【包丁を学ぶ・番外編】包丁の研ぎ方|砥石を使って簡単に研ぐコツを伝授
包丁についてのお役立ち情報を皆様にご紹介する、
シリーズ記事「包丁を学ぶ」。
番外編の第2弾は、家庭でどなたでもできる包丁の研ぎ方です。
毎日の料理に欠かせない包丁ですが、使っていくうちに、
封を開けたときのような鋭い切れ味はだんだんと落ちていくもの。
そこで、切れ味が悪くなってきたな…と感じたら、研いでみましょう。
研ぐと包丁の切れ味がぐんと良くなり、
食材の味や食感などにも影響するのが実感できると思います。
包丁、ナイフなどの刃物を研いだことがない、という方でも大丈夫!
砥石さえ準備できれば、手軽に始められます。
ぜひ一度チャレンジしてみてください。
Contents List/目次
まずは包丁の材質の確認から! 鋼/ステンレス/セラミック
包丁にはさまざまな種類がありますが、それぞれ材質が異なります。
包丁にどんな素材が使われているかによって
その性質は大きく異なり、お手入れの方法もかわってきます。
材質によっては、今回ご紹介する研ぎ方で研ぐことができないものもあります。
そこで、まず初めに、お手元の包丁がどんな材質でできているかを確認し、
研ぎやすさを比較してみましょう。
鋼(はがね)(炭素鋼)
研ぎやすさ:◎
![鋼の包丁](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_15.jpg)
鋼は、鉄を主成分とし、炭素やケイ素、マンガンなどが含まれた硬い金属のこと。
包丁に使われるのは、一般的に炭素が多く入っている炭素鋼です。
「焼き入れ」といって熱を加えることによって一気に硬度を上げ、
純度100%の鉄よりも硬くできるので、包丁づくりには適しているとされています。
包丁用の鋼は、「安来鋼(ヤスキハガネ)」と呼ばれる素材が有名で、
青紙鋼、白紙鋼などの種類があります。
鋼の包丁は切れ味の鋭さが最大の特長ですが、一方で、錆びやすいという欠点も。
炭素が錆に弱いという性質があるため、定期的なお手入れを行わないで
放っておくと錆びてしまいます。
しかし、砥石で研ぐということにかけては、随一!
鋼の包丁は一般的にステンレスの包丁に比べて研ぎやすいため、
研ぐ時間を惜しまない方、手入れしながら長く使いたい方にはおすすめです。
ステンレス
研ぎやすさ:○
![ステンレスの包丁](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_16.jpg)
実はステンレスは、鋼と同じ金属。鉄が主成分なのは一緒ですが、
炭素やクロムといった成分の含有量に応じて両者は分類されます。
ステンレスは炭素の量が少なく、錆びにくいクロムが多く含まれているため、
耐久性に優れ、錆びにくいというのが最大の特長です。
全く錆びないわけではありませんが、鋼とは比べ物になりません。
ただし、ステンレスは錆びない反面、切れ味は鋼に劣ります。
研ぎやすさという面でも、砥石で研ぐことはできますが、炭素鋼には及びません。
しかし、近年はステンレスに少量の炭素を加えるなどの工夫が凝らされ、
硬度と粘り強さを持ち、研ぎやすくなったステンレス包丁も多く登場。
ステンレスにモリブデンを加えた「モリブデン鋼」などがその代表です。
セラミック
研ぎやすさ:×(砥石でのお手入れは禁止)
![ステンレスの包丁](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_17.jpg)
非金属のジリコニアセラミックという素材でつくられたもの。
強度が高く、熱に強い、さらに軽量なのが特長です。
金属ではないので錆びることがなく、切れ味が長く保ちやすいのですが、
一方で、硬くしなやかさに欠ける素材のため、割れたり欠けたりなど
刃こぼれをしやすいという側面もあります。
そして、このセラミックの包丁は通常の砥石で研ぐことができません。
「ダイヤモンドシャープナー」「セラミックシャープナー」などの
専用のシャープナーや研ぎ器で研ぐ必要があり、
家庭でお手入れするにはなかなか難しいのが現状です。
また、最近は子供でも安全に使えるよう、樹脂やゴム製タイプの包丁も
販売されていますが、こちらも砥石で研ぐことはできません。
