玄米のデメリット・噂の真相|雑穀米・発芽玄米にも共通の注意点

玄米には豊富な栄養が含まれ、ダイエットにも向いているとして人気があります。しかし、毒性があるという噂もあり、デメリット面が気になって購入を迷っている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、玄米の危険性に関する噂の真偽とリアルなデメリットを解説します。デメリットを回避する食べ方や合わないおかずも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
玄米の危険性にまつわる噂

玄米にはヒ素がある、毒性があるという危険性にまつわる噂があります。真偽のほどを確認してみましょう。
玄米にはヒ素が多いから危険?
玄米にはヒ素が含まれているため危険という説があります。たしかに、白米と比べてヒ素の含有量が多い傾向にあることは事実です。農林水産省が公開している「食品に含まれるヒ素の実態調査」のデータを見てみましょう。
【無機ヒ素の平均値(mg/kg)】
調査年度/品目 | 玄米 | 精米(白米) |
---|---|---|
2017 | 0.15 | 0.092 |
2018 | 0.15 | 0.098 |
このように、玄米のヒ素量の方が若干多いことがわかります。しかし、この量は気にするような量ではありません。海藻類のヒ素量と比較すれば、実感を持てるでしょう。
【無機ヒ素の平均値(mg/kg)】
品目 | 玄米 (2017) | ひじき 乾物 (2006~2008) | わかめ 乾物 (2006~2008) |
---|---|---|---|
無機ヒ素の平均値 | 0.15 | 93 | 33 |
1kgあたりの無機ヒ素の含有量が玄米よりも600倍以上多いひじきでも、通常の摂取量であれば問題ありません。食品安全委員会では、次のような見解を示しています。
食品安全委員会は、日本人が食品を通じて摂取するヒ素に関して、「日本において、食品を通じて摂取したヒ素による明らかな健康影響は認められておらず、ヒ素について食品からの摂取の現状に問題があるとは考えていない」、また、「特定の食品に偏らずバランスの良い食生活を心がけることが重要」としています。
農林水産省「食品に含まれるヒ素の実態調査」
バランスの良い食事をすれば無害化できるというわけではありませんが、ヒ素を気にするあまり、偏った食事をする方が健康に良くないというのが結論です。なお、無機ヒ素は水溶性なので、水洗いや水戻しをすれば低減できます。
玄米には毒があるって本当?

玄米に含まれるフィチン酸とアブシジン酸に毒性・有害性があるという噂があります。しかし、これも結論からいえば気にする必要はありません。
フィチン酸とは
フィチン酸は二価以上の金属イオンと強く結合する(キレート作用)六リン酸エステルです。金属の酸化を防ぐ強力な抗酸化作用をもっているため、食品の変色防止や酸化防止剤としても使われます。
フィチン酸が有害という噂は、食品添加物としてのイメージからくるものと推察されますが、事実ではありません。
たしかに、金属と結合するため体に必要なミネラル(鉄・銅・亜鉛など)とも結合し、吸収を阻害する可能性はあります。ミネラル不足を感じやすい人には不向きな側面があるでしょう。
しかし、近年ではフィチン酸のデメリット面よりも強い抗酸化作用が注目されています。がん予防や尿中カルシウム濃度の調整(尿路結石予防)のために、積極的に摂取するためのサプリメントまで販売されているのが実情です。フィチン酸を気にする必要はありません。
アブシジン酸(ABA)とは
アブシジン酸(アブシシン酸、ABA)は、植物がストレスのある環境下を耐え抜くために蓄積する植物ホルモンです。発芽しても育たない環境下では発芽を抑制させるなど、植物にとって重要な役割を果たしています。
発芽を抑制するために、ミトコンドリアの過酸化水素を増加させるという仕組みがマイナスイメージとなり、ミトコンドリアを傷つけるという噂に発展したようです。
あるいは、人為的にアブシジン酸を過剰発現させると葉が老化するという研究結果から、老化につながるというイメージがもたれた可能性もあります。
しかし、人体への健康被害につながるという医学的根拠はありません。玄米に限らず穀物を中心にさまざまな植物が生み出すホルモンなので、気にすることなくバランスの良い食事を心掛けましょう。
玄米の残留農薬が危険?
玄米には外皮と農薬が染み込みやすい油分が残されているので、残留農薬が多いから危険という噂もあります。しかし、日本で栽培されている玄米については気にする必要はありません。日本国内においては残留農薬の安全基準が設けられているからです。
また、安全性をより重視したい人は有機栽培(JAS規格)や化学合成農薬不使用という記載のある玄米を選ぶ選択肢もあります。「玄米=残留農薬あり」ということではないので、商品を選ぶことで対応しましょう。
玄米のデメリット

