桑の葉の効果・効能|糖尿病への効果は?桑の葉茶の作り方もご紹介
記事の監修
管理栄養士
鶴田ようこ
調理師・管理栄養士。2つの資格を生かし食用油脂製造会社にて品質管理に従事。
菜種油、オリーブ油の品質に関する分析、衛生管理等を行う。
幼い頃から野菜作りの手伝いをしていたことから、季節の野菜料理が得意。
桑の葉といえば、蚕(かいこ)のえさとして知られます。
昔は日本でも養蚕がさかんで桑畑も多く見られたそうですが、近年はだいぶ数も減ってしまいました。
そんな桑の葉には、強力な健康効果を発揮してくれる栄養素がぎっしりつまっています。
古くから漢方などでも使われ、健康維持に役立てられてきました。
その効能と、桑の葉のとりいれ方をご紹介していきます!
桑の葉とは
桑の葉は日本各地に自生するクワ科の落葉樹です。
蚕のエサとして古くから使われてきた植物で養蚕地を中心にお茶として飲む習慣もありました。
桑は葉だけなく、桑の枝や根の皮、桑の実などが漢方薬として古くから使われてきました。
漢方では桑の葉を中薬(副作用が少なく、ある程度病気を治す効果がある)として分類しています。
最新の研究でも桑の葉が持つ多くの健康効果が解明され注目を集めています。
日本では、市販の青汁に使われていることも多く、ダイエット食品や健康食品にも多く使われています。
桑の葉の歴史
桑の歴史は古く、中国最古の薬物書とされる「神農本草経」で中薬として紹介されています。
桑葉を日陰干ししたものを「神仙茶」と名付け、これを服用することで風邪や百日咳、滋養強壮、中風などに効果があるとされていたそうです。
また、桑が登場する日本の書物で最も古いとされているのは、古史古伝のひとつ「秀真伝(ホツマツタエ)」。
アマテラスの孫・ニニギノミコトが富士山の近くで腹痛を起こした際、桑(はぐは)などを煎じて病気を癒したとされています。
また平安時代には「和妙抄」「大同類聚方」「医心方」、鎌倉時代には「喫茶養生記」といった書物に桑の薬効を示す記述が。
このように古くから生活の知恵として受け継がれてきた桑が、ついに近年、科学的・医学的にもその効能が証明されつつ今に至るというわけです。
桑の品種
日本で栽培されている桑の品種は、種間雑種を含めるとおよそ千数百種にも及ぶと言われており、これらの大部分は「やまぐわ型」「からやまぐわ型」「ろそう型」の3つに分類されます。
中でもメインで栽培されているのは「からやまぐわ型」で、そのうち約半数が「一ノ瀬」品種。次いで「はやてさかり」が続きます。
そのほかにも「しんいちのせ」「みなみさかり」「改良鼠返し」などが、桑の代表的な品種として知られています。
桑の系統型 | 主要な品種名 |
---|---|
やまぐわ型 | 剣持、赤木、島ノ内、五郎治早生、市平、根小屋高助、新桑1号~2号、紫早生、鶴田、十島、かんまさり、あさゆき、ふかゆき、ゆきしのぎ、しんけんもち、みつしげり |
からやまぐわ型 | 一ノ瀬、しんいちのせ、みなみさかり、改良鼠返し、鼠返し、収穫一、富栄桑、福島大葉、改良一ノ瀬、十文字、国桑27号、多胡早生、利桑、春日、青市、ときゆたか、はやてさかり、あおばねずみ、おおゆたか |
ろそう型 | 魯桑、甘楽桑、栗本、安藤早生、長沼、改良魯桑、国桑第20号、国桑第21号、扶桑丸、安雲桑、魯八、国桑13号、国桑第70号、わせみどり、あつばみどり、みつみなみ、たちみどり |
桑の葉の優れた効能・効果
効果1 糖尿病予防効果
糖尿病は、インスリンが十分に働かないために血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が増えてしまう病気です。
