グルタミン酸を多く含む食品｜健康効果と過剰摂取の危険性も解説

グルタミン酸が健康にどんな影響を与えるのか気になる方も多いでしょう。世間では「健康に悪い」という声もあれば、「健康に良い」という声も聞かれます。

結論を言えば、グルタミン酸は過剰摂取に気をつければ健康に良い成分です。ここではグルタミン酸ナトリウムを多く含む食品と健康効果、過剰摂取による危険性も解説します。

身近な調味料である味の素や、おすすめの調味料も紹介するので、グルタミン酸を上手に生活に取り入れたい方は参考にしてみてください。

グルタミン酸とグルタミン酸ナトリウム

グルタミン酸ナトリウム（MSG）は、食品に旨味を加えるために使用される調味料です。天然由来のアミノ酸であるグルタミン酸にナトリウムを添加して生成されます。

純粋なグルタミン酸は水に溶けにくく、そのままでは食品に使いにくい成分です。そのためナトリウムを加えて水に溶けやすくし、食品内で均一に混ざるようにしています。

以前は安全性が疑問視されていましたが、現在は国際的な機関から安全性を評価されている成分です。安全性を保証している国際機関の一例は以下の通りです。

• 米国食品薬品局（FDA）
• FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会（JECFA）
• ヨーロッパ食品情報会議（EUFIC）
• ヨーロッパ食品安全機関（EFSA）
• 欧州連合食品化学委員会（SCF）

日本だけでなく、アメリカやヨーロッパでもグルタミン酸ナトリウムの規制は行われていません。日本では食品安全委員会により安全性が評価され、厚生労働省が食品添加物として認可しています。

また日本ではグルタミン酸ナトリウムを食品に使用している場合、製品ラベルに「調味料（アミノ酸）」または「調味料（アミノ酸等）」と明記することが義務付けられています。

ぜひお手元の商品のラベルを確認してみてください。意外と多くの商品に「調味料（アミノ酸）」または「調味料（アミノ酸等）」と記載されていますよ。

グルタミン酸を多く含む食品一覧

グルタミン酸やグルタミン酸ナトリウムが何に含まれているのか気になる方も多いでしょう。グルタミン酸は主に天然由来の食品に含まれており、グルタミン酸ナトリウムは加工食品に多く含まれています。

ここではグルタミン酸が多く入っている食品とグルタミン酸ナトリウムが入っている食品をご紹介します。

• グルタミン酸が多い食品ランキング
• グルタミン酸ナトリウムが入っている加工食品

それぞれ見ていきましょう。

グルタミン酸が多い食品ランキング

グルタミン酸が多い食品のランキングを、うま味インフォメーションセンターが発信している情報を元にまとめました。

海藻魚介	グルタミン酸	野菜類	グルタミン酸	肉類乳製品発酵食品	グルタミン酸
羅臼昆布	3380	緑茶の茶葉	1490	醤油	1700
真昆布	3050	ドライトマト	1140	パルミジャーノレッジャーノ	1680
利尻昆布	1900	干し椎茸	1060	ナンプラ	950
長昆布	1400	トマト	250	オイスターソース	900
海苔	1350	ほんしめじ	140	味噌	700
日高昆布	1340	とうもろこし	110	生ハム	340
アンチョビ	630	グリーンピース	110	エメンタールチーズ	310
イカの塩辛	620	マッシュルーム	110	キムチ	240
牡蠣(かき)	150	じゃがいも	100	チェダーチーズ	180
ほたて	140	れんこん	100	納豆	140
くるまえび	120	にんにく	100	鶏肉	50
うに	100	たけのこ	90	全卵	20
あさり	90	えのきだけ	90	豚肉	10
キャビア	80	白菜	90	牛肉	10
煮干し	50	にんじん	80
わかめ	50	春菊	80
かつお節	40	そら豆	80
しらす干し	40	トリュフ	80
たこ	30	ほうれん草	70
するめいか	30	大根	70
冷凍むきえび	30	大豆	70
さば	30	椎茸	70
いわし	20	さつまいも	60
いくら	20	ブロッコリー	60
あじ	13	アスパラガス	50
さわら	11	長ねぎ	50
たら	10	キャベツ	50
まぐろ	10	玉ねぎ	50
かつお	10	セロリ	30
たい	10	しょうが	20
はまち	9	ごぼう	20

