カカオ豆から作る、美味しく身体にやさしい本格チョコレートの作り方

チョコレート

カカオ豆から作るチョコレートだなんて、難しそう!と思いますよね?
でも、工程はとてもシンプル。
道具さえそろっていれば難しい技術は必要なく、チョコレートづくりを楽しめます。

市販の砂糖や植物性油脂などがたっぷり使われた大量生産のチョコレートと違い、
甘みやトッピングなど、身体にいいものを選んで自分好みに作れるのが魅力です。

本当に美味しく、体にいいものにこだわるならば、少しの手間をかけて作ってみましょう。
カカオ本来の美味しさを体感していただけます!

 

 

今回は、一般社団法人「日本焙煎技術普及協会」理事の竹林利朗さんの手法を参考に、
カカオ豆からのチョコレート作りについて解説していきます。

「日本焙煎技術普及協会」理事の竹林利朗さん

 

1、カカオの話

まずは、原材料「カカオ」について知っていきましょう。

 

カカオ豆は「カカオ」というフルーツの種

カカオの木になる実のことを「カカオポッド」といいます。
見たことのない方も多いのではないでしょうか?

カカオの木

日本では見慣れない不思議な植物ですよね。

カカオは熱帯のフルーツであり、南北20度のカカオベルトと呼ばれる地域に生えています。
カカオの育つ環境は、平均気温25度、高温多湿の地域です。

実は緑色から、黄色やオレンジ、赤や紫など様々な色のものがあり、
表面の質感もゴツゴツしたものからつるっとしたものなど様々です。

カカオの木

この中にカカオパルプに包まれて、種が60粒ほど入っています。

これがチョコレートのもとになるのです。

 

チョコレートの原料にするには「発酵」が必要

カカオの実は完熟すると甘くなります。
果肉を取って種を取り出し匂いをかいでみると、ほんのりチョコレートの香りがします。

しかしこれをそのまま焙煎してチョコレートにしても、全く美味しくありません。

この種を発酵させて乾燥させ、初めてチョコレートの原料として使えるようになるのです。

種を発酵するには、木の桶に果肉と種を詰めて熟成していきます。
乳酸発酵、アルコール発酵を経て、酢酸発酵します。

そして発酵の頃合いをみて、しっかりと乾燥され、カカオ豆として出荷されます。

カカオ豆アップ

 

香りの豊かなチョコレートにするには

発酵したカカオ豆は、800~1200もの「香りの前駆体」となる成分を含みます。
これそのものは香り成分ではありませんが、元になる成分です。

熱を加えて一定の温度になると香りに昇華し、アロマが発生します。
熱をしっかり加えて、できるだけ多くのアロマを引き出すのが、
香り高いカカオにするためのポイントです。

 

カカオはどこからきたの?こうして世界に広まった

カカオの原産地はメキシコなどの中南米です。アフリカでも栽培が盛んで、
ガーナを始めコートジボワールやウガンダも産地として知られています。

時代はさかのぼり、大航海時代。
スペインやポルトガルの人々が原産地からカカオを持ち帰りました。
そして産業革命の頃、スイスのリンツ氏がカカオを滑らかにし板状にする技術を開発したことで
ヨーロッパに現在の形のチョコレートが広まりました。

対して、原産地のメキシコなどでは固形のチョコレートではなく、溶かして飲むのが一般的です。
昔は過酷な農作業に耐えうるよう、腹持ちのよいトウモロコシの粉に
栄養豊富なカカオを混ぜて飲んだりしていたそうです。

●カカオの代表的な生産地
1位:コートジボワール
2位:ガーナ
3位:インドネシア

日本ではチョコレートといえばガーナというイメージが強いので、2位というのが意外ですよね。
コートジボワール産のカカオは、主に昔から繋がりがあり距離も近いヨーロッパに流れるので
日本ではガーナ産が多く使われています。

 

アフリカ カカオの木

 

上質なカカオ豆とは

●アフリカ産のカカオ豆
アフリカ産のカカオ豆はどっしりしていて香りが弱め。しっかりめに焼いたほうがいいそうです。
コーヒーで言えばロブスタ種のようなイメージ。

●中南米産のカカオ豆
中南米産のカカオ豆は香りが華やかで酸味が強い。日本のチョコレートにはあまり使われていません。
コーヒーで言えばアラビカ種のようなイメージです。

このように品種や産地など様々ありますが、質の高さで言えば、
きちんと発酵しているかどうか、発酵工程の方が大切です。

温度によっては雑菌が繁殖してしまうのですが、
きちんと温度がコントロールされている生産地はまだわずかで、
安定して同じ品質のものを手に入れるのも難しいそうです。

カカオ豆の匂いを嗅いでみて、いい匂いだけでなく少し汗臭いような匂いがしていれば
酢酸発酵がされています。

汗臭いのはちょっといやですが、これに熱が入ると香り成分がアロマになり
香りの豊かなチョコレートをつくることができます。

 

