納豆菌は熱に弱い?健康効果を守る加熱方法と注意点を徹底解説

『納豆』は日本の伝統的な発酵食品のひとつです。おいしいだけではなく、栄養価の高さから、健康のために毎日食べているという方も多いのではないでしょうか。

納豆は温かいご飯にかけるだけではなく、納豆汁や納豆チャーハンなど、加熱調理によるアレンジも多く、おいしく飽きずに食べることができる点も魅力といえます。

しかし、納豆に含まれている『納豆菌』は熱に弱い、という情報を耳にすることがあります。そのため、今までの納豆の食べ方は納豆菌を殺していたのでは、と疑問に感じる方も多いはずです。

本記事では、加熱すると納豆菌は死滅してしまうのか、熱で納豆の健康効果が失われるのか、といった納豆と熱に関する疑問について徹底解説いたします。

納豆菌の健康効果を損なわない加熱方法のコツや注意点、納豆菌の効果を最大限にする食べ方などもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

もくじ

納豆菌は加熱OKだが温度と時間に注意

納豆ごはん

納豆菌自体は非常に高い耐熱性を持っていますが、調理の温度と時間によっては減少してしまうこともあります。

ここでは、納豆菌の特性と加熱に関する注意点について解説していきます。

納豆菌は熱に強い

納豆菌は非常に強く、120度を超える温度でなければ生きることが可能です。

通常の料理における加熱調理、例えば納豆汁などの汁物程度では、納豆菌が完全に死滅することはほとんどありません。

納豆菌がこれほど強い理由は、その身の守り方にあります。納豆菌は周りの環境が悪くなると、「芽胞(がほう)」という硬い殻のようなものを作り、身を守ります。この芽胞によって、納豆菌は煮沸消毒や、冷凍状態、強い酸性の場所でも生き残ることができるのです。

参考:
平松裕司 紫外線加工によるMK-7フリー納豆納豆風味食品の開発とワーファリン内服患者への適用(2016)

高温・長時間の加熱は注意

納豆菌が熱に強い特性をもつとはいえ、高温での長時間の加熱は避けるべきです。

納豆菌は、一定の温度と時間に達すると活動を停止し、その後、菌数は減少してしまいます。

菌が減少する具体的な条件は、以下の温度と加熱時間です。

  • 85度で15分以上
  • 100度で5分以上

したがって、長時間の煮込み料理、100度以上の高温での揚げ物や炒め物などでは、納豆菌の活性が低下、あるいは失われる可能性があるため、注意が必要です。

参考:

池田大佑 芽胞状態にあると考えられる納豆菌の耐熱性について(2015)

納豆は加熱によって栄養成分が変化する

納豆菌は腸内環境の改善などの健康効果があり、加熱してもその効果は大きく変わりません。しかし、納豆に含まれる『ナットウキナーゼ』や『ビタミンB群』は熱に弱い特性があり、加熱によって栄養成分が変化する可能性があります。

『ナットウキナーゼ』が失活する

ナットウキナーゼは、納豆菌が生産する酵素の一つです。その健康効果は幅広く、特に血液をサラサラにする作用が注目されています。この作用により、心筋梗塞や脳梗塞などの疾患の予防効果が期待されています。

しかし、ナットウキナーゼは熱に弱いという性質があります。50℃以上の加熱で活性が低下し始め、70℃以上ではほぼ失活してしまいます。そのため、ナットウキナーゼの効果を最大限に得るためには、加熱調理に注意が必要です。

参考:
Cong Wang Purification and characterization of nattokinase from Bacillus subtilis natto B-12(2009)

日本ナットウキナーゼ協会:ナットウキナーゼ

『ビタミンB群』が減少する

納豆には、ビタミンB1、B2、B6といったビタミンB群が豊富に含まれています。これらのビタミンB群は、肌や髪、爪の健康を保つ美容効果だけでなく、代謝をサポートし、肥満予防や疲労回復にも役立つと言われています。

ビタミンB群は水溶性ビタミンであり、水に溶けやすい反面、比較的熱に強いのが特徴です。

しかし、長時間の加熱や多量の水を使用する調理法では、ビタミンB群の一部が分解されたり、煮汁に溶け出したりして損失する可能性があります

参考:
小島彩子 食品中ビタミンの調理損耗に関するレビュー (脂溶性ビタミン,ビタミン B1,B2,B6,B12)(2017)

納豆菌を活かした加熱方法と注意点

納豆菌は熱に強いとはいえ、加熱しすぎには注意が必要です。

納豆を調理して楽しみたい、冷凍保存した納豆を電子レンジで解凍したい、という方も多いはずです。

ここでは、納豆の栄養をできるだけ活かし、美味しくいただくための加熱調理のポイントを、電子レンジ、汁物、炒め物、揚げ物の4つの調理法別に、注意点とともに詳しく解説します。

これらのポイントを押さえて、納豆の栄養を損なわずに様々な納豆料理を楽しんでみてください。

電子レンジで加熱する場合

電子レンジで納豆を加熱する際は、1分以内の短時間にとどめておくのがポイントです。
ご使用の電子レンジの機種やワット数、加熱する納豆の量によって温まり方は大きく異なります。
設定温度や加熱時間には十分注意し、熱くなりすぎないよう、様子を見ながらこまめに確認しましょう。特に、少量の場合は短時間で高温になりやすいので注意が必要です。

ある実験では、電子レンジ加熱によって、納豆菌の数が1分で大幅に失活し、2分で一部死滅するという結果も報告されています。また、「ナットウキナーゼ」や「ビタミンB群」などの成分も失われやすくなるため、長時間の電子レンジによる加熱は避けた方がいいでしょう。

