あずき博士に聞きました。小豆のメリットを最大限に活かすコツ~加藤淳教授インタビュー
あんこや赤飯にづくりに欠かせない食材の小豆ですが、実はポリフェノールや食物繊維が豊富に含まれていることを、みなさんご存知でしょうか。
「あんこって甘いから、あんまり体に良くないんじゃないの?」
「小豆ってあんこと赤飯以外の食べ方ってあるの?」
今回は、そんな小豆の疑問を解消すべく、小豆のスペシャリストである加藤淳教授にじっくりお話をうかがいました。
プロフィール
◎名寄市立大学教授 加藤淳先生
名寄市立大学保健福祉学部栄養学科教授。
1958年北海道帯広市生まれ、帯広畜産大学大学院修了。
これまでオーストラリアのクイーンズランド大学や北海道の農業試験場で、豆類の品質解明や健康機能性に関する研究を行ってきた。
その実績から全国の食品企業と製品開発の技術支援にも携わる。
「あずき博士」として、全国各地で講演活動を行うほか、国際雑穀会議などで研究発表活動を行う。
主な著書に『あずき博士が教える「あずき」のチカラはこんなにすごい!』、『あずき水ダイエット』、『小豆の力』などがある。
Q.小豆に含まれる主な栄養素を教えてください。
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基本的には小豆は種になるものです。
子の場合には次の世代が育つのに必要な栄養素の大部分が含まれています。
野菜と1番違う点はビタミン C が入っていないというところだけなんですけれども、それ以外の必要な栄養素というのはほぼ全て含まれています。
Q.小豆はポリフェノールが多いと聞きますが本当でしょうか?
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私が小豆の栄養成分で強調したいのがポリフェノールと食物繊維です。
このポリフェノールも品種や生産地、または生産された気象条件などによっても大きく変動するんですけれども、一般的に言うと北海道産の小豆というのは世界の中でも非常に優れています。
以前、赤ワインブームというのがありましたよね。
通常の赤ワインにはポリフェノールが多く入っていることから、他の飲料に比べるとポリフェ―ノールの効果が高く健康的と謳われていましたが、北海道の小豆には一般的な赤ワインの1.5倍から2倍くらいポリフェノールが入っているんです。
Q.小豆のポリフェノールからはどのような効果が期待できるのでしょうか?
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ポリフェノールには、抗酸化のアンチエイジング効果、メタボリックシンドロームの予防効果、ダイエット効果などがあります。
小豆には非常に多いポリフェノールが入っているのが、まず第1の魅力と言えます。
その次に挙げられるのが食物繊維ですね。
食物繊維は今日本人で1番足りない成分です。
今から60年くらい前は日本人あたり1日27グラムの食物繊維が摂取されていたのですけれども、今は15gを下回っています。
厚生労働省でも一番足りないのは食物繊維と言われています。一般的に食物繊維を食べ物で摂ろうとすると野菜を思い浮かべる方が多いですよね。
もちろん野菜を毎日食べるのは必要なことなんですが、野菜で必要な食物繊維を摂ろうとすると莫大な量を食べなければいけなくなってしまいます。
野菜の摂取量も1日350gというのが推奨されていますけれども、現状では到達できていません。
それを補っていくためには、やはり日本人が昔から食べていた豆類や雑穀類、海藻類が必要となります。
その中で、最も優れているのが小豆やインゲン豆なんです。こういったものを多く食べることによって食物繊維の不足部分を補えます。
小豆に含まれている食物繊維は、野菜の中では多いと言われているごぼうの4倍ぐらい入っています。
なので、同じ食物繊維を摂取しようと考えた時には非常に効率的に摂れるというところが大きなところです。
Q.小豆には他にどうのような栄養素が含まれて、どのような健康効果が期待できるのでしょうか?
