本物のみりんを知ろう〜一度知ると手放せないみりんの魅力~ 愛桜三河みりん 杉浦嘉信代表
みりんはかわしま屋が扱う調味料の中でも、もっとも愛され度合いが高い品物の一つ。
一度お気に入りのみりんに出会ったお客様は、そのみりんをずっと使い続けてくれる事が多いです。
たしかに昔ながらのやり方で思いを込めて造られたみりんは、驚くほど料理の味わいを深めてくれて、一度使うと手放せない魅力があります。
質の良いみりんはそのままでも美味しく飲めるんです。甘くて香り高く、質の良い紹興酒のような味わいがあり、甘いお酒が好きな人であればあっという間に虜にされてしまうでしょう。
そんな魅力たっぷりのみりんですが、かわしま屋のお客様からは
「みりんをどうやって料理に使うかわからない。」
「みりんって色んな種類があるし、それぞれ値段が大分違うけど何が違うの?」
という質問も多くいただきます。
今回はそんな疑問を解消するために、愛桜三河みりん(杉浦味淋株式会社)の3代目社長杉浦嘉信さんのみりんのワークショップに参加してきました。
愛桜三河みりんは大正十三年よりつづくみりん蔵の老舗です。
杉浦代表の分りやすい話を、みりんの選び方やお料理の参考にしてみてください。
みりんとは
――みりんの歴史
- 杉浦:
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中国から紹興酒老酒の類が日本に伝わってきたものが、進化して日本独自の調味料「みりん」として確立されたと言われています。
室町から戦国時代には、甘いお酒として女性を中心に好んで飲まれていました。
江戸時代まではお酒として飲用されていたが、江戸後期になると調味料として使われる事が多くなりました。当時は砂糖が大変貴重だったため、砂糖の代わりの調味料として料理に使われだしたのではと言われています。
明治時代に入り酒税法が制定され、みりんの販売が酒屋さんだけに許可されます。その後、酒屋以外の小売店でも販売できる、アルコール度数1%未満の「みりん風調味料」が登場します。
――みりんの定義
- 杉浦:
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みりんはお酒の一種です。
本来のみりんは、もち米に米麹と焼酎を加えたものです。
アルコール度数は14%程度。本来のみりんの独特な甘さは、もち米から抽出されたデンプンであって砂糖によるものではありません。
砂糖に比べれば血糖値が上がりにくく、脂肪もつきにくく、体に優しい魅力があります。
――みりんの種類-みりんとみりん風調味料は違う-
- 杉浦:
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現在売られているみりんは製造法で大きく3つに分類できます。
- 1.純米タイプ(本みりん)
- 色:琥珀色
- 原料:もち米、米麹、焼酎
- アルコール度数:14%
- 特徴:
- 長時間寝かせて、甘み、コクを出す。そのまま飲んでも美味しい。
- 2.増醸タイプ(本みりん)
- 色:黄色
- 原料:もち米、米麹、醸造アルコール、糖類
- アルコール度数:14%
- 特徴:
- 純米タイプのみりんと同様に「本みりん」と呼ばれるが、こちらのタイプは焼酎ではなく醸造アルコールと糖類を足しています。
- 添加された甘みで、飲んでもあまり美味しくない。
- 3.みりん風調味料
- 色:黄色
- 原料:ブドウ糖、糖類、酸味料、化学調味料
- (水飴と旨味成分をいれてまぜてつくった) など
- アルコール度数:1%未満
- 特徴:
- 酒税法の制定により、アルコール度数の高い従来のみりんが酒屋(または酒類販売免許を持った小売店)でしか扱えなくなったため、通常のお店でも扱えるようにつくったみりん風の調味料。安価なのが魅力。
みりんでは無い。飲んでも美味しくない。
みりん風調味料に増醸タイプのみりんや塩を加えた「みりん風発酵調味料」「発酵調味料」というものもあります。
三河みりんについて
――三河みりんの定義
- 杉浦:
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三河みりんととは、三河地方(愛知県東半部)の伝統的なつくり方でつくられたみりんの呼称です。
厳密な定義が規定されているわけではありません。
一般的には三河でつくられた、もち米、米麹、焼酎(粕取焼酎または粕取焼酎と焼酎)でつくられた純米みりんが三河みりんと呼ばれています。*粕取焼酎(かすとりしょうちゅう):酒粕を原料とした焼酎のこと。酒粕を再度発酵させて、蒸留してつくられる。
――三河みりんをつくっているのは全国で5つのみりん屋だけ
- 杉浦:
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三河には現在、以下の5つのみりん屋が有ります。
- ・九重味淋
- ・相生味淋
- ・角谷文治郎商店(三州三河みりん)
- ・小笠原味淋
- ・杉浦味淋
三河には、かつて20数軒あったみりん屋ですが、第二次世界大戦中にもち米が配給されなくなった事が原因で、ほとんどがみりんをやめて日本酒をつくりはじめました。
