「干し野菜の専門家」廣田有希さんインタビュー

干し野菜の専門家廣田有希さんに干し野菜の魅力を聞きました。

昔ながらの食材「干し野菜」。
食材の保存性が高まり、甘みや旨味がアップします。
手軽に調理ができるので、いつものお料理にもう一品加えたい時の強い味方にもなります。
食材としての華やかなイメージはありませんが、干し野菜には数えきれないほどのメリットが有ります。

今回は、干し野菜専門家の廣田 有希さんに、干し野菜のはじめかたや上手な活用方法をじっくり聞いてきました。
干し野菜をはじめてみたい方やもっと上手に活用したい方におすすめの内容です。

思っている以上に干し野菜は簡単そう。
そして野菜に対する愛情も深まり、太陽の恵みも強く感じられそうです。

天気が良い日には、洗濯物や布団を干すついでに、野菜を干してみてはいかがでしょうか?

廣田有希さん

プロフィール

◎廣田有希

東京都生まれ。上智大学卒業後、テイクアウト専門のコンサルタント会社、有限会社テイクアソシエで、都内の商業施設の店舗開発や商品開発に従事。
2008年、実家(有限会社広田商事)であるつきじ常陸屋の小売店舗開店を機に同社を退社
2011年にはアメリカ・ロスアンゼルス店をプロデュース。東京とLAを行き来しながら、干し野菜研究家として講師や著書を出版する。
干し野菜を通じての“太陽を感じる生活”で、自然と人とが居心地よい暮らしになるよう、国内外にメッセージを発信し続けている。
著書に『干し野菜は太陽の味』(常陸屋)『干し野菜をはじめよう』(文藝春秋)など。

▼公式サイト
https://www.sunnylifelab.com

*写真:産経新聞社提供

Q干し野菜の魅力とは?

野菜は半生に干すと濃厚でジューシーな美味しさが味わえます。

干すだけで素材のうまみが増すので、焼く、煮るなど簡単な調理で驚くほどおいしくなります。

保存性にも優れていて、切って干した野菜を保存容器に入れておけば、使う時には包丁やまな板をつかわずに容器から出してすぐに調理ができます。

水分が抜けていいるので火のとおりも早く、時短で調理ができます。

 

メリット1 おいしい

料理

料理がちょっと楽になり、そしてかなり美味しくなります。

  • ・青臭さがなくなる。
  • ・甘味や旨味が増す。
  • ・味が濃くなる。
  • ・くせがなくなりえぐみも減る。
  • ・食感がよくなり火を通した時にシャキシャキした食感になる。
  • ・くせがなくなるので素材の組み合わせ方が広がる。

 

メリット2 調理が楽になる

調理

切って干すので、密閉袋やタッパーに入れておけばそのまま鍋やフライパンに入れることができます。
料理をする時に包丁やまな板がいらないので疲れている時にはとても重宝!

水分が抜けているので火の通りも早く調理時間が短縮できます。

 

メリット3 余計な物を足す必要がなくなる

煮物

干し野菜は、味が濃くなっているので調味料が少なくても美味しく調理ができます。
油・塩・醤油・味噌などの基本調味料がきちんと作られているものであれば、あとは煮る、焼く、蒸すなどの調理だけで十分に楽しむことができます。

また、 野菜個々の味がしっかりしているので、例えば干したキノコを入れて大根やニンジンを煮物にするとキノコの旨味と野菜の旨味が混じってとても美味しくなります。
塩を使わなくても味がはっきりするため減塩したい人にもおすすめです。

噛みごたえがあるから少量でも満腹になりやすく、口腔衛生にもつながります。

野菜の皮や茎、葉っぱなど今まで捨てていたところも、干し野菜ならまるごと食べられ食物繊維も摂取できます。

干し野菜は魅力に溢れているのです!!

Q干し野菜をはじめてみたいのですが、何が必要ですか?

