マグネシウムの働きとは?健康効果やサプリ摂取の注意点
記事の監修
管理栄養士
影山敦久
管理栄養士、栄養教諭。子どもからお年寄りまで幅広い年代の方に栄養指導や料理教室を行うかたわら、特定保健指導にも携わる。得意分野はダイエットとスポーツ栄養。
マグネシウムの働きって何だろう?
あわせて健康効果やサプリ摂取時の注意点を知りたいと考えていませんか。
本記事では下記について解説します。
マグネシウムとは?
マグネシウムとは、原子番号が12の金属元素の一種です。
体内に必須のミネラル成分の1つで、300以上の酵素を補佐する役目があります。
例えば、脂肪酸を作り出したり、エネルギーを作り出したり、タンパク質の合成やビタミンDを活性化させる働き等をもっています。
体内のマグネシウム量はおよそ25gで、そのうちの60%以上は骨に含まれており、残りの20%程度は脳や筋肉、神経や歯に存在しています。
マグネシウムが不足すると、カルシウムの欠乏につながりますので、マグネシウムを補給することは骨粗しょう症の予防になりますので、普段の食生活から積極的に摂取していきたい栄養素になります。
ただ、昨今の日本人の食事ではマグネシウムが不足しているとされているため、摂取方法をもう一度見直す必要のある栄養素です。
マグネシウムの主な働き
マグネシウムの主な働きとしては、ホルモンの分泌や筋肉の収縮、神経の興奮やエネルギーを作り出したり代謝したり、といった働きがあります。
マグネシウムを摂取すると、その20%から70%程度は小腸で吸収されます。
特に、ナトリウムやビタミンD、糖質やタンパク質と一緒に摂取することで吸収が促進されますので、マグネシウムを多く含む食品を摂ることはもちろんですが、同時にさまざまな食品を組み合わせた食事をすることが、マグネシウム不足に陥らないための方法と言えるでしょう。
マグネシウム不足による症状
マグネシウムが不足すると、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が増加して、HDLコレステロール(善玉コレステロール)やカルシウム濃度も一緒に低下してしまいます。
結果として、筋肉痛や痙攣、精神異常や不整脈、嘔吐や食欲不振につながっていきます。
ですので、後述するマグネシウムを多く含む食品を意識して摂取していくことが大切になってきます。
National Library of Medicine
Magnesium Status and Ageing: An Update
参考書籍:南江堂、健康・栄養科学シリーズ、基礎栄養学
マグネシウムが含まれている食品やサプリメント
マグネシウムが比較的多く含まれている食品をご紹介します。
動物性食品
さくらえび、まいわし、あさり、いくら、はまぐり、きんめだい、ししゃも、パルメザンチーズ、ビーフジャーキーなどです。
なかでも、さくらえびは、ずば抜けたマグネシウム含有量を誇っており、手軽に食事に取り入れることができるので、おすすめです。
植物性食品
ほしひじき、こんぶ、ピュアココア、インスタントコーヒー、わかめ、ごま、のり、アーモンド、大豆等に多く含まれています。
意外にもインスタントコーヒーにマグネシウムが多く含まれているので、ティータイムで飲むことで手軽にマグネシウムを摂取できるため、おすすめです。
サプリメント
マグネシウムが含まれている動物性食品や植物性食品、後述するにがり以外にも、サプリメントで効率よく摂取する方法があります。
カルシウムやマグネシウムの含有比率が調整された物も販売されています。
食事を中心に、不足分をサプリメントで補うという方向性で摂り入れてみると良いでしょう。
その他
マグネシウムと言えば「にがり」を思い浮かべる方も多いことでしょう。
にがりには多くのマグネシウムが含まれているので、ぜひ食事に取りいれたい食品でもあります。
ただ、にがりは豆腐作りにしか利用できないと思っている方が多いと思いますが、さまざまな利用方法があります。
たとえば、肉料理に入れると肉がしっとり軟らかくなりますし、野菜の煮くずれを抑えてくれる効果もあります。
さらにお風呂に入れると、不眠症やストレスを和らげてくれる作用にも期待できるうえに、肌の新陳代謝を活発にしてくれる効果がありますので、カサつきやすい、かかと等に塗るという方法もあります。
にがりとは
今回はにがりの気になる成分や効能、どうやってにがりは作られているのか、などご紹介します。
マグネシウム摂取による健康効果
マグネシウムを摂取することで期待できる健康効果は主に8つです。
順番に解説していきます。
健康効果1 血糖への効果
メタアナリシスという、論文をさらに精査した、言わば論文の中の論文での発表において、1日100mgのマグネシウムを追加で摂取することで、2型糖尿病の発症率を8%から13%少なくすることが出来たという報告があります。
糖尿病には1型と2型に分かれています。