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一つ目はカリウムや鉄分です。
野菜でよくほうれん草なんかが代表的なものとして言われていますが、高血圧を予防するカリウム、貧血を予防する鉄分もほうれん草の約2倍入っています。
ほうれん草100gを食べようとすると相当な量を食べなければいけないんですが、小豆50g食べただけでほうれん草100g以上の効果があります。
それからもう1つは、ダイエットや疲労防止に効果のあるビタミン B1です。
ビタミンB1は植物性の食品の中で小豆には多く含まれています。
一般的には豚のバラ肉なんかにビタミン B1が多いのですが、それに匹敵するビタミンB1が小豆にも入っています。
小豆と言うより豆類と言った方が正しいです。
――ビタミンB1はどういった時に活躍するのですか?
炭水化物が吸収される時には、糖質成分がブドウ糖に変わるんですが、それをエネルギーとして燃焼する時に必要なのがビタミンB1です。
そのため炭水化物が多い食品を食べた時には、同時にビタミン B1をとることによって炭水化物をエネルギーとして燃焼できます。
さらに、エネルギーとして燃焼すると同時にブドウ糖を蓄積しないように働くので、とくに多くのエネルギーを必要とするスポーツ選手にとって欠かせない栄養素の1つです。
逆にあまり活動量が多くない場合には、蓄積せずにこれを熱として燃焼することで消費に繋がります。
こういった点から言っても、小豆は非常に優れた食材です。
日常的に食べることによって、ダイエットやアンチエイジングであったり、メタボリックシンドロームの予防にも繋がります。
Q.あずき水やあずき茶には利尿作用があると聞きますが本当でしょうか?
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小豆には利尿作用が働くカリウムが多く含まれているため、効果はあります。
小豆に含まれている食物繊維は約9割が水に溶けない不溶性の食物繊維なので、小豆水や小豆茶で飲む場合には、体内に吸収されるのは僅かです。
逆にカリウムやビタミン B1、ポリフェノールは水に溶ける成分なので、小豆水や小豆茶でも小豆に含まれている栄養素の7割程度が摂取できます。
今の内容は、 小豆水ダイエット本を監修させていただいており、そこでも詳細を紹介しております。
Q 小豆水や小豆茶は他にどのような効果を期待できるんでしょうか?
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今まで捨てていたポリフェノールを小豆水や小豆茶という形で摂取できるのが1番大きな効果です。
私が長く研究をしていたのはポリフェノールですので、やはりポリフェノールをいかに効率的に摂るかという観点で今までいろいろとやってきました。
ポリフェノールは先ほども言ったように水に溶ける成分です。
例えばあんこを作るとかになると煮汁を1回捨てる渋切りという手順があります。
こしあんですと水にさらすと大体8割のポリフェノールが捨てられてしまい、あんの方に付着して残っているのは2割程度です。
普通に小豆を煮る方法でも1回渋切りをしますので、そうすると渋切りをした後の最終的に食べる状態になった煮小豆、茹で小豆に残っているのも3割程度になります。
逆に水の方に溶け出しているものが7割~8割あることになるので非常にもったいないです。
そのため、小豆の煮汁をどうやって有効活用するかということをずっと考えてきました。
それが小豆水や小豆茶を飲むことによって7割~8割の捨てられていたビタミン B1やポリフェノールが、そこでまた体の中に吸収できるということになります。
また私が出させていただいた本で、『小豆の力はこんなにすごい』という本があります。
この本では煮汁を一切出さない煮方を提案させてもらって実は先日 NHK のあさイチでもそれを紹介していただきました。
後で NHK のホームページを見ていただくと12月1日のところに概要が出ていますので気になる方はご覧になってみてください。
その番組で、お料理の先生方に、私が提唱した「煮小豆製法」を使ったお料理を作っていただきました。
Q 小豆水や小豆茶で作った後の出がらしなどは、何か活用する方法はありますか?
