甘酒の効果効能|栄養豊富で美容・便秘・血糖値改善も【管理栄養士監修】

甘酒は体に良い、と耳にしたことがあっても、「どんな栄養素が含まれているの?具体的にどんな効果があるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

実は、甘酒の中でも米麹由来の甘酒は「飲む点滴」とも呼ばれるほど栄養豊富で、美容や便秘改善、血糖値の安定など多くの健康効果が期待できる発酵飲料です。

この記事では、甘酒の効果効能や栄養成分について、研究結果も交えて分かりやすくご紹介します。日常生活に取り入れて、無理なく健康と美容をサポートするヒントとして、ぜひ最後までご覧ください。

記事の監修
管理栄養士
稲尾 貴子
管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。パン作りが趣味の2児の母です。食欲旺盛なこども達のためにパンを作り始めたところ、パンの奥深さに魅了されています。

管理栄養士:稲尾貴子
もくじ

甘酒の栄養成分とは

甘酒のアルコールは?
成分名含有量(100gあたり)
エネルギー76 kcal
たんぱく質1.7 g
炭水化物18.3 g(糖類:ブドウ糖:3.4g,オリゴ糖:2.7g)
食物繊維0.4 g
ミネラルナトリウム:20mg,カリウム:150mg,カルシウム:20mg,鉄:0.3mg
ビタミンB群B6:0.1mg,B2:0.06mg,B1:0.04mg,B12:0.2µg
必須アミノ酸ロイシン:0.26g,バリン:0.16g,イソロイシン:0.14g,フェニルアラニン:0.09g,メチオニン:0.07g
その他アミノ酸グルタミン酸:0.35g,アスパラギン酸:0.31g,アラニン:0.18g,グリシン:0.12g
参照:文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)/麹甘酒に含まれる成分について 倉橋敦(2017)

上記の表からわかるように、甘酒には私たちの健康を支える多彩な栄養素が豊富に含まれています。ここでは、その中でも特に注目したい栄養成分として、以下の4つを取り上げてご紹介します。

  • 糖類
  • 食物繊維
  • ビタミンB群
  • アミノ酸

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

糖類

甘酒には優しい甘さの元である、ブドウ糖やオリゴ糖、麦芽糖などの糖類が豊富に含まれています。

米麹の酵素がデンプンを分解して生まれる甘みのため、基本的に砂糖は入っていません。そのため、砂糖と比べて体への負担が少なく、効率よくエネルギーに変換される特徴があります。

これにより、朝や疲れている際の栄養補給にも適しており、手軽にエネルギーを補充できます。

参考:文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
麹甘酒に含まれる成分について 倉橋敦(2017)

食物繊維

甘酒は、主に米由来の食物繊維が含まれており、発酵過程でも一部の水溶性食物繊維が作り出されます。その量は、甘酒100gあたり約0.4gと、白米の約1.5倍です。

通常の穀物飲料では食物繊維が減ることが多い中、甘酒は発酵によって食物繊維を保ち、さらに消化しやすい状態にしている点が優れています。

そのため、胃腸への刺激を抑えながら食物繊維を摂取できるのも嬉しい点です。

よって、甘酒は、消化に優しく、効率的に食物繊維を摂取できる飲み物だといえるでしょう。

参考:文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
麹甘酒に含まれる成分について 倉橋敦(2017)

ビタミンB群

甘酒には、ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸、葉酸などのビタミンB群が豊富に含まれています。

甘酒100gあたりのビタミンB2は約0.06mg含まれており、これは玄米の約3倍の量に相当します。また、米類には含まれていないビタミンB12も含まれています。

一般的な米やパンではビタミンB群が失われがちですが、甘酒は発酵によってこれらの栄養素が増加しているのが特長です。

よって、甘酒は、発酵による栄養価向上で効率的にビタミンB群を摂取できる優れた飲み物だといえるでしょう。

参考:文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
麹甘酒に含まれる成分について 倉橋敦(2017)

アミノ酸

甘酒には、9種類の必須アミノ酸をはじめ、グルタミン酸、アラニン、アルギニンなど、他のアミノ酸も豊富に含まれています。甘酒100gあたりの総アミノ酸量は約560mgで、これは牛乳の約1.2倍に相当します。

甘酒は発酵によってアミノ酸を作り出しており、植物性食品で必須アミノ酸をすべて含む珍しい飲み物です。

参考:文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
麹甘酒に含まれる成分について 倉橋敦(2017)

