ぬか床・ぬか漬けのお手入れ方法|お悩み別にお手入れ方法を解説
記事の監修
管理栄養士
稲尾貴子
管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。
上手につくって適切なお手入れさえ続けられれば100年、200年と使い続けることができるというぬか床。
ところが、お手入れを誤ると味やにおいに異変が起きることも珍しくはありません。
ぬか床とつきあう上でのさまざまなお悩みの解決法をご紹介いたします。
ぬか漬けについてはこちらで詳しく解説しています。
ぬか床とぬか漬けの作り方|ぬか床の手入れ方法や野菜の漬け方もご紹介
ぬか床の作り方から基本の野菜の漬け方、変り種食材の漬け方まで詳しく解説。
ぬか漬けを使ったアレンジレシピも紹介しています。
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悩み別・ぬか床のお手入れ法
ぬか床にはたくさんの微生物が生息しています。
日々変化するぬか床の状態を把握し、微生物たちのバランスを上手くとってあげる「お手入れ」は必要不可欠。
愛情をもって安定したぬか床を作っていきましょう。
基本のお手入れ
基本のお手入れは、「かき混ぜる」と「野菜を漬ける」のふたつ。
混ぜ方は、隅からしっかりと、上下を返すようにという点を意識してください。
回数は、常温保存の場合は1~2日に1回が基本ですが、ぬか床の状態によって回数を加減することも必要です(「バランスを保つためのお手入れ」参照)。
- ぬか漬けを食べない場合は野菜を漬けずにかき混ぜるだけでOK?
- ぬか漬けを食べるのをお休みしたい場合、数日であれば野菜を漬けずに冷蔵庫に置いておいても大丈夫です。
- ただし長期間にわたる場合は、野菜を漬けないと栄養不足で菌が死滅してしまいます。
- 野菜は菌にとって大切な栄養。
- 「エサ」をあげているという感覚で、古いものが漬かったら新しいものを入れてあげるようにしましょう。
理想のぬか床の状態は?
ぬか床の味や香りは、各家庭によって大きく異なります。
酸味が強いものが好き、マイルドなものが好きといった好みもそれぞれでしょう。
理想的なぬか床は次のような状態のものです。
- 味:適度な酸味と旨味がある
- 香り:心地よい、おいしそうと感じられる香り
- 感触:ふわっとした感触
- その他:朝漬けたら夜には食べられる
ぬか床を作ったら、「今はよくできている」というときの味を覚えておくことをおすすめします。
かき混ぜるときに毎回味見をして、小さなずれを感じたらすぐに軌道修正しましょう。
ぬか床の中の主要な菌3種類
ぬか床の中にいる菌の特徴を知ることで、「今、ぬか床の中で何が起きているのか」「どのようにしたら理想の状態に近づくのか」が分かりやすくなります。
菌名 | 特徴 | 好きな環境、嫌いな環境 |
---|---|---|
乳酸菌 | ・善玉菌 ・酸味をつくる ・他の雑菌を抑える |
・酸素が少ない環境が好き ・混ぜすぎると減る ・混ぜないと産膜酵母・酪酸菌に圧倒されてバランスを崩す |
酪酸菌 | ・善玉菌 ・増えすぎると「蒸れた靴下の匂い」がする |
・酸素が少ない環境が好き ・底に溜まるので底からしっかり混ぜると減る |
産膜酵母 | ・ぬか床の表面につく白いもの ・「シンナー臭」がある ・アルコールをつくる ・ぬか床に混ぜ込んでOK |
・酸素が多い環境が好き ・表面近くに生息する ・かき混ぜて表面を混ぜ込むと減る |
バランスを保つためのお手入れ
野菜を漬けているとだんだん野菜の水分がぬか床に移ってきます。
するとぬか床が水っぽくなり、塩分も低下。
それに伴って雑菌が繁殖しやすくなったり、菌のバランスが変わったりしてしまいます。
そこで必要なのが、水分と塩分を整えるためのお手入れ。できるだけこまめに行ってあげることでぬか床の状態を保ちます。
菌のバランスが崩れた兆候を感じたら、その都度元にもどしてあげるための方策をとってください。
悩み | 必要なお手入れ |
---|---|
水っぽい | ・米ぬかを足す「足しぬか」をする ・市販の水抜き器を使って水抜きをする ・清潔な布巾やキッチンペーパーなどで吸い取る ・吸水性のある副原料を入れる |
