塩とは|結晶や作り方でどう違う?おすすめの塩タイプと活用法
人の身体にとっても、舌にとっても欠かせない調味料「塩」。
ところがいざ「塩選び」となると、種類が多くてどんなものを選べばいいのか分からないという方も多いようです。
「精製塩」「自然塩」って?
どんな塩が身体にとって安全でおいしいの?
そんな疑問を抱いている方もたくさんいるはず。
今回は、塩の種類や選び方を中心に、塩に関するさまざまな疑問にお答えします!
塩について
「サラリーマン」という言葉の元になっている英語の”Salary(給料)”。
実はこれ、英語で塩を表す”Salt”から来ているんです。
昔は塩が貴重品で、貨幣の代わりとして使われることもあったとのこと。
塩が人々の暮らしに必要不可欠であったことを物語るようなエピソードですね。
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、食塩摂取量の目標値は1日に成人男性なら8g、女性は7g。
塩は小さじ1杯5g、大さじ1杯15gですから、小さじなら1杯強、大さじなら1/2程度です。
塩は健康に悪い?
現代の食生活の中では高血圧の原因とされ、悪者にされがちな塩ですが、細胞や神経、筋肉など身体のさまざまな部分で大切な役割を担っています。
もちろん塩の過剰摂取は問題ですが、高血圧には「食塩感受性」と「非感受性」の2種類があり、塩が高血圧の原因となるのは「食塩感受性高血圧」の場合のみ(人口の4割程度)であるということがわかっています。
減塩は誰にとっても健康につながるというわけではなく、人によっては極端な減塩が疾患リスクを高めるという論文もあるようです。
「塩=健康に悪い」「塩の摂取=健康」という両極端の説に走るのではなく、自身の体質や体調と相談しながら塩を摂っていくのが賢い付き合い方といえそうです。
塩のカロリーと栄養
塩にはカロリーがありません。
栄養成分は製品によって異なりますが、海水には約80種類以上ものミネラルが含まれているといわれており、作り方によっては塩にもこうしたミネラルが残っています。
結晶を取り出す方法によっては、ナトリウム以外のミネラルがほとんど含まれない場合もあります。
塩に含まれるミネラルの例は次のとおり。
ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)
クロム(Cr)、銅(Cu)、ヨウ素(I)、
モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、フッ素(F)、リチウム(Li)、
ホウ素(B)、臭素(Br)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)
特に赤字のものはヒトの体内に存在し、栄養素として欠かせない「必須ミネラル」とされています。
海水から塩を抽出する時にできる液体である、にがりについての詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
にがりとは
にがり、使ったことはありますか?
豆腐作りなどで必須のにがりですが、そもそもにがりって何なのか詳しく知らない方も多いと思います。
今回はにがりの気になる成分や効能、どうやってにがりは作られているのか、などご紹介します。
にがりとはの記事を見る
汗をかいたら塩を摂るべき?
暑い季節に気になるのが、汗をかいたら塩を摂るべきなのかどうか?ということです。
熱中症の原因は、暑さによって体温調節機能が狂ったり、大量の汗をかくことで体内の水分量・塩分量のバランスが崩れたりすること。
予防のためにはこまめに水分を補給することが大切ですが、汗をかいているときは塩も同時に補給するようにしましょう(高血圧の方など医師に減塩を指示されている方は、医師の指示に従うようにしてください)。
日本スポーツ協会では、熱中症予防のために0.1~0.2%の塩分を含んだ飲料を飲むことを推奨しています。
作る目安はコップ1杯(200ml)の水に塩をひとつまみ。
暑い時期は外出時に塩を持ち歩くのもいいかもしれませんね。
塩の種類(原料・結晶・作り方別)
一口に塩といっても、種類はさまざま。「〇〇塩」という名称が多くて混乱しませんか?