甘酒の効果効能5選

「飲む点滴」と呼ばれる甘酒は、おいしいだけでなく、私たちの健康や美容に役立つ成分がたっぷり詰まった発酵飲料です。

ここでは、具体的な働きや研究結果を交えて、甘酒の代表的な効果効能を5つご紹介します。

  • 血糖値の上昇を抑える
  • 美容・美肌をサポートする
  • 便秘を予防・解消する
  • 疲労回復をサポートする
  • 免疫力を高める

それぞれ詳しく見ていきましょう。

血糖値の上昇を抑える

麴甘酒に含まれている食物繊維やオリゴ糖には、糖の吸収を緩やかにし、食後の血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。

実際の研究でも、健常者が1日118gの麴甘酒を12週間摂った際、食後の血糖値やインスリンの上昇が有意に抑えられたことが確認されました。さらに、別の試験でも糖の吸収速度をゆるやかにする働きが見られました。

こうした結果から、麴甘酒は日常的な摂取によって食後血糖の安定に役立つ飲料と考えられます。

参考:麴甘酒は健常者の食後血糖およびインスリンの上昇を抑制する有用成分を含有する 倉橋 敦(2020)
麴甘酒の長期摂取による安全性検証試験 倉橋敦(2020)
美味しいだけじゃない我が国の伝統甘味飲料「麴甘酒」 倉橋敦(2023) 

美容・美肌をサポートする

代謝を促進して美肌に

麴甘酒は、肌の保湿維持やバリア機能の向上、毛穴の引き締め、肌トーンの改善などが期待でき、美肌づくりや美容のサポートに役立ちます。その理由は、以下のような美容や美肌に有用な成分が豊富に含まれているためです。

  • ビタミンB群:皮膚や粘膜の健康維持、代謝を促進
  • フェルラ酸:抗酸化作用で紫外線ダメージや活性酸素から肌を守り、メラニン生成を抑制
  • エルゴチオネイン:抗酸化作用で細胞を酸化ストレスから保護
  • グルコシルセラミド:角質層の水分保持やバリア機能を高め、肌の潤いをサポート
  • N‑アセチルグルコサミン:ヒアルロン酸の材料となり、保湿力を高める
  • レジスタントプロテイン:腸内環境を整え、体の内側から肌状態を改善

実際の研究でも、1日118gの麹甘酒を8週間摂取した際に毛穴の引き締めや肌トーンの改善などの変化があったと報告されています。

よって、麴甘酒は日常的な美容・美肌ケアに役立つ飲料といえるでしょう。

参考:健康と美容に貢献する「酒粕」の成分 T WATANABE(2012)
美味しいだけじゃない我が国の伝統甘味飲料「麴甘酒」 倉橋敦(2023) 

便秘を予防・解消する

便秘の予防・解消

麹甘酒にはオリゴ糖や食物繊維、レジスタントプロテインが含まれ、腸内環境を整えて排便を促す働きがあります。

実際の研究では、便秘気味の人を対象に1日118gの麴甘酒を1週間摂取した結果、週の排便回数が約4.4回から6.1回に増加し、便秘の改善が見られました。

よって、麴甘酒は腸内環境を整え、便通をサポートする飲料といえるでしょう。

参考:便秘に対する甘酒摂取の効果住吉和子(2017)
麹甘酒に含まれる成分について 倉橋敦(2017)
美味しいだけじゃない我が国の伝統甘味飲料「麴甘酒」 倉橋敦(2023) 

疲労回復をサポートする

熱中症予防にぴったり

麴甘酒は、ブドウ糖やビタミンB群、必須アミノ酸など疲労回復に役立つ栄養素を豊富に含み、疲労感の軽減・回復が期待できます。

実際の研究では、50〜60代女性が2週間毎日190gの甘酒を摂取した結果、精神的・身体的な疲労感が軽減されたと報告されています。また、大学の運動選手が14日間運動後に麴甘酒を摂取した試験でも、運動後の疲労感の軽減が確認されました。

よって甘酒は、日常生活や運動後の疲労回復を効果的にサポートしてくれる飲料だといえるでしょう。

参考:美味しいだけじゃない我が国の伝統甘味飲料「麴甘酒」 倉橋敦(2023) 

免疫力を高める

点滴と同じ成分で疲労回復!