塩分が足りない | ・「足しぬか」の際にぬかの10%ほどの塩を加える ・野菜を漬ける時に塩をすりこんでから漬ける |
塩辛い | ・塩を加えずに「足しぬか」をする |
酸っぱい | ・乳酸菌が増えすぎているのでよくかき混ぜる ・冷蔵庫に入れて菌を落ち着かせる |
酸味が弱すぎる | ・乳酸菌が少ないので、かき混ぜるのを控えめに ・温度が足りない場合は25℃前後に保つ ・野菜を漬ける量が少ないと菌が弱るので野菜をたくさん漬ける |
アルコール臭がする | ・産膜酵母が増えているため上下を返すようによく混ぜる ・かき混ぜても治らない場合は塩分を濃くする |
シンナー臭がする | ・産膜酵母が増えているため上下を返すようによく混ぜる ・かき混ぜても治らない場合は塩分を濃くする |
表面が白い | ・産膜酵母が増えているため上下を返すようによく混ぜる ・白い部分は混ぜ込んでしまってOK ・かき混ぜても治らない場合は塩分を濃くする |
カビが生えた | 産膜酵母ではない、灰色や黒色のカビが生えた場合はあきらめて廃棄し、新しく作り直す |
蒸れた靴下の臭いがする | ・酪酸菌が増えているため上下を返すようによく混ぜる ・底の部分が上に来るように混ぜると良い ・手の届きにくい四隅もしっかりと混ぜる |
腐敗臭がする | ぬか床の香りについて「下水のにおい」「うんこくさい」などといった表現をされることがあります。 強烈な腐敗臭がする場合は、ぬか床の菌が死滅していることが考えられます。 廃棄して新しく作り直してください。 |
●管理栄養士からのコメント
上手に作って食べていると、熟成香が食欲をそそり、とてもおいしいぬか漬けですが、酸味が強すぎたり、匂いがきつすぎたり、カビのようなものが表面についていたりする場合は、ぬか床の菌のバランスが崩れている可能性が考えられます。
また、症状別に対処方法が異なりますので、よく確認してからぬか床のお手入れをしてみましょう。
きちんとしたお手入れが出来れば、長く楽しむことができるぬか床です。
野菜によってうま味や菌がそれぞれ異なりますので、たくさんの種類の野菜を漬ければ漬けるほど、美味しいぬか床を作り、美味しいぬか床を維持することもできます。
是非いろいろな食材を漬け、ぬか漬け作りを楽しんでみてください。
管理栄養士プロフィール
◎稲尾 貴子
管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。パン作りが趣味の2児の母です。食欲旺盛なこども達のためにパンを作り始めたところ、パンの奥深さに魅了されています。
ぬか床のお手入れQ&A
- 1週間以上の外出時、ぬか床はどうすればいいですか?
- 中の野菜を取り出し、塩を多めに混ぜ、表面にぬか3:塩1を混ぜたものをしいてその上に塩をまきます。
水分が多かったり塩分が少ないと雑菌が繁殖しやすいので、ぬかと塩を足し(足しぬか)、水分を減らし塩分を増やしておきます。
足しぬかの場合は、ぬかの5%~7%の塩を混ぜたものをぬか床に足します。
復活させる時はぬか床をよく混ぜ、塩分量が多くなっているので何回か捨て漬けをしてから使い始めましょう。
- ぬか床が水っぽくなってしまったらどうすればいいですか?
- コップなどでくぼみを作って溜まった水を捨てるか、ぬか床の量が減っていれば足しぬかをします。
足しぬかの場合は、ぬかの5%~7%の塩を混ぜたものをぬか床に足します。
- ぬか床にカビが生えてしまったら?
- カビが少量の場合はカビの生えている部分を多めに取り除き、そのまま使えます。
大量にカビが発生してしまった場合は、カビの部分を取り除いた後ぬか床を容器から取り出し、容器を洗浄・熱湯消毒してからぬか床を戻し、足しぬかをして毎日かき混ぜます。
- 表面の白い膜はカビなのですか?
- これはカビではなく「産膜酵母」と呼ばれる酵母菌の一種です。
食べても害はないのですが、味や臭いが悪くなるのでその部分は取り除き、毎日かき混ぜるようにします。
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