塩の選び方と上手な付き合い方| ソルトコーディネーター青山志穂さんにインタビュー

塩は基本調味料の一つ。ひとつまみの塩がうま味の輪郭をはっきりさせて料理を一段と美味しく感じさせてくれることもあります。
そして塩は、身体を健康に保つために欠かせない要素の一つでもあります。

そんな塩に関して、かわしま屋はお客様からこのような質問をよくいただきます。

「血圧を考えると塩はできるだけ摂らないほうが良いのかしら…」
「精製塩って身体に悪いって聞いたんだけど…」
「塩って種類が多すぎでどうやってお気に入りを見つければ良いのかわからない‥」

今回はそんな疑問を塩の専門家、ソルトコーディネーターの青山志穂さんに聞いてみました。
是非参考にして、塩と上手に付き合う参考にしてください。

青山さん

プロフィール

◎青山志穂(あおやましほ)

1977年生まれ。東京都中央区出身。沖縄県在住。

慶應義塾大学総合政策学部卒業、カゴメ株式会社にて営業・マーケティング・商品開発に携わる。

2008年から塩の専門店「塩屋」にて、ソルトソムリエ制度のための教本づくりや制度運営、スタッフトレーニングなどに従事。2012年、”社団法人日本ソルトコーディネーター協会”を立ち上げ、独立。

塩の啓蒙活動に努めている。

有名シェフとの塩をテーマにしたコラボレーションイベントや食品メーカーの商品企画も手掛ける。

著書に「日本と世界の塩の図鑑」(あさ出版)「琉球塩手帖」(ボーダーインク)「塩図鑑」(東京書籍)など。

▼公式サイト

日本ソルトコーディネーター協会ホームページ
http://saltcoordinator.jp/

青山志穂さんのブログ・公式ホームページ
http://shiho-aoyama.com/

青山さんが塩に興味を持ったきっかけ

お話しくださった方/青山志穂さん

――青山さんは塩のどんな所に惹かれたのでしょうか?

青山:

最初は、お塩で食べ物の味がこんなに変わるなんてすごい!という所から興味を持ちました。

なぜ変わるのか、なぜ1つ1つの塩はこんなに違うのかということを調べていくうち、オタク心に火がついて、深みにハマっていきました。
エクセルでデータベースを作り、ミネラルの値を記録して味の傾向を分析したりもしました。

なにより、塩の生産者に良い意味で変わっていて面白い方が多かったのです。
大して儲かるわけでもないのに、あえて塩づくりに携わろうとしている人たちのバックストーリーもとても魅力的でした。

最近になり塩業界にも若い人達が入ってくるようになり、各地で個性的な塩をつくっています。若い人が入ってきてくれることで、市場も活性化しているように感じます。

塩について語る青山さん

▲塩について語る青山さん

塩の役割と選び方とは

――塩には食材に塩味をつける以外にどんな役割があるのでしょうか?

青山:

動物は塩がないと生命維持ができません。海で生まれた私たちの祖先は、海水を体内に閉じ込めることで陸上での生活を可能にしました。

たとえば、赤ちゃんが育つ羊水は、太古の海水とほぼ同じミネラルのバランスです。

塩が新陳代謝の基礎機能を担う、浸透圧のバランスを保つ、神経伝達を円滑にする、消化吸収を助ける、熱を発生させるなど、体内で様々な働きをしています。

調理上の役割ですと、旨味の強調作用というのが大きいと思います。

旨味にほんの少しの塩を加えることで、旨さをキリッと引き立たせることができます。

かつお出汁で試すと分かりやすいですよ。かつお出汁でとっただけの出汁も十分美味しいですが、そこに塩をちょっとだけ入れると、きりっと輪郭がはっきり際立った旨さになります。

通常の出し汁と、0.4パーセントくらいの濃度で塩を入れたものを飲み比べてもらうとその違いに驚くと思います。

もう一つは浸透脱水(しんとうだっすい)。食べ物の水を吸い出してくれる働きです。キュウリの塩もみが分かりやすい例ですね。

他にも食材の腐敗を防ぎ保存性を高めたり、タンパク質の凝固させたり溶解させる作用もあります。

塩の役割をお話いただきました

▲塩の役割をお話いただきました

――自分の生活に合ったお塩はどう選んだら良いのでしょうか?