まずは家にあるもので試しにやってみるのがおすすめです。

干し野菜道具

空気が通るような穴があり、風通しのよいものであれば何でも大丈夫です。

ザルや、天ぷらバットの上に置く油きり、ケーキクーラーや巻き簾など、野菜を置いても空気が通るものであれば何でも大丈夫です。
洗濯用の洗濯干しピンチなども使えます。

天然の竹でできた盆ざるがあれば、理想的ですが、家にあるものを工夫して使ってみてください。
ただし、普通のお皿やトレーだと風が通らなくて傷むことがあるので、風通しのよいものを選んでください。
キッチンペーパーや新聞紙を野菜の下に敷いてしまうと野菜が乾きづらくなるのでできるだけ敷かないようにしてください。

お家にある道具で試してみて、続けられそうならもっと使いやすく丈夫で長持ちする道具を揃えるのを検討してみてはいかがでしょうか?
干しかごと盆ざるはおすすめです。(国産でファスナーも丈夫。色合いも素敵で廣田さんのこだわりが凝縮されている逸品です!)

Q干し野菜は室内でもできますか?

洗濯物を干すのと同じ感覚です。
日が当たり、湿気がなければ室内でも干せます。
干し野菜に大事なのは、日当たりと風通しです。
冬場など乾燥している時期で、日が当たる場所であれば失敗しづらいでしょう。

逆に湿度は干し野菜の天敵です。
加湿器があったり台所が近くて蒸気が多い場所では傷むことがあります。

野菜の水分量や室内の湿度や温度、日当たり具合によるので一度試してみてください。

Qはじめての干し野菜におすすめの食材は?

キノコは失敗しづらいのでおすすめです。

干し野菜

しめじ、まいたけ、えのき、しいたけ、エリンギなどで挑戦してみてください。
干し野菜の「失敗」のは定義を”野菜が傷む”と言うことだとすると、きのこは傷みにくい食材です。
手でほぐせるものは手でほぐしたりスライスして、日があたり風とおしの良い場所に数時間から1日干しておくだけで美味しく出来上がります。

トマトや巨峰など、丸くて水分量が多いものは、傷みやすいので晴天が数日続くときに干すとよいでしょう。

Q野菜はそのままでも干せますか?

野菜はそのまま、まるごと干すと乾きづらく時間がかかります。
乾燥させやすいようにカットをする方がよいでしょう。

干し野菜

例えば、きゅうりやなすなどをそのままやってもほとんど乾きません。
調理する時にそのまま使えるように、使うときのサイズを想定して切っておくのがおすすめです。

ちなみに用途が決まっていないときは、大きめに切ったり厚めに切って干しておくと用途が広がります。

トマトなどは、そのままでも干せますが、傷んでしまったという場合には、種を取り除いて干してください。

野菜は切ってからも水分が出るので、布巾やタオルペーパーで切り口の水気を吹いてから干します。

干すときは、切り口をお日様に向けて干します。皮があるものは皮が下になるように置きましょう。時間があれば、途中でひっくり返します。

Q野菜の皮は剥いたほうがよいのでしょうか?

干し野菜は皮目が美味しいのも特徴なので、できるだけ皮のままいただくことをがおすすめしますです。

皮にはほこりやよごれがあるのでしっかりと洗い、しっかりと水気を拭き取ってください。

なるべく無農薬の野菜を使うと心配もなく気持ちよく皮ごと干し野菜をいただけます。

Qじゃがいもは干し野菜にできますか?

干し野菜

できます。
じゃがいもの場合はスライスして干すのがおすすめです。

じゃがいもを干す時間は2-3時間程度。
それ以上長く干すと黒ずんできてしまいます。
そのため1cm程度の厚み幅で切って2−3時間干してください。

また、春に出回る新じゃがは、水分量が多いので黒くなりづらいです。

Q干す時間の目安はどれぐらいですか?

