黒砂糖・黒糖の健康効果は?黒砂糖を使った簡単レシピもご紹介
記事の監修
管理栄養士
川野 恵
フリーランスの管理栄養士としてレシピ開発や栄養のコラム作成のほか、外食チェーン店でのダイエットを意識した食べ方を紹介。現在はクリニックにて、生活習慣病などに悩む方々へ栄養指導を行なっている。
「黒砂糖は体に良い」ということをよく聞きます。
しかし、いったい何がどういいのでしょうか?
黒砂糖に含まれている栄養素・健康効果や白砂糖との違いをご紹介いたします。
黒砂糖・黒糖とは
黒砂糖は、サトウキビを主原料として作られています。
さとうきびを切断して粉砕し、圧搾機にかけ、さらに「ろ過」したあとの液を濃縮してつくられています。
黒砂糖と黒糖の違いはありません
イメージ的に「黒砂糖」は粉末状、「黒糖」は固形ブロック状を想像してしまいます。
しかし実は黒砂糖と黒糖には違いが無く、消費者庁でも同義とされています。
呼び方は違えど同じものなのです。
形状の違いで、粉末状のものはお料理に、固形のものはおやつにと使い分けるのがいいかもしれませんね。
黒砂糖の産地は沖縄
日本では沖縄や奄美諸島を中心に生産されています。
海外でも温かい地域などで多く栽培されているようですが、輸入に頼らずとも国内で充分賄えるので、黒砂糖は国産のものが市場に多く出回っているようです。
黒砂糖の種類
黒砂糖は、製法によって大きく2つに分類されます。
黒糖(純黒糖)
サトウキビの絞り汁を加熱し、水分を蒸発させて濃縮したものを冷やして固めたもの。
その製造過程で、「白糖」や「はちみつ」「水」などを一切混ぜないで、サトウキビのみを使います。
雑味の無い、黒砂糖本来の味を楽しむことができます。
加工黒糖
黒糖にショ糖や廃糖蜜(はいとうみつ)などを加えて成分を調整したもの。
粗糖(ザラメ)に糖蜜を混ぜる場合もあります。
※2012年4月1日から「黒砂糖」や「黒糖」と商品表示ができるのは、サトウキビの搾り汁を使った商品のみと制定されました。
黒糖に粗糖や糖みつを混ぜた商品は「加工黒糖」と表示される事に改まりました。
量産しやすく比較的値段も安価で販売されています。
黒砂糖の健康効果・効能
白砂糖は、精製過程で栄養素がほぼ失われてしまい食材を味つけするだけの調味料になってしまっています。
普段のお料理には白砂糖を使われる方も多いと思いますが、黒糖は不純物などを取り除く精製前の砂糖の状態なので、ミネラルやビタミンを多く含んでいるのです。
健康効果1 疲労回復
黒糖(黒砂糖)の糖分はブドウ糖として体内に吸収され、エネルギーになります。
白砂糖よりもブドウ糖に限りなく近い構造をしており、数分で体内に吸収されるため、ちょっと疲れたときに摂取すると効果的です。
そして古くは甘味料としてではなく、その栄養の高さから病気の治療薬に利用されていました。
健康効果2 ダイエット時の効果促進
黒い部分に含まれる【フェニルグルコシド】という成分には、糖の吸収を抑制する働きがあるといわれます。
白砂糖に比べ黒糖(黒砂糖)は血糖値の上昇がゆるやか。
血糖値の急激な上昇は体脂肪の増加につながりやすいです。
そのため、砂糖を使うより黒糖で代用したほうがダイエットに適していると言えます。
健康効果3 美肌効果
白砂糖では製造の際にビタミン・ミネラルが失われてしまいますが、黒砂糖には多く含まれています。
サトウキビ本来に含まれている栄養素を、黒砂糖なら効率的に摂取できます。
ビタミンやミネラルにはお肌の潤いや健康の維持をサポートする力があります。
健康効果4 月経痛・冷え性に
漢方の世界でも黒糖(黒砂糖)は、女性に多い月経痛や冷え性改善の薬として用いられます。
不調の原因を血(けつ)の不足と考え、血(けつ)を補うことで体調を改善します。
血(けつ)は主に血液のことで、水量が少ない川と同様、血液も量が少ないと流れが悪くなり、不調を引き起こすと考えられています。
また西洋医学的に見ると、血液をサラサラにする作用もあると言われ、血液の流れを整える効果も期待されています。
黒砂糖の栄養素
黒砂糖は、栄養素が失われる精製は行われないのでサトウキビ本来の持つ栄養素を多く含んでいます。