また、納豆の容器ごと電子レンジで長時間加熱することは、栄養成分が変化するだけでなく、庫内ににおいが残る、容器が溶ける、などの危険もあるため注意が必要です。

参考:
電子レンジによる加熱の微生物に及ぼす影響について 藤原耕三,難波敦子,高田修代

汁物に加える場合

味噌汁などの汁物に納豆を加える際は、火を止めてから加えるのがポイントです。

また、納豆に含まれるビタミンB群は水に溶けやすいため、汁も残さず飲むのがおすすめです。汁に溶けた栄養もまるごといただきましょう。

注意点は煮込まないことです。あたため直す際も湯気が出る程度にし、沸騰させないよう注意しましょう。

炒めものに入れる場合

納豆チャーハンなど、炒め物に納豆を加えるときは、調理の最後に入れるのがポイントです。

  • 弱火にする
  • 余熱で炒める
  • すぐに火から降ろす

といった方法も活用しましょう。

注意点としては、長時間炒めないことです。納豆を加えたあとは、あくまでさっと炒める程度にしましょう。

揚げ物にする場合

『納豆菌を活かす』点を重視するのであれば、納豆を揚げ物にするのはできるだけ避けるのが理想です。納豆菌は熱に強いですが、揚げ物の温度は150〜200度と非常に高温です。そのため、納豆菌やナットウキナーゼなどの栄養成分が大幅に減少する可能性があります。

納豆揚げや天ぷらなどの揚げ物にしたい場合は、

  • 油あげなどで包む
  • 短時間で揚げる

などの工夫で長時間の加熱を避け、内部の納豆にまで高温が伝わらないようにしましょう。

納豆菌の効果を最大限にする食べ方

納豆 納豆菌

せっかく納豆を食べるのであれば、納豆菌の活性を最大化し、その栄養を余すところなくいただきたい、という方も多いはずです。

最も納豆菌の効果を損なわずに食べることができるのは、加熱せずそのまま食べる方法ですが、より効果的に食べる方法があります。 

納豆菌の効果を最大限にするための、簡単かつ効果的な食べ方はこの3つです。

  1. 食べる約15分前に出して常温に戻す
  2. ご飯は少し冷ます
  3. 夜に納豆を食べる

それぞれ見ていきましょう。

食べる約15分前に出して常温に戻す

冷蔵庫から出したばかりの冷えた納豆では、納豆菌の活動が抑えられてしまいます。食べる約15〜20分前に出して常温に戻すと、納豆菌が活発になり効果が高まります。

ただし、常温で長時間放置すると腐敗や納豆菌の増殖が進み、品質が劣化するおそれがあります。常温に戻す際は時間や温度に注意し、適切な状態で食べるようにしましょう。

ご飯は少し冷ます

納豆ごはんを食べる際には、ご飯を少し冷ますのがおすすめです。

熱々のご飯の温度は約65〜80度です。そのまま納豆をかけてしまうと「ナットウキナーゼ」が失活する可能性があります。ナットウキナーゼは熱に弱く、50℃程度で活性が低下し始め、70℃以上ではほとんどが失活すると言われています。

そのため、納豆をかける前にご飯を数分冷まして粗熱をとるようにしましょう。

夜に食べる

納豆は夜に食べることで健康効果が倍増します。

納豆に含まれるナットウキナーゼは血液をサラサラにし、血栓を予防する効果が期待できる酵素です。血栓は夜間、特に睡眠中にできやすいと言われています。

ナットウキナーゼの効果は摂取後10時間〜12時間程度持続すると考えられているため、夜に納豆を食べると、睡眠中の血栓予防に効果的であると考えられます。

また、納豆に含まれるアルギニンは成長ホルモンの分泌を促進する効果があり、成長ホルモンは睡眠中に多く分泌されます。より効率よくアルギニンの効果を得られるため、納豆を夜に食べるのがおすすめです。

なお、納豆の健康効果については、こちらの記事でより詳しく紹介しております。

参考:

日本ナットウキナーゼ協会:ナットウキナーゼ

お茶の水女子大学食品化学研究室 木原 芳次郎:納豆の成分について(第1報) ,(1961)

納豆菌と熱に関するQ&A

納豆菌は熱に強いですか?

納豆菌は熱に強い特性を持っています。納豆菌は「芽胞(がほう)」という強い殻を作ることで、100℃近い高温にも耐えることができます。

そのため、加熱しても納豆菌が死滅せず、腸内で善玉菌としての働きを発揮することができます。

納豆菌は何度で死んでしまいますか?

納豆菌は85度で15分以上、100度で5分以上で減少し、120度以上で死滅するとされています。

納豆を加熱すると栄養成分は失われますか?

納豆を加熱しても完全に栄養成分が失われることはありません。

しかし、「ナットウキナーゼ」や「ビタミンB群」などの成分は加熱による影響を受けやすいため、調理法に工夫が必要です。納豆を加熱する場合は短時間にとどめると良いでしょう。

納豆菌は炊き立てのご飯にのせても大丈夫ですか?

納豆菌は高温に強いため、炊き立てのご飯にのせても菌自体は死滅しません。ただし、納豆の健康成分である「ナットウキナーゼ」は50℃以上で活性が低下するため、ご飯の熱を少し冷ましてからのせるのがおすすめです。

納豆菌は電子レンジで温めても残りますか?


短時間(20~30秒)の電子レンジ加熱であれば、納豆菌に大きな影響はありません。

ただし、加熱が長すぎると「ナットウキナーゼ」やビタミンB群が減少する場合があります。冷凍納豆の解凍や調理などで電子レンジを使用する際は短時間にとどめると良いでしょう。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

この記事をシェアする

この記事を書いた人

もくじ
閉じる