グルテンフリーとは|どんな食品に入ってる?意味なしって本当?

記事の監修

この記事は管理栄養士の方に監修していただいています

管理栄養士

影山敦久

管理栄養士、栄養教諭。子どもからお年寄りまで幅広い年代の方に栄養指導や料理教室を行うかたわら、特定保健指導にも携わる。得意分野はダイエットとスポーツ栄養。

グルテンフリーの食事ってどんな食品を摂ればいいの?
グルテンフリーを心がけても意味がないって本当なの?
あわせてグルテンフリーの食事を行うためのポイントや方法を知りたいと考えていませんか。

本記事では下記について解説します。

グルテンとは?

グルテン

グルテンとは、ドウに出来ている網目の構造のことです。
パンなどを作る際に、小麦粉に水分を加えてこねることで、弾力性のある「ドウ」と呼ばれる生地が出来ます。
このドウにはタンパク質の成分である、伸展性の高いグリアジンと、弾力性の高いグルテニンが網目のような構造を作り出し、この中にでんぷんの粒が包まれた形で存在しています。
このグルテンを形成する力が強ければ強いほど、結着性や粘弾性が高まります。
例えば、コシの強いうどんであったり、パンのもちもちした食感も、このグルテンによるものです。
食品の美味しさに関わっているグルテンですが、健康上あまり良くないのではないかといわれています。
後述するように、まだまだ研究段階であり、確定したことではありませんが、グルテンによる弊害にも今後着目していく必要がありそうです。

参考書籍:医歯薬出版株式会社、長澤治子著、食品学・食品機能学・食品加工学

グルテンが原因で起こる可能性のある健康障害

グルテンによって引き起こされると考えられている健康障害は主に3つあります。
順番に解説していきます。

・アレルギー

小麦に含まれるタンパク質には含有量の多い順から、グリアジン、グルテニン、アルブミン、グロブリンによって構成されています。
小麦でアレルギーを起こす方は、このうちのどれかのタンパク質と反応していることになります。
つまり、小麦アレルギーの方は、いくらグリアジンとグルテニンが合わさったグルテンを摂取しないようにしていたとしても、反応しているタンパク質がグルテン以外ならば意味が無く、アレルギー症状が引き起こされることになります。
ですので、グルテンフリーという概念と小麦アレルギーとを混同しないようにする必要があります。
アレルギーの症状としては、下痢や湿疹、じん麻疹や咳などで、アレルギー物質を体内に摂り込んでから約2時間以内にはこのような症状が起きる場合がほどんどです。

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf
参考書籍:長澤治子著、食品学・食品機能学・食品加工学

・セリアック病

セリアック病とは、小麦に含まれるグルテンや他のタンパク質に対して、体が異物として認識してしまった結果、免疫反応に異常をきたし、小腸の粘膜に傷が出来てしまうという先天性の病気になります。
別名、グルテン過敏症とも呼ばれています。
症状としては、栄養の吸収障害を主とした栄養失調や鉄欠乏性貧血をはじめ、疲労感や下痢、食欲不振や皮膚炎などです。
セリアック病の治療食としては、グルテンフリーやノングルテンの食事です。

①NCBI:The Oslo definitions for coeliac disease and related terms
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3440559/
②Nature asia
https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/661
③Gastroenterology
American Gastroenterological Association (AGA) Institute Technical Review on the Diagnosis and Management of Celiac Disease
https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(06)02227-X/fulltext?referrer=https%3A%2F%2Fpubmed.ncbi.nlm.nih.gov%2F17087937%2F

・非セリアック病グルテン過敏症

小麦アレルギーが無く、セリアック病の診断基準にも当てはまっていない状態にもかかわらず、セリアック病のような症状が出現したり、グルテンフリーの食事を続けると症状が緩和するという特徴をもったものを、非セリアック病グルテン過敏症と診断するようになっています。
ただ、グルテンに限らず他のタンパク質によっても起こる可能性があるとのことで、引き続き研究が進められていくことでしょう

非セリアック病グルテン過敏症の方の割合は、小麦アレルギーやセリアック病の患者に対しては少ない傾向にあるようです。

①National Library of Medicine
Nonceliac Gluten Sensitivity
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25583468/
②NCBI:The Oslo definitions for coeliac disease and related terms
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3440559/#R13

グルテンフリーとは?

グルテンフリーとは?

