日本酒の選び方ー3ステップで&好みのタイプ別日本酒選び

原料や造り方によって、多種多様な味わいや香りが生み出される日本酒の世界。
その奥深さゆえに、選ぶときの迷いや悩みも大きくなりがちです。
「初心者だけれど日本酒を自分で選んでみたい」「お気に入りの一本に出会いたい」
そんな声にお答えして、皆さんの日本酒選びを3ステップでお手伝いします!
まずは確認、日本酒の味わいチャート

ワインには「ライトボディ」「ミディアムボディ」「フルボディ」という3つのタイプがあり、大まかな味の傾向を知る目安となっています。
日本酒にはそのようなタイプ分けはないのでしょうか?
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)では、21,000種の利き酒に基づき、日本酒をわかりやすく「爽酒(そうしゅ)」「薫酒(くんしゅ)」「醇酒(じゅんしゅ)」「熟酒(じゅくしゅ)」という4つのタイプに分けています。
こうして4つのタイプに分類されてみると、「今日飲みたいお酒」「土曜日のデートの時に 飲みたいお酒」「お父さんにプレゼントしたいお酒」などがパッと思いつきそうですね。
もちろん、多種多様な日本酒のすべてがこの4つに分類できるわけではなく、「香りが高くて味も濃いけど熟成酒ではない」というようなケースもありそうですが、大まかな目安として知っておくと迷うことが少なくなるかもしれません。

ステップ1.「特定名称」で日本酒タイプをチェック!

さて、実はお酒の瓶を見ても「このお酒は爽酒です」と書いてあるわけではありません。
まずは「特定名称」をチェックして、大まかなタイプを予測してみましょう。
「特定名称」とは、原料や精米歩合が国の定める条件を満たしている日本酒に与えられている8つの名称です。
ちなみに、特定名称酒以外の酒は「普通酒」と呼ばれます。
名称 | タイプ | 精米歩合 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|
純米酒 タイプ (原材料) 米 米麹 |
純米大吟醸酒 | 薫酒 | 50%以下 | フルーティーで華やかな芳香、洗練された味わい。余韻が長い。冷やして飲むのがおすすめ。 |
純米吟醸酒 | 薫酒(醇酒寄り) | 60%以下 | 米の旨味がありつつ、なめらかで洗練された味わい。 | |
特別純米酒 | 醇酒 | 60%以下 | 米のふくよかな旨味がある。味わいが複雑な濃醇タイプの酒が多い。 | |
純米酒 | 醇酒 | 規定なし | ||
本醸造酒 タイプ (原材料) 米 米麹 醸造アルコール |
大吟醸酒 | 薫酒 | 50%以下 | フルーティーで華やかな芳香、洗練された味わい。冷やして飲むのがおすすめ。 |
吟醸酒 | 薫酒(爽酒寄り) | 60%以下 | 香り高くクリアで繊細な味わい。 | |
特別本醸造酒 | 爽酒 | 60%以下 | 本醸造酒より淡麗で軽快な飲み口。 | |
本醸造酒 | 爽酒 | 70%以下 | 喉ごしがよく、すっきりとした味わい。 |
純米大吟醸酒=「薫酒」というように単純に分類してしまうのは、日々努力されて個性豊かな日本酒を作っている蔵元の方々に失礼かもしれませんが、あくまで大まかな目安として参考にしてみてください。
一般に、精米歩合が低い=米を削り落とす割合が高いほど高価なお酒になります。
また、酒質がクリアに、吟醸造りのものについては香りが華やかになるといわれます。
ただし、削れば削るほど美味しいかというとそういうわけではなく、味や香り、食事との相性などから「精米歩合が低すぎないものが好き」という方も。
好みによる部分も大きいようです。
吟醸造りについて

果実や花を思わせる華やかな香り「吟醸香」。
リンゴやバナナ、メロンに洋梨、ライラックや水仙などに例えられることもあり、吟醸酒の最大の特徴となっています。
その独特の香りを生み出すのが「吟醸造り」です。
吟醸香をもつお酒は、単に精米歩合が低いだけでなく、低温発酵の特別な造り方をしているのです。
吟醸酒は、基本的には加熱せずに飲むもので、10℃前後にほどよく冷やしていただくと特徴的な香りと爽やかな風味を感じやすいといわれています。
醸造アルコール添加について

「純米酒タイプ」と「本醸造酒タイプ」、醸造アルコールが入っているという以外に、味や香りがどう違うのか、気になりますよね。
醸造アルコールは香りや味の調整のために加えられるもので、入れると味がキリっと締まり、香りも引き出しやすくなると言われています。
ただ、「米だけでもそのような味は造れる」という蔵もあり、味や香りについては蔵の個性の方が大きいかもしれません。好みで選んでみてください。
ステップ2. ラベルをチェックして味わいを予想
例えば「じゃあ、”薫酒”を飲んでみたい」と吟醸酒を選んでみたとします。
それだけで好みの日本酒に出会えるでしょうか?
「やさしい甘口の酒がいいな」「爽やかでキリっとしたタイプがいい」など、細かな希望も当然ありますよね。
好みに寄り添った一本を選ぶために、ラベルからお酒のタイプ、味や風味を予想してみましょう。
「日本酒度」「酸度」をチェックして甘辛度を知る