天候、環境によっても大きく変わるので一概には言えません。
野菜の水分量や切り方によっても変わってきます。

また、食感の好みによります。
半生の野菜も、しっかり乾かしたカラカラの野菜もどちらも魅力はあります。

まず朝干して帰ったら取り込むなど、干し具合を試してみてください。

乾きすぎてしまったら、もっと切り方を厚くしたり干し時間を短くしましょう。
乾きが足りなかったら、もっと薄く切ったり、干し時間を長くしていきましょう。
試していくうちに干す感覚が掴めていくと思います。

野菜は干すと徐々にクニャクニャしてきます。
大根なら沢庵のようになります。
そこが美味しくなっているタイミングです。
試しながら自分のお好みの干し具合やコツを掴んでいくのが良いと思います。

大根の場合
厚切り 半日-2日。
表面が白く、カサカサししんなりしてきたら出来上がり。
千切り 数時間から1日で半生状態。2日から4日で完全に乾燥。

Q干し過ぎたときはどうすれば良いのでしょうか?

干しすぎても特に問題はありません。

干しすぎた野菜は味が凝縮されているので煮物やスープにおすすめです。

干し野菜

Q作った干し野菜の賞味期限はどれぐらいですか?

干し加減や野菜の元の状態によって違います。

半生に干した野菜はまだ水分がある状態のため、生の野菜と同じと考えてください。
半生の野菜は干したてが一番美味しくいただけます。
すぐに食べない場合は、冷蔵庫で3~4日。
冷凍の場合は保存袋に密閉して入れると長く持ちます。

完全乾燥の場合は常温も、高温を避けて酸素や光から遮断すると美味しさをキープして保存できます。
ただし完全に乾燥させたの野菜も保存方法によっては劣化することもあります。

Q干し野菜はどう保存するのがおすすめですか?

干し野菜

完全に干した場合は、密閉した瓶やジップロックなどに乾燥剤を入れておけば長期間常温での保存が可能になります。
水分が残っているとカビの原因になるので心配な時は冷凍で保存しておきましょう。

半生の場合は袋かタッパーに入れて冷蔵庫で保存しておけば素材にもよりますが、3~4日程度保存できます。水分が多い場合はキッチンペーパーにくるみ、2日に1度程度交換すると長持ちします。

Q干し野菜のおすすめの食べ方は?

煮物

素材によりますが、焼くだけというのもおすすめです。
干し野菜は火の通りが早く水気もあまりでないため油ハネも少なくすみます。
食感も良く、下茹でもいりません。

煮ものやスープに入れても美味しく、揚げ物、あえ物やサラダ、漬物などあらゆるものにお使いいただけます。

Q干し野菜にあると便利な道具は?

道具

干しかご・盆ざるなどの野菜を干す道具は必要です。

その他、千切り器具があるとにんじんやゴボウの千切りが楽にできます。
スライサーを使えば、大根やにんじんなど大量にスライスしたいときに便利です。

ピーラーがあればゴボウのささがきもできます。
ピーラーはさびにくいステンレス製で、野菜の丸みに合わせてカーブ刃のものがおすすめです。

キッチンペーパーは重宝します。野菜の水気をしっかり拭いてから干しましょう。やさいをふくようの布巾でも良い。

オイルスプレーがあると、干し野菜に吹きかけて、オーブンやグリルで焼くだけで美味しく仕上げられるのでおすすめです。

Q干し野菜とそのままの野菜で栄養価は変わるのでしょうか?

水分が抜けるので普通の野菜と同じ量に比べてミネラル分などの栄養価が増えることになります。

また、日光に当てることでビタミンDが多くなるといわれています。
逆に、ビタミンCなどは太陽にあたると減ると言われています。

栄養素も大事ですが、美味しさの方にフォーカスしてほしいと思います。

自分が食べたいものを食べる、心と身体が欲するものを食べることが良いと思います。

Q天気の悪い日は干さない方が良いですか?