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いっぱいありますね。基本的には出がらしと言うと聞こえが悪いんですけれども、出がらしと認識されているものは小豆そのものになります。
砂糖を入れてあんこにしたりと通常食べられるような甘い食べ方にももちろんできるんですが、せっかくなのでいろんな料理に使ってもらいたいと思っています。
というのも、小豆茶を作って残ったゆであずきはあまり柔らかくなりすぎていない小豆なので、冷凍保存すると1ヶ月は十分にもつんですよ。
通常、小豆を煮るとすごい手間がかかるわりに、2、3日のうち使い切らなきゃいけないという煩雑さがありますよね。でも冷凍しておくことによって煮る手間が省けて料理にもすぐ使えます。
どんな料理にも使えますが、私の1番のおすすめは小豆水を取らずにそのまま一緒にトマト味にしてミネストローネです。
小豆を甘くしない食べ方を10年ほど自分の家で色んな調理をやってみたんですけど、この中で1番合うなというのがトマト味なんですよね。
――トマト味なんですね。試したことなかったです。
この時は小豆をやわらかくしては駄目なんですね。やわらかくするとあんこになっちゃうんですよ、溶けて。
だから小豆が崩れない程度の固さにするのが良いです。指に力をかけてぎゅっと押した時にやっとつぶれる程度ですね。
軽く握ったぐらいでは潰れない、こういう固さにすることでミネストローネに非常にあう形になりますね。そういう状態のものを冷凍して保管しておくといろいろなお料理に使えます。
シチューにでもカレーでも、チャーハンに入れてもいいです。小豆水を作った後のお料理の仕方を宝島社の『小豆水ダイエット』という本に書かれています。ちょっと今は販売中止になっちゃってるんですけれども…。
何年前かな?3年か4年前に出した本ですね。
2017年の7月に発行した TJ ムックという宝島社の本なんですけれど、前半に小豆水の作り方だとか小豆の効果が書いてあって後半は色々なレシピ、ここにあるような茹で小豆ダイエット60レシピという60通りのレシピがあるんです。
調理の先生が書いたレシピで、ハンバーグに使うとかチリコンカンにするとか和食にするだとか海藻サラダに混ぜるだとかリゾットにするだとか、さっきも言ったミネストローネにするだとか色々な使い方がありました。
茹でた後の小豆というのは用途はものすごく広いと思いますね。
Q.酵素玄米は玄米の糖質に小豆のタンパク質やアミノ酸が反応し、褐色物質メラノイジンが生成され、強い抗菌作用により玄米は腐らずに熟成すると聞きますが、その点(腐りにくい)について加藤教授の見解をお聞かせください。
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日常的に我々が食べる食品の中では、小豆が1番ポリフェノール含有率が高いと思います。
ポリフェノールは抗菌作用が働いて、微生物の増殖も防いでくれます。
よく味噌や醤油などを作っている発酵食品会社は大豆を原料にして味噌や醤油を作りますが、小豆を原料にして作れないのかと、色々試してみてもらったこともありますが、非常に難しいんですよ。
なぜかと言うと、小豆の場合にはポリフェノールが非常に多く入っているので、発酵を妨げてしまいます。
それによって微生物の増殖ができないので、小豆を発酵させようと苦労して作っている企業もあり、ハードルが高いとお聞きしています。
小豆に入っているポリフェノールや発酵過程で生成されるメラノイジンは微生物の増殖を抑制してしまうということがありますので、そういった意味では腐りづらいということになりますね。
Q 小豆と大豆を比較して、小豆のメリットデメリットを教えてください。
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最近、肉の代わりに大豆を加工することで肉のようにして食べるというのが流行っていますね。
大豆には肉の代わりとなるタンパク源を摂れるメリットがありますが、小豆の場合は大豆ほどタンパクは多くないと言っても、それでも100g中に20g入っています。