2、チョコレート作りに必要な道具

では、チョコレート作りに必要な道具を確認しましょう。

 

焙煎機

今回使ったのは竹林さん考案のこちらの器具。
市販の持ち手付きのザルを2つ合わせて、針金で軽く留めます。

とてもシンプルで、豆の焙煎にピッタリです。

竹林さんの手網式焙煎機

きつく留めると開け閉めがしづらいので、軽めに留めましょう。

 

ガスコンロ

コンロは、IHではなくガスコンロを使用します。カセットコンロでもOKです。
自動停止機能のあるものは避けましょう。

ガスコンロ

 

アルミ筒と網

コンロの上にかぶせる、市販のダクト用のアルミ製の筒です。
これで火が広がらないようにし、ムラなく豆に火を通すことができます。
その上には排水溝用の網を乗せて火が直接あたりにくいようにします。
ホームセンターなどで手に入ります。

アルミの筒と網

 

カカオ豆

100g程度が扱いやすい分量です。

カカオ豆

 

ミルサー(推奨 山本電気 Newよめっこさん)

カカオ豆はかなり粘度がありますので、
一般的なミルサーやフードプロセッサーですと故障する確率が高いです。

竹林さんの推奨するのは、もとは米粉を作るミルサーのこちら「よめっこさん」。
強力なミキサーなのでこれさえあればチョコレート作りがぐんと簡単になるそうです。

よめっこさん

 

カカオバター

カカオバターは、常温ではホワイトチョコレートのように固まっています。
あらかじめ湯煎して溶かしておきましょう。

とかしたカカオバター

 

ハニーココナッツ

ここで身体にやさしいお砂糖を選びましょう。
こちらはインドネシア産のハニーココナッツです。

ハニーココナッツ

 

天然塩

塩はほんの少し、耳かき3分の1程度を使います。

天然塩

 

3、全体の流れを把握しよう

作業に入る前に、全体の流れを把握しておきましょう。

下準備

STEP1.豆をお湯洗いして欠点豆を取り除きます。

カカオ豆の焙煎

STEP2.手網で焙煎します。

STEP3.冷ましてから殻を剥きます。

焙煎したカカオ豆からチョコレートへ

STEP4.ミルサーで粉砕します。

STEP5.湯煎したカカオバターを適量入れて撹拌します。

STEP6.ハニーココナッツで味を整え、必要に応じてカカオバターも追加します。

STEP7.最後に耳かき1/3程度の天然塩を入れます。

STEP8.ボウルに移して粒子を滑らかにします。

STEP9.型に流してトッピングをします。

STEP10.冷蔵庫で45~50分程度冷やして固めます。

 

4、下準備

STEP1. 豆をお湯洗いして欠点豆を取り除く

まず生豆を量ります。慣れないうちは少ない量の方が扱いやすいです。
そして焙煎前に、質の悪い豆を取り除きましょう。この作業をハンドピックといいます。

そして、カカオ豆を熱いお湯で洗い汚れを落とします。

お湯で洗い汚れを落とします

 

●欠点豆とは?
欠点豆とは、豆に虫食いの穴や欠けがある豆、カビ豆や未成熟豆のことなどを指します。
雑味の原因になったり、身体に良くない汚れや菌が含まれているので
もったいないと思わずに、しっかり取り除きましょう。

 

洗うときはザルに入れ、必ずお湯で我慢できるぎりぎりくらいの熱さにします。
ぬるいと雑菌がとれないので、できれば50℃くらいがいいですが
やけどに気をつけて無理をしないようにしましょう。

●上手な洗い方
お湯はためておくと汚れやカビもたまってしまうので必ず流しっぱなしにします。
最初に洗ってすぐ流し、三回くらい繰り返します。
お米を軽く研ぐような感覚で、両手にはさんで拝み洗いをします。

30秒ほどお湯につけ

3回ほど洗って水が濁らなくなってきたら、30秒ほどお湯につけ、豆の中まで染み込ませます。
染み込ませたら、豆を濡れたまま手網焙煎機に移しましょう。

 

●なぜ生豆を洗うのか?