青山:

一人の人の中でも、その日の活動によって必要とされる塩の量も質も変わるので、一概に「あなたにはこの塩が良い」とは言えません。

たとえばイライラしている時は本能的にマグネシウムを欲するので、にがりを多く含んだ塩が欲しくなったりします。

脂っこいものを食べる時は、しょっぱさの強い塩(ナトリウム構成比の高い塩)が欲しくなったりします。

特徴の違う塩をいくつか持っておいて、場面によって使い分けるのがおすすめです。

――自分と家族、それぞれにあったお塩の量は、どう調整すればよいのでしょうか?

青山:

腎臓が正常に機能しているという前提でですが、汗をたくさんかくような生活強度の高い人は多めに、汗をほとんどかかない生活強度の低い人は少なめに、というのが基本です。

家族のメンバー一人ひとりの適性な塩の量は変わります。それぞれが最適な量で同じ料理を食べるために私がおすすめしているのは「パラパラ塩使い」というものです。

これは、料理の段階では必要最低限の塩だけを加え、取り分けた後に必要な塩を各自で指でつまんで振りかける方法です。

自分でどのぐらいの量を振ってるかが目で見て判断できます。

指で触ったり自分の目で見てやるから、少ない量でも塩に対しての満足度があがります。

塩を自分で入れるのも良いとか

▲塩を自分で入れるのも良いとか

塩の種類について

――塩にはどんな種類のものがあるのでしょうか?

青山:

塩には「原料」「製法」「結晶形」の3つの分類方法があります。

 

原料での分類

●海水塩
海水を何らかの方法で濃縮・結晶させた塩。にがりが含まれる事が多い。

●湖塩
塩分濃度の濃い湖で採取される塩。乾季にしか収穫できないので生産量は少ない。

●藻塩
海藻に海水をかけ流したり、一緒に煮詰めたりして、海藻に含まれる塩分とエキスを塩に含ませる塩。日本独自の塩。

●岩塩
地殻変動で大地に囲まれた海が、長い年月を経て地中で結晶した塩。
土壌の成分の影響で色づいたものが多い。基本的にナトリウム構成比は高め。

●地下塩水
岩塩が伏流水で溶かされるなどしてできた、地中を流れる塩水の川や地底湖の塩水からつくられる塩。
国内だと、長野県大鹿村の「山塩」や福島県会津裏磐梯の「会津山塩」等

●再生加工塩
塩を海水や真水で溶かして不純物を取り除いたあと再度煮詰めて結晶させたり、塩ににがりや炭酸マグネシウムなどの添加物を加えて製造したお塩。
メキシコやオーストラリアの海水塩が原料として使われることが多い。
伯方の塩」や「赤穂の天塩」「シママース」など

●調味塩(シーズニングソルト):
塩にハーブやスパイスなどの素材をブレンドした塩。
「クレイジーソルト」や「マジックソルト」など

 

結晶形による分類

  • 立方体

    立方体

  • 凝集晶

    凝集晶

  • フレーク状(薄い板状)

    フレーク状(薄い板状)

  • トレミー状(ピラミッド状)

    トレミー状(ピラミッド状)

  • 球状

    球状

  • 粉砕

    粉砕

  • パウダー(粉末)

    球状

  • 顆粒

    顆粒

もっとも基本的な形は「立方体」で、結晶が育つ条件によって様々な形に成長します。

パウダーの塩は浸透しやすいので下ごしらえに、フレークやトレミーはサクサクとした食感が楽しめるのでトッピング用途に向いています。

 

製法による分類

塩ができるまでの工程は、濃縮工程、結晶工程、仕上げ工程に分類できます。
結晶工程がどのようなものかによって下記の2つに分類できます。

●煎ごう塩
なんらかの方法で海水に熱を加えて煮た(釜焚き)して結晶させた塩。日本で主に行われている製塩法。揚浜式塩田などが特徴的。

●天日塩
太陽と風の力だけで結晶化させる製塩法。土地が狭く高温多湿で雨も多い日本では珍しい。国内だと高知県黒潮町、熊本県天草市などで天日塩の生産が盛ん。沖縄県にもある。

 

その他よく知っておきたい塩の名称

●精製塩
メキシコの完全天日塩を輸入し、炭酸マグネシウムを添加しているもの。

●食塩
食べるための塩:国産の海水を特殊な膜を使って、電気をとおしてナトリウムだけ分解する。ナトリウム純度が高い

●食卓塩
精製塩と同じ製法。ナトリウム純度が高い

塩の選び方について

――料理用には最低限どんな塩を揃えておくのが良いのでしょうか?

