フコイダンって何?海藻のぬめり成分の9つの健康効果とは
記事の監修
管理栄養士
影山敦久
管理栄養士、栄養教諭。子どもからお年寄りまで幅広い年代の方に栄養指導や料理教室を行うかたわら、特定保健指導にも携わる。得意分野はダイエットとスポーツ栄養。
海藻に含まれているヌルヌルの成分であるフコイダンという成分をご存知ですか。
なんだか体に良さそうですが、具体的にどんな健康効果があるのかを知りたいと考えていませんか?
フコイダンって何?
フコイダンは水溶性食物繊維の一つで、酸性多糖類の構造をしています。
1913年に発見されたとき、当時はフコイジンという名前で呼ばれていましたが、物質の命名に関して標準とされる、国際純正・応用化学連合の働きかけで現在のフコイダンとなっています。
フコイダンを摂取することで、抗菌性や血液が固まるのを防いだり、免疫を強くしたり、腫瘍に働きかけるといった作用が期待されています。
また、安価で手に入ることからも、機能性食品や医薬品などに応用するための研究が盛んに行われています。
フコイダンが含まれている食品
もずくやわかめ、めかぶや昆布、ひじきなどの海藻類に多く含まれており、ぬめりの成分がフコイダンです。
市販されている、もずくの多くは養殖されたオキナワモズクで、フコイダンが多くぬめりが強い製品が多いという特徴があります。
全体の流通量の約95%を占めており、年間約2万トン以上になります。
フコイダンの健康効果
具体的には、フコイダンの健康効果はどのようなものがあるのでしょうか。
健康効果1 血を固まりにくくする
フコイダンの作用で血液を固まりにくくしてサラサラにしたり、血栓ができるのを防ぐといった反応が報告されています。
動物実験のものもありますが、さらに研究が進んでいくと、フコイダンを使用した抗血栓薬などが作られる可能性もあるようです。
動物実験を直接人間にあてはめることは短絡的ですが、今後ますます注目される可能性の高い成分の1つになるでしょう。
参考:
フコイダン:構造と生物活性
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6245444/
健康効果2 胃のピロリ菌を阻む
フコイダンは胃の粘膜を保護する作用があるとともに、ピロリ菌が胃の粘膜に住み着くのを阻害する働きがあるといわれています。
胃は酸性度合いが高いので、基本的に菌は生育できない環境にありますが、ピロリ菌は自分のまわりをアルカリ性にするバリアを張ることができるので、胃に住むことができます。
ピロリ菌は胃に炎症を起こして、胃の粘膜を弱めることで食べ物からの刺激を受けやすくなります。
結果として十二指腸潰瘍や胃潰瘍になってしまう可能性が指摘されています。
フコイダンを積極的に摂取して、胃の粘膜を保護したり、ピロリ菌が住みにくい環境を整えることができる可能性があります。
参考:
①主婦の友社、栄養成分事典、中嶋洋子、蒲原聖可著
②海藻フコイダンの科学、山田信夫著
③参考:フコイダン:構造と生物活性
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6245444/
健康効果3 コレステロールに働きかける
フコイダンを摂ると、血中のコレステロールが低下したという報告があります。
コレステロールは悪者にされがちですが、ホルモンの材料や細胞膜の構成成分であり、人間にとって必須の栄養素です。
コレステロールには2種類あり、肝臓からのコレステロールを全身に運んで蓄積させてしまう悪玉コレステロール、全身にたまったコレステロールを肝臓に運びなおしてくれる善玉コレステロールにわけられています。
大事なのはコレステロールのバランスですが、生活習慣や食習慣の乱れでコレステロールが増えすぎると、さまざまな病気にかかってしまいます。
フコイダンにはコレステロールを下げる効果があるということですので、普段の食生活で積極的に摂りいれると良いでしょう。
ただ、コレステロール値をはじめとした脂質異常症を治すことができるということではありませんので注意が必要です。
参考:
①主婦の友社、栄養成分事典、中嶋洋子、蒲原聖可著
②参考:フコイダン:構造と生物活性
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6245444/
③厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-012.html
健康効果4 がん細胞に働きかける
研究者の間でも意見はわかれていますが、フコイダンはがん細胞の増殖を抑える働きがあるとされています。
具体的には、フコイダンによってアポトーシスと呼ばれる、細胞が自分で死んでいく作用が促されたり、がん細胞が血小板に付着するのを阻害して、がん転移の可能性を下げるといったようなことが言われています。
動物、人の細胞による実験
参考:
主婦の友社、栄養成分事典、中嶋洋子、蒲原聖可著
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/bapsa/thesis/02.html