お酒を選ぶときに一番気になるのが「そのお酒は甘口なのか、ドライなのか」という方も多いでしょう。
「辛口のお酒はおいしいと思えない」という人もいれば「甘口のお酒だともったりして飲みづらい」という方もいます。
そんな時に参考にしたいのが「日本酒度」です。
表示義務がある訳ではないので、必ずラベルに記載があるとは限りませんが、最近では記載があるものも多くなっています。
これは水の比重を0(ゼロ)としたとき、酒の比重がいくらであるかを示したもので、糖分などのエキス分が多ければ(-)に、少なければ(+)に傾きます。
ただし、これだけで日本酒の甘辛がわかるわけではありません。
酒の甘さはアルコール度や「酸度」によっても変わるからです。
特に酸度の影響は大きく、同じ日本酒度でも酸度が高いほど辛口に感じるといわれています。
おおまかにチャートにすると次のような形になるようです。

たとえば、日本酒度が0で酸度が1.0なら「淡麗甘口」、日本酒度が同じ0でも酸度が2.0なら「濃醇辛口」というように感じられるということです。
好みによって、次のようなエリアのお酒を選ぶと自分にマッチするタイプを選べそうですよ。
- ・すっきりとクリアでドライな味わいが好みの方…「淡麗辛口」
- ・旨みとコクがあり、引き締まった味わいを求める方…「濃醇辛口」
- ・さらりとしたやわらかな味わいが好みの方…「淡麗甘口」
- ・円くふくよかでコクのある味わいが好みの方…「濃醇甘口」
すっきりor複雑?「アミノ酸度」

さらに日本酒には、「アミノ酸度」という指標もあります。
これはコクや旨味の元であるアミノ酸の量を相対的に示すもの。
国税庁の調査(平成27年度)によると、平均値は吟醸酒が1.34、純米酒が1.58、本醸造酒が1.38となっています。
アミノ酸度が小さいほどすっきりと淡麗な酒に、プラスになるほど複雑な旨味をもつ酒になるといわれていますが、多すぎると雑味として感じることもあるようです。
米と酵母の違いから日本酒の味・風味を予想する

日本酒のラベルには、使用している原料米や酵母について記載があることもあります。
米や酵母には多くの種類があり、それぞれ使用した日本酒の個性も異なります。
もちろん、複雑な工程を経て造られる日本酒のこと、「山田錦=こんな味」などと決めつけることはできませんが、酒質に影響を与えるのは確かです。
使用している米や酵母から、蔵人が造ろうとした酒の味や風味を予想してみるのもいいでしょう。
米の違いについてはこちらを参照してください→「日本酒の作り方(米)」
酵母の違いについてはこちらを参照してください→「日本酒の作り方(酵母)」
日本酒・地域による違いはこう楽しむ

全国で造られている日本酒。
日本酒をふるさと納税の返礼品にしている市町村も多いようですが、地域による違いはあるのでしょうか?
一般的に、水質や使用する米の違いなどにより、地域ごとに味わいに特徴が感じられるとされています。
「北海道は軽快ですっきり」「秋田はきめ細やかでキレのいい酒」「愛媛はまろやかな甘口」などのような、昔から続く大きな傾向はあるようです。
また、近年では独自の酵母を開発し、地域の酵母による特徴を打ち出している県もあります。
とはいえ、味わいは蔵ごと、酒ごとに千差万別。地域でくくるというのも乱暴な話かもしれません。
ラベルに記載されている地域は「味を予想して買う」ためではなく「その土地を思いながら飲む」ため、いっそう味わい深く飲むためにあると思った方がよさそうです。
たとえば旅行で訪れた土地で日本酒を求め、帰宅してから旅の思い出とともに飲むのもいいですし、手土産に自分の故郷の酒を贈るなんていうのもいいかもしれません。
日本酒は造られた地域の料理と相性がよいともいわれているので、「石川のカニと石川の酒」というように料理と地域を合わせてみるのもおすすめですよ。
ステップ3. 専門用語を読み解けば、好みの酒が見えてくる

