イヌリンが肝臓に悪いって本当?肝臓が弱い人が摂取しても平気か解説

「イヌリンは肝臓に悪いらしい」といった情報を目にして、不安になっていませんか。脂肪肝や肝機能の異常を指摘された経験があると、サプリメントひとつ摂るにも慎重になるものです。
特にイヌリンは、腸内環境を整える食物繊維として知られている一方で、「摂りすぎると肝臓に負担がかかる」といった声もあります。しかし、その多くは動物実験や極端な摂取条件に基づく話で、実際のヒトでの研究結果は異なります。
この記事では、イヌリンが肝臓に悪いと言われる理由を丁寧に整理し、最新のヒト臨床試験をもとに本当に心配すべきことは何かを解説します。
まずは正しい知識を持って、自分にとって最適な使い方を見つけていきましょう。
イヌリンが肝臓に悪いといわれる理由3選

イヌリンが肝臓に悪いと言われる理由は、誤解や過剰な心配によるものがほとんどです。背景には3つの要因があります。
- 多量の水溶性食物繊維で腸内環境が乱れる可能性がある
- 動物実験で肝機能障害やがんリスクが高まるとされた
- サプリメントの摂り過ぎが肝臓に悪いとされている
それぞれ見ていきましょう。
多量の水溶性食物繊維で腸内環境が乱れる可能性がある
イヌリンが体に悪いといわれる理由のひとつが、腸で発酵しすぎる可能性があることです。
イヌリンは腸内の善玉菌のエサになります。そして、善玉菌がイヌリンを食べると、短鎖脂肪酸という体に良い成分を作り出します。これは腸の粘膜を元気にしてくれたり、体の免疫を助けたりする役目があります。
しかしイヌリンを一度にたくさん摂りすぎると、腸内の発酵が急に進みすぎてしまうのです。イヌリンを過剰に摂取した際の症状の一例は以下のとおりです。
- お腹にガスがたまる
- お腹が張る
- 下痢になる
この状態が長く続くと、水分が失われて脱水になったり、腸内環境が乱れたりすることもあります。そうなると、肝臓にまで負担がかかることがあるのです。肝臓は体の代謝を助ける大事な臓器なので、影響が心配されています。
しかし体への悪影響があるのは、ほとんどの場合が摂りすぎやアレルギーです。一般的に使われている量、たとえば1日に5〜10グラムくらいなら、体への悪影響はまずありません。
参考:
動物実験で肝機能障害やがんリスクが高まるとされた
イヌリンが肝臓に悪いとされたきっかけは、2018年に行われたマウスの実験です。
腸内環境がひどく乱れているマウス(Tlr5という遺伝子が欠けたマウス)に、イヌリンを大量に与えました。その結果肝臓でコレステロールの流れが悪くなり、胆汁がたまりやすくなり、肝臓がんが多く見つかったと報告されています。
ただし、これは腸内環境が極端に悪いマウスだけで起こったことです。同じ実験で、腸内細菌を抗生物質でリセットしたら、がんはできませんでした。つまり、イヌリンだけでがんができるのではなく、腸内環境が悪い状態で大量に摂ったときにリスクがあるということです。
2019年にも別のマウス実験が行われましたが、このときは胆汁酸の変化はあったものの、肝臓に大きな問題は見つかりませんでした。
人間の場合、腸内細菌はマウスより種類が多く、Tlr5という遺伝子が欠けている人もほとんどいません。そのため、こうした実験結果をそのまま心配する必要はありません。
参考:
サプリメントの摂り過ぎが肝臓に悪いとされている
サプリメントは手軽に摂れる反面、つい摂りすぎてしまうことがあります。イヌリンもそのひとつです。粉末やタブレットで簡単に手に入るので、気づかないうちに一度に20g以上摂ってしまう人もいます。
イヌリンの目安は、1日5〜10g程度が一般的です。欧米では短期間なら25〜40gまで安全とされていますが、人によってはお腹の調子が悪くなることがあります。特に10〜15gを超えると、お腹が張ったり、ガスがたまったり、下痢になる人が増えてくるようです。
イヌリンは肝臓に悪いと言われることがあります。しかし多くは腸の不調や体のだるさを「肝臓のせい」と勘違いしているケースです。
ただし、一部の研究では、30g以上を長期間摂った場合に、肝臓の数値(ALTなど)が少し上がることも報告されています。そのため、高用量を長く続ける場合は注意が必要です。
イヌリンをサプリで摂るときは、少量から始めるのがポイントです。体調を見ながら、少しずつ増やすようにすれば安心できるでしょう。
参考:
肝臓が弱い人がイヌリンを摂取しても平気?