そういった意味では、大豆に次いで植物性の食品の中ではタンパク質も多いですし、逆に小豆にあって大豆にないものとしては、先ほどのポリフェノールがまず1つありますね。
これはあらゆる食品の中でも優れたところになります。
二つ目のメリットは食物繊維です。
大豆も、もちろん豆なので食物繊維が多いんですが、大豆にはデンプンはほとんど入っていないのが決定的な違いです。
これは食品成分表に載っていませんが、大豆のデンプンは大体1%未満に対して小豆にはデンプンが50%ほど入っています。
50%のデンプンというと、炭水化物抜きダイエットであんまり取りたくないという人もいると思いますが、実は小豆を煮ることによって難消化性の物質、レジスタントスターチに変わります。
レジスタントスターチは、難消化性 の成分の総称であるルミナコイドの一部で、煮ることによって食物繊維と同じ働きをするんです。
しかし大豆では、ルミナコイドがほとんど形成されません。
大豆は元々入っていた食物繊維しか利用できませんが、小豆の場合茹でることでレジスタントスターチができるので、これによってお腹の中を掃除してくれる効果があります。
3つ目のメリットは、油の含有量の少なさです。
大豆は、油を絞る原料になるため脂質含有量はだいたい20%くらいあります。
これに対して小豆は油がほとんど入ってなくて、脂質含量は2%しかないんですよ。なんと、大豆の1/10です。
ダイエットを考えると脂質含有量が少ないことは、低カロリーに繋がりますし、同じ豆でも大豆は脂中心の豆、小豆はデンプンが中心で、しかも茹でることによって難消化性のレジスタントスターチに変わる豆なので、ここが大きな違いになります。
Q.小豆は、どのような食べ方で食べるのが一番食物繊維を多くとれますか?
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小豆は茹でて食べることが大事ですが、最近では新しい使い方として、粉にして使おうとする動きも若干あります。小豆はそのまま粉にすると食物繊維そのものは入っていますが、それではレジスタントスターチができません。
もちろん豆を粉にするためには、製粉するための手間がかかっちゃいますが、お米でも最近は米粉にしてパンにするだとか、色々と粉にすることによって用途が広がってきています。
それが小豆はそのまま粉にしてしまうと、細胞を壊すことによって、デンプン粒子が外に出てしまい、いわゆる熱をかけるとのりになってしまいます。
のりになってしまうとこれはエネルギー源になるので、レジスタントスターチとしては働きません。
そのため大事なのは細胞を壊さずに加熱調理をすることです。
もし粉砕するのであれば、一旦茹でた後に細胞を壊さない状態でミキサーにかけるのがいいですが、最初から粉にしてそれから加工するような順番はダメですね。
なので食物繊維をちゃんと摂ろうとする時には、まず豆の状態で加熱調理をすることです。
それによって食物繊維であるルミナコイドが1.5倍の量に増えます。
Q 小豆には便秘の解消に効果が期待できるのでしょうか?
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そうですね。私は、よく便秘だという方に小豆を3日食べてくださいと、おすすめしています。
ひどい便秘の方には1週間続けてくださいと言いますが、ほぼ全員が解消しました。
日本人には大腸の蠕動運動が鈍ってしまう、弛緩性の便秘の方が多いです。
便は大腸での滞在時間が長いと、どんどん大腸から水が吸収されて、ますます便が硬くなってしまい体積が小さくなって排出されづらくなってしまいます。
そこで小豆を食べることによって、食物繊維が非常に多いことと、水に溶けない不溶性の食物繊維がすごく多いことで、食物繊維が増えると便のかさが増加するんです。
そこに水を抱き込んできますので、固くなった便を柔らかくするのと同時に、体積が増えるので大腸の腸管を刺激して蠕動運動が復活してきます。
これが便秘の解消につながるメカニズムです。
小豆を食べることによって薬で出すのではなくて、自然の力で大腸の蠕動運動を復活させて、便秘を解消することが理想的だと思います。
Q.あずきを温めて目の疲れをとる商品がありますが、効果はあるのでしょうか?
