リンゴ酢は腎臓に悪い?医学的な根拠をもとに噂の真相を徹底解説!

「リンゴ酢は健康に良い」とよくいわれます。ですが「腎臓には悪いかもしれない」という情報を目にして、不安を感じたことはありませんか?
リンゴ酢が腎臓に与える影響については、さまざまな情報が飛び交っています。真偽のわからない情報に振り回されず、医学的な根拠をもとに正しい判断をすることが大切です。
この記事では、リンゴ酢が腎臓に悪いと言われる理由を整理し、科学的な視点からその影響を詳しく解説します。さらに、腎臓が悪い人がリンゴ酢を摂取する際の注意点や、安全に楽しむための方法もご紹介。
正しい知識を得れば、リンゴ酢について必要以上に不安を感じることはなくなるでしょう。誤った情報に惑わされることなく健康的な生活を送るため、ぜひ最後までお読みください。
リンゴ酢が腎臓に悪いと言われる理由3選

リンゴ酢が腎臓に悪いと言われる理由は諸説あります。ですがいずれも科学的な根拠があるわけではありません。ここではリンゴ酢が腎臓に悪いと言われる理由について、以下の3つの切り口から解説します。
- 酸性食品は腎臓に負担をかける?
- リンゴ酢のカリウムは排出しにくい?
- クエン酸が結石の原因になる?
それぞれ見ていきましょう。
酸性食品は腎臓に負担をかける?
酸性の食べ物は、体内のバランスに影響を与えることがあります。特に、腎臓は体の環境を整える重要な役割を担っているため、酸性食品を過剰に摂取すると負担がかかると考えられます。
リンゴ酢は酸性の食品ですが、適量であれば健康な腎臓に大きな影響を与えません。一般的に推奨される1日あたり大さじ1~2杯(約15~30ml)であれば、腎臓への負担は少ないでしょう。
しかし、腎臓の働きが弱っている人は、体内の酸をうまく調整できないことがあります。そのため、酸性食品の摂取量には注意が必要です。
例えば、慢性腎臓病の人は食事のバランスが重要です。肉や加工食品などの酸性食品を多く摂ると、腎臓に負担がかかる可能性があります。ただし、リンゴ酢は少量であれば問題にならない場合が多いです。
腎臓の健康を守るためには、酸性食品とアルカリ性食品のバランスを意識することが大切です。リンゴ酢を飲む際は、野菜や果物などのアルカリ性食品と組み合わせると、腎臓への負担を軽減できます。
また、腎臓に持病がある場合は、医師と相談しながら適量を守ると安心です。
参考
新潟大学 野菜や果物の摂取が少ない慢性腎臓病患者(血液透析患者)は10年後の死亡リスクが高い-食事性酸負荷を指標にした新たな知見-
リンゴ酢のカリウムは排出しにくい?
健康な腎臓であれば、余分なカリウムを尿として排出できます。しかし、腎機能が低下するとカリウムの排出が十分に行えず、体内に蓄積することがあるのです。そのためカリウムを含むリンゴ酢は腎臓に悪いと考えられることがあります。
ですがリンゴ酢に含まれるカリウムは少量です。大さじ1杯(約15g)あたりのカリウム含有量は約9mgしかありません。これは、バナナ1本(約360mg)やほうれん草100g(約550mg)と比べると、はるかに少ない数値です。通常の摂取量であれば、リンゴ酢によるカリウムの過剰摂取は起こりません。
健康な人はおろか、腎臓が悪い人でも適量のリンゴ酢であれば問題になりにくいでしょう。しかし、他の食事と合わせたカリウム摂取量を考慮する必要があります。腎臓に不安を感じる場合は、医師や栄養士と相談しながら、食事全体のバランスを調整すると安心です。
参考
クエン酸が結石の原因になる?
クエン酸は腎結石の原因ではなく、むしろ予防に役立つ成分です。尿中のカルシウムと結びつくことで、シュウ酸カルシウム結石の形成を抑える働きがあります。
クエン酸が結石の原因になると誤解される一因は、「クエン酸」という名称に「酸」が含まれているためです。「体を酸性に傾けて、悪影響を及ぼす」と考える人がいるようです。しかし、クエン酸には尿のpHを調整し、結石のリスクを下げる作用があります。
また「クエン酸はカルシウム結石の原因になるのでは?」という心配もあるようです。たしかにクエン酸はカルシウムと結合して「クエン酸カルシウム」を作ります。しかしクエン酸カルシウムは水に溶けやすく、尿中のカルシウムを安定させて結石の形成を防ぎます。
クエン酸は適量を摂取すると腎結石の予防に役立ちます。誤解の背景には、名称によるイメージやカルシウムとの関係についての誤った解釈、偏った健康情報の影響があるようです。
参考
日本泌尿器科学会雑誌78巻,4号,1987年 尿路結石症におけるクエン酸代謝の研究
日本泌尿器科学会雑誌80巻,10号,1989年 尿中蔭酸排泄に対するカルシウム.クエン酸併用投与の効果
腎臓が悪い人がリンゴ酢を摂取する際の注意点

