【包丁を学ぶ・番外編】包丁の研ぎ方|砥石を使って簡単に研ぐコツを伝授
包丁についてのお役立ち情報を皆様にご紹介する、
シリーズ記事「包丁を学ぶ」。
番外編の第2弾は、家庭でどなたでもできる包丁の研ぎ方です。
毎日の料理に欠かせない包丁ですが、使っていくうちに、
封を開けたときのような鋭い切れ味はだんだんと落ちていくもの。
そこで、切れ味が悪くなってきたな…と感じたら、研いでみましょう。
研ぐと包丁の切れ味がぐんと良くなり、
食材の味や食感などにも影響するのが実感できると思います。
包丁、ナイフなどの刃物を研いだことがない、という方でも大丈夫!
砥石さえ準備できれば、手軽に始められます。
ぜひ一度チャレンジしてみてください。
Contents List/目次
まずは包丁の材質の確認から! 鋼/ステンレス/セラミック
包丁にはさまざまな種類がありますが、それぞれ材質が異なります。
包丁にどんな素材が使われているかによって
その性質は大きく異なり、お手入れの方法もかわってきます。
材質によっては、今回ご紹介する研ぎ方で研ぐことができないものもあります。
そこで、まず初めに、お手元の包丁がどんな材質でできているかを確認し、
研ぎやすさを比較してみましょう。
鋼(はがね)(炭素鋼)
研ぎやすさ:◎
鋼は、鉄を主成分とし、炭素やケイ素、マンガンなどが含まれた硬い金属のこと。
包丁に使われるのは、一般的に炭素が多く入っている炭素鋼です。
「焼き入れ」といって熱を加えることによって一気に硬度を上げ、
純度100%の鉄よりも硬くできるので、包丁づくりには適しているとされています。
包丁用の鋼は、「安来鋼(ヤスキハガネ)」と呼ばれる素材が有名で、
青紙鋼、白紙鋼などの種類があります。
鋼の包丁は切れ味の鋭さが最大の特長ですが、一方で、錆びやすいという欠点も。
炭素が錆に弱いという性質があるため、定期的なお手入れを行わないで
放っておくと錆びてしまいます。
しかし、砥石で研ぐということにかけては、随一!
鋼の包丁は一般的にステンレスの包丁に比べて研ぎやすいため、
研ぐ時間を惜しまない方、手入れしながら長く使いたい方にはおすすめです。
ステンレス
研ぎやすさ:○
実はステンレスは、鋼と同じ金属。鉄が主成分なのは一緒ですが、
炭素やクロムといった成分の含有量に応じて両者は分類されます。
ステンレスは炭素の量が少なく、錆びにくいクロムが多く含まれているため、
耐久性に優れ、錆びにくいというのが最大の特長です。
全く錆びないわけではありませんが、鋼とは比べ物になりません。
ただし、ステンレスは錆びない反面、切れ味は鋼に劣ります。
研ぎやすさという面でも、砥石で研ぐことはできますが、炭素鋼には及びません。
しかし、近年はステンレスに少量の炭素を加えるなどの工夫が凝らされ、
硬度と粘り強さを持ち、研ぎやすくなったステンレス包丁も多く登場。
ステンレスにモリブデンを加えた「モリブデン鋼」などがその代表です。
セラミック
研ぎやすさ:×(砥石でのお手入れは禁止)
非金属のジリコニアセラミックという素材でつくられたもの。
強度が高く、熱に強い、さらに軽量なのが特長です。
金属ではないので錆びることがなく、切れ味が長く保ちやすいのですが、
一方で、硬くしなやかさに欠ける素材のため、割れたり欠けたりなど
刃こぼれをしやすいという側面もあります。
そして、このセラミックの包丁は通常の砥石で研ぐことができません。
「ダイヤモンドシャープナー」「セラミックシャープナー」などの
専用のシャープナーや研ぎ器で研ぐ必要があり、
家庭でお手入れするにはなかなか難しいのが現状です。
また、最近は子供でも安全に使えるよう、樹脂やゴム製タイプの包丁も
販売されていますが、こちらも砥石で研ぐことはできません。
包丁の種類(刃)をチェックしよう 両刃/片刃
包丁の刃には、用途に応じて「両刃」と「片刃」の2種類があります。
この2つの包丁は研ぎ方が少し異なりますので、刃の種類についても事前に
チェックしておきましょう。
両刃
刃の断面が左右対称でV字型になっているのが「両刃」です。
両刃の包丁は、主に西洋料理で使われる「洋包丁」やナイフに多く見られます。
洋包丁は、もともとは肉を切ることを目的に作られ、欧米を中心に発達してきました。
切り方は「押し切り」がメイン。
包丁の重さを利用し、包丁を前方へ押しながら、刃先から刃元へ向かって
力を入れて切ります。
この方法で切ると、硬い食材でもザクッと簡単に切ることができます。
「牛刀」や「筋引き」「肉切り包丁」など、肉類の切断に適した包丁が多い一方で、
小さめサイズの「ペティナイフ」や「パン切り包丁」など、
野菜や果物、パンなどのスライスや皮むきに用いられる包丁も揃っています。
また、食材や用途に関わらず使えるものも。
「三徳包丁」は、使い方が便利な包丁で、日本の家庭でよく使われ、
万能包丁とも呼ばれています。
片刃
片刃は、裏が平面で、表側のみ斜めの砥ぎ面となっており、
横から刃先をみると、断面が「レ」の文字のようになっています。
主に日本料理で使われる「和包丁」が、この片刃にあたります。
片刃は両刃に比べ、食材を切った際に刃から離れやすく、
刻む、剥くなどの動作が素早くでき、より繊細な調理に適しています。
切り方は「引き切り」がメイン。
刃全体を使い、すべらせながらスーッと引いて切ります。
片刃の包丁は、魚などを捌く際に用いる「出刃包丁」や
刺身づくりに適した「刺身包丁」、野菜の調理に使う「菜切り包丁」や
「薄刃包丁」など。
美しく仕上げるために繊細な切り方を求め、食材や用途に応じて
使い分けられるよう、さまざまな種類の包丁が用意されています。
お次は砥石の準備! 砥石の種類をご紹介 おすすめの砥石は?
