押し麦ともち麦の違い|糖質や栄養素の違いは?炊き方レシピもご紹介

記事の監修
管理栄養士
安藤ゆりえ
老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。

管理栄養士:安藤ゆりえ

健康に良いだけでなく、さまざまな効果が期待できることで注目を集めている「押し麦」。 押し麦は健康を気遣う方から支持されていますが、スーパーや通販で購入しようとすると、同じ売り場やカテゴリーに似たような「もち麦」を見た事はありませんか?

そんな押し麦ともち麦には、どんな違いがあるのでしょうか。
本記事では押し麦ともち麦の違いや、栄養面や効果・効能面で違いがあるのか比較してみました。 あわせて、押し麦やもち麦の食べ方についてもご紹介します。

もくじ

押し麦とはどんなもの?


押し麦は、数ある大麦の種類の中でも最もポピュラーなもの。 そのままだと食べづらい大麦を、外皮を剥いた後に蒸してやわらかくし、ローラーなどで押しつぶして平たくしたものが押し麦です。

大麦を押し麦に加工することで水が吸いやすくなり、食べやすくなっています。 また料理での使い勝手が向上し、いろいろな食べ方で楽しめます。

押し麦の歴史

大麦は100万年以上前から、人類の祖先が食べていたという説があります。 日本の歴史においては、かの徳川家康が好んで麦ご飯を食べていたようです。

押し麦は白米に混ぜて食べられていましたが、戦後白米だけを食べられるようになってからは、次第に押し麦などを混ぜる=貧しいというイメージになっていったのです。

ですが現在では、押し麦の栄養価や効果・効能に再び注目が集まり、ヘルシーな食べ物として健康を気遣う人を中心に摂取され、消費量が少しずつ増えてきています。

押し麦ともち麦の違いとは?

押し麦ともち麦は同じ「麦」と名の付く商品ですが、実際には明確な違いがあります。

押し麦ともち麦は、麦自体が異なる

大麦はお米でいう「うるち米」「もち米」のように、
・うるち性
・もち性 があります。

うるち性の大麦を食べやすく加工したものが「押し麦」、もち性のものが「もち麦」といい、名前は似ていても麦自体が異なります。

食感にも違いがある

押し麦ともち麦は食感も異なります。 押し麦は粘り気が少なく、プチっとした食感。 麦とろごはんにも使われているため、牛タンなどと一緒に食べたことがある方も多いかもしれません。

対してもち麦は名前の通りモチモチとした食感で、プチっと弾ける歯触りが楽しめます。

食感の違いは、押し麦ともち麦を構成するでんぷんの差

同じ麦でありながら押し麦ともち麦の食感が異なるのは、でんぷんの構成に違いがあるからです。

・押し麦のでんぷん:アミロースとアミロペクチンの2種
・もち麦のでんぷん:アミロペクチンのみ

押し麦ともち麦に含まれるアミロペクチンは粘性が強いため、単独で構成されたもち麦の方がよりモチモチとした食感が楽しめます。

押し麦は価格が手ごろ

押し麦ともち麦の違いは、食感だけではありません。 価格に関しては、押し麦の方が少し手頃な価格となっています。

▼100gあたりの価格
押し麦:約45円
もち麦:約74円

押し麦ともち麦の栄養素やカロリーの違い

押し麦ともち麦の栄養素やカロリーの違い

押し麦やもち麦は、栄養素やカロリー面に違いがあるのでしょうか?

押し麦ともち麦に含まれている栄養素やカロリーについて、詳しくご紹介します。

押し麦の栄養素やカロリー

押し麦にはアミノ酸や食物繊維、さまざまなミネラルやビタミンが含まれています。 中でも注目すべきは、食物繊維の一種であるβ-グルカンです。

▼β-グルカン
水溶性食物繊維の一種であるβ-グルカンは、消化器官をゆっくりと移動。 その際、余分な糖質やコレステロールを包み込んで、体の外へ排出を促す働きがあります。
β-グルカンには、血中コレステロールの低下や満腹感の持続、免疫力の向上などさまざまな効果が期待できます。

押し麦のカロリーなどの数値

(100gあたり)
カロリー:340kal
たんぱく質:6.2g
脂質:1.3g
炭水化物:77.8g
糖質:68.2g
食物繊維:9.6g
水溶性食物繊維:6.0g
不溶性食物繊維:3.6g
もち麦

もち麦の栄養素やカロリー

もち麦は食物繊維に加え、豊富なビタミン・ミネラルを含んでいます。 中でも注目すべきは、押し麦と同じく食物繊維に含まれたβ-グルカンです。

▼β-グルカン
水溶性食物繊維の一種であるβ-グルカン。 もち麦のβ-グルカンの含有量は、大麦の中でもっとも多いとされています。 β-グルカンには余分な糖や脂肪などに吸着し、体の外へ排出する働きがあります。

もち麦に含まれたβ-グルカンが、コレステロールの分解を促したり、血糖値の上昇を緩やかにしたり、ダイエット効果が期待可能。 その他にも、善玉菌を増やすことで腸内環境を整え、お腹をスッキリさせてくれます。