包丁の種類(刃)をチェックしよう 両刃/片刃
包丁の刃には、用途に応じて「両刃」と「片刃」の2種類があります。
この2つの包丁は研ぎ方が少し異なりますので、刃の種類についても事前に
チェックしておきましょう。
両刃
刃の断面が左右対称でV字型になっているのが「両刃」です。
両刃の包丁は、主に西洋料理で使われる「洋包丁」やナイフに多く見られます。
洋包丁は、もともとは肉を切ることを目的に作られ、欧米を中心に発達してきました。
切り方は「押し切り」がメイン。
包丁の重さを利用し、包丁を前方へ押しながら、刃先から刃元へ向かって
力を入れて切ります。
この方法で切ると、硬い食材でもザクッと簡単に切ることができます。
![両刃包丁](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_04.jpg)
「牛刀」や「筋引き」「肉切り包丁」など、肉類の切断に適した包丁が多い一方で、
小さめサイズの「ペティナイフ」や「パン切り包丁」など、
野菜や果物、パンなどのスライスや皮むきに用いられる包丁も揃っています。
また、食材や用途に関わらず使えるものも。
「三徳包丁」は、使い方が便利な包丁で、日本の家庭でよく使われ、
万能包丁とも呼ばれています。
片刃
片刃は、裏が平面で、表側のみ斜めの砥ぎ面となっており、
横から刃先をみると、断面が「レ」の文字のようになっています。
主に日本料理で使われる「和包丁」が、この片刃にあたります。
片刃は両刃に比べ、食材を切った際に刃から離れやすく、
刻む、剥くなどの動作が素早くでき、より繊細な調理に適しています。
切り方は「引き切り」がメイン。
刃全体を使い、すべらせながらスーッと引いて切ります。
![片刃包丁](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_05.jpg)
片刃の包丁は、魚などを捌く際に用いる「出刃包丁」や
刺身づくりに適した「刺身包丁」、野菜の調理に使う「菜切り包丁」や
「薄刃包丁」など。
美しく仕上げるために繊細な切り方を求め、食材や用途に応じて
使い分けられるよう、さまざまな種類の包丁が用意されています。
お次は砥石の準備! 砥石の種類をご紹介 おすすめの砥石は?
包丁を研ぐのに欠かせないのが、砥石です。
砥石には「人造砥石」と「天然砥石」があります。
前者は広く流通しているのに比べ、自然の岩層などから発掘される後者は
現在採掘が積極的に行われていないこともあり、大変希少。
そのため高価で、本職の料理人の方が使うことはありますが、
ご家庭で研ぐ際には人造砥石で十分だといえます。
![包丁のお手入れ方法](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_12.jpg)
人造砥石は、ホームセンターやスーパーなどで購入することができます。
砥石の粒度(目)は「#(メッシュ)」で示されます。
1センチ四方に砥石の粒がいくつ含まれるかを表す単位で、
100個なら100#となります。
通常70~30000#までの粒度の砥石が用意されています。
砥石には大きく分けて3種類あり、目の細かい砥石を使うほど、
よく切れるようになります。
荒砥(~600#)
最も目が粗い。
研磨力が強いので、刃先が減りやすいという特徴があります。
包丁を使用していて、刃先が欠けてしまったり、
大きな刃こぼれが発生した場合などに、刃先を整えるために使用することが多い砥石。
日常的な使用にはあまりおススメできません。
中砥(600~2000#)
目の粗さは中程度。
一般的に家庭での研ぎに使われる砥石。
切れ味が落ちてきた際に使うほか、刃先の修正などで荒砥を使った後に
その傷消しとしても使用します。
仕上げ砥(2000#~)
目が最も細かく、滑らか。
主に研磨用として使います。
中砥で研いだあと、切れ味の最後の調整に使うことが多いです。
より切れ味鋭く、長く保ちたい場合は、この仕上げ砥(仕上げ砥石)を利用するとよいでしょう。
![包丁のお手入れ方法](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_33.jpg)
どれを使ったらよい?