今では前述の5つだけが残っています。
愛桜三河みりん(杉浦味淋)について
- 杉浦:
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愛桜三河みりんは、今から15年程まえに現代表の杉浦嘉信さんが創業者のレシピを忠実に再現して復刻させたみりんです。もろみを6ヶ月ほど熟成させているのが特徴で(通常は2-3ヶ月程度)、
色が濃く、うまみと甘みも深いのが魅力です。1年熟成と3年熟成の2種類があります。
3年熟成させたタイプは、より角が取れており、うま味や甘みが醸され香りがまるくなっています。
生の状態(火入れをしない)で3年間熟成させる為、酵素が活きており、酵素活性により
うま味や甘みが醸されているのだと推測できます。
――愛桜三河みりんができるまで
- 杉浦:
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愛桜三河みりんは以下のような工程で作られています。
下ごしらえ
・洗米・浸漬
ここでお米(もち米、うるち米)を洗います。
・浸漬
水にしばらく浸しておきます。
米麹づくり
うるち米を蒸します。
うるち米を一定温度まで下げます。
うるち米に麹の菌を植えます。
温度を調整しつつ時間を掛けて麹の完成。
もろみづくり
もち米を蒸します。タンクに蒸したもち米と米麹と焼酎(=もろみ)を混ぜ合わせます。
もろみの熟成
杉浦味淋では約六ヶ月もろみを熟成させます。(通常の純米本みりんの2倍の長さ)
しぼり
もろみを酒袋と呼ばれる麻の袋に入れていきます。
昔ながらの圧搾機でしぼります。
もろみを麻の袋にいれて、圧搾機の槽に並べます。
圧搾前の槽(麻の袋に入ったもろみが並んでいます。)
圧搾後の槽
もろみから、熟成したみりんを伝統的な槽搾りで搾り出します。
搾りたてのみりん
みりんを樽にいれて熟成させる
搾った後にさらに何年も寝かせ、熟成させる。
粕離し
みりんを搾った後に残ったもろみ=です。
みりんを搾ったあとに残ったもろみを、こぼれ梅といいます。みりん粕は酒粕と違って甘いのでそのまま食べたり、スイーツにも使えます。
大半は、漬物の漬け床になります。
Q&A
――みりんは調味料なんですか?
- 杉浦:
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もち米、米麹に焼酎を加えて醸造したお酒の事です。
みりんは一般的には調味料として用いられていますが、アルコール濃度が13.5-14.5%のお酒に分類されます。
――みりんの原料は何から作られているのですか?
- 杉浦:
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愛桜純米本みりんは愛知県三河産のもち米、米麹、本格焼酎のみ出てきています。
みりんのタイプによって原料は異なります。
- ・純米タイプ(本みりん)の原料:もち米、米麹、焼酎
- ・増醸タイプ(本みりん)の原料:もち米、米麹、醸造アルコール、糖類
- ・みりん風調味料の原料:ブドウ糖、糖類、酸味料、化学調味料(水飴と旨味成分をいれてまぜてつくった) など
――三河みりんの定義は?
- 杉浦:
-
三河みりんとは、三河地方(愛知県東半部)の伝統的なつくり方でつくられたみりんの呼称です。
厳密な定義が規定されているわけではありません。一般的には三河でつくられた、もち米、米麹、焼酎(粕取焼酎または粕取焼酎と焼酎)でつくられた純米みりんが三河みりんと呼ばれています。*粕取焼酎(かすとりしょうちゅう):酒粕を原料とした焼酎のこと。酒粕を再度発酵させて、蒸留してつくられる。
――みりんはどう料理に役立つのでしょうか?
- 杉浦:
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みりんには、調味料として大きく5つの機能があります。
- 1.甘みを出す
- 料理に自然な甘さを加えます。(煮豆や角煮など)
- 2.臭みを消す
- みりんのアルコールによって、食材の臭みを緩和してくれます。
(肉や魚料理など) - 3.味を染み込ませる
- みりんのアルコールが素材にすばやく染み込んでくれます。
(肉や魚料理など) - 4.照りを出す
- みりんの糖分が食材の表面に照りをつけてくれ、見た目をより良く仕上げてくれます。(ブリやチキンの照り焼きなど)
- 5.煮崩れを防ぐ
- 長時間煮込んでも、食材が崩れにくく綺麗に仕上がります。
(煮物)
味醂の上手な選び方や、付き合い方をとてもわかりやすく教えていただきました。
是非一度、上質なみりん(せっかくなら三河みりん)を料理に使ってみてください。
そしてそのまま飲んでみてください。きっと、その魅力に驚かされるはずです。
杉浦嘉信社長、素敵なお話をありがとうございました!
こちらの記事でみりんについてさらに詳しくご説明いたします。
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