レジスタントスターチ・ダイエットは嘘or本当?その効果と食品

レジスタントスターチ

「デンプン=糖質=太る」「糖質はダイエットや健康の敵!」と思ってはいませんか?
レジスタントスターチは、糖質でありながら身体にうれしいさまざまな特徴をもつデンプンです。
普段何気なく食べている食事にも含まれているレジスタントスターチですが、より効率的に摂るためには食事の仕方にコツがあるとか?
今回は、レジスタントスターチの効果や、含まれる食品、効果的なダイエット法などをご紹介いたします!

レジスタントスターチとは

レジスタントスターチとは

レジスタントスターチ(resistant starch)は難消化性デンプンとも呼ばれ、その名のとおり小腸で消化されずに大腸へ届くデンプンです。食物繊維の1種とされています。

食物繊維には、便のかさを増して便通を改善する「不溶性食物繊維」と、便をやわらかくしたり、腸内の善玉菌のエサになったりする「水溶性食物繊維」の2種類がありますが、レジスタントスターチはこの2種類の食物繊維のはたらきを併せ持っているのが大きな特徴です。

ご飯や芋、豆などに含まれ、誰もが日常的に摂取しているレジスタントスターチ。健康維持のために大きなはたらきがあり、「デンプン摂取量が多い国ほど大腸がん発症率が低い」という調査報告もあるそうです。
「太る」というイメージもあり、近年では摂取を制限している方も増えてきた糖質ですが、健康のためにはいたずらに制限せずに適度に摂取した方がよいと言われています。

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レジスタントスターチの効果

2種類の食物繊維のはたらきを併せ持つというレジスタントスターチ。
一般的な食物繊維がもつ効果以外にも、プレバイオティクスとしての効果や、レジスタントスターチを元に腸内細菌が産生する有機酸の効果など、幅広い機能性が注目を集めています。

効果1 血糖値上昇抑制効果

血糖値上昇抑制効果

レジスタントスターチを豊富に含む食品は、そうでない食品に比べて糖の吸収が穏やかで、血糖値の急激な上昇やインスリンの分泌が抑えられることがわかっています。
日本でも、レジスタントスターチを配合したパンが「食後血糖上昇を抑える」というトクホの認定を受けています。

 

 

効果2 腸内環境の改善効果

腸内環境の改善効果

レジスタントスターチの摂取は、便の量の増加や腸管の刺激につながり、排便量や排便回数を増加させることが報告されています。
また、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増殖させ、腸内を酸性に保つことで悪玉菌による有害物質の生成を抑えます。

 

効果3 脂質代謝の改善効果

脂質代謝の改善効果

レジスタントスターチは食事中の中性脂肪や胆汁酸の吸収を抑え、血液中のコレステロールや中性脂肪を低下させる効果があることが動物実験で確認されています。
この効果についてはヒトにおける報告例が少なく、今後の研究によって明らかになることが期待されています。

 

効果4 満腹感の向上効果

満腹感の向上効果

レジスタントスターチは腸内で発酵することにより食事の満腹感を増加させ、結果として食事の摂りすぎを防ぐとされています。

 

参考文献:後藤勝(2014)「レジスタントスターチの開発」,日本家政学会誌Vol. 65 No. 4

レジスタントスターチが含まれる食品

食品

レジスタントスターチは、ご飯やパスタなどの穀物類、豆類、トウモロコシやじゃがいも、長いもなどデンプンを多く含む野菜に多く含まれています。

レジスタントスターチには大きく分けて4つの種類があり、種類ごとに消化抵抗性・分解性に差があるため機能性にも差がありますが、大きな違いはないとされています。種類別に食品の例をご紹介しましょう。

項目 内容
RS1
性質 細胞壁に包み込まれているなど、物理的に消化されづらい状態にあるデンプン
食品例 ・全粒穀物(オーツ麦など)
・豆類
・パスタ
備考 ・全粒粉パンには便量の増加による整腸作用や血糖値上昇抑制、心疾患のリスク低減の可能性があるといわれる
RS2
性質 消化されづらい種類のデンプン
食品例 ・未熟バナナ(グリーンバナナ)
・生じゃがいも
・片栗粉(非加熱)
・コーンスターチ(非加熱)
・米粉(非加熱)
・高アミロースデンプン
備考 ・腸内環境改善効果、血糖値上昇抑制効果、脂質代謝改善効果、炎症性腸疾患予防効果などが報告されている
・大量摂取は望ましくない
・加熱するとレジスタントスターチは失われる(高アミロースデンプンを除く)
RS3
性質 一旦糊化(α化)したデンプンを冷却したときにできる老化デンプン
食品例 ・冷やご飯
・冷えた調理済みじゃがいも、さつまいも、かぼちゃなど
・冷えた調理済みパスタ
備考 ・食後血糖値の上昇を抑制する
RS4
性質 化学処理などによって難消化性になった加工デンプン
食品例 ・加工食品
備考 肥満防止、腸内環境改善効果、血糖値上昇抑制効果、脂質代謝改善効果、インクレチン分泌促進効果など が報告されている

参考文献:海老原清(2014)「レジスタントスターチの栄養・生理機能」,日本調理科学会誌 Vol. 47,No. 1,49~52 ほか

レジスタントスターチはダイエットの味方?!

