サルコペニア肥満とは?たんぱく質が摂れる食事を心掛けよう
サルコペニアは2016年に国際疾病分類に登録された疾患で、骨格筋量の低下に伴って筋力・身体機能が低下した状態を指します。筋力や身体機能の低下によって脂肪が蓄積し、肥満になった状態がサルコペニア肥満です。
この記事では、サルコペニア肥満の基準と予防のための生活習慣、おすすめの食材を詳しく解説します。サルコペニアは加齢とともにリスクが高まる疾患であるため、できる限り早期に対処をはじめることが重要です。後半ではフレイルとの違いも解説します。
サルコペニア肥満の基準と注意が必要な年齢
サルコペニアおよびサルコペニア肥満は加齢によってリスクが高まる疾患ですが、年齢を問わず注意しておくことが大切です。将来への備えのためにも詳しく把握しておきましょう。
サルコペニア肥満の基準
加齢による骨格筋量の低下が要因のサルコペニア肥満は、次の数値のときに可能性が高いといわれています。
- 筋肉量:男性27.3%未満、女性22%未満
- BMI:25以上
BMIは「体重kg ÷ (身長m)2」で求められます。体重60kg、身長160cmの場合のBMIは23.4です。日本肥満学会の判定基準では25を超えると肥満に分類されます。
BMI25以上の肥満であることに加えて、加齢によって筋肉量が上記の数値を下回るほど低下していると、サルコペニア肥満の可能性が高いといえます。
サルコペニアの診断方法
単純な肥満なのかサルコペニア肥満なのかを診断するためには、次の3つの診断結果をもとにサルコペニアか否かを判断する必要があります。
- 骨格筋量
- 筋力の低下(握力)
- 身体能力の低下(歩行速度、バランステスト、5回椅子立ち上がり)
これらの診断で筋量の低下および筋力または身体能力の低下のいずれかがみられると、サルコペニアと診断されます。
サルコペニアに注意が必要な年齢
最も注意が必要なのは60歳以降です。骨格筋量は20~30歳をピークに減少していき、20~70歳の50年間で減少する骨格筋量は40%とされています。60歳未満までは年間0.5%程度の減少ですが、60歳以降は減少速度が早く、年間で1.4~2.5%が減少します。
ただし、上記はあくまでも平均値であり、減少の仕方には個人差があるため注意が必要です。加齢によって骨格筋量が大きく減少するタイプの場合は周囲の人・家族と同じような生活をしていても、サルコペニアの症状が顕著な可能性があります。
サルコペニアが関連する症状・疾患
サルコペニアは次のような症状・疾患に関係しています。
- 認知症
- 糖尿病
- 骨粗しょう症
- 心不全
- 転倒・骨折
- 排尿障害
- 脱水・熱中症
- 摂食・嚥下障害
上記のような症状・疾患があると活動量が低下したり、筋力が減少したりするためサルコペニアの原因となり得ます。逆に、サルコペニアによる筋量の減少やインスリン抵抗性の減少、酸化ストレスの増加などによって上記の症状を招くリスクもあります。相互に関係しているため、まずは日々のちょっとした工夫で改善しやすいサルコペニアに対処してみましょう。
サルコペニア予防のための生活習慣
サルコペニア予防のためには筋肉を増量・強化が重要です。意外な生活習慣が影響することがあるため、ここでチェックしておきましょう。なお、摂取したい栄養については次で詳しく解説します。
定期的な運動で骨格筋量を維持する
サルコペニア予防に有効な運動は、レジスタンス運動と有酸素運動です。
レジスタンス運動は筋肉に抵抗をかける運動のことで、スクワット・腕立て伏せ・ダンベル体操などが代表的です。姿勢によっては腰に負担がかかることもあるため、負荷を減らした方法もおぼえておきましょう。両足を開いて立ち、手を頭に置いて椅子にゆっくり座るスクワットなどがあります。
サルコペニア軽症の場合には週2~3回、中等症は週1回のレジスタンス運動がおすすめです。ただし、重症の場合はロコモトレーニングが推奨されています。ロコモトレーニングとはバランス能力と下肢の筋肉を鍛える運動のことで、片脚立ちや踵を上げるだけのヒールレイズなどがあります。