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/crt/fe/action/action_01.html
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/crt/fe/action/action_00.html
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/crt/fe/action/action_02.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/22/4/22_4_489/_pdf/-char/ja
健康効果5 肝臓を強くする
フコイダンを摂取することで、細胞を保護したり、間接的に肝臓の細胞を増やす力を高めて、肝臓の機能を強くします。
肝臓の機能が強まると、食べた物の解毒作用や、エネルギーを貯蔵する、消化酵素を出すといった役割が円滑に行われることになります。
たとえば、普段お酒を飲みすぎるような方は、おつまみに脂っこい唐揚げではなく、もずくや昆布などに含まれるフコイダンを摂取すると良いでしょう。
参考:主婦の友社、栄養成分事典、中嶋洋子、蒲原聖可著
健康効果6 アレルギーを緩和する
フコイダンは花粉症などのアレルギーを緩和するといわれています。
花粉症の流れをおおまかに説明すると、花粉が体に入ると抗体と呼ばれる攻撃物質が作られます。
この抗体が体内の肥満細胞に付着すると、花粉症にかかるスイッチの役割をしてしまいます。
このスイッチを花粉が刺激していくことにより、肥満細胞に含まれているヒスタミンなどのかゆみを起こす物質をまきちらすことで、花粉症特有の症状がでてくるというわけです。
フコイダンは、花粉が最初に体内に入ってきたときに出来る抗体が作られないように働きかけることで花粉症を回避できるということです。
花粉症を和らげる方法の1つとして、フコイダンを摂取してみても良いでしょう。
参考:海藻フコイダンの科学、山田信夫著
健康効果7 美容効果
フコイダンは抗酸化作用がありますので、さまざまな美容効果に期待できます。
抗酸化作用とは、発生しすぎた活性酸素を取り除くことができる作用のことです。
普段、呼吸によって酸素をとり入れていますが、このうち数%は活性酸素と呼ばれる攻撃性の高い物質に変化します。
活性酸素自体は、ばい菌をやっつけたりするので必要なのですが、ただ、増えすぎると細胞自体を傷つけるので、がんや心臓病などの生活習慣病にかかるリスクが上がってしまうだけではなく、肌の細胞にも悪影響を及ぼします。
フコイダンは、この活性酸素に対抗する作用がありますので、肌荒れやシワ、ニキビを防ぐことにつながっていきます。
参考:
①海藻フコイダンの科学、山田信夫著
②フコイダン:構造と生物活性
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6245444/
②厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html
健康効果8 血圧を下げる
動物実験ですが、フコイダンをラットに摂取させると、血圧が上がるのを抑える効果がみられたという報告があります。
研究者の間でも意見がわかれており、ラットにあらわれた効果をそのまま人に応用できるとは限りませんが、あくまで可能性として示唆されているようです。
日本人の20歳以上の2人に1人は高血圧といわれています。
高血圧の原因は、塩分の摂りすぎや運動不足、飲酒やストレスなどがあります。
高血圧の原因の中でもっとも多いとされる塩分の過剰摂取を避けるために、普段の食事で減塩を意識していく必要があります。
たとえば、麺類のスープを最後まで飲み干さずに残したり、しょうゆをかけていたのを、つけるようにしたり、料理に酸や香辛料を加えてアクセントを出して薄味に仕上げたりといったことが挙げられます。
フコイダンの血圧上昇を抑える効果に期待しすぎず、普段の食生活に留意していくと良いでしょう。
参考:
①九州大学大学院農学研究院生命機能科
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/bapsa/thesis/02.html
②厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-003.html
健康効果9 ウイルスに対抗する
研究者の間でも意見はわかれていますが、フコイダンの効果で、プール熱の原因であるアデノウイルスの他に、コクサッキーウイルス、ポリオウイルスやヘルペスウイルスなどに抗う結果が確認されたとする実験があります。
フコイダンが直接ウイルスをやっつけるというよりは、ウイルスによる悪い影響を阻むというような形です。
まだまだ実用段階ではないようですが、今後さらに研究が進んでいくことでしょう。
参考:
フコイダン:構造と生物活性
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6245444/
フコイダンについてのQ&A
フコイダンについての疑問をQ&A方式で解説していきます。
- どんな食べ物に含まれていますか?
