「温めスパイス」八角の使い方と効能|色んな料理へ活用できる?
「八角」というスパイスをご存知ですか?
日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、中国やインド、ヨーロッパでは主要なスパイスのひとつとして親しまれ、メインからデザートまでさまざまな料理に使われています。
今回は、かなり個性的ともいわれるその味や香り、使い方などについてご紹介していきましょう。
八角とは
八角は、「トウシキミ」という中国原産の木の果実。
英語では「スターアニス」、生薬名では「大茴香(だいういきょう)」とも呼ばれています。
特に中華料理には欠かせないスパイスで、そのまま使われるだけでなく、「五香粉(ごこうふん、ウーシャンフェン)」という中国のスパイスミックス(七味唐辛子のようなもの)にも含まれています。
薬効も高く、漢方薬の材料や薬膳の食材として用いられることもあります。
独特の香りは好き嫌いが分かれると言われますが、香辛料としてだけでなく香水の原料として使われることも多いようです。
その星形のかわいらしい形から、ポプリやリースなど、見た目を楽しむために使われることも。多くの人を魅了するスパイスです。
八角の味と効能、摂取量
八角の味・匂い
「甘い香り」と形容されることの多い八角の香り。
「スターアニス」「大茴香(だいういきょう)」と呼ばれるとおり、セリ科のハーブであるアニスやウイキョウ(フェンネル)と近い香りをもっています。
甘いだけでなく清涼感とスパイシーさを併せもち、オリエンタルな雰囲気と奥ゆきを感じさせる香りです。八角は生薬にもなっており、「漢方薬のような香り」と感じる人も。
味にはほろ苦さがあり、脂っぽい料理や肉料理に使うとさっぱりした印象になります。
八角の効果・効能
八角は漢方薬の原料となる生薬として認められており、次のような効果・効能があると言われています。
- ・身体をあたためる効果
- ・胃腸をととのえる効果
- ・食欲を増進させる効果
- ・痛みを止める効果
- ・気のめぐりをよくする効果
- ・母乳の出を促進する効果
特に身体を温める効果が高く、冷えが気になる時や食欲不振の時に使ってみるとよさそうです。
ちなみに、インフルエンザ薬であるタミフルの原材料として八角が使われたことがありますが、八角自体にはインフルエンザを治療する効果はないそうです。
八角の許容摂取量
スパイスとしての八角の摂取量については、特に守るべきとされる基準はないようです。
ただ、薬にもなるほどの効力をもつスパイスですので、大量に摂取すれば身体にとってむしろ害になることは想像に難くありません。
香りの強いスパイスなので、使いすぎる・食べ過ぎるということは考えづらいですが、効果や効能を目的として独断で大量摂取することは避けましょう。
使用は「おいしい」と感じる量にしてください。
八角の使い方―世界の八角料理から
八角を試してみたい気持ちはあるけれど、一体どんな料理に使えばいいか見当もつかない…そんな方のために、世界の八角料理をご紹介します。
今回ご紹介する中国や台湾、インド、そしてヨーロッパでは、それぞれ全く違う八角の使い方をしています。
「この八角料理は口に合わなかったな」という場合でも、使い方が違えば美味しさに驚くということもありますので、ぜひ色々試してみてください!
中国・台湾の八角料理
肉の臭みを消してさっぱりとさせるのに使うのが中華風。
肉料理以外にも、枝豆やスナックの香りつけなど、さまざまなものにアクセントとして使われています。
お菓子の餡などに使われることもあり、身近なスパイスとして活用されているようです。
- ・東坡肉(トンポーロー:中国の豚の角煮。八角の香りが特徴)
- ・魯肉飯(ルーローハン:八角と一緒にやわらかく煮込んだ豚肉をかける、台湾の丼もの)
- ・牛肉麺(ニョーローメン:牛肉やトマトを煮込んだ汁が美味な台湾の麺。八角の香りがポイント)
- ・茶葉蛋(チャーイエタン:ウーロン茶と醤油、八角の香りがベースになった台湾の煮卵)
インドの八角料理
多様なスパイスを組み合わせる「スパイス使いの妙」が魅力のインド料理。
八角も単品で使われるわけではなく、さまざまな他のスパイスと組み合わせて使われることが多いようです。
八角の他にシナモンやフェネグリーク、コリアンダー、カルダモン、クローブなど、香りを重ねることで奥深い美味しさを醸し出すようです。
特に一緒に使われることが多いのがシナモン。まずはいつものカレーに少量プラスしてみるといいかもしれません。
- ・チキンビリヤニ(鶏肉を使ったスパイシーな炊き込みご飯)
- ・カレー(鶏肉、マトン、ひよこ豆などさまざまなカレーに)
- ・ライタ(ヨーグルトサラダ。クミンシードやミント、その他のスパイスと一緒に)
- ・マサラワダ(軽食としていただく、豆をつかった揚げもの)
ヨーロッパの八角料理
ヨーロッパでは「スターアニス」と呼ばれ、シナモンなどと一緒に甘いデザートに使われることが多いようです。
甘さと温かみのある風味を添えてくれる八角は、特に寒い季節に楽しむドリンクや焼き菓子に使われることが多く、スパイスの防腐効果も期待してか、クリスマスの焼き菓子に使われるケースが多いようですね。
果物のコンポートや焼きりんごなどに使っても美味しいです。