天気の悪い日はできるだけ避けてください。

自分が日向ぼっこして気持ち良い、布団を干して気持ち良いだろうと思える時に野菜も干すのが良いでしょう。

Q干し野菜が雨で濡れてしまいました。その場合はどう対応するのがよいでしょうか?

雨が軽く当たったぐらいだったら、洗ってそのまま使ってしまいます。

雨がしっかりあたってしまった場合は食べないようにしています。
ご自分が納得できる範囲で判断してください。

一度雨で濡れてしまった野菜はしっかり拭いてから干しても傷むことが多いので、再び干すのはあまりおすすめできません。

Q干し野菜に向いていない野菜はありますか?

かいわれ菜やスプラウト系の芽の野菜は干すのにはむいていません。

アボカドも油分が多く、干し野菜にはむいていません。

Q干し野菜にカビが生えてしまいました。考えられる原因はなんですか?

干し野菜

湿気が最大の原因だと思います。

夏などの湿気の多い日や、室内の湿度の高い環境ではカビが生えるリスクが高いです。

干す際は風通しが良く、湿度の低い所を利用しましょう。

傷みかかった野菜は干している間に傷んでしまう場合があります。

特に完熟したトマトなどは注意が必要です。
中が少し傷んでいても気づかずに、干している間に傷んでしまうこともあります。

Q干し野菜の表面が黒ずんでしまったら食べられないんでしょうか?

じゃがいもの黒ずみならば、黒ずんだところだけを削げば、食べられます。

一度、大根を干したら仕上がりが黒ずんでぬめっとした質感になり失敗したことがあります。
収穫前に雨が降り、大根がその雨を吸って肥大化したものを干し野菜にしました。それが原因でした。

野菜を買うときにも目利きが大事なことを痛感しました。
干し野菜につかう野菜は締まりの良いものを選ぶようにしましょう。

Q干し野菜は一年中できるのでしょうか?

干し野菜

はい。一年中できます。ただし、干すのに適した環境がどうかを見極める必要があります。

洗濯物と同じように、今日干したら気持ちよく干し上がるかどうか判断してみましょう。
空を見上げたり、風の状態を見ると干し野菜日和かどうかがわかるようになってきます。

干し野菜の天敵は湿気です。
湿気の多い夏場は日の当たる風通しの良い場所を選びましょう。

干し野菜に向いている時間帯は午前中。
日差しの強い午前中の太陽を浴びた美味しい干し野菜はおすすめです。

Q天日干しの野菜と食品乾燥機(ドライフードメーカー)を使った乾燥野菜、何か違いはありますか?

干し野菜

美味しさが大きく違います。旨味、甘み、風味、香り、食感いずれも大きく変わります。

太陽からの自然光や自然の風で干された干し野菜は、甘みも旨味も食感も香りも素晴らしいです。
洗濯物やお布団を天日に干すのと乾燥機にかけて乾かした時に肌触りが大きく異なるように、天日干しの干し野菜と乾燥機で干した野菜は大きな差があります。

頭で難しく考える前に、まずは一度干し野菜をためしてみてください。

廣田さんの熱い思いが伝わってくる、素敵なお話しが聞けました。

美味しくて身体にも良い干し野菜をぜひ上手に生活に取り入れてみてください。(ちなみに僕はインタビューの翌日、早速エノキを干し網にいれてベランダに干してみました。)

干し野菜についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
ぜひ合わせてご覧ください。

麹とは

簡単干し野菜の作り方使い方|かわしま屋コンテンツ
干し野菜におすすめの野菜や干し野菜を使ったレシピもご紹介。
旬の野菜をより楽しめる、干し野菜の作り方や使い方、メリットなどをまとめています。
干し野菜の作り方の記事を見る

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この記事を書いた人

東京都出身。酉年生まれ。2児の父。趣味は読書と散歩と足のつぼ押し。
洗濯物をたたむのが苦手。煮豆と井上陽水が好き。