塩は原料による分類や結晶による分類、製法による分類など分類によって呼び方が変わります。
たとえば同じ塩でも原料について言えば「海水塩」、作り方で呼べば「煎ごう塩(平釜)」、形状で呼ばれる時は「凝集塩」というように、ひとつの塩にさまざまな呼び方があるのです。
分類別の呼び方について、わかりやすい一覧を作ってみました。
塩の分類(原料別)
名称 | 原料 | 特徴 |
---|---|---|
海塩 | 海水 | 海水を濃縮・結晶させた塩。海水由来のミネラルが含まれるものが多いが、製法によって異なる。 |
湖塩 | 湖塩 | 塩分濃度の濃い湖で乾季に採取される塩。 成分は採取した湖によってさまざま。 |
岩塩 | 岩塩 | 大昔に地殻変動などにより陸地に閉じ込められた海水が結晶化したもの。 ナトリウム分が高いが、海水由来以外の成分が含まれることも。 |
再生加工塩 | 海水塩 | 海水塩に海水や真水、粗製海水塩化マグネシウム(にがり)を加えて煮詰め、結晶化させたもの。経済的。 |
藻塩(もしお) | 海水、海藻 | 古くは海藻に海水をかけて塩分を含ませたものから作っていたが、現在では一緒に煮詰めて作るのが一般的。 海藻の成分が含まれ、繊細な味わい。 |
調味塩(シーズニングソルト) | さまざまな塩、ハーブ等 | 塩にハーブやスパイスなどの素材をブレンドした塩。 原料の塩は岩塩や海水塩などさまざま。 |
塩の分類(結晶系別)
結晶形による分類
-
立方体
最も一般的な形状。サラサラ。
-
凝集晶
やわらかく、溶けやすい。
-
フレーク状(薄い板状)
食感がサクサクとしていてアクセントになる。
-
トレミー状(ピラミッド状)
食感がサクサクとしていてアクセントになる。
-
球状
立方体の結晶の角がとれたもの。
-
粉砕
大きな結晶を粉砕したもの。大粒の場合は溶けにくい。
-
パウダー
スッと溶ける。しょっぱさを感じやすい。
-
顆粒
スッと溶ける。しょっぱさを感じやすい。
塩の分類(作り方別)
名称 | 濃縮方法 | 結晶化方法 | 特徴 |
---|---|---|---|
天日塩 | 天日 | 天日 | 塩田などで天日だけで干しあげた塩。 地下かん水、湖塩など、海水以外の原料を天日で濃縮・結晶化した塩も含まれる。 外国産のものが一般的。 |
煎ごう塩 | 天日 | 平釜 | 天日で濃縮し、平釜で煮詰めた海水塩。 平釜で煮詰めるのでやわらかく溶けやすい塩になる。 |
逆浸透膜 | 平釜 | 真水と濃い海水に分ける方法で濃縮し、平釜で煮詰めた海水塩。 平釜で煮詰めるのでやわらかく溶けやすい塩になる。 |
|
イオン膜 | 立釜 | 海水から不純物を取り除き、ナトリウムだけを取り出したもの。 ナトリウム以外のミネラル含有量は少ないが、海水汚染の影響を受けにくい |
ここに掲載した作り方は一例で、実際はさまざまな濃縮・結晶化・品質を整える工程などを組み合わせて作られています。
どのように作られた塩かを知りたい場合はパッケージの「工程」欄を見てみてください。
「イオン交換膜」で濃縮された塩は、塩化ナトリウムの純度が高いのが特徴です(できたものににがりを添加した「再生加工塩」は除く)。
一方でナトリウム以外のミネラルを残すことも可能な「天日」や「逆浸透膜」の製法で作られた塩も、味を調えるためにある程度はにがり分を落として作られています。
どれだけにがり分を残した塩にするかは製品によって異なり、ミネラルの含有量やバランスなどもまちまちです。
塩の選び方~おすすめの塩はどんな塩?
ここまでいろいろな塩を見てきましたが、気になるのは「結論としてはどの塩がいいの?」ということですよね。
「ナトリウム純度の高い”精製塩”は健康に悪い」「身体によいのはミネラルの豊富な塩」といった情報も出回り、悩んでいる方も多いと思います。
この章では健康面や味について検証、どんな塩がおすすめかを考えていきたいと思います!
「精製塩」は危険?
