納豆菌の健康効果7選|摂りすぎの危険性と効果的な時間も解説

納豆は日本の伝統的な発酵食品です。そのおいしさと栄養価の高さから、積極的に食べている方も多いのではないでしょうか。納豆の健康効果の鍵を握るのが「納豆菌」です。
納豆菌は腸内環境を整えたり、免疫力を高めたりする働きがあるとされ、生活習慣病の予防やダイエットにも役立つと注目されています。
この記事では、納豆に含まれる「納豆菌の効果」について徹底解説します。納豆菌が私たちの健康にどのように役立つのか、科学的な根拠を交えながらくわしく見ていきましょう。また、効果を高める時間帯や、摂りすぎによる影響についても紹介します。納豆をもっと健康的に取り入れたい方は、ぜひ参考にしてください。
納豆菌のもつ7つの効果とは

納豆菌は、大豆を納豆へと変化させる微生物であり、多くの健康効果が期待されています。納豆菌が私たちの体にもたらす効果は以下の通りです。
- 便秘の改善
- 免疫力の向上
- 肌の調子を整える
- 冷えや肩こりの改善
- ダイエット効果
- 生活習慣病の予防
- 骨の健康維持
それぞれ見ていきましょう。
便秘の改善
納豆菌は、健康にいい生きた微生物「プロバイオティクス」のひとつで、腸内環境を整え、便秘を改善する効果が期待できます。
納豆菌の特徴は、熱や酸への耐性が高く、生きたまま腸に届くことです。腸内では、善玉菌の増殖を助け、一方で悪玉菌の活動を抑制する働きをします。これにより、腸の動きが促進され、自然な便通へとつながります。
また、納豆菌が作り出す「ジピコリン酸」には、抗菌作用があり、腸内フローラのバランスを整える働きがあります。これにより、便秘だけでなく下痢などの不調も和らぎ、腸の健康維持に貢献するのです。
参考:細井知弘 Probioticとしての納豆菌の作用―腸内菌叢と腸管免疫システムに対する作用―(2003)
免疫力の向上
納豆菌には、私たちの体を病原体から守る「免疫力」を高める効果も期待できます。
その理由は、納豆菌によって免疫に関わる細胞の働きが活性化されるためと考えられています。その結果、病原菌やウイルスに対する抵抗力が高まり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりにくい体づくりをサポートしてくれるのです。
参考:細井知弘 Probioticとしての納豆菌の作用―腸内菌叢と腸管免疫システムに対する作用―(2003)
肌荒れの防止
納豆菌には、体の内側から肌の調子を整え、肌荒れを防止・改善する働きが期待できます。
肌荒れの原因のひとつに、腸内環境の悪化があげられます。腸内で悪玉菌が有害物質を作り出し、それが血流に乗って肌に悪影響を与えてしまうのです。
納豆菌は、善玉菌を増やし悪玉菌を抑える効果があります。これにより、腸内環境が良好になり、肌荒れの防止や改善につながります。
また、納豆菌が作り出す「ナットウキナーゼ」には、血液の流れをスムーズにする作用があります。血行が促進されることで、肌細胞に必要な栄養や酸素が行き渡りやすくなり、健やかな肌を保ち、新陳代謝(ターンオーバー)を整える助けとなるでしょう。
参考:赤田圭司 納豆の機能性 納豆と皮膚の関係(2006)
機能性関与成分納豆菌由来ナットウキナーゼの摂取による血圧の低下機能に関する研究レビュー (2020)
宮澤賢司 Lactobacillus rhamnosus GG 株の摂取による便秘傾向な女性の排便および皮膚に及ぼす影響
冷えや肩こりの改善
つらい冷えや肩こりの原因のひとつは、血行不良です。納豆菌の働きによって血行が促進され、冷えや肩こりが改善される効果が期待できます。
実際に、ナットウキナーゼを摂取した人を対象とした研究では、血流の改善が確認されました。特に、手足の血行が良くなることから、冷えを和らげる効果も期待できるでしょう。
さらに、納豆菌由来のタンパク質摂取によって、肩こりが軽くなったという報告もあります。これは、筋肉のまわりの血流が促進されたことが理由だと考えられています。
参考:機能性関与成分納豆菌由来ナットウキナーゼの摂取による血圧の低下機能に関する研究レビュー (2020)
大村和伸 ナットウ菌由来タンパク質のヒト血液凝固線溶系におよぼす影響について(2004)
ダイエット効果
納豆菌は、腸内環境を整え、基礎代謝の維持を助けることで、健康的なダイエットをサポートする効果も期待されています。
納豆菌には腸内環境を良好にし、便通改善に役立ちます。老廃物の排出がスムーズになり、代謝が上がることによって、余分な脂肪がたまりにくくなる効果が期待できるでしょう。
また、納豆菌が作り出す「ナットウキナーゼ」は血流を良くする作用があります。血流の改善によって、むくみを軽くする効果が期待できるでしょう。
ただし、納豆は栄養価が高い一方で、1パック80kcal程度のカロリーがあります。ダイエット目的の場合でも、食べ過ぎは避け、1日1パック程度を目安にバランスの良い食事を心がけましょう。

