はちみつが赤ちゃんにNGな理由と対処法|妊娠・授乳期の注意点も
はちみつ・マヌカハニーには健康にうれしい成分が豊富に含まれていますが、赤ちゃんにはNGです。しかし、世代によっては注意されていないこともあり、認知度には世代差があります。NGな理由を知らないと「ついうっかり」のハードルが低くなってしまうこともあるでしょう。
そこでこの記事では、赤ちゃんにはちみつを食べさせるのがNGの理由を詳しく解説します。自身の気を引き締めるのはもちろん、周囲の人に理由を説明するときにも役立つはずです。
また、妊娠・授乳中の摂取は問題ないか、誤って与えてしまったときの対応、事前にできる対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
赤ちゃんにはちみつをあげてはいけない理由
赤ちゃんにはちみつをあげてはいけない理由を詳しく解説します。
乳児ボツリヌス症のリスクがあるから
1歳未満の赤ちゃんには「乳児ボツリヌス症」のリスクがあります。乳児ボツリヌス症の主な症状は次のとおりです。
- ほ乳力の低下
- 元気の消失
- 泣き声の変化
- 首のすわりが悪くなる(ぐらぐらする)
- 手足の麻痺
- 呼吸ができなくなる
- 便秘
2017年には、生後6カ月の乳児にはちみつを与えたことによる死亡事案も発生しています。
1歳未満の赤ちゃんにはちみつがNGなのは、腸内環境が整っていないからです。腸内環境が整っていれば腸内細菌がボツリヌス菌との競争に勝ってくれますが、1歳未満では負けてしまう可能性があります。これによってボツリヌス菌が繁殖し、毒素を出すため上記のような症状があらわれます。
ボツリヌス菌とは
ボツリヌス菌は次のような特徴をもっています。
- 土壌や水辺など自然界では幅広く存在
- 酸素が極めて少ない環境下で増殖する
- 熱に強く100度以上の環境でも死滅しない
- 神経に作用する毒素を産出する
ボツリヌス菌を含む飲食料品の代表例は、はちみつ・黒糖・井戸水ですが、過去には里芋の缶詰・からしれんこん・あずきばっとう(うどんのぜんざい)などでもボツリヌス菌による食中毒の事例がありました。
食中毒が起きるのは、ボツリヌス菌自体ではなくボツリヌス菌が産出する毒素によるものです。ボツリヌス菌が繁殖すると産出される毒素が増えるため、食中毒を引き起こしやすくなります。
なお、産出された毒素は十分な加熱で毒性を失いますが、ボツリヌス菌自体は中心温度が120度の状態を4分間キープしない限り死滅しません。水分は100度以上にならないため、通常の調理でボツリヌス菌を死滅させることはできないものと考えましょう。
はちみつ入りのお菓子・飲み物もNG
はちみつ入りのお菓子やジュース、はちみつを隠し味に使ったカレーやハヤシライスのルーも赤ちゃんに与えてはいけません。先述のとおり、ボツリヌス菌自体は加熱しても死なないため、1歳未満の体内に入ると増殖して毒素を産出する恐れがあります。
はちみつ入りの飲食料品には注意書きが記載してあるはずなので、赤ちゃんにあたえる前に必ずチェックしましょう。
はちみつは1歳を過ぎてから
1歳を過ぎると腸内環境が整ってくるので、はちみつを食べられるようになります。
はちみつはボツリヌス菌を含んでいることがありますが、繁殖できる環境ではありません。繁殖するのは体内に入ってからであり、1歳を過ぎていれば腸内細菌が勝ってくれるので繁殖もできなくなります。はちみつを与えるのは1歳を過ぎてからにしましょう。
赤ちゃんがはちみつを食べてしまった場合
はちみつを与えないように注意していても、目を離した隙に食べてしまったり、はちみつが含まれることを知らずに与えてしまったりするケースはあります。ここで気を付けたいのは、ただちに症状が出るわけではない点です。
潜伏期間が3、4日から1カ月と長いため、はちみつを食べても元気な状態だったにも関わらず、突然症状があらわれることがあります。少しでも異常を感じたら、ただちに病院で診察を受けましょう。
ただし、医師であっても症状だけを見てただちに乳児ボツリヌス症とは判断できるわけではありません。何を食べさせたかが手がかりになるため、初めて与える食べ物などは記録しておくことをおすすめします。
また、治療して症状が治まっても、腸内のボツリヌス菌が死滅しきっていない場合は再繁殖の恐れがあるので、1~2カ月は油断せず観察を続けましょう。
赤ちゃんにはちみつを食べさせないためのポイント
赤ちゃんがはちみつを食べてしまう状況を作らないためのポイントを3つご紹介します。
商品の原材料をチェックする
食品事業者には、はちみつを入れた場合には記載するよう周知されているので、基本的には原材料をチェックすれば問題ありません。ただし、次のようなケースでは判断が難しいため、与えないようにしましょう。