青山:

「赤身の肉や魚に合う塩」「白身の肉や魚に合う塩」「揚げ物や油脂に合う塩」「野菜やごはんに合う塩」「オールマイティな塩」などの用途ごとに5種類揃えたら十分かと思います。

特にこれをよく食べるという料理があれば、その料理を楽しむために、その料理に合う塩をいくつか揃えるのもおすすめです。

それぞれ、しょっぱさが強いか弱いか、粒が大きいか小さいかなどで選べんで見たら良いと思います。

色々と比較してみることで、自分が好きな塩のタイプがわかってくるはずです。

そうしたら、好きなタイプの塩を揃えていくのが良いのではないでしょうか。

揃えておきたい塩のタイプ

▲揃えておきたい塩のタイプ

――一つだけに絞るとしたらどんな塩を選ぶのが良いですか?

青山:

一つに絞るとしたら「オールマイティな塩」になると思います。オールマイティな塩とは突出した特徴が薄く、個性があまり無い塩のことです。

具体的には食塩相当量92-96%ぐらいで、水分がベタベタしていないサラッとした塩がそれにあたります。

沖縄県の「沖縄の青い海」や香川県の「入浜式の塩」などがあります。

塩を料理に使うとき

――塩を料理に使う際のおすすめはありますか?

青山:

添え塩がおすすめです。
お醤油やタレ、ドレッシングと一緒に塩を食卓に並べます。まずはじめは塩で食べていただく。
それが一番作った料理や素材の味がわかり易いと思います。

まずお塩で食べてからのドレッシングや醤油にうつっていく。
それがおすすめです。

――塩を料理に使う時に注意して欲しい点は何かありますか?

青山:

下ごしらえに使う塩と、味の仕上げに使う塩の選択を間違っている方が多いと思います。

「食塩」や「食卓塩」、「精製塩」を下ごしらえに使って、天日塩や煎ごう塩を料理の最後の味の仕上げに使う方が多いんですが、逆のほうが良いんです。

食塩や食卓塩、精製塩などはしょっぱさにバラツキがないので塩味調整に向いています。
そのため、最後の味の調整に適しています。

逆に比較的規模が小さい生産者が作った天日塩や煎ごう塩は、その日の海水の状況や生産の具合などによって味にばらつきがあることが多く、これで最後の味の調整をしてしまうと、
仕上がりにブレがでてしまいます。

こういうお塩にはナトリウム以外のミネラルも含まれてることが多く、下ごしらえに使用すると、ミネラルたちが働いて、旨味を引き出してくれたり、発酵熟成を促進してくれます。

塩をお店で買うとき

――塩のパッケージにある成分表で、塩の特徴を判断することはできますか?

青山:

はい。できます。塩に含まれるミネラルには、それぞれ異なる味わいがあります。

例えば、マグネシウムが多ければ苦味が、カルシウムが多ければ甘みを感じる塩になります。
大まかに分類すると、

  • ナトリウム:単純なしょっぱさ
  • マグネシウム:苦味、うまみ、コク
  • カリウム:酸味、鉱石的な冷たさ、キレの良さ
  • カルシウム:単体では無味だが、相対的に甘み
  • その他のミネラル:雑味

となります。

塩が体に与える効果について

――「日本人には塩が足りていない」または「健康のためには減塩を心がけるべき」という話を聞きます。自分はどうすればよいのか判断する基準はありますか?

青山:

取りすぎてもダメだし、取らなさ過ぎてもダメだと思います。
ただし、今の過剰に減塩しましょうという傾向はおかしいと思っています。

何故なら、体の中に適度な塩分がないと各種の機能が正常に働かないからです。

大事なのは、自分の舌に聞くことだと思います。
体に塩分が足りてる時は、しょっぱく感じるんです。例えば体液と同じ生理食塩水をなどを舐めると。

でも、体に塩分が足りてない時は、生理食塩水が甘かったり無味に感じるんです。

分りやすい判断方法としては、朝ごはんを食べる前に、0.9%の濃度の塩水を飲んでみて、しょっぱくて飲めないと感じるならば、体内に塩分が多い状態なので、その日は少し塩を控えたり、ナトリウムを排出する働きを持つカリウムを多く含む食品を多めに食べるなどする。

逆に甘く感じたり味を感じなかった場合は塩分が足りていないので、少し多めに摂る、という感じです。

腎臓が正常に働いていれば、人間は塩を溜めておく機能がないので、3日くらいかけて排出されていきます。

塩は適切な量を摂取することが大切ですね

▲塩は適切な量を摂取することが大切ですね

――精製塩ではなく、自然塩を選んだほうが、健康の為によいのでしょうか?