グルテンフリーとは、グルテンを除いた食事のことです。
グルテンが原因で軽度な体調不良になっていたり、セリアック病やグルテン過敏症につながる恐れがあります。
グルテンの多くは小麦に含まれているので、麺類やパンなどさまざまな場面で使用されています。
また、小麦以外にもライ麦でも多少グルテンの形成がみられますし、大麦はグルテンを形成しませんが、含有するタンパク質によってグルテンと同様に、免疫が異物とみなすことがあり、アレルギー反応が起こることがあります。
小麦等が使用されていない代替品を口にするか、まったく食べないようにする食事をグルテンフリーといいます。
グルテンフリーという考え方が広まった背景として、そもそも小麦は紀元前から食されているにもかかわらず、ここまで悪者にされている理由としていわれているのが、遺伝子組み換えによるグルテン量の増加です。
1900年代までは大昔固有の品種を栽培し、加工して食べていたのが、干ばつや災害に対応するため、より強い品種を作り出しました。
確かに生産量は飛躍的に伸びたものの、グルテンをより多く形成しやすいという特徴をもった小麦が出来上がりました。
その小麦が現在流通している物のほとんどを占めています。
今後も小麦の品種が昔ながらのものに変わらない限りは、グルテンとの問題と付き合うことになりそうです。
あくまで一説ですが、今後さらにグルテンと人間の体との関係性を調べた研究結果が待たれます。

グルテンフリーって意味ないの?

意味

グルテンフリーが意味のあるものかどうかは、グルテンに対して過敏か、過敏ではないかの違いによります。
仮にグルテンによって体調不良が起こるのであれば、グルテンフリーの食事をとることで体調が改善されていきます。
ただ、グルテンに対して体が反応せず、体調不良の原因とならなければ、いくらグルテンフリーの食事をしたところで体調の改善は期待できないでしょう。
結論としては、人それぞれの体質によって違うということですし、目的が「何か」によって意味があるかどうかは決まってくるでしょう。

グルテンフリーの効果を実感しやすい体質とは?

体質

グルテンフリーの食事を継続することで、効果を実感しやすい体質は3つです。

小麦アレルギー体質

グルテンフリーの食事で効果を実感しやすい体質というよりも、小麦に対してアレルギーのある方は徹底して小麦を抜く必要があります。
食品もパッケージに記載されている原材料表示を確実に見てから購入する必要がありますし、小麦を使用した外食も避けなければなりません。
個人差があるにせよ、症状が重くなる方もいますので、普段から注意しなければなりません。

参考:
厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf

肥満体質

グルテンが生成される小麦を使った料理というのはラーメンやパン、お菓子などの糖質と脂質がたくさん混ぜ合わさったもの、というパターンが多いのも事実です。
健康的に痩せるためには、摂取カロリーよりも消費カロリーを増やす必要があります。
グルテンによる弊害以外にも、カロリーオーバーになってしまう可能性が高いです。
小麦を使用した料理を避けるとなると、1日の摂取カロリーも調整しやすくなるので、肥満体質の方のダイエットにも適しているのでおすすめです。

参考:厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html

グルテン不耐症体質

グルテンを厳密に控えなければならないわけではありませんが、グルテンが不調の原因になってしまっている可能性のある方は、グルテン不耐症に該当する場合があります。
アレルギーやセリアック病のように重篤な症状が起きるのではなく、比較的軽度な違和感を覚える程度の場合が多いようですが、基本的に不調の原因がグルテンかどうかは人それぞれですので、もし仮にグルテン不耐症の可能性のある方は、数週間程度グルテンを控えた生活をしてみると良いでしょう。
仮に調子が良くなるといったような変化が何も無ければ、グルテンを無理に避ける必要は無いでしょう。

①NCBI:The Oslo definitions for coeliac disease and related terms
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3440559/#R13
②NCBI:Criteria for diagnosis of temporary gluten intolerance.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1545945/

グルテンフリーの食品や食事をとる方法

方法

グルテンフリーの食生活を行っていくうえでのポイントは主に4つです。

小麦を避ける

グルテンが一番形成しやすい小麦を避けることが、グルテンフリーの食生活を行っていくうえでの基本になります。
主食であるパンや麺はもちろん、天ぷらの衣などにも小麦が使われているので、食品はもちろん、調理方法も工夫する必要があります。
また、小麦を避けるのに加えて代替食品を選ぶという選択肢もあります。
パンがどうしても好きな方は米粉パンにしたり、麺が好きな方はビーフンを食べたりするのもおすすめです。
ただ、製造ラインでのコンタミネーションには注意が必要です。

コンタミネーションとは、数種類の製品を作っている工場では、生産ラインを厳密にわけずに同じ生産ラインを使用していることがあります。
たとえば、同生産ライン上で、小麦を使用していないAという製品を作っているにもかかわらず、小麦粉を使用したBという製品も生産している場合、意図せず、ごく微量ながらA製品に対してB製品の小麦が流入する可能性があるため注意が必要です。
対応策としては、後述するノングルテン表示の製品を選ぶという方法があります。