1型糖尿病は、血糖値を下げるインスリンというホルモンが不足することで高血糖が続いている状態で、2型糖尿病はインスリン不足や、インスリンを上手く細胞へ使うことができず、高血糖状態が続くことになります。
2型糖尿病の原因の多くは、暴飲暴食などの不規則な食生活や極度の運動不足、遺伝も関係があるとされています。
普段の食生活からマグネシウムを積極的に摂取することで、生活習慣病の予防につながるというのは、糖尿病予備群の多い日本ではある意味画期的なのかも知れません。
今後もさらに研究が進んでいくことと思いますので、期待したいところです。
①参考書籍:第一出版、テキストブックシリーズ、応用栄養学
②厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
③National Library of Medicine
The Effect of Magnesium Supplementation on Blood Pressure in Individuals With Insulin Resistance, Prediabetes, or Noncommunicable Chronic Diseases: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28724644/?dopt=Abstract
健康効果2 メタボリックシンドロームへの効果
研究者の間でも意見が分かれていますが、マグネシウムを追加で1日630mg摂取すると、メタボリックシンドロームの発症リスクが抑えられるという報告があります。
メタボリックシンドロームとは、内臓肥満にプラスして脂質代謝異常や高血糖および高血圧が重なることで、脳卒中や心臓病にかかりやすくなってしまう状態です。
日本人の死因の2位と3位は心臓病と脳卒中になりますが、この病気の原因の多くは動脈硬化にあります。
動脈硬化を悪化させる要因としてメタボリックシンドロームが含まれますので、いかにメタボリックシンドロームを避けるかが重要になってきます。
1999年に世界保健機関がメタボリックシンドロームの基準を発表しましたが、そこに日本独自の考え方を付け加えて現在のメタボリックシンドロームの基準があり、特定健康診査・特定保健指導として、国家的にメタボリックシンドロームの予防や改善に取り組んでいるところです。
私個人においても、特定保健指導に関わっていた経験から、メタボリックシンドロームの予備群や該当する方の多くは、食生活にあまり感心が無い方が多い傾向にあるように思います。
今後の研究結果が蓄積されていき、マグネシウムの追加摂取で、メタボリックシンドロームが改善される可能性が、より高まっていくことに期待したいですね。
厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-001.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
健康効果3 血圧への効果
研究者の間でも意見が分かれており、今後も引き続き研究が必要ですが、オランダの研究結果で、マグネシウムの摂取量増加によって血圧の改善がみられた、という報告があります。
高血圧には、2種類あります。
1つ目は2次性高血圧と呼ばれ、副腎や甲状腺に異変が生じることが原因で高血圧の状態になってしまいます。
もう1つは本態性高血圧と呼ばれ、肥満やストレス、飲酒や食塩の過剰な摂取、運動不足などの生活習慣に原因があるとされています。
日本人の大多数の高血圧は、本態性高血圧です。
特に食塩の過剰摂取が高血圧の主な原因ですので、普段の食生活から見直していく必要性があります。
たとえば、加工食品を控えたり、麺類のスープは残したり、味噌汁にたくさんの具を入れたり、香辛料を上手に利用するといったことを意識するだけで、食塩の過剰摂取を防ぐことにつながります。
マグネシウムが仮に血圧を下げると確定すれば、高血圧の方もそうでない方も積極的に摂取していきたい栄養素になります。
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-003.html
健康効果4 腎機能への効果
研究者の間でも意見が分かれていますが、慢性の腎臓病だと、血中のマグネシウム濃度が低ければ、腎臓の機能低下が早まるとする報告があります。
腎臓の主な働きは、1日に200リットル程度の血液をろ過することで、原尿を作り出して体内の老廃物を排出します。
慢性腎臓病の基準としては、腎臓の働きが正常な場合と比較して60%以下に下がった場合や、本来なら出るはずの無い、分子量の大きいタンパク質が尿中に排出されることです。
慢性腎臓病が進んでいくと、人工透析にもなりかねません。
人工透析は1人年間約700万円程度の費用がかかります。
医療費を大幅に増やしている原因とされていますので、国家的にも、いかに慢性腎臓病を防いだり、症状を緩やかにしていくかが重要となっています。