1)雑菌、よごれ、カビ毒を取ることができる

収穫された豆は遠い熱帯の国から船便のコンテナで長いと2ヶ月ほどかけて運ばれてきます。
その間コンテナも温度が高くなり過発酵して、カビが生えたり虫が発生したりもします。
またそれを防ぐためにほとんどがポストハーベスト(収穫後の農薬)が使われています。
それらを取り除くために、熱いお湯で洗い流し、しっかりとハンドピックをします。

2)焙煎時に蒸すことができる

水分を含んだまま焙煎をすることで、表面だけ先に焼け焦げて中が生焼けになるのを
防ぐ事ができます。
水は100度まで熱を伝えて水蒸気になり、膜をはりながら抜けていきます。
ある程度芯まで火が通ってから豆全体の炭化が始まるので、より均等に豆に熱を加えることができ、
蒸し焼きにすることで、中までしっかりと火を通すことができます。

 

5、カカオ豆の焙煎

STEP2.手網式焙煎機に入れ、火にかける

しっかり洗えたら、いよいよカカオ豆の手網焙煎です。
洗った豆を、濡れたままで手網に投入したら、火にかけます。

手網式焙煎機に入れ、火にかける

筒の上で直接炎が当たらない程度の高さに保ちながら、網を上下または左右にしっかり振ります。
ここから完成までは、止めずに振り続けます。

手網式焙煎機に入れ、火にかける

ポイントは、カカオ豆の成分の約54%が油脂分であること。
熱が強いと燃えて焦げてしまいますので、120~130℃程度の低温で時間をかけて焙煎します。
時間がかかるので疲れますが、頑張って振り続けましょう。

水分が抜けてくるとパンパンと弾けてきます。
その後、マラカスを振っている様な軽い音になったら、焙煎完了です。
殻を剥く時サクサクっとしていて、種を割ってポキっと折れれば水分が抜けている証拠です。

手網式焙煎機に入れ、火にかける

カカオ豆は低温で時間をかけて焙煎していきます。
香りの前駆体をしっかりと香りに昇華させましょう。

 

●ポイント
ここからは火に近すぎると焦げてしまうので、手網の高さで温度調整をします。
火力で調整すると熱の質量がたりなくなるので、手網の位置を上げ下げして調整しましょう。

徐々に豆の音が乾いた音になり、
香りも、豆特有の青臭さがある香りから、徐々に香ばしいカカオの香りへと変化していきます。

焙煎完了

 

STEP3.冷ましてから殻を剥く

焙煎ができたら豆をトレイやザルに広げて冷まします。
触れるくらいに冷めてきたら、今度は薄皮をむいていきます。

薄皮をむいていきます

爪を立てると割れてしまうのであまり力を入れすぎず、
つまんでひねるようにすると簡単にむくことができます。

もし割れてしまっても使用して大丈夫です。
焼け焦げてしまった豆は雑味の原因となりますので、ここで取り除きましょう。

焼け焦げてしまった豆

地道な作業ですが、しっかりと皮を取り除きましょう。

 

6、焙煎したカカオ豆からチョコレートへ

STEP4.ミルサーでカカオ豆を粉砕する

ここから、カカオ豆がだんだんとチョコレートらしくなっていきます。
まず強力なミルサー、よめっこさんの出番です。

カカオ豆を入れてセットし、一気に粉砕します。

一気に粉砕します

ご家庭用のミルサーやフードプロセッサーでも可能ですが、
カカオ豆は油分を多く含んでおり粘度があるので、普通のミルサーでは時間もかかりますし、
モーターが焼ききれて壊れてしまうことが多いそうです。

チョコレート作りで一番大変と言われているのは、この粉砕する工程です。

ご家庭での作業ではなかなか細かくならずに苦戦する方も多いのですが、
竹林さんは米粉を作ることもできる強力なミルサー「よめっこさん」を使うことを
強くオススメされていました。

この工程が簡単になれば、チョコレート作りもそれほど難しくはありません。
チョコレート作りを気軽にしたい方は、導入してみるのが良いかと思います。

一気に粉砕します

 

STEP5.湯煎したカカオバターを適量入れて撹拌する

豆をしっかりと粉砕したら、カカオバターを加えてさらに撹拌します。

カカオバターを加えてさらに撹拌

カカオバターは常温では固形ですので、あらかじめ湯煎して液体にしておきましょう。

カカオバターを加えると、トロっとして、ようやくチョコレートらしくなってきます!