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これに関しても、『小豆のチカラはこんなにすごい』という本の中詳しく書いていますが、まず効果として大きく2つあります。
1つは小豆の特徴である、”楕円形”の形状です。
これ大豆ではだめなんですよ。
大豆は丸いですよね?そのため、丸と丸が重なり合ったときに、間に空間ができて体にフィットしません。ところが楕円形をした小豆は重なり合うことによって、そこの空間が非常に小さくなり、体にフィットするんです。
その大きさが大きすぎても駄目ですし小さすぎても扱いづらいですが、小豆ぐらいの大きさは最も人間の体の凸凹、目の大きさだとか頬骨の形、おでこの形などに非常にフィットしやすいです。
昔から日本の遊びではお手玉がありますが、お手玉に大豆を入れずに小豆を入れるのは、空間ができずに手にフィットしやすいからです。
それと同じで、人間の顔に関しても顔にフィットしやすいのは、小豆の形状です。
それがまず一つ目の理由ですね。
もう1つは、これを電子レンジで温めて温かくなったものを体に当てる効果です。
電子レンジは水の分子を直接振動させることによって発熱させるのですが、乾燥した小豆にも13%~15%くらい水分が含まれているため、電子レンジにかけると発熱します。
水分が多く入りすぎていると熱くて触れなくなってしまいますが、10%ちょっとという適度な水分含有率ですので、これが加熱しても極端に熱くならずに済んで、適度な温度で体にフィットできます。
繰り返し利用が可能で非常にエコロジーな点がもう一つのメリットです。
小豆は一度電子レンジで水分を加熱すると当然水分は飛んでいきますが、これをそのまま置いておくと、空気中の湿度を吸着してまた元の10%ちょっとの水分に戻るんです。
カラカラに乾燥したような空気のところでは駄目ですが、日本の場合は湿度がそれなりにありますので、そのまま放置しておくだけで空気中の水分が吸着されてまた戻ります。
Q 小豆から作られる、あんこにはどのような魅力がありますか?
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私も全国和菓子協会の仕事を15年くらいやっていて、全国各地でだいたい1回につき400人くらいの一般市民のお客さんが集まってシンポジウムを開いてたりしていたんです。
その時にいつも言うお話が2つあります。
まず1つは今おっしゃられていた洋菓子と比べてどうなのか。
最近の若い人は洋菓子も食べますしもちろん和菓子も洋菓子も食べますけれども、洋菓子はクリームにしてもチョコレートにしても油を使っているんですね。
クリームは動物性の脂肪で、チョコレートは植物性の脂肪が入っています。
それに対して和菓子あんこの場合は、原料となる小豆に2%しか脂質が入っておらず、大部分が炭水化物です。
炭水化物は1gで4kcalのエネルギーですが、これに対して脂、脂質は1g9キkcalのエネルギーが入っています。2倍以上ありますね。
例えば端的な例で大福とショートケーキを比べたことがあるんですけれど、(机上の計算にはなりますが)大福1個のエネルギー量はだいたい160kcalぐらいですね。
もちろんお店によって大きさとか内容にも変わってきますが、平均で言うと大福1個160キロカロリーくらい。
一方ショートケーキは1個あたりだいたい400kcalくらいで、大福の2.5倍あるんですよ。
つまり大福2個食べてもショートケーキ1個よりもカロリーが低いということになります。
なので、ダイエットとかそういったことを気にされている方や脂質の摂りすぎを気にしている方にとっては和菓子を食べた方が満足感、 満腹感は得られやすいですね。
これはダイエットを考えているとか脂肪取り過ぎないようにと考えられている方にとってはメリットかなと思います。
Q 加藤先生の中で、1番おすすめの小豆の良さ要素を活かせる料理は何でしょうか?
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先ほどの小豆水ダイエットの中でも話しているのですが、やはり小豆の良さは大豆と比べてもポリフェノールが多いことです。
他の食品と比べても非常に多くかつ、大量に摂れます。ポリフェノールが非常に多い食材にはベリー類もありますが、それは毎日大量に食べることは出来ません。
それが小豆は色々な料理に使うことによって非常にバリエーション多く毎日食べることができます。
この時に1番大事なのは、ポリフェノールなどの水溶性の成分を捨てないことなんですね。
煮汁を全部捨ててしまうと、7割くらいの水溶性の成分がそこで捨てられてしまい、非常にもったいないです。
日本の伝統的な小豆のスープであるおしるこもありますが、逆に甘くしないでミネストローネだったりとか、私が推奨しているもので、小豆の煮汁を全部豆に吸着させることによってその豆をいろんな料理に使う方法もあります。
ということで、是非煮汁を捨てない方法で料理をやってもらいたいなと思いますね。
Q.小豆を購入する際は、どのような小豆を選ぶと良いでしょうか?