今後のさらなる研究によって、マグネシウムと慢性腎臓病との関係性が明らかにされていくことに期待したいものです。
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-073.html
健康効果5 精神面への効果
研究者の間でも意見が分かれていますが、マグネシウム不足が精神異常につながることがあるとされており、食事の際や寝る前にマグネシウムを摂取すると、うつ病の症状が緩和したという報告があります。
まだまだ研究段階なのですが、うつ病の多くはマグネシウムが不足している可能性があるという論文があります。
うつ病とは、気分の落ち込みや憂鬱な状態の場合にみられます。
うつ病の原因としては身体因性や心因性等によります。
身体因性とは、甲状腺機能低下症やアルツハイマー型認知症などの病気が原因となっている場合です。
心因性とは、その人の環境や性格に関係している場合です。
現在、うつ病の方がどんどん増えているとされていますが、性格や環境、各種の疾患の他にマグネシウム不足が関係している可能性があります。
今後さらに研究が進んでいくことで、マグネシウムとうつ病との関係性が、より一層判明していくことになりそうです。
①Rapid recovery from major depression using magnesium treatment
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0306987706001034?via%3Dihub
②厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html
健康効果6 細胞の変異を防ぐ効果
研究者の間でも意見がわかれていますが、コホート研究(前向き研究)と呼ばれる追跡調査で、マグネシウム摂取量が多いと、大腸がんにかかるリスクが下がる、という日本の研究結果があります。
特に、結腸や直腸で顕著に低下したということです。
さらに、マグネシウムにより大腸がんを予防する効果があらわれやすい対象は、飲酒習慣のあるグループだったようです。
ただ、マグネシウム摂取において、男性では大腸がんの罹患率が下がったようですが、女性では見られませんでした。
理由はホルモンや飲酒習慣の有無などが挙げられています。
今後の研究に期待する一方、大腸がんを防ぐ食事は、野菜やきのこ類等に多く含まれる食物繊維、そのほかに牛乳、にんにく等が有力とされています。
バランスのとれた食事を基本として、適切な運動習慣も大腸がん予防に効果的ですので、普段から意識していきたいものです。
国立がん研究センター
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/385.html
健康効果7 呼吸機能の改善効果
あまり聞いたことがない病名かもしれませんが、嚢胞性線維症とは、難病の1つに認定されており、主に乳児期のあたりで発病して、気管支炎や肺炎を何度も繰り返していったり、消化不良などが症状としてあらわれます。
マグネシウムを継続的に投与すると、嚢胞性線維症の患者に呼吸機能の改善がみられたとする研究結果があります。
さらに、喘息の子供に対してもマグネシウムの経口補給で症状が緩和した、という報告もあります。
喘息の多くは気管支喘息を指します。
喘息とは、空気の通り道である気道が過敏になり、狭くなった状態です。
咳はもとより、呼吸困難や場合によっては命の危険もあります。
喘息の原因は、主に喫煙です。
もちろん自分は吸わないとしても、周囲の人がタバコを吸った煙を、非喫煙者が吸い込んでしまう受動喫煙も原因の1つとされています。
健康増進法で分煙が明確になっていますが、引き続き、喘息のリスクにさらされないように気をつけていく必要があります。
①National Library of Medicine
Oral Magnesium Supplementation in Children With Cystic Fibrosis Improves Clinical and Functional Variables: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Crossover Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22648717/?dopt=Abstract
②National Library of Medicine
Oral Magnesium Supplementation in Asthmatic Children: A Double-Blind Randomized Placebo-Controlled Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16788707/
③厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-022.html
健康効果8 体内の炎症を抑える効果
研究者の間でも意見が分かれていますが、糖尿病に関連している人や低マグネシウム血症での炎症が抑えられる、という研究結果があります。
炎症の評価の指標として、血液中のCRPというタンパク質レベルがあります。
通常、感染や細胞の破壊が行われた場合はCRP値が増加しますが、マグネシウムの摂取により、CRP値の改善がみられたということです。
まだまだ、研究の途中ではありますが、マグネシウムの効果がさらに明確になる可能性があります。
National Library of Medicine
Oral Magnesium Supplementation Decreases C-reactive Protein Levels in Subjects With Prediabetes and Hypomagnesemia: A Clinical Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24814039/?dopt=Abstract
マグネシウムのサプリを摂取する際の注意点
基本的にマグネシウムを大量に摂取したとしても、腎臓からきちんと排出されるのであまり問題にはなりません。
しかし、腎臓に何らかの機能障害がある場合、マグネシウムが体内に大量に蓄積することで、低血圧や言語障害、筋力低下や倦怠感、傾眠傾向や排尿障害などがあり、さらに重症になってくると意識障害も起こってしまいます。
マグネシウムが体に良いという情報だけで、むやみにサプリを摂取しすぎるのはあまりおすすめできません。
やはり、あくまで日常の食生活でマグネシウムをきちんと摂取し、足りない分をサプリメントを使用して補完するという考え方にすると、他の栄養素も過不足なく摂れるので良いでしょう。
マグネシウムが洗濯に使えるって本当?
マグネシウムは洗濯にも使用することができます。
水にマグネシウムを加えると化学反応によって石鹸水になるからです。
マグネシウムを洗濯に使うメリット
肌が敏感な方は市販の洗濯用洗剤が合わない場合がありますが、マグネシウムを使用した洗剤なら肌に優しいので安心でしょう。
マグネシウムの洗剤を使用すると、化学反応の関係で排水管や洗濯槽の汚れも落とすことができます。
注意点としては、酸素系漂白剤は同時に使用できますが、塩素系漂白剤は使えません。
洗濯物が濡れたままだと、酸化してしまう可能性があるので、天日にしっかりと干す必要があります。
マグネシウムについてのQ&A
マグネシウムについてよく聞かれる疑問をQ&A方式でお答えしていきます。
- マグネシウムは便秘に効きますか?
- マグネシウムは便をやわらかくする効果があるので、便秘にも良いでしょう。
- 普段の食事で摂り過ぎることはありますか?
- 普段の食事でマグネシウムを摂り過ぎることはあまりありません。
サプリメントでの過剰摂取に注意しましょう。
- カルシウムも一緒に摂ったほうが良いですか?
- カルシウムとマグネシウムは連携して体内で働くので、一緒に摂るようにします。
- ストレスと関係ありますか?
- ストレスが過剰だと体外へのマグネシウム排泄量が増えるので、できるだけストレスを発散したり、ためないようにすることが大切です。
- にがりの摂取も有効ですか?
- にがりにも豊富にマグネシウムが含まれているので、ぜひ摂取したい食品になります。
●管理栄養士からのコメント
マグネシウムとは、人間に必要不可欠なミネラル成分の1つです。
マグネシウムの主な働きには、エネルギー代謝やホルモンの分泌などの役割があり、不足による症状としては、食欲不振や精神異常等があります。
マグネシウムが含まれている食品には、動物性や植物性、サプリメントやにがりです。
マグネシウム摂取による健康効果は主に8つです。
- ・血糖への効果
- ・メタボリックシンドロームへの効果
- ・血圧への効果
- ・腎機能への効果
- ・精神面への効果
- ・細胞の変異を防ぐ効果
- ・呼吸機能の改善効果
- ・体内の炎症を抑える効果
マグネシウムのサプリを摂取する際の注意点としては、大量摂取による過剰症です。
マグネシウムは摂取以外に、洗濯にも使えるので、使用する場合はしそのメリットやデメリットを把握しておく必要があります。
健康に、かつ便利に生活していくうえでマグネシウムをぜひ活用してみてください。
管理栄養士プロフィール
◎影山敦久
管理栄養士、栄養教諭。子どもからお年寄りまで幅広い年代の方に栄養指導や料理教室を行うかたわら、特定保健指導にも携わる。得意分野はダイエットとスポーツ栄養。
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