「”精製塩”はミネラルバランスが崩れていて危険、摂るなら”自然塩”を」という話、耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
「精製塩」というと、いかにも化学的な処理がされている良くないものという印象を受けますが、これは一般的な塩を表す言葉ではなく、公益財団法人塩事業センターが作る塩の商品名。電気分解によりナトリウムイオンを抽出して作られるため、ナトリウム濃度が99.5%以上と高いのが特徴です。
一方の「自然塩」はミネラルが豊富というイメージですが、実は特に定義がない言葉。
一般的には天日塩や、煎ごう塩の中でも天日や逆浸透膜で濃縮、平釜で結晶化されたものを指すことが多いようですが、公正な取引のため、「自然塩」という言葉をパッケージ等に使うことは禁止されています。
「自然塩」と呼ばれている塩は確かにナトリウム以外のミネラルが豊富なものが多いのですが、含有量やバランスは製品によってさまざま。
ミネラルが豊富といわれる塩でも含まれている量はごく微量で、他の食生活によって補うことができない量ではありません。
亜鉛などの不足しがちなミネラルが摂れるのは嬉しいものですが、ナトリウム純度の高い塩=危険とまで言うことはできないでしょう。
また、どのようなミネラルを必要としているかは個人の体質や食生活によっても異なるため、「この塩が誰にとっても身体によい塩!」と言うこともできないのです。
ミネラル豊富な塩はおいしい!
では、わざわざ高価な天日塩や平釜で作った塩を購入する意味はないのか、というと、そんなことはありません。
味の違いは明らかだからです。
ミネラルの種類が豊富な塩は味が複雑で、まろやか。
以前お話を伺ったソルトコーディネーターの青山志穂さんによれば、ミネラルには種類によって次のような味わいの違いがあるそうです。
ナトリウム:単純なしょっぱさ
マグネシウム:苦味、うまみ、コク
カリウム:酸味、鉱石的な冷たさ、キレの良さ
カルシウム:単体では無味だが、相対的に甘み
その他のミネラル:雑味
ナトリウム純度の高い塩は突き刺すようなシャープな塩辛さを感じやすいものですが、その他のミネラルが含まれることによって繊細で旨みの感じられる味わいになります。
食材によってはナトリウムの割合が高いものの方が合うこともありますので、適材適所で活躍させてみてください。
食材別・おすすめ塩タイプ
食材に合わせるときに考えたいのが、結晶の大きさと味わい。
結晶の大きさ(粒が大きめのタイプか、細かいタイプか)と味わい(まろやかタイプか、シャープなタイプか)を組み合わせれば、食材にぴったりの塩が見つかります。
<この食材にはこんな塩がおすすめ!>
肉…しっかりと塩味が感じられるタイプの塩(大粒✕シャープ)
魚…ゆっくりと塩味が効く、繊細な味わいの塩(大粒×まろやか)
野菜…野菜の繊細な味を引き出す、まろやかな味わいの塩(小粒✕まろやか)
油物…スッと溶け、油の味に負けないシャープな塩(小粒×シャープ)
ごはん…ごはんによく馴染み、やさしい甘みを引き出すまろやかな塩(小粒×まろやか)
塩は好みのものを1種類でもいいのですが、粒の大きな岩塩や繊細な味の海塩などいくつかの種類を置いておくと料理の幅が広がりますよ。
ソルトコーディネーターに聞いた塩の選び方と上手な付き合い方はこちらの記事をご覧ください。
塩の選び方と上手な付き合い方| ソルトコーディネーター青山志穂さんにインタビュー
ソルトコーディネーターの青山志穂さんに塩の役割と選び方、
塩が体に与える効果など塩についても様々な疑問に答えて頂きました
塩の選び方と上手な付き合い方| ソルトコーディネーター青山志穂さんにインタビューの記事を見る
暮らしの中の塩活用法
塩が活躍するのは、料理の時だけではありません。
ヒトの体液の中でも重要な役割をもっているという塩は、お手当てなどでも大活躍。
ぜひ、暮らしの中で活用してみてください。
活用法1 鼻うがいに塩を使う
アレルゲンや鼻水が溜まった時などに有効な鼻うがい。
水道水ではツンとして痛みを感じるものですが、生理食塩水なら大丈夫。
鼻腔を洗うと、鼻水をはがれやすくしたり、アレルゲンを洗い流したりする効果があるそうです。
500mlのペットボトルに小さじ1弱(4~5g)の塩を入れるとだいたい0.9%の生理食塩水になるので、ノズルのついたボトルに入れて使ってみてください。
活用法2 塩で歯磨き
塩による歯磨きは、歯周病の予防をしたり歯垢を落としたりといった特別な効果があるわけではありません。
歯茎の腫れや出血を抑える効果はあるようですが、疾患の予防という意味では特に効果がないようです。
ただ、市販の歯磨き粉と比べると「清涼感があるために磨けたつもりになってしまう」ということがないため、すみずみまでしっかりと磨けるといった利点があります。
「添加物を摂取したくないけれど何もつけないのは嫌だ」という方にとっては選択肢のひとつとなるでしょう。
粒の大きな塩でゴシゴシこすると歯が傷ついてしまうため、サッと溶ける塩を少量使うようにしましょう。
活用法3 塩風呂で冷え性改善
お風呂に大さじ3杯ほどの塩を入れる「塩風呂」。
ポカポカとあたたまり、湯冷めしにくくなるそうです。
血流をよくするため、肩こりや冷え性などの不調を改善するのに役立ちます。
塩風呂はアトピーに効果があるという情報もあります。
海水浴でアトピー性皮膚炎が改善する方が多いということで、塩分が良いのではないかといわれているようです。
民間療法ではありますが、試してみるのもいいかもしれません。
パスタに塩を入れる理由ー塩トリビア集
身近な存在だけれど、意外と知らないことも多い…そんな「塩」に関するトリビアを集めてみました。
パスタを茹でる時に塩を入れるのはなぜ?
