乳酸菌は400種類以上!代表的な16種類の効果効能を解説
記事の監修
管理栄養士
安藤ゆりえ
老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。
乳酸菌の定義としては、「カタラーゼ陰性である(酸素を使わずにエネルギーを得ている)」ことや「消費した糖から50%以上の割合で乳酸を生成する」など6つの特徴が挙げられています。
難しいですが、要するに6つの特徴に該当すればすべて乳酸菌と呼べるため、たくさんの種類があるということです。形態・住んでいる場所・エサにするもの・塩への耐性・生み出す香りや味わい・生成する物質など、その特徴は菌種や株によってさまざま。期待できる効果効能にも差があります。
この記事では、代表的な乳酸菌16種類を詳しく解説します。種類ごとに期待できる効果効能や多く含む食品を解説するので、ぜひ参考にしてください。
乳酸菌の種類一覧
乳酸菌の名称は、「属・種・株」の順に表記されます。たとえば「ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株」であれば、ラクトバチルス属カゼイ種のシロタ株ということです。乳酸菌の基本的な性質・遺伝子情報にはほとんど差がありませんが、健康効果は「株」によって差があります。では、種類ごとの違いを表で確認しましょう。
種類 | 効果効能 | 多く含む食品 |
Leuconostoc mesenteroides (ロイコノストック・メセンテロイデス) | 腸内環境改善、抗肥満効果(NTM048株) 血中中性脂肪低減(R037株) | キムチ、すんき漬け、豆乳ヨーグルトなど |
Pediococcus acidilactici (ペディオコッカス・アシディラクティシ) | IgA(注1)産生増強(K15株) | ぬか床、発酵乳など |
Lactobacillus plantarum (ラクトバチルス・プランタルム) | 免疫力アップ、歯周病改善効果(HK L-137株) | すぐき漬け、キムチ、ピクルス、鮒ずし、ワイン、サワードウ、豆乳ヨーグルトなど |
Lactobacillus brevis (ラクトバチルス・ブレビス) | 腸内フローラ改善、不安改善効果(KB290株) | すぐき漬け、キムチ、きゅうり古漬けなど |
Lactobacillus delbrueckii (ラクトバチルス・デルブルエッキイ) | 風邪予防効果(1073R-1株、ST9618株) | ヨーグルト、チーズなど |
Streptococcus thermophilus (ストレプトコッカス・サーモフィルス) | 便秘改善、皮膚機能改善効果(1131株) | ヨーグルト、チーズ、豆乳ヨーグルトなど |
Lactobacillus casei (ラクトバチルス・カゼイ) | 免疫調節、アレルギー抑制効果(シロタ株) | ヨーグルト、チーズ、サワードウなど |
Lactococcus lactis (ラクトコッカス・ラクチス) | 肌の免疫力・バリア機能増強効果(JCM 5805株) | チーズ、サワークリーム、発酵バターなど |
Tetragenococcus halophilus (テトラジェノコッカス・ハロフィルス) | 抗アレルギー効果(MN45株) | 醤油、味噌、魚醤、塩辛など |
L. rhamnosus (ラクトバチルス・ラムノサス) | 胃酸・胆汁に強い、寿命延長効果、抗腫瘍作用に期待、免疫維持作用、腸内環境改善作用、乳児のアトピー発現抑制効果(GG株) | ヨーグルト、乳酸菌飲料 |
L. delbrueckii subsp. bulgaricus (ラクトバチルス・ブルガリクス) | 整腸作用(LB91株) 大腸内での定着性が高い、腸内環境改善(ガセリーSP株) | ヨーグルト、乳酸菌飲料 |
L. gasseri (ラクトバチルス・ガセリ) | 胃粘膜の改善、ピロリ菌抑制(LG21株) | ヨーグルト、乳酸菌飲料 |
B. lactis (ビフィドバクテリウム・ラクティス) | 耐酸性、耐胆汁性がある、大腸で腸内環境改善効果を発揮(FK12、LKM512、Bb-12株) | ヨーグルト、乳酸菌飲料 |
B. breve (ビフィドバクテリウム・ブレーベ) | 整腸作用、大腸のただれを緩和、潰瘍性大腸炎の症状軽減効果(ヤクルト・ビフィズス株) | ヨーグルト、乳酸菌飲料 |