特に、一般に使われている白砂糖(上白)と黒砂糖の栄養を比較すると、ミネラル(無機質)やビタミンの含有量の差が際立ちます。
カルシウム
カルシウムは100g中に240mgと多く、これは牛乳1本(200cc)中の量に匹敵する量です。
もともと砂糖きびのしぼり汁にも含まれていますが、黒砂糖の製造過程で、酸を中和するために加える石灰により、さらに増加します。
これは豆腐を作るとき、豆乳ににがりを加えて凝固させることで、豆乳のカルシウム含有量が多くなるのと同じです。
さらに牛乳を組み合わせると、カルシウムの吸収率が高まりいっそう効果をあげます。
カルシウムは体液をアルカリ性に保つうえでも重要な成分です。
マグネシウム、銅、亜鉛
日本食品分析センターの分析結果では、黒砂糖にはマグネシウムや銅、亜鉛などの体内での生理作用に有効な微量栄養素も含まれています。
マグネシウムはリンやカルシウムとともに骨の代謝に必要ですし、銅は血液中のヘモグロピンの合成にも関係します。
亜鉛は髪の毛の発育保持に必要です。
微量栄養素と呼ばれる成分は、こうして生物の生命維持になんらかの関係を持っています。
わずかな量ではありますが、筋肉の弾性を保ったり、神経の刺激感受性を維持したりホルモンの合成や分泌を促すなど、スタミナや活力のある暮らしに重要な成分です。
黒糖ダイエットを裏付けるフェニルグルコシド
【フェニルグルコシド】という成分が黒砂糖には多く含まれています。
大手製薬会社でも注目されている成分ですが、近年の研究で糖分の吸収を抑えてくれる働きがあると分かりました。
まり食べものから得られる脂肪分を吸収しにくくし、体脂肪を抑え肥満の解消につながることになります。
油っぽい料理やレシピに、黒砂糖をお使いいただくと良いかもしれません。
天然オリゴ糖で便秘も解消
黒糖に含まれる天然オリゴ糖の1種の【ラフィノース】が便秘にも良いという報告もあります。
オリゴ糖なので整腸作用が期待でき、腸内環境を整え便通が良くなるのです。
大腸に到達するとビフィズス菌の増殖も行ってくれるそうです。
オフタコサノールでコレステロール値を下げる
ブドウの皮やリンゴの皮、サトウキビなどに多く含まれるという【オフタコサノール】。
植物の葉や果皮に存在する植物性ワックスとも呼ばれます。
疲労回復や筋肉痛にも効果があると言われていますが、その中でも特に注目されているのが悪玉コレステロールへの耐性です。
体内に溜まってしまったコレステロールを抑え、生活習慣病予防にも期待できると言われています。
自然界に存在する成分なので、副作用の心配もなく安心して摂取できます。
- ●体に良いからと言ってたくさん食べるのはNG!
- 良い成分だから毎日たくさん食べようとする人がいるかもしれませんが、黒砂糖はやはり糖分なので過剰摂取はNGです。
- 毎日摂取するのではなく、白砂糖の代わりに黒砂糖を使うと安全に黒砂糖の栄養素を摂ることができます。
黒砂糖と白砂糖との違い
味の違い
白砂糖と黒砂糖の最も大きな違いは、不純物の有無という点です。
一般的に白砂糖は不純物を除去し加工されたものとされています。
不純物というと良くない印象がありますが体に悪いものが入っているわけではなく、その代表的なものが糖蜜と呼ばれる成分です。
砂糖を遠心分離機にかけ糖蜜を飛ばし、さらに精製することで白砂糖を作ります。
そしてこの糖蜜が、実は黒砂糖の旨味成分でもあります。
独特の甘み、コクがあり、黒砂糖の濃密で濃厚な味わいの元となっています。
さらっと甘みを足したい場合は白砂糖、重厚な味わいにされたい場合は黒砂糖と、普段のお料理で使い分けると良いかもしれまん。
カロリーの違い
黒砂糖と白砂糖はカロリーも異なっていて、微量ですが白砂糖のほうが高値です。
- <100gあたりのカロリー>
- 黒砂糖・・・354Kcal
- 白砂糖・・・384Kcal
カロリーの差は、黒砂糖に含まれる微量栄養素(ビタミンやミネラル)が多く含まれている証拠。
ほぼエネルギーにはならない微量元素を含まず、ほぼ糖質でできている白砂糖の方が高カロリーになるのです。
