残便感・便が細い…病気の可能性は?「出ない」原因と改善策

この記事は医師の方に監修していただいています。

木村 眞樹子医師

監修医師

木村 眞樹子

都内大学病院で内科、循環器科として臨床に従事。産業医として企業に健康経営へも携わっている。
プライベートでは3児の母。

便が出ているのにすっきりしない、どうしたら最後まで出てくれるのかわからない…。
多くの方を悩ませている残便感、病気の可能性もあると聞けば心配になりますよね。

便の悩みは、たとえ命にかかわる病気ではなかったとしても、そのまま放置しているとさらに困った症状につながることも。
今回は長く続く残便感の原因を三種類に分けてご紹介、それぞれの解決法をまとめました。

残便感の原因ー関係する病気は?

「残便感」と一口に言っても、状態や付随する症状、緊急度はそれぞれです。
まずはその「残便感」、どこから来るのかを突き止めましょう!

原因1. 腸の病気が原因の残便感

腸の病気

残便感の原因としては稀ですが、次のような病気が原因である場合があります。

病名 残便感以外の症状
潰瘍性大腸炎 ・血便、粘血便
・下痢、血のまじった下痢
・腹痛や発熱、食欲不振や体重減少、貧血が加わることも
直腸脱 ・排便時に腸が肛門から出てくる(出ない場合もある)
・排便時の違和感
・下着に粘液や血液がつく
大腸がん ・継続的な血便
・下痢や便秘を繰り返す
・便が細くなる
・何度もトイレに行きたくなる
・体重減少、貧血、立ちくらみ
・腹痛、嘔吐など

便の状態をよく観察し、残便感以外に上記のような症状がみられた場合、だんだん症状がひどくなるような場合は病院へ行きましょう。市町村などで受けられる大腸がん検診(便潜血検査)を受けてみるのもおすすめです。

腸の病気が原因だと思ったら…
→速やかに医療機関を受診してください。血便が見られた場合は次にご紹介する痔が原因である場合もありますが、いずれにしても病院で診察を受けておくと安心です。

原因2. 痔が原因の残便感

痔が原因

内痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)が残便感の原因となっていることもあります。
次のような症状や生活習慣などに心当たりがある方は、一度肛門科を受診してみましょう。

いぼ痔 切れ痔
・排便時に出血がある
・肛門にはさまって便が出てこない感じがある
・座りっぱなしの時間が長い
・便秘がち
・排便時にいきみがち
・出産経験がある
・排便時に痛みがある
・排便後に痛みがある
・便を拭いた紙に血がついていることがある
・便が細くなったような気がする
・肛門の奥に違和感がある

痔は「すぐに命に関わる病気ではないから」「恥ずかしいから」と受診をためらう方も多い病気ですが、放置すると徐々に悪化。耐えがたい痛みになったり、大量に出血したり、「痔だと思っていたら大腸がんだった」ということもあるようです。

痔が原因だと思ったら…
→恥ずかしくても速やかに医療機関を受診しましょう。早めに治療した方が軽い処置で済みます。

原因3. 便秘が原因の残便感

便秘が原因

残便感の最も一般的な原因は便秘です。
腸内環境の悪化や運動不足などにより腸のはたらきが悪くなると、便がしっかりと送り出されなくなるため腸内に残りやすく、スッキリと排泄できないことに。

「便が出ているから便秘ではない」と考えている方も多いようですが、実は便秘かどうかの判断は便が出ているかどうかや排便のペースではなく、次のようなポイントだといわれています。

<便秘のチェックポイント>
・排便してもおなかに張り、違和感がある
・便がでなくて食欲が落ちることがある
・排便に違和感を感じる

参考:小林弘幸『読む便秘外来』(集英社)

三日に一度でもすっきりと出ていれば問題なく、逆に一日に一度出ていてもすっきりと出なければ便秘の可能性もあるそうです。
お腹がポッコリと出ている、ガスが溜まっているなどの症状がある方は、自覚していないだけの「隠れ便秘」だったという可能性もあります。

便秘が原因だと思ったら…
→自宅でできる取り組みにより改善できる可能性があります。まずは食生活や生活習慣を整え、様子を見てみましょう。
あわせて読みたい
便が細いのはどうして?原因や病気の可能性、改善方法を解説 便の形や質は体の健康状態に直結しています。特に細い便が続く場合、その背後には様々な原因や病気が潜んでいる可能性があります。この記事では、細い便が出る主な原因...

