黒酢の伝統的な作り方|黒酢の歴史と選び方も解説

黒酢は玄米から作られるお酢で、濃い色とコク深い味わいが特徴です。この独特な風味が生まれる理由を知るために、伝統の生産工程を詳しく解説します。

日本における黒酢の歴史や選び方も解説するので、黒酢を詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

もくじ

伝統的な黒酢の生産工程

甕

伝統的な壺づくりの黒酢は、栄養成分をたっぷり含んだコク深い味わいです。ここでは、鹿児島県の伝統的な生産工程を紹介します。

麹づくり

黒酢づくりにおいて、麹づくりは重要なポイントです。黒酢づくりに適した麹は「老麹(ひねこうじ)」で、麹菌がしっかり繁殖することが求められます。また、ゆっくりと育てることで、黒酢のコクを生み出す糖化力の強い麹に仕上がります。

最初の工程は玄米を洗って蒸し、冷ましてから種麹を植え付ける作業です。その後、温度や湿度が保たれた麹室で3~4日ほどかけて麹菌の胞子を育てます。麹の出来で酵素の量などが変化するため、神経をつかう工程です。

玄米を蒸す~仕込み

麹づくりとは別の新しい玄米を一晩かけて浸水させます。その後、時間をかけてじっくりと蒸し上げます。蒸し上がったら、壺を用いる仕込みの工程です。

小さな陶器の壺に、麹・蒸し米・仕込み水を順に入れ、米麹を振るい入れて全体を覆います。全体を覆うのは雑菌の侵入を防ぐためです。

壺に入れたら屋外で自然発酵させるために、雨よけの蓋をします。太陽の熱や自然の冷気にさらすことで発酵を促す、黒酢ならではの製法といえるでしょう。

熟成

伝統製法を守る醸造所では、1~3年以上をかけて長期熟成させます。この期間もひとつひとつ壺を確認し、毎日職人がかきまぜて発酵を促すため、手間のかかる作業です。かきまぜることで空気に触れさせると、酢を生み出す酢酸菌がはたらきやすくなります。

黒酢独特の深い色・甘味・コクが生み出されるのは、壺で熟成させることで糖分とアミノ酸が豊富に産生されるためです。壺の中では、次のような工程が自然に進行しています。

  1. 玄米が麹によって糖化する
  2. 糖分がアルコール発酵する
  3. アルコールが酢酸発酵して酢に変わる

黒酢以外のお酢は、これらの工程を人の手によって進行させますが、黒酢は壺の中で自然とおこなわれるのがユニークです。世界的に見ても珍しい作り方だといわれています。

絞り・殺菌・ろ過 ~検査して出荷へ

熟成を終えた黒酢は、絞り機で搾られます。そして、これ以上発酵しないように温めて殺菌され、ろ過の工程を経れば黒酢の完成です。

出荷するために瓶に充填し、色・透明度・異物の混入がないかなどを確認します。問題なければ打栓、最終確認を経て出荷されます。

黒酢の歴史

酢の醸造技術が中国から日本に伝わったのは古墳時代ですが、日本における黒酢の歴史は約200年前からといわれています。鹿児島県・福山町の竹之下松兵衛という人物が、中国の承認から製法を聞いて始めたという説が有力です。

その後、鹿児島県を中心に黒酢づくりがおこなわれてきましたが、戦後の原料不足・価格の安い合成酢の台頭で、一時は黒酢づくりが危ぶまれました。しかし、一軒の醸造所が米ではなくサツマイモを用いることで黒酢づくりを続け、技術を守ったとされています。

歴史のなかで途絶えそうになった技法を、人々の努力によって継承できたという歴史は、黒酢の味わいをより深いものにしてくれるでしょう。

おいしい黒酢の選び方

黒酢の製造工程には、先述のような伝統技法の「静置発酵」と、量産のために強制的に発酵させる「通気発酵法(連続発酵法/速醸法)」があります。黒酢独特の深い色・甘味・コクは壺で熟成させる伝統技法で高まるため、静置発酵がおすすめです。

それ以外のポイントは以下で解説します。

有機玄米の黒酢を選ぶ

黒酢は胚芽やぬかを含む玄米を使用するため、有機栽培米を使用したものがおすすめです。

また、原料となる玄米のアミノ酸含有量が多いほど、黒酢の味わいが豊かになります。

なお、米の割合によっても味が変わってくるため、各社ごとに配合量を工夫しているようです。米の分量が多いほど濃厚でまろやかな味わいとなります。

清らかで豊かな水で仕込まれた黒酢を選ぶ

酒では水の質が重要であることは有名ですが、酢も同様です。飲んでもおいしい水で作られた酢もおいしく仕上がる傾向にあります。

そのため、地下水や湧き水が豊かな土地で酒と酢づくりは発展してきました。
水選びにこだわった醸造所の黒酢がおすすめです。

長期熟成の黒酢を選ぶ

伝統製法の黒酢は1年以上熟成させますが、醸造所によって熟成年数は異なります。

熟成期間が長いほど、コクがあり健康効果も高い黒酢になるため、奥深い味わいを求めるなら3年以上熟成がおすすめです。

なお、屋外で自然発酵させるときは、降霜の少ない温暖な気候が向いているといわれています。鹿児島で発展した理由といえるでしょう。

黒酢の奥深さを知るきっかけに!

黒酢の甕

黒酢は手間と時間をかけて作られるお酢です。丁寧に仕込み、じっくりと熟成させることで独特の風味が生まれます。

しかし、伝統製法は手間と時間がかかるため、大量生産には不向きで価格も高めです。安価な合成酢の台頭などによって、失われかけた製法でもあります。それでも、当時の職人の工夫と努力によって守られたのは、黒酢にしかない味わいがあってのことでよう。

米・水・熟成のポイントにも注目し、ぜひ伝統製法の黒酢を手に取ってみてください。

黒酢のQ&A

黒酢と酢の原料の違いは何ですか?

料理などによく使われる酢は精米された米を材料にした米酢ですが、黒酢は、精米する前の「玄米」を使用して作られます。

黒酢と酢の栄養の違いは何ですか?

ほぼ同カロリーでありながら、黒酢の方がビタミン・ミネラルなどをより多く含んでいます。また、アミノ酸も豊富です。穀物酢100ml当たりのアミノ酸が約50~80mgであるのに対し、黒酢は約600mgのアミノ酸を含みます。健康を意識される方には黒酢がおすすめです。

黒酢は酢の代わりに使えるのでしょうか?

問題なくお使い頂けますが、黒酢は普通の酢よりも風味が濃いので、量を調整してお使いください。

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この記事を書いた人

90年代生まれ。猫が大好きなのに猫を飼っていない人。食べ物も大好きで、家庭菜園が趣味ですが料理も栽培もなかなか上達しません。

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