参考:細井知弘 Probioticとしての納豆菌の作用―腸内菌叢と腸管免疫システムに対する作用―(2003)
機能性関与成分納豆菌由来ナットウキナーゼの摂取による血圧の低下機能に関する研究レビュー (2020)
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
骨の健康維持
納豆を作る納豆菌は、「ビタミンK2」という栄養素を豊富に生み出します。
ビタミンK2は、カルシウムと同様に骨の形成を助ける大切な栄養素であり、骨の健康を維持するためには欠かせません。特に、納豆に含まれるビタミンK2(MK-7)は、他の食品に含まれるものよりも骨の健康に対して優れた働きをすると言われています。
また、納豆1パック(約40g)には、ビタミンK2が約350μgも含まれています。これは、日本骨粗しょう症学会が推奨する1日の摂取目安量(250〜300μg)に匹敵する量です。
そのため、毎日納豆を食べる習慣は、丈夫な骨を保ち、将来の骨粗しょう症の予防にとても効果的だと言えるでしょう。
参考:鈴木啓章 ビタミンKの健康栄養機能に関する最近の知見(2014)
骨粗鬆症の予防とガイドライン2015年版
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
生活習慣病の予防
納豆菌が作り出す「ナットウキナーゼ」や「ポリアミン」、「ビタミンK2」は、生活習慣病のリスクを下げる効果が期待できる栄養素です。
- ナットウキナーゼ:血をサラサラにし、血管の健康維持に役立つとされています。
- ポリアミン:納豆のネバネバ成分で、血圧を下げる効果が報告されています。
- ビタミンK2:骨の形成に役立ち、血管へのカルシウムの沈着を防ぎます。
これらの成分は、高血圧の予防や改善に役立つだけでなく、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化といった生活習慣病の予防をサポートし、長期的な健康維持につながることが期待されます。
参考:赤田圭司 納豆の機能性 納豆と皮膚の関係(2006)
鈴木啓章 ビタミンKの健康栄養機能に関する最近の知見(2014)
納豆菌を摂る効果的な時間帯とは

納豆菌の効果を最大限に活かすなら、食べる時間帯にも注目してみましょう。ここでは、目的別におすすめの時間帯をご紹介します。
ダイエット効果を高めるなら『朝』
朝に納豆を食べるメリットは、納豆菌による腸内環境改善効果にあります。朝食で摂ることで、1日の始まりに腸の働きを活発にし、スムーズなお通じをサポートします。
さらに、納豆菌は代謝を高める助けにもなると言われています。朝食で代謝のスイッチを入れることで、日中のエネルギー消費を高める効果が期待できるでしょう。
また、納豆はタンパク質と食物繊維が豊富です。タンパク質は筋肉の維持に役立ち、基礎代謝の低下を防ぎます。さらに、満腹感を持続させやすいので、食べ過ぎ防止にも繋がるでしょう。食物繊維は、腸内環境を整える納豆菌の働きをよりサポートし、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。
納豆を朝食に取り入れることで、腸内環境の改善、代謝アップ、満腹感の持続といった相乗効果が生まれ、ダイエットをより効果的にサポートしてくれるでしょう。
血液サラサラ効果を高めるなら『夜』
納豆菌に含まれる「ナットウキナーゼ」は、血をサラサラにする作用があり、摂取後約10〜12時間効果が持続すると言われています。
睡眠中は水分不足や活動量の低下から血液が固まりやすく、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる時間帯です。夕食に納豆を食べることで、リスクが高まる夜間から早朝にかけてナットウキナーゼの力で血液をサラサラに保つ効果が期待できます。
納豆菌が増えすぎると危険なのか