腸内環境を整えて便秘の改善に


便秘と残便感

便秘と残便感

人はさまざまな原因から便秘になります。
便秘による残便感を改善するために、まずは今の生活の何が便秘につながっているのかを考えてみましょう。

主な生活・食習慣 便秘症状
運動不足→ 腸への刺激が不足する→ ・便が詰まって出ない
・残便感がある
・腹痛がある
・ガスが溜まる
・おならが臭い
・便に悪臭がある
筋力不足→ うまくいきめなくなる→
トイレを我慢する→ 便意が鈍くなる→
自律神経が乱れる→ 腸がけいれんを起こす→
食事のリズムが乱れる→ 腸のはたらきが悪くなる→
満腹のまま就寝→ 便を送るホルモンが出ない→
食物繊維を摂らない→ 腸への刺激が不足する→
腸内環境が悪化→ 腸のはたらきが鈍くなる→

便秘になると腸内環境が悪化し、残便感以外にも肌荒れやアレルギー症状、免疫力の低下や冷えなど、さまざまな全身の不調につながります。
ご自分の便秘タイプを明らかにし、原因と改善策を確認してみてください。

内側から腸内環境を整えたい方におすすめ

便秘タイプと改善策

便秘タイプ

タイプ 原因・特徴・改善策
弛緩性便秘 運動不足や食物繊維不足で、腸の筋力が衰えたり、腸への刺激が不足して起こる便秘。
腸の動きが鈍いために便を押し出せずにカチカチのウンチになる。
腸に刺激を与える、上半身を動かす運動や腹式呼吸を行い、食物繊維や善玉菌を積極的に摂る食事を摂るのが効果的。
直腸性便秘 便意を我慢する経験を重ねたことで、直腸・脳が鈍くなり、便意を感じづらくなった結果起こる便秘。
直腸まで便が来ているのに便意を感じられない状態。
まずはトイレを我慢しないこと。便意が起きやすい朝の時間帯に時間を決めてトイレに入ることや、毎朝起き抜けに1杯の水を飲むことなども効果的。
けいれん性便秘 主にストレスによる自律神経の乱れが原因で、腸がけいれんを起こしたり、正常な蠕動運動が途絶えたりする結果起こる便秘。
コロコロしたウサギの糞のような便が特徴で、下痢と便秘を繰り返すことも多い。「過敏性腸症候群」とも。
生活リズムを整え、リラックスできる時間をとることが第一。
運動は自律神経を整える効果のある腹式呼吸がおすすめ。

年をとるとなりやすい?!「直腸膣壁弛緩」
力んでも出てこない、肛門の出口で便が引っ掛かっている感じがする…こうした症状がでるのが直腸ヘルニアの一種の「直腸膣壁弛緩」です。
直腸と膣壁の間がポケット状になっているところに便が入り込んでしまっている状態で、筋肉のゆるみなどが原因とされ、産後の中年女性に多いといわれています。