桑の葉に含まれている1-デオキシノジリマイシン(DNJ)という活性成分によって、糖の吸収を抑制し血糖値を下げる働きがあることが明らかになっています。糖尿病の予防につながるとされており、桑の葉以外には見つかっていない成分ということでも注目されています。
“日本未病システム学会雑誌「桑葉エキス入りプロポリス (桑ポリスTM) の肥満・糖尿病予防効果」より引用”
効果2 便秘改善効果
桑の葉に含まれている1-デオキシノジリマイシン(DNJ)によって小腸で吸収されなかった糖質は大腸で分解され、その際に発生する炭酸ガスや水素ガスによって大腸が刺激されて便通が改善されます。
効果3 動脈硬化抑制作用
動脈硬化とは動脈が肥厚、硬化した状態で、脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。
低密度リポタンパク質(LDL)の酸化が動脈硬化に関係しているといわれています。
桑の葉に多く含まれているケルセチン3-マロニルグルコシド(Q3MG)がLDLの酸化を防ぎ、動脈硬化の抑制につながります。
“蚕糸・昆虫バイオテック「クワの健康機能性研究の最前線」より引用”
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桑の葉に含まれる成分・栄養素
桑の葉にはさまざまな栄養素が豊富に含まれています。
青汁によく使われているケールと比較してもビタミンや食物繊維などが多いことがよく分かります。
- DNJ(1-デオキシノジリマイシン)
- 化学構造がブドウ糖(グルコース)に似ているので、小腸内の分解酵素がブドウ糖と間違えてDNJと結合することにより糖の吸収を遅らせます。
糖尿病の対策やダイエットにも注目されている成分です。
桑の葉はこの成分を自然界で唯一多量に含んでいる植物と言われています。
- ビタミン・ミネラル
- 桑の葉には、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン群と、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルも豊富に含まれています。
ビタミンAはほうれん草の10倍、ビタミンB1、ビタミンB2はケールの約2倍、ビタミンEは約10倍、カルシウムが牛乳の23倍、鉄は小松菜の8倍も含まれています。
- 食物繊維
- 食物繊維は消化されずに大腸まで届く成分で、腸内ビフィズス菌や乳酸菌の割合を増やし便秘を解消させる効果があります。
それにより腸内の発癌物質の生成を抑える効果があるといわれています。
桑の葉はケールに比べて食物繊維の含有量が約4倍も含まれているので、腸内環境を整えたい方におすすめです。
- ギャバ(GABA)
- ギャバは特に抗ストレス作用が強く、興奮した神経を落ち着かせ、ドーパミンの抑制効果が高い注目を集める成分です。
桑の葉にはケールの約6倍のギャバが含まれているといわれています。
- ルチン
- ルチンは高い抗酸化作用を持つポリフェノールの一種です。
ビタミンCの吸収を助け、皮膚や血管を健康に保ち老化を防止する効果があります。
また、心臓疾患や動脈硬化、高血圧や血糖値の回復作用があり、糖尿病予防にも効果的といわれています。
桑の葉は糖尿病に効果があるのか?
桑の葉に含まれる1-デオキシノジリマイシン(DNJ)という物質には、糖の吸収を抑え、食事による血糖値の上昇を抑制する効果があることが知られています。
また同様に桑の葉に含まれる、ケルセチン3-(6-マロニルグルコシド)(Q3MG)という抗酸化成分を肥満したマウスに投与したところ、血糖値の低下が観察されたという報告も出ています。
食後の血糖値の上昇をいかに抑えるかが糖尿病予防のポイントだと考えられていることからも、桑の葉は「糖尿病予防」への効果が期待できる食品だと言ってよさそうです。
高血圧や動脈硬化の抑制効果も!?