L. helveticus (ラクトバチルス・ヘルベティカス) | 善玉菌を増加、悪玉菌を減少(Ck32株) | ヨーグルト、乳酸菌飲料 |
B. animalis (ビフィドバクテリウム・アニマリス) | 食物の腸管通過時間を短縮(BIO株) | ヨーグルト、乳酸菌飲料 |
相性の良い乳酸菌の種類は人によって異なる
辨野義己『補完・代替医療プロバイオティクス』(金芳堂)によれば、腸内細菌には個人によって特有の構成があるそうです。
シロタ株を投与した時に腸内のビフィズス菌が増加する被験者と、全く影響を受けない被験者とがいるという実験結果もあります。ヨーグルトをはじめとする乳酸菌を選ぶ際には、個人の腸との相性が重要であると考えられます。
腸との相性をはかるには実際に自分の身体で試してみるほかありません。ヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメントなどを試す際は2週間ほど続けてみて、効果が実感できるかどうかを確認してみましょう。
なお、採便したものを送付することで腸内フローラを検査するサービスもありますが、この検査でわかるのは、大腸との腸内フローラ(細菌叢)と口腔常在菌が主流です。経口摂取した乳酸菌のほとんどは小腸に住むため、乳酸菌を摂取していても検査では検出されないことがあります。相性の良さをはかる方法として乳酸菌を摂取してみるほかないのは、これも理由です。
動物性乳酸菌と植物性乳酸菌とは
乳酸菌の説明で、「動物性乳酸菌」「植物性乳酸菌」という言葉が使われることがあります。
「植物性乳酸菌」は植物質のものに生育し、ブドウ糖やショ糖などさまざまなものをエサにすることができ、塩分には強く、腸まで生きて届きやすいー一般的にはそう言われていますが、そのような分類法は科学的には正しいとはいえないとする意見もあります。
たとえば魚醤や塩辛に住んでいる菌が味噌・醤油に生育する菌と同じ菌種であるということもあるそうです。植物からも動物からも分離される菌について、公益財団法人腸内細菌学会では、「(分離源によって)微生物学的性質の違いはありません」としています。
乳酸菌を選ぶときは、「動物性か、植物性か」よりも、それぞれの菌種・菌株の特徴に注目した方がよさそうです。
乳酸菌関連商品は、前述のように百花繚乱の状態である。商品間の競争も厳しくなっている。そうであれば、どうしても差別化が重要になる。早い時期から、このことを意識されていたのが、東京農業大学・生物応用化学科の名誉教授岡田早苗氏である。それが、「植物性乳酸菌」である。漬物やキムチ、みそ・醬油といった植物質に生育する乳酸菌を指すという。一般的な乳製品に生育する動物性乳酸菌に対する呼称である。
“参考文献:横山勉「植物性乳酸菌を考える」,JAS情報,2017.より引用”
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管理栄養士からのコメント
ヨーグルトやキムチなどにはLG21やガゼリ菌、ビフィズスなど様々な種類の乳酸菌の名前が付いており、どれが良いか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
乳酸菌は腸内環境を整えることはよく知られていますが、乳酸菌の中でも菌の種類によって効果的もさまざまです。 乳酸菌の効果から商品を選び、本当に効果があるか同じ商品を2週間食べ続けて、得たい効果を実感できるか楽しみながら試してみると良いですね。
また、毎日食べ続けるものだからこそ乳酸菌以外の成分にも目を向けることも大切です。 過剰な砂糖や人工甘味料の種類によっては腸内環境に悪影響を与えることもあるので、成分表示も確認してみましょう。
管理栄養士プロフィール
安藤 ゆりえ
老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。
2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。
また「食を見直すならまずは毎日使う調味料から」をコンセプトに地元愛知県三河のみりんや味噌などの伝統的な調味料の素晴らしさを伝えるセミナーなども開催。
食や栄養に関すること全般ですが特に
・調味料について(みりん、味噌や醤油などの製法やどんなものを選ぶと良いかなど)
・体に優しいスイーツの選び方、作り方
・ダイエットレシピの考案
・時短レシピの考案を得意としています。
乳酸菌の種類についてのQ&A
- ビフィズス菌と乳酸菌は何が違うのですか?
