納豆菌の効果-乳酸菌を助ける!熱に強い!最強菌のひみつとは
独特の香りと味で、発酵食品の中でも独自の地位を確立している納豆。
ただでさえ栄養豊富な大豆がさらにパワーアップするとあって、健康のために毎日食べている方も多いのではないでしょうか。
今回は、その納豆を作る「納豆菌」にスポットライトをあて、生態や腸での働き、知られざる姿などを徹底解説!
納豆の効果から培養法まで、納豆と納豆菌に関する知識をまとめました。
納豆菌とは
納豆菌(学名:Bacillus subtilis var. natto)とは枯草菌の一種で、大豆を使った日本の発酵食品「納豆」の製造に欠かせない微生物です。
元々は稲わらにつく雑菌の一種で、土の中などにも広く分布しています。
昔ながらの納豆は稲わらで包んで作られますが、あの稲わらの1本には約1000万個もの納豆菌が付着しているといわれています。
納豆菌は植物性タンパク質の多いものが大好物。
大豆などに含まれるタンパク質をエサにしてネバネバした物質を作り、独特の強烈なにおいを発生させます。
発酵するとうま味成分であるグルタミン酸も豊富になり、発酵食品らしい複雑な味わいになります。
納豆菌は素材の食味も大きく変えますが、その働きは健康への効果という面でも見逃せません。
納豆1gには10億個以上の生きた納豆菌がいるといわれ、発酵によりさまざまな栄養価をアップさせるほか、腸内環境をも整えるといわれています。
生きた納豆菌は納豆を作るだけでなく、水質浄化や土壌改良にも使われるなど、応用のための研究も広がっています。
また、納豆のネバネバした糸からプラスチックを作るという研究も実用化がすすめられており、環境問題の解決という点でも多くの可能性を秘めた菌です。
納豆の栄養
カロリー | タンパク質 | コレステロール | 食物繊維 | ビタミンB1 | ビタミンB2 | カルシウム | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
茹で大豆 | 180kcal | 16.5g | 0mg | 7g | 0.22mg | 0.09mg | 70mg |
納豆 | 200kcal | 16g | 0mg | 6.7g | 0.07mg | 0.56mg | 90mg |
和牛赤身 | 201kcal | 20.2g | 66mg | 0g | 0.09mg | 0.24mg | 4mg |
文部科学省「五訂 日本食品標準成分表」より
納豆菌による発酵で、納豆の栄養は大幅にアップ。
茹で大豆と比べるとビタミンB2が6倍強になるほか、カルシウムの吸収を助け骨に必要といわれるビタミンK1、ビタミンK2なども増加します。
タンパク源としても理想的です。牛肉に迫る量のタンパク質を含んでいながら、コレステロールはゼロ。悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすレシチンという脂質も含み、血流をよくする効果が期待できます。
納豆の成分として有名なナットウキナーゼは、納豆菌がつくる酵素。血栓を溶かすだけでなく、ほかの血栓溶解酵素物質を活性化させる働きももっているそうです。
また、大豆の成分として有名なイソフラボンも、納豆菌の働きによってさらに体内への吸収率が高まるそうです。
イソフラボンを効率的に摂りたいのであれば大豆製品の中でも納豆がおすすめです。
納豆菌は宇宙でも生きる?!納豆菌最強説
さまざまな微生物の中でも「最強」であるといわれる納豆菌。
その理由は、生き延びられる環境の範囲の広さにあります。
納豆菌が活動しやすい環境は、温度が10~65℃くらいの空気のある場所。
特に40~45℃で湿気があり、中性~微アルカリ性で植物性タンパク質の多い場所を好むといわれています。
普通の微生物であれば、適応する条件に合わない環境だと活動が鈍化し、やがては死滅してしまうのですが、納豆菌はそうではありません。
納豆菌は、適応しない環境におかれると「芽胞」の状態になり、休眠するのです。
「芽胞」となった納豆菌は、100℃に加熱してもマイナス100℃に冷やしても耐え、栄養分が枯渇したり乾燥状態になったり、真空状態になったりしても生き延びることが可能なのだそう。
このため「納豆菌は宇宙空間でも生き延びる」という説もあります。
再び活動できる環境におかれると芽胞から発芽して生育するという納豆菌。
その強い生命力は人間が食べるときにも役立ち、胃酸に浸かっても死滅せずに腸まで届くことができるそうです。
納豆の効果
納豆といえば血液サラサラ効果が有名ですが、他にもたくさん身体にうれしい効果があります。
その一部をご紹介しましょう。
効果・効能1 腸内環境改善効果
生きたまま腸内にたどりついて腸内環境を整えるとされる納豆菌。
元々腸内に住んでいる善玉菌を繁殖させ、悪玉菌を追放するという働きがあります。納豆は食物繊維も豊富なので、便秘改善にはもってこいの食材です。
- 納豆は加熱して食べると意味がない?