ヒ素や毒性に関しては医学的根拠のない噂レベルだとわかりましたが、デメリットがないわけではありません。ここで、あらためて玄米のデメリットを解説します。
消化に時間がかかる
玄米の消化には時間がかかるため、就寝直前の摂取や食べ過ぎには注意が必要です。
玄米は白米とは違い、外皮が残された状態です。外皮は食物繊維が豊富で、食物繊維は消化吸収されるものではありません。だからこそ、有害物質を吸着したり便のカサを増して排便を促すなどの効果があります。
しかし、食べ過ぎるとお腹が張ったり、圧迫感からくる痛みが出たりすることがあるため注意しましょう。また、消化器官が未発達の子どもや老化や不調などにより食物繊維を排出するための腸の動きが低下している人は、少量でも消化不良を起こすことがあります。
浸水に時間がかかる
浸水時間が不十分だと外皮の強さが残り、食べづらく消化しにくいため、白米よりも浸水時間を必要とします。食べやすい食感にするためには、12時間程度の浸水がおすすめです。甘みも増し、おいしく食べられるようになります。
また、十分に吸水させると玄米が発芽の準備段階に入ります。この「前発芽玄米」には、糖尿病や高血糖、脂質異常症の改善効果があるとする報告があるため、試してみましょう。
なお、完全に発芽させるためには24時間程度の浸水時間が必要です。水温が低いとさらに時間がかかります。しかし、夏場に常温で浸水させると腐敗するリスクもあるため、管理には注意が必要です。詳しく知りたい人は次の記事をご覧ください。

味が合わない人や合わないおかずもある
玄米は白米よりも味が濃く香りも強いため、口に合わない人もいます。また、おかずが玄米の風味と喧嘩してしまうことで、おいしく感じられないこともあります。
玄米の味を引き立てつつ喧嘩しないおかずは、日本食をはじめとするあっさりした味のおかずです。また、発酵食品とも相性が良いため、納豆や味噌汁などとよく合います。
逆に、玄米の味が苦手でも食べたい人には、コクと旨味が強い料理がおすすめです。ただし、その中にも喧嘩する味の料理があります。おかずに迷ったときは次の表を参考にしてください。
合うおかず | 味が喧嘩しやすいおかず |
---|---|
焼き魚 | 牛肉のレアステーキ |
納豆 | 刺身 |
ぬか漬け | |
味噌汁 | |
カレー | |
ひじきの煮物 | |
かぼちゃの煮つけ | |
豚の生姜焼き |
生の食材とは相性が悪い傾向にあります。玄米の風味が強すぎて、生ならではの繊細な旨味を消してしまう可能性があるからです。
また、野菜はサラダよりも煮物にすることをおすすめします。玄米とサラダを組み合わせると咀嚼回数が増えてしまい、疲労感からおいしく感じられないことがあるからです。
噂は気にせず玄米をよく噛んで食べよう

玄米のヒ素や毒性の危険性に関する噂には、医学的根拠がないことがわかりました。気にせずに食べて問題ありません。
しかし、消化しにくいことや浸水時間が長くかかることなど、デメリットはあります。消化器官が未発達の幼い子どもや腸の動きが低下している人には向かない場合があるため、注意が必要です。
健康な成人であっても、12時間以上浸水させ、しっかり噛んで食べることを心掛けましょう。また、玄米は栄養豊富ですが玄米だけで1日に必要な栄養成分をカバーできるわけではありません。バランスの良い食事をすることも大切です。
参考資料
農林水産省「食品に含まれるヒ素の実態調査」
農林水産省「ヒジキに含まれるヒ素の低減に向けた取組」
農林水産省「食品中のヒ素に関する基礎情報」
日本食品分析センター「フィチン酸について」
公益財団法人 日本食品化学研究振興財団「調査研究報告書 既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究」
美味技術学会誌「「米」利用による機能的加工食の展開」
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構「(研究成果) 植物ホルモン「アブシジン酸」が働くための新たな仕組みを発見」
食品安全委員会「米国環境保護庁(EPA)、植物調節剤、S-アブシジン酸の残留基準値設定免除に関する規則改定」
食品安全委員会「対象外物質評価書 アブシシン酸」
東京農工大学「植物ホルモン「アブシジン酸」が植物の葉を老化させる仕組みを解明」