肝臓に不安がある人が「イヌリンを摂っても大丈夫?」と心配するのは自然なことです。脂肪肝や薬による肝障害を経験した人なら、なおさら気になるでしょう。
結論から言えば、肝機能に問題がある人でも、医師の管理のもとで適量を守ればイヌリンは基本的に安全です。ここでは肝臓とイヌリンの関係や、リスクについて解説します。
イヌリンがヒトの肝臓に悪い根拠は発見されていない
「イヌリンが人の肝臓に悪い」という確かな根拠は、今のところ見つかっていません。
むしろ、2020年に行われた臨床試験では、イヌリンを摂ることで肝臓の数値が良くなったという結果もあります。この研究は、脂肪肝(NAFLD)の患者を対象にしたものです。
参加者は最初に抗生物質で腸内環境を整え、その後イヌリンを1日8g(朝と夜に4gずつ)12週間続けました。すると、肝臓の酵素(ALT)が平均で19.6下がりました。これは肝臓の状態が改善したことを意味します。
ちなみに、イヌリンを摂らなかったグループでは、ALTは平均0.2しか下がりませんでした。この差は明らかで、イヌリンの効果が示されたといえます。
イヌリンは適量であれば肝臓に悪い影響を与える可能性は低いと言えそうです。むしろ、腸内環境が良くなることで、肝臓や脂質の代謝にも良い影響があると考えられています。
ただし、持病がある人や心配な人は、定期的に血液検査を受けて様子を見ながら使うと安心です。
参考:
イヌリンが脂肪肝の改善に役立つ可能性もある
イヌリンは、脂肪肝の改善にも役立つ可能性があると考えられています。
イヌリンを摂ると、腸内で短鎖脂肪酸が作られます。これらは腸だけでなく、肝臓にも良い影響を与えることが知られています。特に、腸と肝臓は「腸–肝軸」という仕組みでつながっていて、腸内環境が肝臓の健康に影響することがわかっています。
動物実験では、イヌリンを摂ることでインスリンの効きが良くなり、肝臓にたまる脂肪や炎症を減らす効果が報告されています。例えば、肝臓で炎症を引き起こす物質(TNF-αやIL-1βなど)の増加が抑えられたという結果もあります。
人を対象にした研究でも、イヌリンを摂ることで肝臓の数値(ALTなど)が良くなったり、腸内環境が整ったりすることがわかっています。ただし、脂肪肝の直接的な改善(CAP値の低下)については、まだ限られたデータしかありません。
脂肪肝の改善には、まずは食事と運動が大切です。ですが、食物繊維が不足しがちな現代の食生活では、イヌリンを取り入れることも一つの方法です。
イヌリンの具体的な効果はこちらの記事を参考にしてみてください。
参考:
過剰摂取やアレルギーのリスクはある
イヌリンは、腸内環境を整えるプレバイオティクスとして知られていますが、摂りすぎや体質によっては注意が必要です。
イヌリンはFODMAPと呼ばれる発酵しやすい食物繊維のひとつです。このため、過敏性腸症候群(IBS)の人は、お腹が張ったり、ガスが増えたり、下痢になることがあります。実際、国際的な研究では、イヌリンを摂ると腸内のガスが増えることがMRIで確認されています。
もしこうした症状が出たら、まずは摂る量を減らしてみましょう。それでも良くならない場合は、一時的に低FODMAP食に切り替えると、症状が楽になることがあります。
また、チコリや菊芋など、キク科の植物にアレルギーがある人も注意が必要です。イヌリンはこれらから作られることが多いので、ごく稀にアレルギー反応が出ることがあります。初めて使うときは、1〜2g程度の少量から始めるのが安心です。
薬との関係については、イヌリン自体が薬と直接影響し合うことは少ないと考えられています。ですが、腸内環境が変わることで、薬の効き方に影響する場合があります。特に、ワルファリンやリチウムを使っている人は、事前に医師に相談することをおすすめします。
参考:
MDPI, 『Nutrients』第16巻第3号, 2024年, 「The Role of the FODMAP Diet in IBS」
イヌリンの肝臓への影響は限定的

イヌリンが肝臓に与える悪影響は、ほとんどの場合は気になりません。適切な量ならむしろ体に良いと考えられています。過剰に摂ったり、特殊な条件が重なったときだけ注意が必要です。
動物実験では、イヌリンによって肝臓に負担がかかるケースも報告されていますが、遺伝的な異常があるマウスや高脂肪食とセットで大量に摂った場合の話です。人間が普段の生活で摂る範囲では、こうしたリスクはほとんど再現されていません。
量を守り、体調や検査結果をこまめにチェックすることが、肝臓に不安がある人にとって一番の安心材料になります。こうした習慣を続ければ、イヌリンを生活に取り入れつつも無理なく健康を保てるでしょう。