パスタを茹でる時に入れる塩。
「もったいないな~入れなくてもいいんじゃない?」と思ったことがある方も多いかもしれません。
パスタを茹でる時に塩を入れる理由は、ずばり「塩で下味をつけるため」。
イタリアンレストラン「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務シェフの著書『決定版 落合務の基本のイタリアン』によると、「パスタそのものにまったく塩が使われていないので、ここでしっかり塩をきかせて下味をつけておかないと、どんなにおいしいソースであえても間の抜けた味になってしまいます」とのこと。
塩を加えてゆでることで、パスタにコシが出ておいしくなるという効果もあるそうですので、おいしいパスタを作るのであればもったいなくても1ℓにつき20~30gの塩を使うことをおすすめします。
口内炎に塩を塗ると治るって本当?
「口内炎に塩を塗ると治る」「塩でうがいをすると治る」などと言われますが、実は塩にはそのような効果はありません。
それどころか、傷口に塩がしみて痛みが増すことにもつながります。
粘膜の炎症がある時は、塩を塗るのはもちろん、食事の際も塩辛いものを避けてください。
氷に塩をかけるとなぜ温度が下がるの?
氷に塩をかけて冷やし、アイスクリームを作った経験、ありますか?
氷に塩をかけるとなぜ温度が下がるのか、不思議ですよね。
液体が蒸気になる時に周囲の熱を奪う気化熱という現象がありますが、氷が液体になる時にも周囲の熱を奪います。
この時塩を氷にかけると氷が融ける速さが増すため、周りの温度が急激に下がるのだそうです。
最も温度が下がるのは、氷:塩が3:1の時。-20℃まで冷やすことができるそうですよ。
塩はどのくらい食べても平気?
塩の致死量、一体どのくらいだかご存知ですか?
実は、塩化ナトリウムの致死量は体重1kgあたり0.5~1g程度であるといわれています。
ということは、体重50kgの人だと25gほど。意外と少ないような気がしませんか?
過去には小さな子どもが「体調が悪そうだから」と小さじ1杯(5g)ほどの塩を水に溶かして飲まされ、亡くなったという事故もありました。
普通は一気に食べたり飲んだりはできない塩辛さですが、乳幼児などの場合は一度に大量に摂らないように注意してください。
塩の賞味期限
塩は長期間保存しても腐ることはないため、賞味期限はありません。
また、おいしさが変わることもありません。保存方法によっては湿気で固まることがありますが、フライパンで焼いたりレンジにかけたりすることですぐにサラサラに戻ります。
シーズニングソルトなど、塩以外のハーブやスパイスが含まれる場合は直射日光のあたらない場所で保管し、早めに使い切ってください。
塩についてのQ&A
- 粗塩とふつうの塩はどのように使い分けますか?
- 粗塩とは、粒の粗い、精製していない塩のこと。
塩化ナトリウムの含有率が低く、にがり成分を多く含んでいるため、漬け物に使うと固めで歯切れが良くなるといわれています。
また、ナトリウム分が99%以上というような塩と比較すると旨味もあり、さまざまなお料理におすすめです。
- 塩は常温保存でよいですか? 塩の保存方法を教えてください。
- 塩は常温保存でかまいません。温度変化の少ない場所においてください。
塩の大敵は湿気。保存はしっかりと密封できる容器に入れてください。
湿気が気になる場合はシリカゲルや珪藻土などの乾燥剤をいれるのもいいでしょう。
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