リンゴ酢が腎臓に悪影響を与えるという科学的な根拠はありません。ですが腎臓の健康を気にする方であれば、以下のような注意点を守るのがおすすめです。
- カリウムの過剰摂取に注意する
- たんぱく質の摂り過ぎに注意する
- 塩分の取り過ぎに注意する
- リンの取り過ぎに注意する
それぞれ見ていきましょう。
カリウムの過剰摂取に注意する
腎臓が悪い人は、リンゴ酢の摂取時にカリウムの過剰摂取に注意が必要です。腎機能が低下すると、体内のカリウムを排出しにくくなり、血中濃度が上昇しやすくなります。
血中のカリウム濃度が高くなると、高カリウム血症を引き起こす可能性があります。高カリウム血症が進行すると、筋力の低下やしびれが生じることがあります。さらに、重症化すると不整脈や心停止のリスクが高まるため、注意が必要です。
リンゴ酢100mlには約70mgのカリウムが含まれています。これは一般的には少ないとされる量です。しかし、バナナやメロン、ホウレンソウなどカリウムを多く含む食品と一緒に摂取すると、カリウム過多になる可能性があります。
腎臓が悪い人は、リンゴ酢以外の食品に含まれるカリウムにも注意が必要です。正しい方法で取り入れれば、健康を維持しながらリンゴ酢のメリットを活かせるでしょう。
参考
たんぱく質の摂り過ぎに注意する
腎臓に疾患を抱える方は、たんぱく質の摂取量に注意が必要です。たんぱく質の代謝によって生じる尿素などの老廃物は、腎臓で処理されます。そのため、たんぱく質を過剰に摂取すると、腎臓に負担がかかる可能性があります。
腎機能が低下すると、老廃物の排出がスムーズに行えなくなります。その結果、尿素窒素が体内に蓄積し、症状を悪化させる恐れがあります。さらに、高たんぱく質食は腎臓のろ過機能を酷使し、腎不全の進行を早めるリスクもあります。
リンゴ酢自体は低たんぱく質の食品です。しかしダイエットや健康目的で摂取する際に、高たんぱく質食品やサプリメントと併用することもあるでしょう。特に肉類や魚との相性が良いので、リンゴ酢を料理に使おうとするとたんぱく質が多くなりがちです。
腎臓が悪い方は、医師や栄養士と相談し、適切なたんぱく質摂取量を設定することが大切です。一般的には、1日あたり体重1kgあたり0.6~0.8gのたんぱく質摂取が推奨されています。ただし、個人の健康状態によって適量は異なるため、専門家の指導を受けると安心です。
参考
腎臓病の食事の基本 | 患者さんへ | 東邦大学医療センター大森病院 腎センター
塩分の取り過ぎに注意する
腎臓が悪い人は、塩分の過剰摂取を避けることが大切です。塩分を摂りすぎると血圧が上がり、腎臓に負担をかける可能性があります。リンゴ酢は塩分を含まないため、減塩の工夫として活用できます。
塩分を過剰に摂取すると、体内のナトリウム濃度が上がり、水分を溜め込みやすくなります。その結果、血圧が上昇し、腎臓のろ過機能に影響を与えることがあります。特に腎臓病の人は塩分を排出しにくく、むくみや高血圧が悪化するリスクが高まります。
例えば、食事の味付けにリンゴ酢を使うと、塩分を抑えつつ風味を楽しめます。醤油や塩の代わりに、リンゴ酢とオリーブオイルを組み合わせたドレッシングを活用すると、減塩しながら美味しさを引き立てられるでしょう。ただしリンゴ酢を使ったドレッシングにも塩分は含まれるので、使用量には注意が必要です。
腎臓が悪い人は、塩分の摂取量を意識しながら食事を工夫することが大切です。リンゴ酢を上手に取り入れれば、減塩しながら美味しく食事を楽しめるでしょう。
参考
日本高血圧学会減塩ワーキンググループ報告 – 「食塩制限の必要性と減塩目標」
厚生労働省 日本における食塩摂取量の現状と減塩推進への課題~日本高血圧学会の取り組みを中心に~
リンの取り過ぎに注意する
腎臓が悪い人は、リンの摂取量を適切に管理する必要があります。リンは体に必要なミネラルですが、腎機能が低下すると排出しにくくなるからです。リンゴ酢自体にはほとんどリンが含まれていませんが、組み合わせる食品によっては摂取量が増える可能性があるため注意が必要です。
リンを過剰に摂取すると、血中のリン濃度が上昇し、腎臓への負担が増します。特に慢性腎臓病(CKD)の人はリンの排泄が困難です。その結果、動脈硬化や骨粗しょう症のリスクが高まることが考えられます。リンゴ酢を取り入れる際は、リンを多く含む食品との組み合わせに気をつけましょう。
例えば、市販のリンゴ酢入りドレッシングやマリネ液には、リン酸塩を含む調味料が使われていることがあります。また、チーズ、ハム、ソーセージなどの加工食品と一緒に摂取すると、知らないうちにリンの摂取量が増えてしまうかもしれません。さらに、一部の清涼飲料水にはリン酸が含まれているため、リンゴ酢をジュースで割る場合は成分表示を確認することが大切です。
腎臓が悪い人は、リンの摂取を抑えながらリンゴ酢を活用する工夫が求められます。ドレッシングや漬け液を手作りし、添加物を避けることでリンの摂取量をコントロールしやすくなるでしょう。また、リンゴ酢を飲む際は、水や炭酸水で割るなど、シンプルな方法を選ぶのがおすすめです。適切な摂取方法を心がけ、腎臓への負担を減らしましょう。
参考
日本栄養・食糧学会誌 第77巻 第4号 247-253(2024)リン代謝調節機構 ― 腸管リン酸輸送の理解
動物臨床医学 第24巻 第3号 106-107(2015)慢性腎不全時におけるリンのコントロールの重要性 – 食事でのリンのコントロール