もち麦のカロリーなどの数値

(100gあたり)
カロリー:339kal
たんぱく質:9.5g
脂質:1.6g
炭水化物:78.1g
糖質:65.2g
食物繊維:12.9g
水溶性食物繊維:9.0g
不溶性食物繊維:3.9g

押し麦ともち麦の栄養素やカロリーの比較

押し麦もち麦
カロリー340kal339kal
たんぱく質6.2g9.5g
脂質1.3g1.6g
炭水化物77.8g78.1g
糖質68.2g65.2g
食物繊維9.6g12.9g
水溶性食物繊維6.0g9.0g
不溶性食物繊維3.6g3.9g

もち麦のおすすめ商品

押し麦ともち麦の効果・効能の比較

押し麦ともち麦の効果・効能

押し麦ともち麦は、摂取することでさまざまな効果や効能が期待できます。

押し麦の効果・効能

▼効果・効能1:腸内環境を整え、お腹をスッキリ!

押し麦に含まれる水溶性食物繊維は腸内細菌のエサになり、腸内環境を整えてくれます。 また押し麦に含まれる不溶性食物繊維が水分を吸収し、便のかさを増やしてくれるといわれます。 便の量が増えることで、大腸が刺激。腸内環境を整えつつ、お腹の重たさがスッキリするでしょう。

参考文献:下痢・便秘がある方のお食事 国立がん研究センター

▼効果・効能2:コレステロールの低下に効果

押し麦に含まれる水溶性食物繊維は、コレステロールに作用するといわれています。

水溶性食物繊維がコレステロールに吸着し、吸収せずに体外に排出するという働きをするため、気になるコレステロールの値を低下させる効果が期待できます。

参考文献:食物繊維の評価

▼効果・効能3:血糖値を抑えてくれる

押し麦に含まれている水溶性食物繊維の一種であるβ-グルカンは、水に溶けることでゼリー状になり、体内にある食べ物を包んで消化器官の中をゆっくり移動。 糖質の吸収を緩やかにし、食事後の血糖値の上昇を抑えてくれます。

血糖値の上昇が抑えられることで、肥満や糖尿病、高血圧などの予防や改善の効果も期待できます。

参考文献:大麦食品を用いた機能性の検証

▼効果・効能4:満腹中枢を刺激

水溶性食物繊維には満腹中枢を刺激する効果も期待できます。 食後に満腹感が持続すれば間食をしなくて済み、食べすぎの防止も可能。

エネルギーを取り過ぎることがなくなり、身体がスッキリします。

参考文献:穀類に含まれる食物繊維の特徴について

▼効果・効能5:セカンドミール効果

β-グルカンを含む押し麦を朝食に食べれば、昼食や夕食の糖質を抑えたり、血糖値の上昇を抑えたりするセカンドミール効果も期待できます。

参考文献:大麦β-グルカンの機能性について

もち麦の効果・効能

▼効果・効能1:腸内環境を整える

押し麦と同じく、もち麦には水溶性食物繊維が豊富に含まれており、便を柔らかくしたり、腸内の善玉菌を増やしたりする効果が期待できます。

腸内環境を整えることでお腹の重さをスッキリさせ、ツヤのある肌も実感できます。

参考文献:2週間で体が変わる「もち麦」ダイエット

▼効果・効能2:ダイエット効果

もち麦にも含まれるβ-グルカンは、体内に蓄積したくない糖や脂質などを吸収し、排出する働きが期待できます。

糖が吸収されると体内で脂肪が合成され内臓脂肪になりますが、もち麦に含まれたβ-グルカンが余分な糖や脂質などを防ぎ、太りにくい体質になれるようサポート。 ダイエット効果も期待できます。

またもち麦はモチモチとした食感のおかげで噛み応えがあり、食べすぎを防ぎメタボリックシンドロームの予防もできます。

参考文献:2週間で身体が変わる「もち麦」ダイエット

▼効果・効能3:アンチエイジング効果

もち麦には糖質や脂質の代謝、皮膚などの維持に必要なビタミンB群や、抗酸化作用のビタミンEが含まれており、毎日食べ続けることでアンチエイジング効果も期待できます。

参考文献:疲労回復のための栄養素の効果的な摂取

▼効果・効能4:免疫力のアップ

もち麦にも含まれるβ-グルカンが、腸内細胞や善玉菌に働きかけ、免疫力をアップする効果があるといわれています。

参考文献:白米ごはんをもち麦ごはんにかえるだけでやせる!かんたんもち麦ダイエットレシピ

▼効果・効能5:コレステロールの低下

もち麦に含まれるβ-グルカンは、コレステロールを分解したときにできる胆汁酸を取り込み、体外に排出する働きもあります。

余分なコレステロールを吸収せず、なおかつ悪玉コレステロールの低下が期待できます。

参考文献:白米ごはんをもち麦ごはんにかえるだけでやせる!かんたんもち麦ダイエットレシピ

▼効果・効能6:血糖値の上昇を緩やかにする

水溶性食物繊維の一種であるβ-グルカンは、糖を吸収しにくくし、血糖値の上昇を緩やかにする働きがあります。 そのためダイエットや糖尿病予防の効果も期待できます。

参考文献:もち麦でやせる!元気になる!高血圧、血糖値、高コレステロール、メタボを改善

▼効果・効能7:セカンドミール効果

もち麦を朝食時に食べることで、セカンドミール効果も期待できます。 朝にもち麦を食べることで、昼食や夕食の血糖値の上昇もゆるやかにすることが可能。

1日の食事の血糖値をコントロールすることに加え、太りづらい食習慣も身につけられます。

参考文献:2週間で身体が変わる「もち麦」ダイエット

『押し麦』と『もち麦』が入った雑穀

押し麦ともち麦の食べ方に違いはあるの?