加えて桑の葉には、糖尿病と併せ持つことで動脈硬化のリスクが高まるとされる高血圧を抑制する作用や、動脈硬化そのものを抑制する作用も報告されています。
動脈硬化は糖尿病や高血圧などが原因になると考えられているため、今後のさらなる研究発展が待たれるところです。
桑の葉茶の作り方
桑の葉茶に含まれているDNJ(1-デオキシノジリマイシン)は食事によって体に入ってきた糖の吸収を抑える働きがあるため、食前に飲むのが効果的です。
ここでは、桑の葉茶を鍋ややかんで淹れる方法と急須で淹れる方法の2種をご紹介します。
鍋またはやかんで淹れる場合
1.乾燥の桑の葉5~10gと、約1Lの水を用意します。
2.水と乾燥の桑の葉を鍋に入れ、火にかけて沸騰させます。
3.お湯が沸騰したら弱火で1~2分ほど煮込みます。
4.火を止めて、茶こしで葉をこしたら桑の葉茶のできあがりです。
お好みの濃さになるように、沸騰時間を調整してください。
※やかんで淹れる場合は、乾燥の葉をお茶パックに入れて使うと後片づけが楽になります。
急須で淹れる場合
1.乾燥の桑の葉5g程度を急須に入れ、熱湯を注ぎます。
2.3~4分程度置いて、お好みの濃さになったらお召し上がりください。
お好みの濃さになるように、時間を調整してください。
カフェインを含まないので、就寝前でも安心してお飲みいただけます。
ぜひ桑の葉茶を楽しんでみてください。
桑の葉の副作用や、注意点は?
基本的に副作用はなしとされていますが、血糖値を下げる効果があるため、糖尿病の治療を受けて血糖値を下げる薬を飲んでいる方は念のため医師にご相談ください。
ノンカフェインですので妊婦さんにもお飲みいただけますが、摂りすぎるとお腹が張ったり、お腹を壊すこともありますので、気をつけましょう。
桑の葉の活用法
桑の葉エキス
桑の葉を焼酎やホワイトリカーに漬け込むと、栄養分がたっぷり抽出された桑の葉エキスが出来上がります。
薄めて化粧水にしたり、できものやかぶれ、虫刺されの解消、皮膚炎や乾燥肌の改善に役立ちます。
もちろん内服もできます。
桑の葉の葉焼酎漬けの詳しい作り方はこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
桑の葉エキスの作り方
野草の豊富な栄養素で強い体に!
ご自宅で簡単に作れます。
桑の葉の葉焼酎漬けの作り方の記事を見る
●管理栄養士からのコメント
桑の葉茶は、糖尿病の予防効果があると期待されているお茶です。
血糖値は食後30分~1時間に高値となるため、桑の葉茶を食前もしくは食事中に飲むと効果的です。桑の葉に多く含まれている1‐デオキシノジリマイシンは、水に溶けやすく熱に強いことから、煮出すことで成分がより抽出されます。
薬ではないため早急な効果を求めることは難しいですが、日々の食事習慣に桑の葉茶を取り入れてみてはいかがでしょうか。
管理栄養士プロフィール
◎鶴田ようこ
調理師・管理栄養士。2つの資格を生かし食用油脂製造会社にて品質管理に従事。
菜種油、オリーブ油の品質に関する分析、衛生管理等を行う。
幼い頃から野菜作りの手伝いをしていたことから、季節の野菜料理が得意。
桑の葉茶Q&A
- 妊娠中や授乳期でも桑の葉茶を飲んでも大丈夫ですか?
- カフェインが含まれていませんのでお飲みいただけますが、飲みすぎるとお腹が張ったりお腹を壊すこともありますので、飲み過ぎにはご注意ください。
- 桑の葉茶を飲むタイミングはいつがいいですか?
- 桑の葉茶に含まれているDNJ(1-デオキシノジリマイシン)は食事によって体に入ってきた糖の吸収を抑える働きがあるため、食事の前に飲むのが効果的です
- 桑の葉茶を飲む時に気を付けることはありますか?
- 血糖値を下げる効果があるため、糖尿病で血糖値を下げる薬を飲んでいるかたは医師にご相談ください。
- おすすめの桑の葉茶はありますか?
- 桑の葉を乾燥させたものを煮出して飲むのが一般的ですが葉をそのまま粉末にしてお湯を注ぐだけで飲める桑の葉粉末やティーバッグになっている商品もありますので、気軽に続けたい方にはおすすめです。
他の野草等がブレンドされ飲みやすくなった商品もあります。
味が心配な方はブレンド茶から始めてみるのも良いでしょう。
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