納豆菌には優れた健康効果があることは前述しましたが、「摂りすぎると腸内が納豆菌だらけになって危険なのでは?」と心配される方もいるかもしれません。
ここでは、納豆菌が体内で増加することによる影響や、おすすめの摂取量について紹介します。
腸内が納豆菌だらけになることは無い
納豆菌は生命力の強い菌ですが、健康な腸内環境であれば、納豆菌だけが異常に増えることはありません。私たちの腸内には、数百兆個もの多種多様な細菌たちがバランスを取りながら共存しており、納豆菌もその一部として腸内環境をサポートしてくれます。
1日1~2パックを目安にする
納豆は栄養価が高い一方で、カロリーやプリン体も含まれます。納豆菌そのものが過剰になって体に悪影響を及ぼす心配はほとんどありませんが、食べすぎてしまうと摂取カロリーが増え、栄養バランスが偏ってしまいます。健康のためには、1日に1~2パック程度を目安に摂取しましょう。バランスの良い食事とともに、適量を守って美味しく続けることで、納豆菌の健康効果を最大限に高めましょう。
納豆菌の効果に関するQ&A
- 納豆菌は何に効きますか?
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納豆菌は、腸内環境を整え、おなかの調子を良くする効果が期待できます。また、血液をサラサラにするナットウキナーゼの作用により、動脈硬化や高血圧の予防にも役立ちます。さらに、免疫力を高める働きや、骨を強くする働き、美肌・ダイエット効果も期待されているのです。
- 納豆菌の効果はどのくらいで実感できますか?
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効果には個人差があります。便秘改善などの腸内環境の改善効果は、2週間程度で変化があったという報告もあります。基本的には、毎日の食生活に取り入れながら、焦らず続けることが大切です。
- 納豆菌は毎日食べた方が良いですか?
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毎日、もしくは2日に1回程度の頻度で続けて食べるのが理想的です。腸内環境は日々の食事や生活習慣で変化するため、継続的に納豆菌を取り入れることが大切です。食べすぎには注意をし、納豆の場合は1日に1〜2パックを目安にしましょう。無理なく日々の食生活に納豆を取り入れることをおすすめします。
- 納豆菌は体内で何日生きられますか?
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納豆菌は非常に生命力が強く、腸内でも一定期間生存できますが、ずっと腸で生きているわけではありません。通常の腸内細菌と同様に、納豆菌も数日から1週間ほどで排出されます。そのため、定期的に納豆を食べることで、納豆菌の効果を維持できます。
- 納豆の匂いやネバネバが苦手です。何か良い方法はありますか?
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匂いや粘りが少ないタイプの納豆(ひきわり納豆など)を試してみるのも良いでしょう。また、薬味(ネギ、からし、生姜、大葉など)や他の食材(キムチ、卵、チーズ、オリーブオイルなど)と混ぜることで、風味や食感が変わり食べやすくなります。
どうしても苦手な場合は、ナットウキナーゼのサプリメントを利用する方法もご検討ください。 - 納豆を食べる上で注意点はありますか?
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納豆には血液凝固を助ける「ビタミンK2」が豊富に含まれています。血液をサラサラにする薬である「ワルファリン(ワーファリン)」を服用中の方は、薬の効果を弱めてしまう可能性があります。納豆の摂取を控えるか、必ず医師に相談してください。
基本的には、前述の通り1日1〜2パックを目安にバランスの取れた食事を心がけることが大切です。