グルタミン酸は昆布に特に多く含まれています。野菜類ではトマトやきのこ類にも比較的多く、乾燥させるとグルタミン酸が増えるのが特徴です。

醤油に含まれるグルタミン酸も多く、少量で満足感のある味に仕上がります。

グルタミン酸ナトリウムが入っている加工食品

グルタミン酸ナトリウムはあらゆる食品に含まれています。今回は筆者の家にある商品を調べてみました。「調味料（アミノ酸）」または「調味料（アミノ酸等）」と表記されていたものは以下の通りです。

• 顆粒だし
• コンソメ
• だしパック
• 塩コショウ
• ポン酢
• めんつゆ
• マヨネーズ
• ケチャップ
• ドレッシング
• カレールー
• 麻婆豆腐の元
• 味付け海苔
• うめぼし
• スナック菓子
• せんべい

目につく商品ほぼすべてに「調味料（アミノ酸）」または「調味料（アミノ酸等）」の表記がありました。まさか塩コショウや味付け海苔にもグルタミン酸ナトリウムが含まれているとは思いませんでした。

健康的な食習慣を目指すのであれば、過剰摂取を避けるためにも、加工食品は避けるのがおすすめです。

醤油や料理酒、お酢などの基本の調味料には「調味料（アミノ酸）」または「調味料（アミノ酸等）」の表記はありませんでした。ただし醤油は商品によりグルタミン酸ナトリウムが添加されている可能性があります。

グルタミン酸の健康効果

グルタミン酸は料理に旨味を加えるだけでなく、健康効果も期待できます。具体的な健康効果は以下の通りです。

• 食事に使う塩分を減らせる
• 筋肉がつきやすくなる
• 風邪や病気に強くなる
• 腸内環境を改善する
• 食欲を増進する

それぞれ解説します。

食事に使う塩分を減らせる

グルタミン酸は食事の旨味を増強し、塩分の使用量を減らせます。料理に使用すると食材の風味を引き立て、少ない塩分でも満足できるからです。

グルタミン酸を構成するGABA受容体（GABAA）は塩味の情報伝達系に影響を与え、少ない塩分でも塩味を強く感じられる効果があります。

東京大学の研究によると「うま味」を活用すれば、成人の1日あたりの食塩摂取量を22.3%削減できるそうです。

日々の料理にグルタミン酸を活用すれば、おいしく減塩できるでしょう。

筋肉がつきやすくなる

グルタミン酸は筋肉の成長を促進し、筋肉がつきやすくなる効果があります。筋タンパク質の合成を助け、運動後の筋肉の回復を促進するからです。

特にスポーツやトレーニングに取り組む人が、グルタミン酸を摂取すると、より高い効果を発揮します。またグルタミン酸は運動時の持久力を高めるので、ランニングや水泳といった有酸素運動に効果的です。

積極的に運動に取り組む人や、スポーツに打ち込む学生は積極的に摂取したい成分です。

参考：鈴木良雄（2011）「スポーツにおけるアミノ酸の使用法とその効果」順天堂医学　57巻

風邪や病気に強くなる

グルタミン酸は免疫機能を強化して、風邪や病気への抵抗力を高める効果があります。免疫細胞のエネルギー源となり、活動をサポートするからです。

グルタミン酸は、リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞にとって重要なエネルギー源です。免疫細胞はグルタミン酸を利用して活発に活動し、病原体と戦う力を強化します。

日常的にグルタミン酸を摂取すれば、病気にかかりにくい身体を作っていけるでしょう。ただし過剰摂取すると逆効果となり、免疫細胞の機能低下を引き起こすので注意が必要です。