とはいえ、どちらも「砂糖」であることに変わりはなく、糖質を多量に含む食品なので食べる量には注意しましょうね。
栄養成分は黒砂糖の方が上
白砂糖はその精製の過程でスッキリとした味わいになりますが、その反面栄養素も少なくなってしまいます。
黒砂糖は精製にかける工程が少ないので、サトウキビ本来の持つ栄養素をたっぷり含んでいます。
お料理に黒砂糖を使い続けることで、効率的に黒砂糖の栄養素を摂ることができます。
サトウキビから黒砂糖ができるまで
採れたてのサトウキビから、黒砂糖ができるまでの工程をご紹介します。
生産者の熟練した技術で、丁寧に精製・加工され黒砂糖が完成します。
1.サトウキビの収穫
秋から冬にかけて、畑で刈り取ったサトウキビの葉はその場で落とし、茎だけにして黒糖工場へ運び込まれます。
この茎を圧搾機に通して搾り、サトウキビの絞り汁を得ます。
2.窯の準備
このサトウキビの絞り汁を取り出しながら濾過器を通して不純物が取り除かれ、煮詰めてゆく ための釜にポンプで送られてゆきます。
その時の釜は既に火が入れられ、準備が整っています。
3.サトウキビを煮詰める
釜で煮詰めてゆく工程は温度管理などが微妙で非常に難しいため、長年の経験が必要な作業です。
職人の勘で火加減を調節しながら朝8時から夜18時までの10時間、じっくりと行います。
4.アクを取る
10時間程煮詰めると、水分が蒸発して黒砂糖特有の甘い香りが漂いはじめます。
この間、丁寧なアク取りがつづけられます。
5.冷却して固める
丁寧なアク取りを繰り返していくと苦味のない美味しい黒糖が出来上がります。
適度な水分量に達したら釜を冷却して固めます。
6.黒砂糖の完成
冷えて固まれば、甘くて美味しい黒砂糖の出来上がりです。
黒砂糖を使ったレシピ
砂糖の代わりに黒砂糖を使くことも有効ですが、ここでは黒砂糖を使う事でより美味しく調理できるレシピをご紹介いたします。
豚バラ肉のトロトロ煮
1人分
30分
材料
- ・豚バラ肉
- 400g
- ・黒砂糖
- 1/4カップ
- ・しょうゆ
- 1/4カップ
- ・泡盛
- 1/4カップ
- ・水
- 1/4カップ
- ・ほうれん草
- 100g
- ・塩
- 適量
つくり方
- 1
- 黒砂糖、しょうゆ、泡盛、水を混ぜて煮汁の材料を準備する。豚肉は2cm厚さに切っておきます。
- 2
- フライパンを熱し、油をひいて豚肉を弱火で焼く。焼き色がついたら返し、裏も同じように焼いて、紙タオルにとって脂を吸わせます。
- 3
- フライパンを洗って、豚肉を戻し入れる。煮汁の材料を加えて、中火にかけます。
- 4
- 煮立ったら落としぶたをする。ごく弱火にし、焦がさないように注意しながら20分間ほど煮込む。ほうれんそうは塩少々を加えた熱湯で色よくゆで、水にとって冷ます。水けを絞り、3~4cm長さに切ります。
- 5
- 煮汁がほぼなくなれば、でき上がり。ほうれんそうとともに器に盛れば完成です。
黒砂糖・黒糖キャラメル
4人分
1日
材料
- ・生クリーム
- 200cc
- ・牛乳
- 200cc
- ・黒糖
- 160g
- ・バター
- 40g
つくり方
- 1
- 広めのバットにオーブンシートを敷いておく。ワックスペーパーをキャラメル一粒が入るくらいに小さくカットしておきます。
- 2
- 黒糖粉、牛乳、生クリームを鍋に入れ、しゃもじでかき混ぜながら、強火と中火で10分ほど煮詰めていきます。
- 3
- どろっとしてきたら弱火にしてさらにかき混ぜ続ける。しゃもじにとろっとくっついて落ちなくなるまで煮詰めます。
- 4
- バターを加えて混ぜ、火を止めます。1の型に流し入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫へ入れて冷まします。
- 5
- 冷えて固まったキャラメルをワックスペーパーに包んで完成です。
黒糖梅酒
1人分
3ヵ月
材料
- ・青梅
- 1kg
- ・黒砂糖
- 300g
- ・ホワイトリカー
- 1.8L
- ・ボール、ざる
- 青梅が入る大きさ
- ・乾いた布巾
- 1枚
- ・竹串
- 適量
- ・保存容器(ビン)
- 4Lサイズ
つくり方
- 1