上記のように、砥石には種類がありますが、
砥石選びで迷ってしまったら、「中砥」の砥石をお選びいただくと
問題なくご家庭での包丁研ぎにお使いいただけると思います。
人造の砥石であれば、比較的値段も安く手に入りますので、ぜひお求めください。
さらに、より一層切れ味鋭く綺麗に仕上げたいという方は、
仕上げ用に「仕上げ砥」を用意するとよいでしょう。
いよいよ研ぎ本番! 両刃/片刃別、包丁の研ぎ方
砥石が用意できたら、早速包丁を研いでみましょう。
難しいことはなく、手順を踏んでゆっくりと進めていけば、
どなたでも簡単に研ぐことができます。
![包丁のお手入れ方法](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_32.jpg)
研ぐ前に
まず最初に、砥石の準備から始めます。
・砥石を20分程度水に浸けておきます。
砥石に水分を含ませることによって、包丁の滑りを良くします。
ただし、天然砥石をお使いの際は、砥石に水を流す程度で使用してください。
(長時間水に浸けると割れやすくなるため)
・濡らした布巾などを敷き、その上に砥石をのせます。
研石台や研ぎ台などを使う場合は、そのまま台の上に研石をのせてお使いください。
![包丁のお手入れ方法](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_31.jpg)
研ぐ
砥石がしっかり水を含んだら、準備万端。
実際に研いでいきましょう。
包丁が両刃か片刃かによって、研ぎ方が少し異なります。
両方に共通の研ぎ方から、それぞれの研ぎ方までご紹介します。
両刃/片刃 共通
・刃を自分の方に向けて、砥石に対して45度くらい斜めの位置に包丁を置きます。
・刃先を砥石に付け、持ち手でしっかりと柄を握り、
反対の手の親指、人差し指、中指を刃先の上に添えます。
・砥石の上を前後に刃を滑らせるように動かしながら、研ぎます。
この際、押すときに力を入れ、引くときに力を抜くように研ぐとよいでしょう。
・包丁の長い刃を一度に全て研ぐことはできないので、刃先から刃元まで、
何回かに分けて順番に研いでいきます。
![包丁のお手入れ方法](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_30.jpg)
・何度も砥石の上を刃を往復させて研いでいくと、
「カエリ」と呼ばれる細かい金属のかす・バリが刃先に残ります。
最後にこのカエリを取り除きます。
カエリを取るには、新聞紙を敷き、その上で包丁の裏表両面をこすります。
新聞紙を筒状に丸め、それを包丁の刃先全体を使って引きながら
切るようにしていっても取ることができます。
両刃包丁(主に洋包丁)
・刃先を砥石にあて、峰の部分(刃先の反対側)を少し浮かせた状態で研ぎます。
刃を砥石にあてる角度は約15度(硬貨2枚分ほどの高さ)が目安です。
・両刃のため、裏も表と同じように研ぎます。
裏を研ぐ際には、刃先が外側に向くようにして、表と逆の研ぎ方で。
(引くときに力を込め、押すときに抜く)。
片刃包丁(主に和包丁)
・片刃は両刃と異なり、峰の部分を浮かせずに、
刃を砥石にぴったりとあてて研いでいきます。
・片刃の場合、裏は表の一割程度の回数で研ぎます。
研ぎ方は表の逆。刃先は外側に向け、引く際に力を入れ、押す際に力を抜きます。
![包丁のお手入れ方法](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_13.jpg)
上手に研ぐために 研ぎ方のちょっとしたコツ
部分的に研ぐ
包丁は、一度に全体を研ぐよりも、何度かに分けて部分的に研ぐとよいでしょう。
例えば、刃の先端→刃の中心→刃元と上から下に順番に研いでいくと、
研ぎ残しなく包丁全体を綺麗に研ぐことができます。
水を切らさずに
研いでいる最中に水気が無くなった場合は、
滑りが悪くなってしまうため、砥石に水を軽くかけながら研ぐとスムーズに研げます。
「研ぎ汁」は流さないで!