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現在国内で、加工用ではなくて一般用に販売されている小豆は、9割以上が北海道産なんです。
北海道産の小豆は非常にポリフェノールの量が多くて、抗酸化作用が高いのが一般的ですので、まず産地を確認することです。
9割が北海道産と言ったんですけど加工用で見ると実はそんなに多くなくて、加工原料としての小豆は半分が輸入小豆で半分が国産です。
国産の9割なので50%×9割なので45%ぐらいが北海道産の加工用のものになります。
逆に、5割は輸入品です。、輸入物の場合には効果は全然変わってきますので、よく産地を確認するのがまず基本的なところです。
じゃあ産地が北海道なら何でもいいのか、北海道以外はだめなのかというとそんなこともないです。
もうひとつは、ちゃんと保管されているかどうかです。
私も保管の試験を色々とやったことがありますが、保管状況が悪いと煮えなくなったり、栄養成分がちゃんと吸収できなくなってしまいます。
ただ保管条件は明記されていないこともあるので、袋を見ただけではわからないんですよね。良くない保管条件とは、温度が高い、もしくは湿度が高いようなところで長期間保管している場合です。
北海道の農協さんは低温倉庫を使ったりしてますので、湿度管理はしっかりしています。しかし、流通過程で30度前後のような温度が高い場所で長期間おかれる場合もあるんですよね。そういった小豆は色が黒ずんできます。
ですから、見た目の色としてはあんまり黒っぽい小豆は選ばない方がいいです。
それからちゃんと選別されていない小豆だと、欠けていたり虫に食われたものが入っています。
ポイントとしては産地の確認と、色があまり黒くなっていないかどうか、虫食いとか欠けたような小豆が混入していないか、をチェックするといいものが使えると思います。
Q.国産の小豆と輸入の小豆では、どのような違いがあるのでしょうか?
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まず輸入の小豆といっても大きく分けると2つあって、北海道の品種を海外に持って行って、これを日本に輸出するために作っているような地域もあります。
これは日本の北海道の小豆なので遺伝的には同じですが、、ただ栽培環境が違うだけですね。
もうひとつは、元々小豆の原産地は東アジアなので、中国とか韓国とか台湾でも小豆を作っています。
日本に多く入ってきたのは中国の小豆です。
中国の小豆は遺伝的に調べると、日本の小豆とは全く違うということが分かってます。
この起源をたどっていくと、縄文時代まで遡るんじゃないかと最近言われていますね。
つまり縄文時代で中国の小豆と日本の小豆は分かれていることになります。
ですので、遺伝的には小豆といっても、かなり遠い親戚にあたり、成分的にもかなり違っています。
ポリフェノールの効果は、私が調べたデータでは中国産のものは北海道産の半分しか効果がないような状況もあります。
やはりそういった健康機能性で考えるのであれば国産の小豆、北海道産の小豆といったものを使うのがいいかと思います。
あとは気象条件によって出来不出来というのは非常に大きく差が出てきます。
今では北海道が日本の小豆の一大産地になっていますが、あずきは元々寒いところが向いている作物ではなかったんですね。
北海道で作る際に最も大変だったのは、冷害、特に春先の遅霜、それから秋口の早霜です。
霜に当たってしまうと小豆は全く成長できなくなってしまう弱い作物です。
それを克服するのが北海道の農家さんたちの大きな最大限の努力だったんです。
最近は品種改良されて寒さに強い小豆ができてきました。どうして涼しい地域で作るといいのかと言うと、先程お話ししたように色が非常に綺麗になり、しかも粒が大きくなるからです。
これは暖かい地域よりも涼しい地域の方が適しています。
それからもう1つ。ポリフェノールは、花が咲いた後の日照時間が長い地域がいいんです
その点、北海道は梅雨もなくて、しかも秋口は晴れた日が多く、台風も来ないです。
こういった気象条件は、小豆にとってとても品質の良い小豆が生育できる環境なので、北海道が日本一、世界一の産地になったのは気象条件がマッチしてたからと言った理由もあります。
ですのでそういった遺伝的な違いと栽培環境、気象条件を考えると、やはり北海道の小豆というのは色々な面でメリットが出てくるかと思います。
Q 加藤先生が考える、小豆の一番の魅力を教えていただけますか?