- 青梅を水で丁寧に洗います。たっぷりの水に6~12時間浸けてアクを抜きます。
- 2
- 青梅をザルにあげ、水気をしっかりきる。水気が残らないように一つずつ乾いた布巾で拭き取ります。水分が残っていると傷みやすく、またカビの原因にもなるのでしっかり拭き取りましょう。
- 3
- 青梅のくぼみに竹串をさすようにヘタを取り除きます。梅に傷をつけないように注意しましょう。
- 4
- 熱湯消毒した保存容器(ビン)に梅の実の3分の1を入れ、黒糖も3分の1入れます。これを3回繰り返します。
- 5
- 静かにホワイトリカー(焼酎、ウイスキー、ブランデー等でもOK)を入れます。黒糖は溶けやすいのでホワイトリカーを入れるとすぐに茶色っぽく色が付きます。入れた後はフタをしっかり閉めます。
- 6
- 漬けた梅酒を冷暗所に置き、ときどきゆすって砂糖を全体に行き渡らせるようにして、味をなじませましょう。3ヶ月後から飲めるようになりますが、1年以上おくとまろやかになりより美味しくなります。
おすすめの黒糖・黒砂糖
●管理栄養士からのコメント
黒砂糖は栄養価の高い砂糖です。ミネラルやビタミンを含み、特有の糖質も含んでいます。
とくにカルシウム・カリウム・鉄などが豊富で、筋肉や骨などの構成、身体の水分量の調整や健康な血液成分の生成などをサポートします。
「砂糖は身体に悪い」などと唱えるお医者さんもいますが、いちがいにそうとは言えないのです。
確かに摂りすぎることはおすすめできません。
なぜなら、糖質が多い黒砂糖は身体に即吸収され、多量に食べると血糖値の急激な上昇を招くため。
ビタミンやミネラルを含む食品は黒砂糖だけではありませんので、野菜や果物などいろいろな食材を組み合わせてバランス良く摂るのが理想的ですね。
白砂糖に比べると栄養価の高い黒砂糖は、料理の甘味として活用すると取り入れやすくなります。
白砂糖よりもコク深い甘さになり、煮物や照り焼きにおすすめです。
管理栄養士プロフィール
◎川野 恵
給食委託会社や仕出し弁当屋での献立作成を経験後、出産を機にフリーランスとして活動。
フリーランスの管理栄養士としてレシピ開発や栄養のコラム作成のほか、外食チェーン店でのダイエットを意識した食べ方を紹介。現在はクリニックにて、生活習慣病などに悩む方々へ栄養指導を行なっている。
身体は食べ物でできている事を意識し、健康で過ごせるよう多くの方を支えていける管理栄養士になりたいと日々活動しています。
SNSやブログを通して、
・管理栄養士として栄養指導に携わりたい!
・血圧や血糖など血液結果を注意された!
・美味しく食べてきれいに痩せたい!
という悩みを解決するための情報を発信しています。
▼Twitter
@kawa040508
黒糖・黒砂糖Q&A
- 黒砂糖の賞味期限はどれぐらいですか?
- お砂糖など腐敗や劣化の心配のない食品には、賞味期限の表示の省略が認められています。
黒砂糖も基本的には賞味期限を記す必要はないのですが、メーカーによって記載されているものもあります。
これは、長期保存によって風味が変化する場合があるためで、その期限は半年~2年とメーカーの判断で設けられています。
しかしそれは風味が変化するだけで、食べること自体には問題はありません。
- 黒砂糖ときび砂糖の違いはなんですか?
- 黒砂糖は、サトウキビの搾り汁をろ過して不純物を取り除き、煮詰めて作ります。
一方きび砂糖は、黒砂糖より多く精製してから作られるので、黒砂糖より色は薄くミネラルや不純物も少なくなります。
ただし、白砂糖ほど精製されないので、ミネラルや不純物は残っています。
- 黒砂糖とてんさい糖の違いはなんですか?
- 黒砂糖はサトウキビを主原料として作られるのに対し、てんさい糖は甜菜(サトウダイコン)から作られています。
ミネラルは黒砂糖の方が多く含まれていますが、てんさい糖にはオリゴ糖の含有量が多いというのも特徴です。
また、サトウキビは沖縄など暖かい地域で採れ、甜菜は北海道など寒い地域で採れるなど産地が大きく違います。
それにより、南国で採れる黒糖は体を冷やし、北国で採れるてんさい糖は体を温める効果があるとも言われています。