ダイエット

レジスタントスターチは、腸内細菌のエサとなり「短鎖脂肪酸」の元となることが分かっています。
「短鎖脂肪酸」は脂肪細胞が栄養分を取り込んで過剰に肥大するのを防ぐはたらきがあり、肥満を防ぐために有効であるとして注目される物質です。

また、レジスタントスターチは血糖値の上昇を抑制する効果もあり、その結果インスリンの分泌を抑えることにもつながります。
インスリンは脂肪の合成を促進するため、レジスタントスターチの摂取は脂肪を溜めにくい食事にもつながりそうです。

さらにレジスタントスターチには満腹感を向上させる効果もあるため、そういった意味でもダイエットの味方と考えることができます。

とはいえ、「身体によいから」「太りにくい」としてレジスタントスターチを含む食品を大量に摂るのは逆効果。
レジスタントスターチが含まれている食事には消化性のデンプンも同時に含まれていることがほとんどですので、摂りすぎれば当然太ってしまいます。

レジスタントスターチでダイエットをしたい場合は、

①普段摂っている主食をレジスタントスターチの含有量が多いものに変える(例:小麦粉を全粒粉に変える)

②調理法を変えることで食品中のレジスタントスターチの量を増やす

など、食べる分量を変えずに食事の中のレジスタントスターチの分量を増やせる方法をとるのがよいでしょう。

レジスタントスターチの賢い摂り方

摂り方

① でんぷんを生で摂る

例えば長いもは、加熱したことでレジスタントスターチの量が約1/6になってしまったという実験結果もあるそうです。生で摂れるタイプの食材は加熱せずに調理しましょう。
例えばオートミールならお粥ではなく常温の牛乳やヨーグルトに浸して柔らかくして食べる、などの方法がおすすめ。
海外では片栗粉を少量(小さじ1~2杯程度)スムージーなどに混ぜて飲むというレシピもあるようです。

② でんぷんを加熱後、冷えた状態で食べる

ご飯やじゃがいも、さつまいもは、一度加熱調理したあと、冷やすことでレジスタントスターチの量を増やすことができます。
毎回冷めた状態で食べるのは味気ないかもしれませんが、おにぎりやポテトサラダなど、工夫によっては美味しく食べることもできます。焼き芋や大学芋などのさつまいも料理も、アツアツの状態より冷めてから食べるのがおすすめ。逆に冷たいデザートとして冷やして食べるのもいいかもしれませんね。

③ オリーブオイルで調理する

オリーブオイルで調理後、冷蔵することにより、かぼちゃに含まれるレジスタントスターチが大幅に増加したという研究結果があります。
実験ではオイルなしでの調理やサラダ油での調理と比べ2倍近い量になったようで、じゃがいもやさつまいも、かぼちゃなどの野菜料理や焼き菓子などを作る際にオリーブオイルを使用することでレジスタントスターチを効率的に摂取できる可能性があります。

④ 「茹でる」「電子レンジ」よりも「蒸す」のがおすすめ!

食材を加熱する方法によっても、レジスタントスターチの量が変わることがわかっています。
さつまいもを使用した研究では、「茹で」「蒸し」「電子レンジ」の3種類の加熱方法を比較したところ、「蒸し」が最もレジスタントスターチの量が多く、続いて「茹で」、続いて「電子レンジ」という結果になりました。特に電子レンジによる加熱はレジスタントスターチを消化性でんぷんに変化させるはたらきが強いようで、レジスタントスターチの量は「蒸し」の約1/2にまで減少。じゃがいもやさつまいもをふかすときには蒸し器を使うのがおすすめです。

⑤ レジスタントスターチのパウダー(サプリメント)は成分をチェック

トウモロコシなどから作られたレジスタントスターチのパウダーがサプリメントとして販売されています。
加熱すると失われるといわれるレジスタントスターチですが、ハイアミロースコーンスターチなどの高アミロースデンプンについては加熱調理してもレジスタントスターチが失われません。パンや焼き菓子などの材料に加えてもいいでしょう。
チェックしたいのは、製品中のレジスタントスターチの量と遺伝子組み換えの有無。製品によって異なるので成分表示を確認しましょう。

レジスタントスターチについてのQ&A

レジスタントスターチが摂れる身近な食品を教えてください。
おすすめは、生でいただける長いもです。加熱の有無はもちろん、切り方によってもレジスタントスターチの量が変化するといわれています。
すりおろしよりも半月切りの方がよいようです。
レジスタントスターチは、たくさん摂れば摂るほど身体にいいの?
レジスタントスターチを食べ過ぎると、お腹にガスが溜まったり、膨満感を感じたりすることがあるといわれています。
一度冷えた食品を再加熱するとレジスタントスターチの含有量はどうなりますか?
レジスタントスターチの種類によりますが、多くの食品では高温で再加熱することでレジスタントスターチの含有量が減るといわれています。
レジスタントスターチは普通の食物繊維とどう違うの?
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維、両方の特徴をもっており、便通をよくする効果が高いと考えられています。
レジスタントスターチを増やすにはご飯をどれくらい冷やせばよいのでしょうか?冷やす時間などを教えてください。
糊化したデンプンが老化する温度は1~25°Cで、時間が長いほど老化が進むと考えられています。数時間冷やすことでレジスタントスターチを増やすことができそうです。

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この記事を書いた人

パン作りと温泉をこよなく愛する2児の母。老後は伊豆で大きな犬と暮らすのが夢です。豆乳が好き、猫は苦手。