- 昆布やめかぶ、もずくやひじきなどの海藻類に含まれています。
海藻類のヌルヌルの成分がフコイダンにあたります。
- フコイダンを1日にどれくらい摂ったら良いですか?
- フコイダンの効果をきちんと得るためには、1日におよそ24mg摂取すると良いです。
もずく酢だと1パック食べればおおよそ摂取できるので、毎日の食卓に無理なく摂りいれることができるでしょう。
- フコイダンで肌がキレイになりますか?
- フコイダンで肌の調子を整える効果は期待できます。
前述したように、抗酸化作用によって活性酸素を除去する効果があります。
ただ、活性酸素を効果的に除去するためには、フコイダンだけではなく、さまざまな抗酸化成分を体に摂りいれる必要があります。
抗酸化作用のある成分は、野菜や果物にも豊富に含まれているので、海藻類だけ食べるというような偏食ではなく、満遍なく摂りいれることが大切でしょう。
- フコイダンで、がんが治りますか?
- フコイダンを摂取することで、がんが治るわけではありません。
まだ、研究段階であり、研究者の間でも意見がわかれている分野になります。
あくまでフコイダンの成分が、がん細胞に対して特殊条件化でのみ一部の有効性が確認されたということであり、今後は臨床試験も含めてさまざまな研究が行われていくことになるでしょう。
フコイダンの摂取に限らず、がんの治療は医師の指示に従って行うことがもっとも大事である、ということを念頭におく必要があります。
- サプリメントに頼って良いですか?
- フコイダンの成分を食品から得るには、昆布などの海藻類を一定量毎日食べる必要があります。
ただ、仕事などのライフスタイルや食習慣などで、食事から必要量を摂取するのは難しい場合があります。
そのような時は、手軽にフコイダンを摂取できるサプリメントで補給すると良いでしょう。
- 食品を食べずにサプリメントだけで良いのではないですか?
- サプリメントで必要量が摂取できるのであれば、食品から摂取しなくても良いと考える方がいます。
サプリメントの成分というのは基本的には化学処理を行い、食品からその成分のみを抽出している場合が大半です。
確かにフコイダン単体だけの必要摂取量を満たすことができますが、食べ物に含まれる成分の研究はまだまだ始まったばかりですので、食べ物には解明されていない未知の成分が含まれている可能性があります。
その成分を得るためには、サプリメントだけではなく食べ物から摂取する必要があります。
また、食品にはさまざまな毒素が含まれていますが、たくさんの種類の食べ物を口にすることでその毒素が中和されることも十分に考えられます。
さらに、Aという成分とBという成分が掛け合わされることで効果が増す、といったことも考えられるため、やはりサプリメントだけ摂っていれば食べ物から摂取しなくても十分というわけではありません。
- 海藻類のヌルヌルが苦手な人はどうすれば良いですか?
- 海藻類のヌルヌルが苦手であれば、サプリメントで摂ると良いでしょう。
また、フコイダンの含有量の多いもずくは、酢の物が一般的ですが、小麦粉と混ぜて天ぷらにして食べても美味しく頂けます。
●管理栄養士からのコメント
海藻に含まれているヌルヌルの成分であるフコイダンは、さまざまな健康効果があります。
- ・血を固まりにくくする
- ・胃のピロリ菌を阻む
- ・コレステロールに働きかける
- ・がん細胞に働きかける
- ・肝臓を強くする
- ・アレルギーを緩和する
- ・美容効果
- ・血圧を下げる
- ・ウイルスに対抗する
フコイダンを意識的に食生活に摂りいれることで、より健康的に毎日を過ごすきっかけになるでしょう。
食べ物から摂取するのはもちろん、必要に応じてサプリメントで摂取すると良いでしょう。
管理栄養士プロフィール
◎影山敦久
管理栄養士、栄養教諭。子どもからお年寄りまで幅広い年代の方に栄養指導や料理教室を行うかたわら、特定保健指導にも携わる。得意分野はダイエットとスポーツ栄養。