包丁を研ぐのに欠かせないのが、砥石です。
砥石には「人造砥石」と「天然砥石」があります。
前者は広く流通しているのに比べ、自然の岩層などから発掘される後者は
現在採掘が積極的に行われていないこともあり、大変希少。
そのため高価で、本職の料理人の方が使うことはありますが、
ご家庭で研ぐ際には人造砥石で十分だといえます。
人造砥石は、ホームセンターやスーパーなどで購入することができます。
砥石の粒度(目)は「#(メッシュ)」で示されます。
1センチ四方に砥石の粒がいくつ含まれるかを表す単位で、
100個なら100#となります。
通常70~30000#までの粒度の砥石が用意されています。
砥石には大きく分けて3種類あり、目の細かい砥石を使うほど、
よく切れるようになります。
荒砥(~600#)
最も目が粗い。
研磨力が強いので、刃先が減りやすいという特徴があります。
包丁を使用していて、刃先が欠けてしまったり、
大きな刃こぼれが発生した場合などに、刃先を整えるために使用することが多い砥石。
日常的な使用にはあまりおススメできません。
中砥(600~2000#)
目の粗さは中程度。
一般的に家庭での研ぎに使われる砥石。
切れ味が落ちてきた際に使うほか、刃先の修正などで荒砥を使った後に
その傷消しとしても使用します。
仕上げ砥(2000#~)
目が最も細かく、滑らか。
主に研磨用として使います。
中砥で研いだあと、切れ味の最後の調整に使うことが多いです。
より切れ味鋭く、長く保ちたい場合は、この仕上げ砥(仕上げ砥石)を利用するとよいでしょう。
どれを使ったらよい?
上記のように、砥石には種類がありますが、
砥石選びで迷ってしまったら、「中砥」の砥石をお選びいただくと
問題なくご家庭での包丁研ぎにお使いいただけると思います。
人造の砥石であれば、比較的値段も安く手に入りますので、ぜひお求めください。
さらに、より一層切れ味鋭く綺麗に仕上げたいという方は、
仕上げ用に「仕上げ砥」を用意するとよいでしょう。
いよいよ研ぎ本番! 両刃/片刃別、包丁の研ぎ方
砥石が用意できたら、早速包丁を研いでみましょう。
難しいことはなく、手順を踏んでゆっくりと進めていけば、
どなたでも簡単に研ぐことができます。
研ぐ前に
まず最初に、砥石の準備から始めます。
・砥石を20分程度水に浸けておきます。
砥石に水分を含ませることによって、包丁の滑りを良くします。
ただし、天然砥石をお使いの際は、砥石に水を流す程度で使用してください。
(長時間水に浸けると割れやすくなるため)
・濡らした布巾などを敷き、その上に砥石をのせます。
研石台や研ぎ台などを使う場合は、そのまま台の上に研石をのせてお使いください。
研ぐ
砥石がしっかり水を含んだら、準備万端。
実際に研いでいきましょう。
包丁が両刃か片刃かによって、研ぎ方が少し異なります。
両方に共通の研ぎ方から、それぞれの研ぎ方までご紹介します。
両刃/片刃 共通
・刃を自分の方に向けて、砥石に対して45度くらい斜めの位置に包丁を置きます。
・刃先を砥石に付け、持ち手でしっかりと柄を握り、
反対の手の親指、人差し指、中指を刃先の上に添えます。
・砥石の上を前後に刃を滑らせるように動かしながら、研ぎます。
この際、押すときに力を入れ、引くときに力を抜くように研ぐとよいでしょう。
・包丁の長い刃を一度に全て研ぐことはできないので、刃先から刃元まで、
何回かに分けて順番に研いでいきます。
・何度も砥石の上を刃を往復させて研いでいくと、
「カエリ」と呼ばれる細かい金属のかす・バリが刃先に残ります。
最後にこのカエリを取り除きます。
カエリを取るには、新聞紙を敷き、その上で包丁の裏表両面をこすります。
新聞紙を筒状に丸め、それを包丁の刃先全体を使って引きながら
切るようにしていっても取ることができます。
両刃包丁(主に洋包丁)
・刃先を砥石にあて、峰の部分(刃先の反対側)を少し浮かせた状態で研ぎます。