押し麦ともち麦の食べ方に違いはあるの?

押し麦ともち麦は、基本的に食べ方に違いがありません。 どちらを食べるにしても、同じ食べ方で摂取できます。

今回は押し麦やもち麦のメジャーな食べ方をご紹介します。

ご飯に入れる

押し麦やもち麦の食べ方でもっともポピュラーなのが、ご飯に入れて食べること。 白米と一緒に押し麦やもち麦を入れて炊くことで、簡単に食べられます。

▼押し麦やもち麦を最初に食べるときにおすすめの量
押し麦やもち麦をご飯と一緒に入れて炊く際は、初めてなら押し麦orもち麦が3:白米7がおすすめです。
白米の比率が多ければ、押し麦やもち麦の味が気にならずいつもと同じように食べられます。

▼押し麦やもち麦に慣れてきたら、割合を増やそう
押し麦やもち麦を食べるのに慣れてきたら、割合を増やしていくのもおすすめ。
・押し麦orもち麦1:白米2
・押し麦orもち麦1:白米1
自分の好みの割合にアレンジして、押し麦やもち麦を食べ続けましょう。

▼押し麦やもち麦の茹で方
1.鍋に水を張り、沸騰させます
2.沸騰させたら押し麦orもち麦を入れ、茹でていきます
3.火が通ったらざるに上げ、流水でぬめりを取ります
4.お好みのサラダやスープに入れたら完成です!

▼茹でた押し麦やもち麦は、保存が効く
ゆでた押し麦やもち麦は、密封できる容器に入れて保存も可能。
冷凍保存もできるので、あらかじめゆでておけば手間をかけずにサラダやスープに入れられます。
冷蔵保存でもなるべく早めに使い切るようにしましょう。

▼茹でた押し麦やもち麦は、ご飯に混ぜてもOK
茹でた押し麦やもち麦はサラダやスープに入れるだけでなく、炊き上がった白米に混ぜて食べるのもOKです。
手軽に麦ごはんが楽しめます。

もちもちプチプチの食感が楽しめるもち麦

押し麦ともち麦に副作用やデメリットはあるの?

押し麦ともち麦に副作用やデメリット

押し麦やもち麦をはじめとした大麦を取り入れた食生活は、基本的にはお子さんからご年配の方まで利用でき、副作用やデメリットはほとんどありません。

妊娠中の方や病気の方が食べる際は、念のため前もってお医者様に相談しましょう。
万が一、押し麦やもち麦を食べ過ぎてお腹が緩くなった時は、摂取量を減らすとよいです。

押し麦やもち麦の注意点

押し麦やもち麦はさまざまな効果が期待できますが、いくら健康面にプラスと言っても無理して食べたり、大量に食べ過ぎたりすると体に負担がかかります。

また押し麦やもち麦は白米に比べて低カロリーではありますが、それでもカロリーは自体はしっかりあります。あくまでも無理のない範囲で、適量を食べるようにしましょう。

押し麦(もち麦)の炊き方

ここでは押し麦またはもち麦の炊き方をご紹介いたします。
白米に混ぜるだけで普段とは一味違った食感をお楽しみいただけます。
炊き方も簡単で、炊飯器さえあれば誰でも簡単に押し麦・もち麦ライフを体験できます。

STEP 1 お米を洗うお米2合を洗米します。
STEP 2 炊飯器にお米を入れるいつもの水加減でお水を入れます。
STEP 3 押し麦(もち麦)を加える炊飯器に、押し麦(もち麦)100gと水200mlを加えます。
STEP 4 お米を炊くいつも通り炊飯します。

管理栄養士からのコメント

押し麦、もち麦どちらにもメリットがたくさんあるので、好みやその時の気分に合わせて使い分けてみてもいいですね!

管理栄養士:安藤ゆりえ

管理栄養士プロフィール

安藤 ゆりえ

公式サイト

老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。
2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。
また「食を見直すならまずは毎日使う調味料から」をコンセプトに地元愛知県三河のみりんや味噌などの伝統的な調味料の素晴らしさを伝えるセミナーなども開催。

食や栄養に関すること全般ですが特に
・調味料について(みりん、味噌や醤油などの製法やどんなものを選ぶと良いかなど)
・体に優しいスイーツの選び方、作り方
・ダイエットレシピの考案
・時短レシピの考案を得意としています。

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この記事を書いた人

パン作りと温泉をこよなく愛する2児の母。老後は伊豆で大きな犬と暮らすのが夢です。豆乳が好き、猫は苦手。

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