ようやくチョコレートらしくなってきます

 

STEP6.ハニーココナッツで味を整える

ここで味見をしてみると、全く甘みはありません。
ハニーココナッツを少しずつ加えてすばやくボタンを2押しして軽く撹拌します。
これを繰り返しながら、お好みの甘みに調整していきます。

お好みの甘みに調整

チョコレートの様子をみて、必要に応じてカカオバターも追加します。

 

STEP7.耳かき1/3程度の天然塩を入れます

そして最後に、天然塩を加えます。
耳かき3分の1程度、本当に数粒をつまむ程度の量です。
一見意味がなさそうですが、これによって甘みが引き立ちます。

天然塩を入れます

ここで、お好みで乳酸菌を加えるとさらに美味しく身体にやさしいチョコレートになります。

お好みで乳酸菌を加える

 

●乳酸菌のおすすめ商品

日本の発酵食品から抽出した植物由来の乳酸菌パウダーはこちら。
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STEP8.ボウルに移して粒子を滑らかにする

ボウルに移して、粒子を滑らかにしていき、最後にテンパリングをします。

粒子を滑らかにしていく

粒をヘラとボウルでこすって潰すようなイメージで、ぐいぐいと押しつけながら混ぜ回していきます。

テンパリング

●テンパリングとは?
チョコレートの温度を、安定した結晶構造を充分に形成できる温度(50度程度)に上昇させてから再度冷やす(40度程度)こと。
口当たりよくなめらかで、ツヤのあるチョコレートにするために必要な工程。
チョコレートを混ぜているボウルを、お湯をはったボウルに浸けたり氷を入れて冷やした水に浸けたりして、温度の微調整をします。
温度計で量りながら行いましょう。

 

STEP9.型に流してトッピング

ここがチョコレート作りで一番楽しいところですね。
できあがったチョコレートを型に流し込んで、それぞれお好きなトッピングで飾ります。

チョコレートを型に流し込んで

 

お好きなトッピングで飾ります

 

STEP10.冷蔵庫で冷やして固める

そして冷蔵庫に入れて、待ちましょう!
だいたい、40~50分程度で固まります。

 

冷蔵庫に入れて、待ちましょう

チョコレートがしっかりと固まったら、型から取り外して完成です!

型から取り外して

 

完成!

もうすぐにでも食べたいですよね。
しかし、ここから2週間~1ヶ月程度熟成させた方が美味しくなるそうです。
ここでは我慢して、せっかくですから一番美味しい状態で食べましょう・・!

 

自分で手作りしたチョコレートは絶品!

カカオ豆からのチョコレート作りは手間と時間がかかります。
でも、自分の納得できる安全な材料で、工程を確認しながら作ったチョコレートは
格別に美味しいものです。

誰かへのプレゼントにしても喜ばれます。
バレンタインデーに大切な方へ、市販のチョコレートを溶かすだけではなく、
カカオ豆から作った上質なチョコレートを送るのもいいですね。

チョコレート好きの方に、市販のものとは全く違う、カカオ本来の美味しさを
ぜひ体感していただきたいです!

自分で手作りしたチョコレート

 

7、Q&A

チョコレート作りで疑問に思った点を、
竹林さんへのインタビューやワークショップの内容をもとにまとめました。

 

市販のチョコレートは体に悪いのでしょうか?
成分の面で言えば、たいていのものは甘くするため原材料のトップが砂糖や糖類になっています。
グラニュー糖や精製した砂糖が使われていますので、身体に良い糖類を摂りたい方にはおすすめしません。
他の材料も、やはり大量生産の製品はコストを抑えるため原材料の価格を抑えなければならないので、材料の質が良いとは言えません。
手間はかかりますが、自分で安心できる材料を揃え自分で作れば本当に美味しく安全なチョコレートを食べることができます。
カカオ豆をフライパンで炒るのは失敗しやすい?
カカオ豆は54%が油なので、熱が強いと燃えて焦げてしまいます。
手を網の上におけるくらい(120~130度)の低温で、長い時間をかけた方が美味しくできます。
フライパンだと接しているところしか熱がつたわらないため焦げやすく、
振るのも大変ですので、あまりおすすめできません。
カカオとココアは違う?
カカオは54%が油脂分です。温めて絞るとカカオバターが出ます。カカオバターは、常温で固まります。
これを取った絞りカスが、日本人にも馴染み深い「ココア」です。
ココアを牛乳で割るのは、ココア単体だと油脂分がなく、旨味やコクが無いからです。
また、よく混同されがちな「ホットショコラ」はココアとは別物です。ホットショコラには、カカオバターが入っています。

 

8、オススメの関連記事

竹林さんによる手焙煎ワークショップの体験レポートは、こちらからご覧いただけます!
●2018年10月 コーヒー手焙煎&カカオ豆から作るチョコレートワークショップ@立川
●2018年7月 コーヒー焙煎教室レポート 手網焙煎の手順@下高井戸
●2018年7月 コーヒー焙煎教室レポート 焙煎・生豆選びの注意点

 

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この記事を書いた人

商品ページ・コンテンツ・イラスト担当。昨年から習い始めたクラシックバレエにはまっています。アートと音楽と飲み歩きが大好き。