- 加熱に強い納豆菌ですが、さすがに120℃以上の状態が続くと死滅してしまいます。
- 生きたまま納豆菌を摂りたい場合は、加熱しすぎないように注意しましょう。
- とはいえ、死滅すると効果がないというわけではありません。
- 死んだ納豆菌も乳酸菌やビフィズス菌のエサとなり、その増殖を助けて腸内環境の改善に役立ちます。
効果・効能2 美肌効果
納豆には、肌の角質の水分量を保つ効果があることがわかっています。
また、納豆菌の中に含まれるポリアミンという成分には老化防止(アンチエイジング)効果も。
年齢と共に身体で生成される量が減ってしまう成分ですが、納豆を毎日1パックずつ食べると約8週間で血中のポリアミン濃度が上昇するそうです。
効果・効能3 心血管疾患の予防効果
納豆に含まれるナットウキナーゼという酵素は、血栓を溶かす強力な効果があることで知られ、脳梗塞や心筋梗塞など血栓が原因で起こる疾患の予防効果が期待できます。
また、前述のポリアミンにも動脈硬化の予防効果があることがわかっています。
効果・効能4 骨粗しょう症予防効果
納豆には、骨に必要なカルシウムが大豆より多く含まれています。
また、そのカルシウムを効率よく吸収するために必要とされるビタミンKも豊富に含まれ、骨粗しょう症の予防に役立つといわれています。
町田忍『納豆大全』(小学館)によると、納豆の摂取量の多い県ほど大腿骨折が少ないという結果も出ているそうです。
- その他の納豆の効果
- ・記憶力を高める…納豆に含まれるレシチンは、神経伝達物質の合成に関わっています
- ・目によい…ビタミンB2を豊富に含み、血栓溶解作用で眼底出血も防ぎます
- ・高血圧予防…遺伝的な高血圧にも効果が期待できます
納豆菌と乳酸菌
腸内環境を整えるといえば、その代表選手は乳酸菌。
では、同じ善玉菌の一種である納豆菌は乳酸菌とどう違うのでしょうか? 主な疑問にお答えします。
- 〇納豆には乳酸菌が含まれているの?
- 納豆を作る際には通常乳酸菌を添加しませんが、納豆菌と乳酸菌は共存可能。
- 味噌などと同様に空気中の乳酸菌が含まれています。
乳酸菌を添加した「乳酸菌納豆」なるものも存在するようです。
- 〇納豆菌は乳酸菌を殺すことはないの? 相性は?
- 「最強」の納豆菌が他の菌に及ぼす影響、心配になりますよね。
納豆菌は腸まで到達すると、乳酸菌やビフィズス菌などの増殖を助けます。
反対に、サルモネラ菌やチフス菌、O157などの有害菌については抑制することがわかっています。
- 〇納豆菌は腸内でどんな働きをするの?
- 善玉菌についてはその増殖を促し、悪玉菌についてはその発育を抑えて体外へ排泄させる働きがあります。
納豆に含まれる食物繊維も便秘を解消し、腸内を整える働きをもっています。
- 〇納豆菌と乳酸菌、どちらを摂るのがおすすめ?
