亜鉛の効果は?髪に良い?女性や男性も摂り入れたい食品とは
記事の監修
管理栄養士
影山敦久
管理栄養士、栄養教諭。子どもからお年寄りまで幅広い年代の方に栄養指導や料理教室を行うかたわら、特定保健指導にも携わる。得意分野はダイエットとスポーツ栄養。
「亜鉛にはどんな健康効果があるんだろう?」
「亜鉛は髪にも良いって聞いたけど本当だろうか?」
「どのような食品を意識して食べれば効率的に摂取できるんだろう?」
このように考えていませんか。
本記事では下記について解説します。
亜鉛とは?
亜鉛とは、人体に必須のミネラル分で、200種類以上の酵素の成り立ちに関係している栄養素です。
体内では鉄分の次に多い組成となっており、皮膚に20%、筋肉に60%程度存在しています。
亜鉛は免疫系や中枢神経系、骨や皮膚の成長、味覚などの感覚に関わっています。
詳しくは後述しますが、亜鉛不足になるとさまざまな疾患等につながってしまいますので、普段の食事でバランス良く摂取する必要があります。
亜鉛摂取による効果とは?
亜鉛摂取による健康効果は主に10種類です。
順番に解説していきます。
効果1 美肌効果
亜鉛を含むクリームを8週間塗り続けたところ、皮膚の弾力が改善されてシワの消失につながったとする研究結果があります。
今後の研究により、さらに美容効果が解明されるかもしれません。
NCBI:Zinc Therapy in Dermatology: A Review
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4120804/
効果2 髪に良い影響
高濃度の亜鉛を投与したところ、髪の明らかな発毛が見られたとする研究結果があります。
亜鉛は髪の組成にも深く関わっており、体内の亜鉛濃度を知る方法としては血液中の濃度を測る以外に髪の亜鉛量を測定する場合もあります。
今後のさらなる研究で、亜鉛と髪の関係性がより鮮明になるかも知れません。
Reversal of Hair Loss Following Vertical Gastroplasty When Treated With Zinc Sulphate
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10731253/
Effects of Zinc Supplementation on Endocrine Outcomes in Women With Polycystic Ovary Syndrome: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26315303/
NCBI:Zinc Therapy in Dermatology: A Review
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4120804/
効果3 コレステロールに働きかける
亜鉛の投与によってLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が減ったとする研究結果があります。
さまざまな条件化での検証が必要でしょうが、生活習慣病の罹患率を減らす一助になるかもしれません。
Effects of Zinc Supplementation on Serum Lipids: A Systematic Review and Meta-Analysis
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26244049/
効果4 免疫力を上げる
亜鉛のサプリメントを投与することによって、子供の感染症にかかる割合が低下したとする研究結果があります。
さらに、感染症にかかったとしても、亜鉛を投与していないグループに比べて早く回復したということです。
The Efficacy of Zinc Supplementation in Young Children With Acute Lower Respiratory Infections: A Randomized Double-Blind Controlled Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22981241/
Duration and Severity of Symptoms and Levels of Plasma interleukin-1 Receptor Antagonist, Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor, and Adhesion Molecules in Patients With Common Cold Treated With Zinc Acetate
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18279051/
効果5 お通じを円滑にする
幼児に対して亜鉛を摂取させると、下痢の頻度が減ったとする研究結果があります。
下痢の原因にはさまざまなものが関与しているので、一概には言えませんが、今後の研究に期待したいものです。
Zinc Supplementation in Young Children: A Review of the Literature Focusing on Diarrhoea Prevention and Treatment
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25176404/
効果6 肝臓に働きかける
まだまだ研究段階であり、研究者の間でも意見は分かれていますが、定期的な亜鉛の投与によって肝硬変の悪化を防いだり遅らせることが出来たとする研究結果があります。
特に非アルコール性肝硬変を対象として効果があったということです。
Effects of Low Dose Zinc Supplementation on Biochemical Markers in Non-Alcoholic Cirrhosis: A Randomized Clinical Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22827782/
効果7 悪性新生物に関わる
まだまだ研究段階であり、研究者の間でも意見が分かれていますが、高濃度の亜鉛の投与によって結腸の直腸がんのリスクが低下したとする研究結果があります。
今後の研究に期待したいものです。
Association Between Zinc Intake and Risk of Digestive Tract Cancers: A Systematic Review and Meta-Analysis
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24148607/
効果8 炎症に働きかける
動物実験ですが、亜鉛の投与によって、大腸炎の際に見られる炎症が抑えられたとする研究結果があります。
人にそのまま当てはまるわけではありませんが、可能性としては考えられるでしょう。
Zinc Sulphate Solution Enema Decreases Inflammation in Experimental Colitis in Rats
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10574136/
効果9 抗酸化作用
亜鉛の投与によって、細胞の酸化が抑えられたとする研究結果があります。
体内での酸化が進むと生活習慣病や、がんにつながってしまうと言われています。
体内の酸化を抑える作用のある抗酸化物質や抗酸化成分を積極的に摂り入れることが疾病予防に対して重要です。
厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html
Zinc supplementation reduced DNA breaks in Ethiopian women
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4466114/
効果8 糖尿に関係する
まだまだ研究段階であり、研究者の間でも意見が分かれていますが、亜鉛の積極的な摂取によって1型や2型の糖尿病に対しての有効性が示唆されている論文があります。
日本では糖尿病の疑いのある人が約2000万人程度いると言われていますので、今後の研究によっては糖尿病の予防や治療に対しての有用性が認められる可能性もあるでしょう。
厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-048.html
Zinc and Diabetes–Clinical Links and Molecular Mechanisms
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19442898/
亜鉛を多く含む食品とは?