研いでいる最中に出る研ぎ汁には、砥石の微細な粉末が含まれます。
この粉末がきめ細かな刃先づくりに役立ってくれるため、洗い流さないようにしましょう。
最後はよく洗い、乾燥させる
全て研ぎ終わったら、包丁を綺麗な水でよく洗いましょう。
最後に高めの温度でお湯をかけると、殺菌・抗菌作用があります。
洗ったあとは、乾いた布でしっかり水分をふき取ります。
砥石がへこんできたら、面直しを
包丁を何度も研ぐと、通常砥石は中央がへこみ、くぼんできます。
表面が平らでない砥石を使うと、上手く研ぐことができないので、
砥石自体の修繕をおすすめします。
面直し用の砥石(面直し砥石)を使うと砥石を平らに削ることができます。
何度も研いで、基本を身に付ける!
一番大切なのは、何度も自分で研いでみて、研ぎ方の基本を身に付けること。
毎日使う包丁は刃がどんどん摩耗していきます。
常に切れ味良くお使いいただくために、少なくとも2か月に一度程度は
庖丁を研ぐことをおすすめします。
豆知識/砥石とシャープナーの違いって?
砥石を使った包丁の研ぎ方をご紹介してきましたが、
そもそももっと簡単に、一般に販売されている「研ぎ器(シャープナー)」を使って
研いではいけないの? と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
![砥石とシャープナーの違い](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_34.jpg)
実は、砥石とシャープナーでは全く研ぎ具合が異なります。
シャープナーは交差式、回転式や電動式など種類がありますが、
通常本体に刻まれた溝に包丁の刃を差し込み、上下に動かして使います。
ただこれは「研ぐ」というより、刃先をこすってギザギザの傷を付けているだけ。
削っているわけではないんです。
ただ、付いた傷により食材への当たりは一時的に鋭くなるため、
研いだ後は切れ味が復活したように感じますが、
またすぐに切れにくくなってしまいます。
シャープナーのみでお手入れしていると、この傷が無数に付くことで刃が痛み、
次第に刃先の強度が落ち、刃こぼれや刃身本体の割れの原因になることも。
![砥石とシャープナーの違い](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_35.jpg)
一方、砥石は刃を石に当てて「削って」いく作業です。
「こする」だけのシャープナーとは元々の仕様が異なり、刃先をよく研磨できます。
一度砥石でしっかり研いだ包丁は、切れ味が長く続きます。
普段時間がないからシャープナーを使いたい!という方でも、
たまに砥石を使って研ぎ、刃先を綺麗な状態に研磨してあげるのがおすすめ!
軽快な切れ味で毎日ストレスなく使えるだけでなく、
大切な包丁がぐっと長持ちしますよ。
![包丁のお手入れ方法](/contents/wp-content/uploads/images/houchou_36.jpg)
以上、包丁のお手入れ方法、砥石での研ぎ方をご紹介しました。
「包丁がよく切れる」。たったそれだけのことでも
日々の料理は楽しくなるものですよね。
料理の相棒ともいえる大切な一本の包丁。
ぜひご自分で研ぎながら、長くご愛用いただけたらと思います。
以前掲載した「包丁を学ぶ」全4回の記事は、
下のリンクから読むことができます。
もし宜しければこちらもご覧ください!