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小豆は非常に古くから日本で伝統的に食べられていた作物の1つです。
小豆は食べる時に甘くすることが多いため、小豆業界でお話ししても必ず質問に出るのは、「小豆が良いのは分かるけれども、甘くして食べることに関して罪悪感があったり、ダイエットの敵じゃないか」という声なんですね。
でもこの時に私がお話するのは、まず1つはポリフェノールの話です。
ポリフェノールはアンチエイジング効果があることだけではなく、実はダイエット効果も非常に高いです。
例えば、お砂糖だけを吸収すると血糖値がドーンと上がります。
それをお砂糖と小豆を混ぜてあんこのように和菓子にして食べると血糖値がなだらかにしか上昇しません。
動物実験で調べたのですが、小豆に入っているポリフェノールはお砂糖の吸収を抑制することが分かっています。
砂糖は成分名で言うとショ糖、スクロースという二糖類です。
二糖類は、ブドウ糖と果糖がくっついた大きな分子の形をしているため、人間の腸管からはそのままは吸収はできません。
その二糖類にインベルターゼという酵素が働き、ブドウ糖と果糖に分解されて単糖という小さな分子の塊になってから吸収されて、これが血糖値の上昇に繋がるんですね。
ところが小豆のポリフェノールを同時に吸収すると、小腸の中で二糖類のスクロースが分解されるのを抑制してくれます。
これによって吸収のスピードが非常に緩くなり、通常なら血糖値がボーンと上がるとインスリンパルスが出るんですが、和菓子の場合はインスリンパルスが出ないんです。
これは血糖値の上昇をなだらかにしてくれるポリフェノールの効果によるものです。
小豆を食べる時に和菓子を食べても血糖値の上昇が緩やかになるのは効果として大きいですよね。
それからもう1つは逆に甘くしない食べ方ですね。
甘くする時にはあんこになるように十分に加熱して煮て柔らかくしてしまいますが、甘くしない場合は固い状態を保っておくと全く違う使い方ができます。こちらも是非皆さんに試してもらいたいのです。
ポリフェノールが多くて食物繊維が多い食材である小豆をいろんなお料理に使うことができて、昔からお赤飯に使われていたようにご飯との相性もいいです。
豆類には、ご飯に足りないアミノ酸のリシン(リジン)が非常に豊富に含まれています。
昔の日本の文化では、小豆とご飯を組み合わせて食べることによって、お肉を食べなくても必要なアミノ酸やタンパク質を吸収できたのが、ご飯と豆の組み合わせなんですよね。
ご飯と豆の組み合わせをすることによって、例えばベジタリアンであったり、最近多いビーガンの人たちにとっても、タンパクを摂取する上で必要なアミノ酸組成がキープできることになります。
いろんなお料理に、茹でた状態で崩れない程度の固さを保った小豆や甘くしないで食べてもらうと、非常にお料理のバリエーションが広がるので、和菓子など甘くする食べ方以外についても是非やっていただきたいなと思います。
———————————————————(聞き手:河島酉里)
小豆に含まれる栄養の効果や、小豆の良さを活かした食べ方を教えていただきました。
今回加藤教授がお話してくださった「小豆の栄養を逃さない煮方」や「小豆の栄養を活かしたアレンジレシピ」、ぜひ試してみたいですね。
お忙しい中、インタビューのお時間をくださった加藤教授、ありがとうございました。