- 親族・知人の手作りのお菓子や料理を特段の注意なくもらったとき
- 外食でメニューに原材料などが明記されていないとき
- 原材料をチェックせずに保存容器に移してしまったもの
迷ったら与えないと考えておくことをおすすめします。
赤ちゃんが手の届かない場所に置く
赤ちゃんがいることを理由に、同居家族にはちみつを我慢させるのは難しい場合もあります。とくに赤ちゃんの兄・姉など上の子たちには、はちみつを食べさせてあげたいと思うこともあるでしょう。
こうした状況では、赤ちゃんが手の届かない場所にはちみつを置くことが大切です。一緒に食卓を囲むときも、はちみつの瓶やスプーン、はちみつを使った料理の皿を遠ざけて配置しましょう。
また、兄や姉がまだ幼く、はちみつを与えてはいけない理由を理解することが難しい場合は、大人しか手が届かない場所に置きましょう。はちみつがおいしいことを知っていれば、善意で赤ちゃんに与えてしまうリスクがあるからです。
周囲の人にも伝える
周囲の人が赤ちゃんにはちみつを与えてしまうケースがあります。親が知っていても、周囲の人まで知っているとは限らないので、説明しておきましょう。
1歳未満にはちみつを与えてはいけないことを厚生労働省が通知したのは1987年のことで、認知度が下がってきているという見方があります。2017年の死亡事案も認知度の低下によるものと考えられるでしょう。
また、2018年に東京都多摩小平保健所がおこなったアンケート調査では、市民の34.7%、3人に1人がはちみつやはちみつを含む食品を1歳未満に与えてはいけないことを知りませんでした。
とくに、10代と1987年以前に子育てをしていたシニア世代で認知度が高くないという結果が出ています。世代による子育て常識の違いもあるため、改めて周知しておくのがおすすめです。
参考資料:東京都多摩小平保健所「知っていますか?「1歳未満の乳児にはちみつを与えてはいけない」こと
妊娠・授乳期含めて大人が摂取するときの注意点
妊娠・授乳期含め、大人にもはつみつの摂取には注意点があります。
大人のボツリヌス症もある
1歳を過ぎたらボツリヌス症にならないということではありません。毒素による食中毒は大人でもリスクがあります。
実際に、里芋の缶詰で食中毒が起きました。缶詰にする際に十分な加熱処理がおこなわれなかったことが主な理由です。ボツリヌス菌は低酸素化で増菌すると毒素を産出するため、里芋の缶詰内は毒素が産出されやすい状態でした。
はちみつ入りの食品を含め、ボツリヌス菌が繁殖しやすい真空パックなどの食品には、冷蔵庫・冷凍庫保存および加熱時間などの表示が記載されています。毒素の影響を受けないように、表示に従って保存・調理しましょう。
植物由来のアレルギーに注意
はちみつは花から集められたものなので、稀に植物由来のアレルギー症状が出ることがあります。皮膚の発疹、かゆみ、呼吸困難、胃腸の不快感などの症状や違和感があるときは、摂取を中止して医師に相談しましょう。
アレルギーや過敏症が気になるときは、少量から試してみるのがおすすめです。健康状態に応じて医師の指導を仰ぎながら、慎重に対処してください。
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はちみつの注意点に関するQ&A
- はちみつからボツリヌス菌を除去する方法はありませんか?
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家庭で除去する方法はありません。ボツリヌス菌は中心温度120度の状態を4分間キープするよう加熱すれば死滅しますが、水分量の多い飲食料は100度以上になりません。180度の油で揚げたり200度のオーブンで焼いたりしても、表面以外は100度以上にならないので死滅しないということです。
- 赤ちゃん以外でも食べてはいけない人はいますか?
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はちみつに関しては1歳以上なら問題ありません。ただし、ボツリヌス菌を含む食品が入った真空パックや缶詰などが膨張しているときは食べるのを避けましょう。既にボツリヌス菌が繁殖して毒素を出している可能性があります。
- 妊娠中なのですが、はちみつを食べても胎児に影響はありませんか?
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影響はありません。大人の腸内でボツリヌス菌が繁殖することはなく、胎盤や血液を通して赤ちゃんに届くこともないため、食べても大丈夫です。ただし、アレルギー症状が懸念される場合は医師に相談し、必要に応じて摂取を控えましょう。