートルにもおよぶ強い風が毎日のように吹き、カシャカシャと豆のさやを揺らします。秋になると畑一面からカシャカシャという音がして、平譯さんはその音を聞くと良い豆が出来上がっている実感が湧き、嬉しくなるそうです。
収穫している様子
-豆の大袋
収穫した豆はこの袋に入れて選別する場所に運びます。
-1袋に500kg程度の豆が入っています
豆の選別と保管をする小屋
選別機
豆の選別にはドイツ製の選別機を使います。振動と風で良質な豆とクズ豆(成長が充分じゃなくスカスカの豆)を自動で選別してくれます。
かつてはこの豆の選別も全て手でやっていたそうで「大晦日も正月もずっと家族で豆の選別をしていた」との事。
選別機をかけた後、目でみて触って再度豆の品質チェックします。
目で見て品質の悪い豆を取り除きます。これは金時豆。
良質な豆だけを袋詰して出荷します。最後に手動の選別機にもかけます。
袋詰
「摂れた豆の一部を次のシーズンに種として畑に撒く。その豆から目が出て育ち、100粒の豆を実らせる。それを見るのが毎年嬉しい。豆たちが愛おしくなってくる。」
大豆や小豆以外にも、小粒大豆、黒豆(いわいくろ)、黒千石、金時豆、とら豆、手亡豆、うずら豆、紅しぼりと全部で10種類の豆を育てています。最近のお気に入りは黒千石だそうで、ご飯にいれて毎日食べているそうです。
黒千石の豆の状態を確認する平譯さん
豆はそのまま茹でたり、ご飯に混ぜたり。煮物にもサラダにも使っても美味しいです。
平譯さんのおすすめの食べ方は、「大豆なら呉汁(ごじる/ゆでた豆をすりつぶし味噌汁の中にいれたもの)。身体が温まるんだ。小豆なら、そうねー、餡こもいいしご飯に入れても美味しいよ。」
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平譯優さんと息子の平譯健一さん
平譯さんは今年75歳になります。今では息子さんの平譯健一さんが一緒になって豆を育ててくださってくれています。この愛おしい豆たちをぜひ一度味わってみてください。
【取材後記】
取材の後は平譯さんのおすすめの居酒屋で夕食をご一緒しながら、平譯さんのいままでの歩みをじっくりお聞きしました。
平譯さんは柔和な表情と温かい口ぶりで親しみやすい方です。
「(自然栽培をはじめて)最初の数年はまともに豆が育たなくて、収穫量が少なくてほんとうに大変だった。銀行から借金をして。30代、40代になっても、豆がしっかり育つように毎日必死だった。豆が病気になったらもう出荷ができないから。」
「出荷した豆に対するクレームがあれば、その日のうちに帯広から夜行列車に乗って札幌経由で東京に飛んでいく。そんで朝から出荷先の会社に話をしにいき、その日の夜には東京からまた夜行列車で帰ってきて。着いた日の朝から畑へ。そんな事がしょっちょうだった。とにかく時間がもったいなくてねぇ。豆に時間をかけていたいから。」
かつての大変だった出来事の数々を、柔和な口調で話してくれました。
今は息子さんの健一さんご夫婦も一緒になって豆を育ててくれています。
平譯さんには、健一さん以外に3人の娘さんの合計4人のお子さんがおり、今ではお孫さんが6人にも増えたそうです。
「色々大変だったけど、幸せな人生だったなぁ」とつぶやいていました。これからは平譯さんの素敵な思いも噛み締めて、美味しく豆をいただこうと思います。
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