小麦の種類に着目する

現在流通している小麦の多くは、パンコムギ(普通コムギ)と呼ばれる品種になります。
この品種はグルテンを形成しやすいという特徴があるため、グルテンフリーの生活を送っていく上では障害の1つになります。
カムットコムギやスペルトコムギには比較的グルテン形成能が低いので、どうしても小麦を食べたい方は摂り入れてみると良いでしょう。
注意点としては、アレルギーやセリアック病の方は控えたほうが賢明です。
少量のタンパク質が原因で症状が起きる可能性があるためです。

グルテンフリーの食品を選ぶ

以前は、製造メーカーそれぞれがグルテンがある程度含まれていた場合でも、グルテンフリーと名乗ってよかったのですが、農林水産省からの通達で、米粉や米粉を使用した加工食品のみに対して、グルテンが1ppm未満の場合にのみノングルテン表示ができるようになりました。
米にはグルテンが無いので、このような製造基準ができたのは不思議かもしれませんが、前述したコンタミネーションの可能性があるために設けられています。

グルテンが含まれている食品を避ける

小麦を使った料理や、小麦が含まれている製品というのは意外にもたくさん販売されています。
主食では、ラーメンやパスタ、うどんやパン、蕎麦(10割ではないもの)などです。
主菜では、衣に小麦を使っている揚げ物や天ぷら、餃子などです。
その他、ビールや醤油にも含まれています。
醤油は醸造の過程でグルテン自体が無くなるようですが、念のため注意が必要です。
このように、身近なところにはたくさん小麦が使用されていますので、セリアック病やアレルギーの方は特に気をつける必要があります。
どうしても食べたい食品がある場合、微量でも小麦が含まれているかどうか直接メーカーに問い合わせてみても良いでしょう。

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グルテンフリーのデメリット

デメリット

栄養士として、グルテンフリーの食生活を行っていくうえでの注意点をお伝えします。
それは、セリアック病やアレルギー以外の方で、あまりにもグルテンフリーを意識しすぎてしまい、本来摂取しなければならない栄養素を摂りきれない場合です。
散々小麦を控えましょうという方向性で記載しましたが、小麦自体、米と同様に大切なエネルギー源ですし、必須アミノ酸の必要量に対する含有量がもっとも低いことを示す第一制限アミノ酸がリジンですが、アミノ酸自体もたくさん含まれています。
特にダイエットと連動してグルテンフリーに取り組んでいく場合、カロリー制限は必要ですが、極端な制限はリバウンドにつながりますし、健康的に痩せることはできません。
体に必要な栄養素はたとえダイエット中でも、ダイエット前後であっても変わりませんので、意識して摂取していく必要があります。

Gluten free diet and nutrient deficiencies: A review
https://www.clinicalnutritionjournal.com/article/S0261-5614(16)30088-7/fulltext

グルテンフリーについてのQ&A

グルテンフリーについてよく聞かれる疑問をQ&A方式でお答えしていきます。

パンが好きなのですが、どうしたら良いですか?
米粉を使用したパンに代替すると良いでしょう。
甘いものにも含まれますか?
もちろん、クッキーやケーキにも含まれるので注意が必要です。
蕎麦を全く食べることができませんか?
10割蕎麦であれば食べることができます。
結局グルテンは体に悪いですか?
グルテンと人体との関係性は研究の途中であり、科学的な根拠が全て出揃っているわけではありません。
個人差もありますので、グルテンが悪いかどうかという結論は今後の研究次第です。
ダイエットにも良いですか?
小麦を使用した食べ物には油や砂糖を使ったものが多いため、にカロリーオーバーにつながりやすいので、そのような意味ではダイエットにも効果的といえるでしょう。

●管理栄養士からのコメント

グルテンとは、パンなどに代表される、小麦粉に水分を加えることで出来るドウの構造のことです。
グルテンが原因で起こる可能性のある健康障害は、アレルギーやセリアック病、非セリアック病グルテン過敏症です。
グルテンフリーとは、グルテンを除いた食事のことですが、グルテンフリーが意味のある方は、グルテンに対して過敏な方です。
グルテンフリーの効果を実感しやすい体質とは主に3つで、小麦アレルギー体質、肥満体質、グルテン不耐症体質におすすめです。
グルテンフリーの食生活を送る方法は4つあり、小麦を避ける、小麦の種類に着目する、グルテンフリーの食品を選ぶ、グルテンが含まれている食品を避ける等です。
グルテンフリーのデメリットは必要な栄養素が偏る可能性がありますので、普段からバランスの良い食事を心がけるようにすると良いでしょう。

稲尾 貴子

管理栄養士プロフィール

◎影山敦久

管理栄養士、栄養教諭。子どもからお年寄りまで幅広い年代の方に栄養指導や料理教室を行うかたわら、特定保健指導にも携わる。得意分野はダイエットとスポーツ栄養。


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この記事を書いた人

パン作りと温泉をこよなく愛する2児の母。老後は伊豆で大きな犬と暮らすのが夢です。豆乳が好き、猫は苦手。