有酸素運動はウォーキング、ジョギング、エアロビクス、サイクリング、水泳などを指します。まずは10分歩行から始めましょう。徐々に増やしていき、1日8,000歩を目標とするのがおすすめです。
オーラルケアを重視する
オーラルケアはサルコペニア予防の意外なポイントです。歯が減ったり顎の力が弱くなったりすると、食事の内容が偏ることで筋肉に必要な栄養を摂りづらくなります。また、口臭などの問題で外出をためらうようになれば、運動量も低下します。次のような対策を心掛けましょう。
- しっかり歯磨き
- 歯間ブラシを使う
- マウスウォッシュを使う
- 半年に1回は歯科医院で検診
- 口の体操をする
歯ブラシによる歯磨きだけでは歯間の汚れがとりづらいため、虫歯リスクが上がります。歯間ブラシやマウスウォッシュが有効です。半年に1度は歯科医院で検診を受け、同時にプラーク除去などのお掃除もしてもらいましょう。
口周りの筋肉を鍛えるための体操も大切です。口の筋肉を意識しながら「うー」「いー」と発声する、舌の筋肉を意識して上下左右に舌を出す、「パ」「タ」「カ」と唇・舌・喉を使う発音を連続しておこなうなどがあります。
サルコペニア予防にはたんぱく質の摂取が重要
筋肉の増量・強化にはたんぱく質が欠かせません。たんぱく質の利用効率を高める栄養と合わせて解説します。
たんぱく質は筋肉に必要
たんぱく質の摂取量が少ないグループと多いグループで3年間の骨格筋量を調べた観測では、少ないグループの方がサルコペニアになる人が多いという結果が出ています。
1kgの食事のなかで1.0~1.2gのたんぱく質を摂れるバランスにすることが大切です。1日3食でできる限り均等に摂取することが理想といえます。また、運動後1時間以内にたんぱく質を摂取すると筋肉がつきやすくなります。
なお、すでにサルコペニアになっている場合には、1kgの食事あたり1.2~1.5gのたんぱく質の摂取が必要です。ただし、重症CKD(慢性腎臓病)を除きます。
ビタミンDも合わせて摂る
ビタミンDは筋タンパク代謝に必要なので、たんぱく質と同時に摂りたい栄養です。とくに、握力の低下にはビタミンDの不足が大きく関係しています。
1日に必要なビタミンDの量は10μg以上、魚の切り身1切れを食べれば十分に摂取できる量ですが、毎日の食事で取り入れることが重要といえます。次のおすすめの食材を参考にしながら、食事の栄養バランスを検討しましょう。
サルコペニア予防におすすめの食材
たんぱく質・ビタミンDを多く含む食材をご紹介します。
たんぱく質
食材名 | 1食あたりの量 | たんぱく質含有量(約) |
木綿豆腐 | 1/3丁(100g) | 7g |
絹ごし豆腐 | 1/3丁(100g) | 5g |
納豆 | 1パック(35g) | 6g |
厚揚げ | 1枚(240g) | 18g |
大豆 | 煮豆で50g | 7g |
卵 | 1個(50g) | 6g |
白身・青魚 | 1切れ(80g) | 16g |
赤身魚(マグロなど) | 1切れ(80g) | 18g |
牛・豚もも肉 | 80g | 17g |
鶏もも肉 | 80g | 15g |
鶏胸・ささみ肉 | 80g | 18g |
チーズ | 1個(18g) | 4g |
ヨーグルト | 小1パック(80g) | 3g |
牛乳 | 1杯(180ml) | 6g |
毎日の食事にプラスしやすいのは、豆腐・納豆・大豆の煮豆・チーズなどです。卵・魚・肉・厚揚げなどのメイン料理も考えてみましょう。
ビタミンD
食材名 | 1食あたりの量 | ビタミンD質含有量(約) |
えのき | 1袋(100g) | 0.9μg |
ぶなしめじ | 1パック(100g) | 0.5μg |
紅鮭 | 1切れ(80g) | 26μg |
真いわし | 1尾(80g) | 25μg |
卵 | 1個分(50g) | 2μg |
牛乳 | 1杯(200ml) | 0.6μg |
なお、ビタミンDは脂溶性ビタミンなので、動物性食品からの摂取や炒め物・揚げ物などの油とともに摂取するのが効率的です。