青山:

誤解している人も多いのですが、実は「精製塩」というのは商品名なのです。
そしてなにを以て「自然塩」と呼ぶのかについては定義がありません。

「精製塩」と「自然塩」。その分け方自体が間違っています。

ちなみに「精製塩」とは、メキシコ産の完全天日塩に炭酸マグネシウムを添加したもので、ナトリウムの構成比は99.5%以上です。

「精製塩」はナトリウム純度が高いから、身体に良くないと思われている方が多いようですが、いわゆる「自然塩」と言われている塩でも、99.5%以上がナトリウムのもあります。

ナトリウムも身体にとって重要なミネラルであり、ナトリウムが健康の敵だという考え方自体に誤解があります。

そもそも海水の約8割がナトリウムで構成されているので、添加物を加えてナトリウム構成比を下げていない場合は、どんな塩でもナトリウムが80パーセント以上含まれています。

一概にどちらが良い、悪いとは言えません。
用途や役割が違うということだと思います。

強いて言うとしたら、もしナトリウム以外のミネラルが含まれたお塩が欲しいのであればパッケージの成分表を見てお塩を選ぶのが良いという事ぐらいでしょうか。

その他塩について

――塩の上手な保存方法やおすすめの容器があればお教えください。

青山:

塩の保存は、密封できる容器に入れて、とにかく湿気を避けてあげることが一番です。

袋のまま保存すると、チャックの部分に塩が溜まってきちんと閉まらなくなって湿気てしまったりするので、できれば密封できるパッキンがついた容器などに入れてあげるのがおすすめです。

保存場所は温度変化が少ない場所が良いです。

(温度変化が激しいと袋や容器の中で汗をかいてその水分で湿気てしまうので)シリカゲルや珪藻土などの乾燥剤をいれるとより良い状態で保存できます。

最近ではおしゃれな塩の容器を良く目にしますが、中にはしっかりと密封できないものも有ります。

しっかりと密封できる物を選びましょう。

――バスソルトに向いているお塩はどんなものがありますか?また上手なバスソルトの使い方はありますか?

青山:

美肌を目的とするならマグネシウムを多く含む塩、デトックスを目的とするなら亜鉛を多く含む塩がおすすめです。

とにかく温まりたいということでしたら、「食塩」でも構いません。安価で使いやすいと思います。

市販の袋入りのバスソルトは1回あたりの量が少なすぎるものが多いのですが、塩を使う場合はひとつかみくらい(200Lのバスタブに50-70g程度)は入れるようにすると良いです。

――梅干しづくりにおすすめのお塩がもしあればお教えください。

青山:

ナトリウムだけの塩ではなく、マグネシウムやカリウムを含む塩を使うと、うまみが増すようです。

東京都伊豆大島の「海の精」や石川県の「わじまの海塩」で漬けてもおいしいです。

マグネシウムやカリウムを含んでいると良いそうです

▲マグネシウムやカリウムを含んでいると良いそうです

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――味噌づくりやぬか床づくりにおすすめのお塩がもしあればお教えください。

青山:

梅干づくりと同様です。

せっかくなので、ぜひ少量ずつ、いろんな塩を使って作り比べてみてください。

味や色や香りの違いに驚くと思います。

あえて色々な塩を使って違いを楽しむのも〇

▲あえて色々な塩を使って違いを楽しむのも〇

お塩の上手な選び方や、付き合い方をとてもわかりやすく教えていただきました。

「血圧を気にして、お料理に塩を使うのを避けてきた」「何となくのイメージで精製塩を悪者扱いしてきた」そんな方々も塩の正しい知識に触れて、上手にお塩と付き合ってみてください。

お忙しい中、お時間をいただきました青山志穂さん、ありがとうございました!

海水から塩を抽出する時にできる液体である、にがりについての詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。

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この記事を書いた人

東京都出身。酉年生まれ。2児の父。趣味は読書と散歩と足のつぼ押し。
洗濯物をたたむのが苦手。煮豆と井上陽水が好き。