日本酒ラベルにポツンと書かれている「ひやおろし」「山廃」…それって一体何?!
ラベルに書かれている専門用語は、日本酒初心者を悩ませる大きな原因。
でも、お酒の味や風味を知るための大きな手がかりでもあります。
もしもわからない言葉に出会ったら、このリストで調べてみてください。
より詳しくお酒の特徴を知ることができるはずです。
何が違う? | 用語 | 特徴 |
---|---|---|
– | 生一本 (きいっぽん) |
単一の醸造場で造られた純米酒。他社の酒を混ぜていない。 |
– | 特選 (とくせん) |
メーカーが、アルコール度数や酒質に基づく昔の「級別制度」を念頭に、目安として独自につけている呼称。「級別制度」を知らなければ特に見る必要はない。 |
– | 上撰 (じょうせん) |
|
– | 佳撰 (かせん) |
|
原料の違い | 貴醸酒 (きじょうしゅ) |
仕込みの一部に酒を使用。甘くとろりとして濃厚。 |
酒母の作り方の違い | 生酛 (きもと) |
未記載の酒と比較して旨味や酸味、渋みなどが複雑。奥深い味わい。 |
山廃 (やまはい) |
||
搾りによる違い | にごり酒 | トロリとして濃醇。火入れしていないものは「活性にごり酒」と呼ばれシュワッとした爽快感もある。 |
搾りの段階による違い | あらばしり | 荒さはあるが濃厚でフレッシュな味わい。 |
中取り (なかどり) |
透明感がある安定した酒。なめらかで上質な味わい。 | |
責め (せめ) |
荒々しく雑味があり、濃厚な味わい。 | |
加水による違い | 原酒 (げんしゅ) |
加水していない酒。アルコール度数が高く濃厚な味わい。割って飲んでもおいしい。 |
火入れによる違い | 生酒 (なまざけ) |
火入れしない酒。生き生きとしたフレッシュな風味。要冷蔵で、冷やして飲むのがおすすめ。 |
生詰め酒 (なまづめしゅ) |
一般的な酒よりフレッシュな香味が感じられる。生酒よりは安定している。冷やして飲むのがおすすめ。 | |
生貯蔵酒 (なまちょぞうしゅ) |
一般的な酒よりフレッシュな香味が感じられる。生酒、生詰め酒よりは安定している。冷やして飲むのがおすすめ。 | |
貯蔵による違い | 樽酒 (たるざけ) |
杉など樽の香りの移った酒。 |
出荷時期による違い | しぼりたて (新酒) |
冬~春頃までの新酒。フレッシュな味と香り。ピチピチと微発泡する酒もある。 |
ひやおろし (秋上がり) |
新酒をひと夏寝かせた酒。フレッシュ感もありながら落ち着いた味わい。バランスがよい。 | |
古酒 (こしゅ) |
熟成期間により味わいが全く異なる。シェリー酒のような熟成香とまろやかな口当たりが特徴。 |
好みのタイプ別・おすすめ日本酒
日本酒の味や香りの違いはわかったけれど、そもそもどんな場合にどんなタイプを選んだら良いのか悩んでしまう…そんな方もいらっしゃるでしょう。
そこで、好みやシーン別におすすめの日本酒タイプをご紹介します。
「食事を邪魔しないシンプルな酒がいい」という方は…

食中酒としてさまざまな食事に合わせるのであれば、香りが控えめでドライなタイプの日本酒をおすすめします。
高価な大吟醸のお酒がよいと思って選んだら「香りが強すぎて食事と合わなかった」ということもよく聞く話です。
「淡麗辛口」と書かれている「特別本醸造酒」や、吟醸酒系なら「香り控えめ」「クリアな味わい」などと書かれているものを選ぶとよいでしょう。
「じっくりお燗で日本酒らしく飲みたい」という方は…

お燗が似合うのは「純米酒」。
米の酒らしいふくよかな旨みとコクが味わえる、日本酒の王道ともいえるお酒です。
「生酛」「山廃」などと書かれたどっしりしたお酒もいいですね。
味噌煮込みや牛肉のシチューなど、濃厚な味のお料理にもよく合います。
「日本酒はきつくて苦手」という方には…

アルコール度数が低い「低アルコール日本酒」をおすすめします。
アルコール度が8~10度と低く、甘みがあり軽快な味わい。
日本酒が苦手な方も「これが日本酒?」と驚くような爽やかさです。
一升瓶(1,800ml)ではなく、720mlや500ml、360mlの瓶でお店に並んでいるものも多いので、手軽に試すことができますよ。
フルーツなどを使用した日本酒リキュールもたくさん出ているので、ソーダで割ったり、オンザロックにしたりと自由な飲み方で楽しむのもよさそうです。
「お酒で気持ちをリフレッシュさせたい」という方は…

果実味あふれる香りが楽しめる「大吟醸酒」がおすすめです。
また、「生酒」「活性にごり酒」などのフレッシュ感のあるお酒もいいかもしれません。
「スパークリング日本酒」「スパークリングsake」などと呼ばれる、微発泡タイプの日本酒は特に女性に人気。
甘口のものからドライなものまでありますので、好みで選んでみてください。
日本酒の選び方についてのQ&A
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日本酒をプレゼントするときの選び方を教えてください。贈り物にするにはどのように選ぶのがよいでしょうか?
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贈るお相手の方の好みを聞いてみてください。一番わかりやすいのは、好きなお酒の銘柄をいくつか聞いてしまうことです。
その銘柄と、香りや味が近いタイプのお酒を選ぶと外れが少ないでしょう。
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熱燗にして飲むとおいしいお酒と、冷やして飲むとおいしいお酒とを教えてください。
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日本酒は幅広い温度で楽しめるお酒ですが、タイプによって合う温度や合わない温度があります。
一般的に、酸が強く味わいが濃厚なもの(純米酒、生酛、山廃など)は高めの温度にすると味わいが豊かに、香り高く繊細なもの(吟醸酒系)は低めの温度にすると香りのバランスを壊さずに味わえると言われています。