麴甘酒を日常的に取り入れると、体の免疫機能を自然に整える効果が期待できます。これは、オリゴ糖やアミノ酸、β‑グルカンやマンナンといった多糖類、レジスタントプロテインなど、免疫調節に関わる成分が豊富に含まれているためです。

実際の研究では、麴甘酒の成分が免疫細胞に働きかけ、炎症を抑えるIL‑10や感染防御に関わるIL‑12の分泌を促すことが確認されています。

よって、麴甘酒に含まれている成分は腸内環境を整え、免疫バランスを支える働きがあり、免疫サポートにも役立つといえるでしょう。

参考:麹甘酒に含まれる成分について 倉橋敦(2017)
美味しいだけじゃない我が国の伝統甘味飲料「麴甘酒」 倉橋敦(2023) 

甘酒効果で内側から健康と美容をサポート

甘酒は、「飲む点滴」と呼ばれるほど、ブドウ糖やオリゴ糖、ビタミンB群、アミノ酸などの栄養が豊富です。

血糖値の安定、美肌づくり、便秘解消、疲労回復、免疫サポートなど、多方面での効果が研究でも確認されており、日常に取り入れることで体の内側から美容と健康をサポートしてくれます。

毎日の生活の中で、自分のライフスタイルに合わせて甘酒を取り入れることで、無理なく健康習慣を続けることができます。ぜひ今日から、手軽でおいしい甘酒を活用してみてはいかがでしょうか?

なお、美味しく取り入れやすい甘酒のおすすめレシピは、こちらの記事で詳しく紹介しております。

管理栄養士からのコメント

栄養豊富な甘酒は、夏の栄養ドリンクとして古くから日本人に愛されてきました。
疲労回復に必要なビタミンB群だけでなく、食物繊維やオリゴ糖なども多く含み、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えてくれるので、便秘予防や便秘解消が期待できるのも嬉しいですね。
米麹甘酒のようにお米を原料とする甘酒は、赤ちゃんの頃から慣れ親しんだお米本来の優しい甘みで、アルコールは含まれません。乳幼児や妊婦さんは特に、米麹甘酒か酒粕甘酒かしっかり確認してから飲むようにしてくださいね。

寒い時期には温めて飲むと身体の中から温まり、風邪予防に効果的です。そのまま冷やしても温めても美味しい甘酒ですが、ショウガ汁、ゆず果汁やレモン果汁などを加えたり、柑橘類の皮を刻んで加えたり、砂糖やジャム、ハチミツを加えるなど、お好みでアレンジするとさらに美味しくいただけますよ。

管理栄養士:稲尾貴子

管理栄養士プロフィール

稲尾 貴子

公式サイト

管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。パン作りが趣味の2児の母です。食欲旺盛なこども達のためにパンを作り始めたところ、パンの奥深さに魅了されています。

甘酒の効果効能に関するQ&A

甘酒はどのくらい飲むと効果が出ますか?

研究では1週間で便通改善、3〜4週間で腸内環境改善、8週間で美肌効果、12週間で血糖値抑制や体脂肪の減少が報告されています。目的にもよりますが、まずは1日1杯(50〜200g)を1カ月以上継続してみましょう。

酒粕甘酒と米麹甘酒の違いは何ですか?

米麹甘酒はアルコールを含まず、ビタミンB群やオリゴ糖、酵素が豊富です。酒粕甘酒はタンパク質や食物繊維が含まれますが、加糖されており微量のアルコールも残るため、子どもや妊娠中の方は注意が必要です。

甘酒は寝る前に飲んでも大丈夫ですか?

寝る前の甘酒はGABAやアミノ酸によるリラックス作用が期待でき、睡眠の質をサポートします。ただし、飲みすぎはカロリー過多になるため1杯(50〜200g)程度に抑えましょう。

市販の甘酒は効果がないですか?

市販の甘酒でも効果はあります。市販品は滅菌処理で一部の酵素が減少する可能性がありますが、便秘改善や美肌効果などが研究で確認されています。手軽さを重視する方には市販品がおすすめです。

甘酒は血糖値に影響しますか?

麹甘酒には食物繊維やオリゴ糖が含まれ、糖の吸収を緩やかにして食後の血糖値上昇を抑える働きが期待されています。研究でも、1日118gを12週間飲んだ際に血糖値の上昇の抑制が確認されています。

甘酒は美容にもいいですか?

甘酒にはビタミンB群やフェルラ酸、グルコシルセラミドなど美容に有効な成分が豊富です。1日118gを8週間飲むと毛穴の引き締めや肌トーン改善が見られたという研究報告もあり、甘酒は美容をサポートする発酵飲料として注目されています。

甘酒で便秘は改善しますか?

甘酒にはオリゴ糖やレジスタントプロテイン、食物繊維が含まれ、腸内環境を整える働きがあります。実際に、便秘気味の人が1週間甘酒を飲んだところ、排便回数が増えたという研究結果があります。

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この記事を書いた人

農業と栄養について学んだ知識を活かし、食や暮らしに関する記事を執筆中。趣味は家庭菜園とお菓子作り。子どものために作ったおやつを、つい自分が食べすぎてしまうのが最近の悩みです。

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