作り置きで手軽にたんぱく質をプラス!大豆の五目煮レシピ
乾燥大豆は長期間保存しやすいため、買い出しの頻度を減らせるのがメリットです。定期的に大豆の五目煮を作り置きしておけば、毎日の食事にたんぱく質を摂取できる小鉢をプラスできます。
【 腸活 】五目煮
材料
- 大豆 200 g
- ひじき(乾燥) 5~10 g
- にんじん(1/2本) 100 g
- 油揚げ(1枚) 25 g
- めんつゆ(大さじ3) 45 ml
- はちみつ(大さじ1) 21 g
作り方
- ひじきは水で戻しておきます。
- 人参・油揚げは細切りにします。
- 鍋を熱し油を入れて温めたら、人参と油揚げを入れて炒めます。
- しんなりしたら、戻したひじきと大豆も入れて炒めます。
- 材料にかぶるくらい水を入れ、柔らかくなるまで蓋をして煮込みます。
- 調味料を入れ5分ほどコトコト煮込んだら完成です。
かわしま屋の大豆
サルコペニアとフレイルの違い
フレイルは健常と要介護の中間といえる状態で、加齢に伴う身体の衰えを指しますが、適切な対処をおこなえば健常に戻る可能性があることを示す言葉です。フレイルの具体的な症状には次のようなものがあります。
- 体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
- 疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
- 歩行速度の低下
- 握力の低下
- 身体活動量の低下
サルコペニアが骨格筋量の低下であるのに対し、フレイルは握力や歩行速度などの低下を指します。分類は異なりますが、どちらも加齢に伴う症状であり、早期から対策することで防げるものでもあります。
なお、フレイルは代表的な症状こそ身体面の変化ですが、認知機能や精神的状態の低下、ストレス対処力の低下といった精神・心理面、人間関係の希薄化や社会参加の減少などの社会面を含む3つの側面で問題が認められます。
いずれの場合でも、栄養をしっかり摂って適度に運動すること、外出によって精神的・身体的にほどよい刺激を得ることが重要です。
サルコペニア肥満に関するQ&A
- サルコペニア肥満にもダイエットは有効ですか?
-
運動によるダイエットならおすすめですが、食事制限はやめましょう。サルコペニア肥満の原因は骨格筋量の低下であるため、脂を控えようとすると、筋肉に必要なたんぱく質やビタミンDが不足する可能性があるからです。
- サルコペニア肥満の予防に有効な方法は?
-
たんぱく質とビタミンDの摂取、適度な運動、オーラルケアです。忘れがちなのはオーラルケアで、歯や咀嚼・嚥下力を健康な状態で維持することも重要なポイントといえます。甘いものを食べたいときは、むし歯になりにくいオリゴ糖を使うのも有用です。
- 若ければサルコペニアになる心配はない?
-
サルコペニアは加齢にともなう骨格筋量の低下であるため、若い人がサルコペニアと診断されることは、まずないといえるでしょう。しかし、普段から著しく運動不足だったり栄養が偏ったりしていると、筋肉が減って転倒や排尿障害などのリスクは上がります。将来のサルコペニア予防のためにも、早いうちから対策を始めるのがおすすめです。
- サルコペニア予防におすすめの食べ物をおしえて
-
肉・魚・卵・乳製品・大豆製品がおすすめです。筋肉に必要なたんぱく質とビタミンDを効率よく摂取できます。メイン料理で取り入れるのはもちろん、朝のトーストにチーズやハムをプラスする、納豆や五目豆の小鉢をそえるなど工夫しましょう。
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参考資料
国立長寿医療研究センター 「健康長寿教室テキスト 第2版」
公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「ビタミンDの働きと1日の摂取量」
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「フレイルとは」