- ・パン・デピス(シナモンやナツメグ、クローブなどの香辛料と蜂蜜を使ったフランス菓子)
- ・ホットワイン(シナモンやクローブなどと一緒にワイン、オレンジやりんごの果汁、砂糖を入れて軽く煮たワイン)
- ・クリスマスクッキー(シナモン、クローブ、カルダモンなどのスパイスとブレンドして)
- ・フルーツのコンポート(りんごや洋梨、いちじくなど好みの果物+ワイン+スパイスで)
八角レシピ・日本向けアレンジ
さまざまな料理を「クセになる味わい」に仕上げてくれる八角ですが、日本人の中には八角の香りが苦手という方も多いようです。
八角を使う際は量の加減がポイント。
香りが強いので、控えめに使うことがおいしくいただく秘訣です。
今回は、「八角初心者」の方も楽しめるよう、複数のスパイスを使った料理をご紹介します。
鶏の八角煮
ご飯の進む味わいで、紹興酒や日本酒などのお酒にも合います。卵と一緒に煮るのもおすすめですよ。
八角の香りが口に合うか心配な方は、1かけから始めても。
材料
- ・鶏の手羽元
- 600g
- ・チンゲンサイまたは小松菜
- 2束
- ☆しょうゆ
- 130ml
- ☆酒
- 大さじ1
- ☆砂糖
- 15g
- ☆水
- 100ml
- ●ねぎの青い部分
- 5㎝
- ●にんにく
- 1かけ
- ●しょうが
- 1/2かけ
- ●シナモン
- 小さじ1/3
- ●八角
- 2かけ(8つの角のある八角を2つに折ったもの)
- ●七味唐辛子
- 少々(好みで)
つくり方
- 1
- にんにくとしょうがの皮をむき、包丁でつぶします。
- 2
- 鍋に☆を入れて火にかけ、煮立ったら鶏肉と●を入れます。
- 3
- 時々ひっくり返しながら、蓋をして弱火で30分ほど煮込みます。
- 4
- 火を止めて冷めるまでおき、味をしみこませます。
- 5
- チンゲンサイは茹でてから冷まし、4㎝程度に切り分けます。
- 6
- 温めなおした4と5を皿に盛ってできあがりです。
スターアニスカクテル
身体を温める効果もあるので、特に冷えやすい女性におすすめです。
生クリームを入れるとより濃厚で満足感ある一品に。
材料
- ・牛乳
- 300ml
- ・ウイスキー
- 40ml
- ・はちみつ
- 好みの量
- ☆シナモンスティック
- 1本
- ☆八角
- 1個
- ☆ナツメグ
- 2つ、パウダーの場合は小さじ1/8
つくり方
- 1
- 牛乳と☆を小鍋に入れて沸騰寸前まで温めます。
- 2
- 1にはちみつ、ウイスキーを入れ、よくかき混ぜたらできあがりです。
スパイス杏仁プリン
八角が苦手という方にぜひ試していただきたいレシピです。
材料
- ・牛乳
- 400ml
- ・生クリーム
- 150ml
- ・砂糖
- 25g
- ・杏仁霜
- 15g
- ・ゼラチン
- 6g
- ☆グラニュー糖
- 35g
- ☆シナモンスティック
- 1/2個
- ☆カルダモン
- 2個
- ☆クローブ
- 2個
- ☆八角
- 1個
- ☆水
- 200ml
つくり方
- 1
- ゼラチンは5倍の水に振り入れてよくかき混ぜ、20分ほど置いておきます。
- 2
- 小鍋に牛乳と杏仁霜を入れ、よくかき混ぜて溶かし、砂糖を加えて沸騰寸前まで温めます。
- 3
- 2を火からおろしてかき混ぜ、生クリームを加えます。
- 4
- 3を再度温めて、ゼラチンを加えて溶かし、ボウルの中に濾します。
- 5
- 4をよく混ぜながら粗熱をとり、器に入れて冷蔵庫で冷やします。
- 6
- ☆の材料をすべて小鍋にいれ、弱火で3分ほど煮ます。冷めてから濾し、冷やしてシロップにします。
- 7
- 5に6をかけてできあがりです。
八角についてのQ&A
- 八角の香りが苦手な人でも食べやすい方法を教えてください。
- 複数のスパイスを使うのがおすすめです。特にシナモンとは相性がよく、八角の香りに馴染みがない方でも食べやすくなります。
- 八角の代用になるハーブやスパイスを教えてください。
- アニス、フェンネルには、八角と同じアネトールという成分を含んでいます。アニス、フェンネルがない場合は、スパイスミックス「五香粉」を使うか、シナモンで代用してみてください。
- 八角を砕いて粉にして使うとどうなりますか?
- そのまま煮込むのが原則です。砕いて使うとえぐみや苦みにつながることもあるので、おすすめできません。
- 八角でエスニック気分を味わえる使い方を教えてください。
- さまざまなスパイスと一緒に油にいれて香りを引き出す、インド風の使い方はいかがでしょうか?ホールのカルダモンやシナモン、クローブ等といっしょに熱した油に入れて香りを引き出し、その油でカレーを作ったり、肉や野菜を炒めたりします。炒飯などにしてもいいですね。
- 八角の入ったスパイスミックス「五香粉」について詳しく教えてください。
- ブレンド内容は陳皮、シナモン、花椒、クローブ、八角、フェンネルなどで、製品によってさまざまです。
中でも中心となるのが八角の香りで、炒め物や揚げ物などさまざまな料理に使われています。
- 八角の賞味期限や保存方法について教えてください。
- 未開封の八角は2年ほど保存できるといわれています。開封後は空気が入らないように密封し、常温か冷蔵庫の中での保存をおすすめします。