食事内容や生活を変えてもなかなか改善しない場合は医療機関を受診しましょう。

残便感とおなら・頻便の関係

残便感とおなら・頻便の関係

おならや頻便などが伴う残便感を感じる人の中には、「過敏性腸症候群(=IBS)」という病気の可能性もあるかもしれません。

<過敏性腸症候群の主な症状>
・便秘
・下痢
・便秘と下痢の繰り返し
・下腹部の痛み
・お腹の張り
・残便感

詳しい原因は明らかになっていませんが、現段階ではストレスや自立神経の乱れが原因で腸の収縮活動に影響を与えているためとされています。

こうした腸内環境はガスを溜めこむためおならが出やすくなったり、臭いがきつくなったりするそう。
また、残便感があるため、頻便の要因にもなります。

もし残便感と共におならや頻便が気になるという場合は、腸内環境の乱れによる過敏性腸症候群の疑いも視野にいれて、腸のケアをしてみるのが良いかもしれません。
それでも症状が改善されない場合は病院を受診してください。

おならや頻便の改善策は?

普段運動をしていない人は、自立神経が乱れてストレスを感じやすい場合が多いといわれています。
ストレスは過敏性腸症候群の大きな原因とされているため、体を動かして自立神経を整えることがおならや頻便の改善に繋がります。

また、食生活の乱れもおならや頻便の原因のひとつです。食生活の改善と合わせて薬やサプリメントなどで善玉菌を活発にし、腸内環境を整えることがおならや頻便の改善に繋がります。

腸内環境を整えて便秘の改善に

腸内環境を改善して残便感ゼロの身体に

さて、便秘のタイプ別に改善策をご紹介しましたが、ここからはどんな便秘タイプの方にとっても重要な「腸内環境を整える」ための重要ポイントをご紹介します。

腸内環境を整える生活習慣

生活習慣

腸のためには一日三食しっかり食べることが大切です。
食事は腸への刺激になり、スムーズな動きを促進します。特に朝食は大切だといわれていますので、しっかり食べましょう。

また、交感神経と副交感神経をうまくON、OFFすることで、腸のぜん動運動の調子を整えることができると言われています。
食事はよく噛んで食べる、シャワーではなくお風呂に入ってゆっくり入浴する、寝る直前はテレビやスマホ、パソコンを見ずにゆっくり過ごすなどといったことに気を付け、日ごろから自律神経のバランスと腸のはたらきを整えましょう。

腸内環境を整える食事

食事

腸内には無数の細菌が棲んでいます。
そのうち人の身体に有益なはたらきをするものが善玉菌、有害なはたらきをするものが悪玉菌と呼ばれ、両者は縄張り争いをしながらバランスをとっています。

善玉菌は腸のはたらきを支え、便通を改善するほか、免疫力を高めたり、高血圧や高血糖を改善したり、肥満やアレルギーを改善したりと全身の健康に関わるとても大切な存在。

善玉菌そのものや善玉菌のエサになるものをたくさん摂り、腸内細菌のバランスを整えていきましょう。

<善玉菌を増やすといわれている食品など>
食物繊維 ごぼう、にんじん、かぼちゃ、さつまいも、アボカド、長いも、オクラ、大豆、りんご、わかめ
オリゴ糖 オリゴ糖シロップ
発酵食品 ヨーグルト、ケフィア、ぬか漬け、たくあん、キムチ、納豆

残便感を改善する薬やサプリメント

サプリメント

便秘というと「市販の便秘薬を飲めばいいのでは?」と思われる方も多いかもしれませんが、市販の便秘薬の中には下剤のように腸に刺激を与えて排便を促すものも存在します。
腸に刺激を与えるタイプの薬は即効性が高いのですが、漫然と長期間使用し続けると腸が薬に依存し、薬がないと便意を感じない身体になってしまうことも。
病院で処方されたものを医師の管理の元使うのは構いませんが、自己判断で使用するのはあまりおすすめできません。

「食事で食物繊維や発酵食品を摂るのが難しい」という場合は、乳酸菌サプリメントなどを摂るのがおすすめ。
副作用もなく、妊娠中の方やお子さんでも安心して摂ることができます。
即効性はありませんが、2週間程度継続して摂取することで効果が表れてくるといわれています。