刃を砥石にあてる角度は約15度(硬貨2枚分ほどの高さ)が目安です。
・両刃のため、裏も表と同じように研ぎます。
裏を研ぐ際には、刃先が外側に向くようにして、表と逆の研ぎ方で。
(引くときに力を込め、押すときに抜く)。
片刃包丁(主に和包丁)
・片刃は両刃と異なり、峰の部分を浮かせずに、
刃を砥石にぴったりとあてて研いでいきます。
・片刃の場合、裏は表の一割程度の回数で研ぎます。
研ぎ方は表の逆。刃先は外側に向け、引く際に力を入れ、押す際に力を抜きます。
上手に研ぐために 研ぎ方のちょっとしたコツ
部分的に研ぐ
包丁は、一度に全体を研ぐよりも、何度かに分けて部分的に研ぐとよいでしょう。
例えば、刃の先端→刃の中心→刃元と上から下に順番に研いでいくと、
研ぎ残しなく包丁全体を綺麗に研ぐことができます。
水を切らさずに
研いでいる最中に水気が無くなった場合は、
滑りが悪くなってしまうため、砥石に水を軽くかけながら研ぐとスムーズに研げます。
「研ぎ汁」は流さないで!
研いでいる最中に出る研ぎ汁には、砥石の微細な粉末が含まれます。
この粉末がきめ細かな刃先づくりに役立ってくれるため、洗い流さないようにしましょう。
最後はよく洗い、乾燥させる
全て研ぎ終わったら、包丁を綺麗な水でよく洗いましょう。
最後に高めの温度でお湯をかけると、殺菌・抗菌作用があります。
洗ったあとは、乾いた布でしっかり水分をふき取ります。
砥石がへこんできたら、面直しを
包丁を何度も研ぐと、通常砥石は中央がへこみ、くぼんできます。
表面が平らでない砥石を使うと、上手く研ぐことができないので、
砥石自体の修繕をおすすめします。
面直し用の砥石(面直し砥石)を使うと砥石を平らに削ることができます。
何度も研いで、基本を身に付ける!
一番大切なのは、何度も自分で研いでみて、研ぎ方の基本を身に付けること。
毎日使う包丁は刃がどんどん摩耗していきます。
常に切れ味良くお使いいただくために、少なくとも2か月に一度程度は
庖丁を研ぐことをおすすめします。
豆知識/砥石とシャープナーの違いって?
砥石を使った包丁の研ぎ方をご紹介してきましたが、
そもそももっと簡単に、一般に販売されている「研ぎ器(シャープナー)」を使って
研いではいけないの? と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、砥石とシャープナーでは全く研ぎ具合が異なります。
シャープナーは交差式、回転式や電動式など種類がありますが、
通常本体に刻まれた溝に包丁の刃を差し込み、上下に動かして使います。
ただこれは「研ぐ」というより、刃先をこすってギザギザの傷を付けているだけ。
削っているわけではないんです。
ただ、付いた傷により食材への当たりは一時的に鋭くなるため、
研いだ後は切れ味が復活したように感じますが、
またすぐに切れにくくなってしまいます。
シャープナーのみでお手入れしていると、この傷が無数に付くことで刃が痛み、
次第に刃先の強度が落ち、刃こぼれや刃身本体の割れの原因になることも。
一方、砥石は刃を石に当てて「削って」いく作業です。
「こする」だけのシャープナーとは元々の仕様が異なり、刃先をよく研磨できます。
一度砥石でしっかり研いだ包丁は、切れ味が長く続きます。
普段時間がないからシャープナーを使いたい!という方でも、
たまに砥石を使って研ぎ、刃先を綺麗な状態に研磨してあげるのがおすすめ!
軽快な切れ味で毎日ストレスなく使えるだけでなく、
大切な包丁がぐっと長持ちしますよ。
以上、包丁のお手入れ方法、砥石での研ぎ方をご紹介しました。
「包丁がよく切れる」。たったそれだけのことでも
日々の料理は楽しくなるものですよね。
料理の相棒ともいえる大切な一本の包丁。
ぜひご自分で研ぎながら、長くご愛用いただけたらと思います。
以前掲載した「包丁を学ぶ」全4回の記事は、
下のリンクから読むことができます。
もし宜しければこちらもご覧ください!