亜鉛を多く含む食品を動物性食品、植物性食品に分けてご説明していきます。
動物性食品
牡蠣、豚肉、鶏肉、牛肉、卵などです。
食品成分 | 亜鉛 |
---|---|
単位 | mg |
魚介類/かき/養殖、生 | 14.5 |
肉類/うし/[乳用肥育牛肉]/かたロース/脂身つき、生 | 4.7 |
肉類/ぶた/[大型種肉]/もも/脂身つき、生 | 2 |
肉類/にわとり/[成鶏肉]/もも/皮つき、生 | 1.7 |
鶏卵 全卵 生 | 1.3 |
TOTAL | 24.2 |
※100gあたり
文部科学省:食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
植物性食品
ごま、わかめ、のり、納豆、ブロッコリーなどです。
食品成分 | 亜鉛 |
---|---|
単位 | mg |
豆類/だいず/[納豆類]/糸引き納豆 | 1.9 |
種実類/ごま/乾 | 5.5 |
ブロッコリー 花序 生 | 0.8 |
藻類/いわのり/素干し | 2.3 |
わかめ カットわかめ 乾 | 2.8 |
効果を期待してサプリで亜鉛を摂取する場合の注意点
亜鉛を過剰に取りすぎると嘔吐や発熱してしまう原因になったり、銅や鉄の吸収を阻害してしまうので注意が必要です。
亜鉛を食べ物からとる場合のおすすめの食べ方
亜鉛の王様といえば牡蠣ですが、生で食べるより水煮の方が、より多く亜鉛が含まれているためおすすめです。
また、パンが好きな方は全粒粉入りにすると効率よく亜鉛を摂取することができます。
果物や野菜に関しては、生のままよりも乾燥させている食品の方が亜鉛の含有量が多いので、ドライフルーツ等を食べても良いでしょう。
亜鉛はサプリでも摂取できる?
前述したような食品に亜鉛は多く含まれていますが、ライフスタイルの兼ね合いで毎食きちんと食べることが難しい場合もあると思いますので、サプリメントの摂取もおすすめです。
もちろん、多く摂れば摂るほど体に良いわけではありませんので、用量は厳守するようにしてください。
亜鉛の必要量はどれくらい?
食事摂取基準2020年度版によると、推奨量として男性11g、女性が8gとして示されています。
普段の食生活で不足することはあっても、過剰摂取につながることは基本的にはありませんので、食事からバランスよく摂取しつつ、不足分をサプリメントで補うようにすると良いでしょう。
亜鉛が不足するとどんな悪影響があるの?
脱毛や成長障害、食欲不振や精神障害、舌炎や肝胆道疾患につながると言われています。
前述したような食品から満遍なく摂取する必要性があります。
亜鉛の効果に関するQ&A
亜鉛の効果についてよく聞かれる疑問を、Q&A方式でお答えしていきます。
- 普段の食生活で摂りすぎることはありますか?
- 基本的にはありません。
サプリメントによる過剰摂取に注意が必要です。
- 亜鉛の摂取で身長が伸びますか?
- 論文は特にありませんが、今後の研究によっては関与することが示唆されるかも知れません。
- 髪の毛が生えますか?
- 髪が生えたとする研究結果があります。
- 亜鉛をサプリで摂って良いですか?
- 食事の補助的に摂ると良いでしょう。
- 肌にも良いですか?
- 肌の形成にも関わっていますので、きちんと摂取したいものです。
●管理栄養士からのコメント
亜鉛とは、体内での酵素に関わる重要なミネラル成分です。
亜鉛摂取による効果は主に下記になります。
- ・美肌効果
- ・髪に良い影響
- ・コレステロールに働きかける
- ・免疫力を上げる
- ・お通じを円滑にする
- ・肝臓に働きかける
- ・悪性新生物に関わる
- ・炎症に働きかける
- ・抗酸化作用
- ・糖尿に関係する
亜鉛を多く含む食品を動物性食品だけではなく、植物性食品からも積極的に摂取し、不足分をサプリメントで補うと良いでしょう。
サプリメントで亜鉛を摂取する場合の注意点を守りつつ、食品からは、人それぞれの嗜好にあった食べ方をすると美味しく頂きながら健康を維持することができます。
普段の食生活から意識して摂取していきましょう。
管理栄養士プロフィール
◎影山敦久
管理栄養士、栄養教諭。子どもからお年寄りまで幅広い年代の方に栄養指導や料理教室を行うかたわら、特定保健指導にも携わる。得意分野はダイエットとスポーツ栄養。