植物由来の乳酸菌パウダー

乳酸菌の種類と効果

乳酸菌の種類と効果
私たちの体を守ってくれる免疫機能が集中している「腸」。
整腸作用の他にも、乳酸菌にはさまざまな効果を発揮することがわかってきました。
今回は、乳酸菌に期待できる効果について詳しく紹介していきます。
乳酸菌の種類と効果の記事を見る

乳酸菌の上手な摂取法とは?「大腸の専門医」後藤利夫先生に聞きました。

乳酸菌の上手な摂取法とは?「大腸の専門医」後藤利夫先生に聞きました。
腸内環境が悪化するとどんな悪影響があるのか、改善するにはどうしたらいいか。
普段見ることが出来ない自分のお腹の中でどんなことが起こっているのか?
乳酸菌サプリの効果なども詳しく解説していきます!
「大腸の専門医」後藤利夫先生についての記事を見る

残便感についてのQ&A

残便感の他に残尿感があるのですが…。
子宮筋腫など、膀胱や直腸を圧迫する病気が隠れている可能性があるようです。
医療機関を受診してください。
妊婦になってから残便感に悩まされています。
妊娠中は、ホルモンと大きくなるお腹の影響で便秘になりやすいといわれています。
その他の症状がない場合は適度な運動と食事、善玉菌の摂取などをおすすめします。
年をとってから残便感を感じるようになってきた気がします。
年とともに排便に必要な筋肉が衰え、便秘になりやすくなるといわれています。
また、年齢を重ねると腸内のビフィズス菌が減り、腸内環境も悪化しやすいようです。
便秘による残便感は薬では治せないのでしょうか?
市販の便秘薬の中には、長期間の使用で依存症になりやすい腸に刺激を与えるタイプのものも存在します。
薬は医師の管理の元で使うのがよいでしょう。
便は毎日出ていますが、残便感があります。これは便秘なのでしょうか?
排便の頻度よりもスッキリと出ているかどうかが問題です。
腸の病気や痔でないことが確認できた場合は「かくれ便秘」の可能性も。

参考文献
・小林弘幸『読む便秘外来』(集英社)
・『腸スッキリバイブル』(日経BP社)

腸内環境を整える商品



●監修医師からのコメント

便秘の診断では、強くいきむ、兎糞状、残便感、排便困難感、排便が週3回未満などの項目が含まれており、 残便感というと一番に便秘が思い浮かびます。大腸癌や潰瘍性大腸炎など腸の病気があると便秘の原因になりますが、多くは腸自体に病気はありません。
便は身体の中のいらないものを出す大切な生理現象であり、便秘が続くと老廃物が出せないために体にも不調があらわれてしまいます。健康状態、生活習慣、腸内環境のみだれが便秘の原因にもなりますが、便秘が腸内環境を乱し、体調もわるくさせてしまい悪循環をおよぼしてしまうのです。
食生活の改善で残便感の解消がえられない場合には薬を使うこともありますが、食事内容を見直す(食物線維を1日18~20g、発酵食品など)ことで症状の大半は改善します。便秘、残便感に悩まれているかたは、食事、そのほか充分な睡眠や過度なストレスの解消など、症状に固執することなく、体調を整えることを考えてみてください。

木村 眞樹子医師

◎木村 眞樹子医師

都内大学病院で内科、循環器科として臨床に従事。
産業医として企業に健康経営へも携わっている。
プライベートでは3児の母。
臨床で患者をみたり、産業医で医療機関にはこないをひとをみるなかで、普段の生活から健康をつくる、維持することの大切さを痛感する。
出産、子育てを機に食事が身体を作るという思いを強くし、食べるものを大きく見直し。
「医食同源」の言葉をむねに、病院にかからないためのセルフケア、病院できけないことなどわかりやすく伝えるべく活動している。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

この記事をシェアする

この記事を書いた人

商品ページ・コンテンツ担当。趣味は手作りアクセサリー作り。
猫と二人暮らし。庭に来る黒い野良猫をどう追い払おうか思案中。