- 納豆は、キムチやぬか漬け以上に腸内のビフィズス菌を増殖させたという実験結果もあるようです。
どちらも一緒に摂るのがよいでしょう。 - 毎朝の朝食メニューに納豆とヨーグルトを加えるなど、継続しやすい方法を探すといいですね。
手軽なサプリもおすすめです。
納豆の作り方
市販の納豆も手軽に食べられ美味しいのですが、自分好みの納豆を食べたいなら、手作りもおすすめです。
手作り納豆レシピ
準備するもの
- ・大豆
- 100g
- ・漬け水
- 大豆の3倍量
- ・納豆菌
- 0.1g(ひとつまみ、10mlの水に溶かしておく)
- ・蒸し器またはせいろ
- ・鍋
- ・温度計
- ・清潔な容器
- ・キッチンペーパー
- ・食品用ラップ
つくり方
- 1
- 大豆を洗い、一晩水に浸します。
- 2
- 大豆の水を切り、やわらかくなるまで蒸し器またはせいろで蒸します。茹でてもかまいませんが、蒸したほうが濃厚な味になります。
- 3
- 豆が蒸しあがったらバットにとり、熱いうちに手早く均一に納豆菌を溶かした水をふりかけて混ぜます。
- 4
- 3の大豆を清潔な容器に詰め、キッチンペーパーを豆にかぶせます。蓋はせずに、ラップをして上から酸素が通るように穴をあけてください。
- 5
- 室温40℃でできるだけ湿度の高い環境に20時間ほど寝かせます。クーラーボックスや発泡スチロールの箱の中に湯たんぽなどと一緒に入れるのもいいでしょう。
- 6
- 箸でつまんで糸をひいたらできあがりです。
納豆菌は危険?
健康に役立つさまざまな効果が期待できる納豆ですが、中には摂取に注意が必要なケースも。
抗凝血剤である「ワーファリン」という薬を使用している方は、納豆を一緒に摂ると薬の効果が打ち消されてしまう可能性があるそうです。
これは納豆がビタミンKを含むためで、ワーファリンを服用される方はホウレンソウなども同様に注意が必要なのだそう。決して納豆が身体に悪いわけではありませんが、ワーファリンを使用している方は安全のために摂取を控えるようにしてください。
もうひとつ、納豆菌については「腸内で増えすぎて危険ということはないの?」という疑問をお持ちの方もいるようですが、納豆菌自体が腸内環境を悪化させることはまずないそうです。
もちろん、納豆は大豆でできていますから、豆を食べ過ぎたときのようにガスでお腹が張ったりすることはあり得ます。
納豆の摂取量は、1日75mgとされている大豆イソフラボンの摂取量を考えても、1日に1パック程度に抑えるのがおすすめです。
納豆菌についてのQ&A
- 納豆はかき混ぜると栄養価が高まるのですか?
- 納豆をかき混ぜても栄養価が高まったり、菌が増えたりすることはありません。
ただし糸を引く粘性物質にグルタミン酸が含まれているため、かき混ぜたほうが旨みを感じやすいようです。
- 納豆菌は強いと聞きましたが、他のカビは生えないのでしょうか?
- うまく発酵した納豆には抗菌効果があり、腐ったりカビたりはしづらいといわれています。長期間保存した際に見られる白いシャリシャリとしたものはアミノ酸が結晶化したものです。
ただし、他のカビが全く生えないということではありませんので注意してください。
- 納豆菌にも種類があるのですか。
- ヨーグルトなどと同様、納豆菌にもさまざまな菌が存在します。菌株によって効果が異なるのもヨーグルトと同じです。
- 納豆菌はアルコールで殺菌できますか?
- 納豆菌はアルコールを使うことにより殺菌できますが、芽胞になってしまったものは殺菌するのが難しいようです。
- 納豆菌は冷凍するとどうなりますか?
- 粉末状の納豆菌はもちろん、市販の納豆を冷凍しても納豆菌は芽胞の状態で生きています。
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