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ビフィズス菌は主に人や動物の腸管に生息しています。酸素があるところでは発育できず、乳酸菌のように多くの発酵食品には含まれていません。
- 乳酸菌はとりすぎるとどうなりますか?
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乳酸菌を摂りすぎると、一部の人は消化器系で何らかの不快感を感じることがあるかもしれません。乳酸菌のサプリメントを摂取する際は、製品の品質や純度を確認し、必要なら医師や栄養士に相談してから摂取することをおすす めします。
- 痩せる乳酸菌があれば種類を教えてください。
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脂肪を減らすといわれている乳酸菌はいくつか存在し、主なものに「ガセリ菌SBT2055株」や「ラクトバチルス・アミロボラス乳酸菌CP1563株」などがあります。
- 日本酒に使われる乳酸菌の種類は?
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雑菌を淘汰する目的で日本酒に乳酸菌をとり入れる製造方法を「生酛造り」といいます。 「生酛造り」に関与する乳酸菌は、主にLeuconostoc mesenteroidesとLactobacillus sakeiの2種類だそうです。これらの乳酸菌は、自身が生成した乳酸により死滅するため、できあがった日本酒には含まれていません。
- 摂取する乳酸菌の種類が多いと腸の中でケンカするのでは?
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善玉菌同士は、酸性の環境を好む仲間です。エサを取り合って競合することはあっても、互いに悪影響を与えて数を減らしてしまうことはありません。
- どんな種類の乳酸菌を選ぶべきでしょうか?たくさんあって迷います。
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科学的に証明された効果も参考になりますが、自分の身体との相性がよいかどうかは試してみるまでわかりません。まずは2週間摂取し続けて、自分の身体との相性を試してみましょう。
- ロイテリ菌とは何ですか?
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ロイテリ菌とは、哺乳類の母乳などに存在する乳酸菌のひとつで、胃酸などに強く、生きて腸まで届く乳酸菌です。元来人間の体に存在する菌なので、安心して摂取していただける菌だと言えるのではないでしょうか。
- プラズマ乳酸菌とは何ですか?
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プラズマ乳酸菌は、理化学研究所が保有する菌株バンクより発見された菌です。プラズマ乳酸菌は免疫細胞に働きかけているという研究結果もあるようです。
参照:
腸内環境改善、抗肥満効果(NTM048株) https://www.nitto-pharma.co.jp/news/679/
血中中性脂肪低減(R037株) https://www.kaneka.co.jp/service/news/n20120619/
IgA産生増強(K15株) https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2018/pr20180315/pr20180315.htm
免疫賦活、歯周病改善効果(HK L-137株) https://health.housefoods.jp/hk-l-137/exp_kenkyu_8.html
腸内菌叢改善、不安改善効果(KB290株) https://www.kagome.co.jp/company/news/2011/000098.html
風邪予防効果(1073R-1株) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/24/1/24_10/_pdf/-char/ja
風邪予防効果(ST9618株) https://www.itoen.co.jp/news/detail/id=24439
便秘改善、皮膚機能改善効果(1131株) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/22/1/22_1_1/_pdf
免疫調節、アレルギー抑制効果(シロタ株) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/21/2/21_2_107/_pdf/-char/ja
肌の免疫力・バリア機能増強効果(JCM 5805株) https://www.kirin.co.jp/company/news/2018/0323_01.html
抗アレルギー効果(MN45株) https://www.marukome.co.jp/rd/result10/