参考：愛媛大学　免疫機能を保つための新しいメカニズムの発見

腸内環境を改善する

グルタミン酸は腸内環境を改善し、腸の健康を維持する役割があります。

腸内の上皮細胞のエネルギー源として機能し、腸壁の健康を維持するからです。腸内フローラのバランスを保つことで、免疫機能のアップも期待できます。

腸内環境が改善されれば消化機能が向上し、健康維持に必要な栄養素を効率的に吸収可能です。また健康な腸内環境は、腸内の炎症を抑制し、全身の炎症リスクも低下させます。

便通にも効果があるので、お腹に不調を感じる人はグルタミン酸を積極的に摂るのがおすすめです。

食欲を増進する

グルタミン酸には食欲を増進する効果があります。料理に旨味を加え、食事のおいしさを引き立てるからです。

グルタミン酸は口の中の味覚受容体を刺激して、食欲を増進させます。特に体力の落ちている病気の人や、食欲のわきにくいお年寄りには、食事のおいしさが重要です。

さまざまな食材から必要な栄養素をバランスよく摂取するためにも、グルタミン酸を食卓に取り入れると良いでしょう。

グルタミン酸を過剰摂取した際の危険性

グルタミン酸は健康効果もありますが、過剰摂取による危険性もあります。ここではグルタミン酸を過剰摂取した際の危険性を以下の観点から解説します。

• 日常的な食事に使用する量なら健康被害はない
• 神経変性疾患のリスクを増加させる可能性がある
• アレルギー反応を起こす可能性がある

それぞれ見ていきましょう。

一般的な食事に使用する量なら健康被害はない

グルタミン酸は日常的な食事では過剰摂取になりません。一般的な食事に含まれるグルタミン酸の量では、健康に影響を与える程の量にならないためです。

ただし昭和46年に福岡県でグルタミン酸ナトリウムが原因と見られる体調不良がありました。そのため厚生労働省から、グルタミン酸ナトリウムを必要以上に使用しないよう、各都道府県に指導が入っています。

グルタミン酸が豊富に含まれる昆布や、アミノ酸が添加された加工食品を大量に摂取すると、健康に悪影響が出るおそれもあります。

グルタミン酸の過剰摂取を避けるのであれば、健康的でバランスの良い食生活を心がけると良いでしょう。

参考：厚生労働省　食品添加物(グルタミン酸ナトリウム)の使用に関する指導の徹底について

神経変性疾患のリスクを増加させる可能性がある

グルタミン酸の過剰摂取は、神経変性疾患のリスクを増加させる可能性があります。

グルタミン酸は脳内で興奮性神経伝達物質として働き、大量に摂取すると神経細胞の過剰興奮を引き起こすからです。神経細胞の損傷や死滅を招き、神経変性疾患のリスクを高める要因となります。

具体的な神経変性疾患の例は以下の通りです。

• 統合失調症
• アルツハイマー型認知症
• 筋萎縮性側索硬化症（ALS）

脳内におけるグルタミン酸の過剰なシナプス伝達は、興奮毒性を引き起こすことがあります。

参考：慶應義塾大学病院　神経の働きを調節する新たなメカニズムを発見

アレルギー反応を起こす可能性がある

グルタミン酸の過剰摂取は、アレルギー反応を引き起こす可能性があります。グルタミン酸が体内に取り込まれると、一部の人では異常な免疫反応が発生するからです。

具体的な症状の一例は以下の通りです。

• 頭痛
• 発汗
• 皮膚のかゆみ
• 口の中の腫れやしびれ
• 呼吸困難
• 胸の痛み

これらの症状はMSG症候群と呼ばれ、特にアメリカの中華料理店の利用客に見られました。ただし大量にグルタミン酸を摂取しなければMSG症候群は発症しません。

FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会をはじめとして、複数の国際的な専門機関からグルタミン酸とMSG症候群との間に明確な関連性はないと発表されています。

グルタミン酸ナトリウムが主成分の味の素は安全？

結論から言えば、適量の摂取であれば味の素は安全です。味の素はグルタミン酸ナトリウムが主成分です。

「味の素は身体に悪い」という人も多いため、健康面に悪影響がないか気になる方も多いでしょう。ここでは味の素の安全性について、以下の観点で解説します。

• 味の素の成分と製造方法
• かつてはMSG症候群の原因とされていた
• 国際的な食品安全基準では安全性が認められている

それぞれ見ていきましょう。

味の素の成分と製造方法

味の素の主成分はグルタミン酸ナトリウムです。食材に自然に含まれるグルタミン酸を元に製造され、旨味を強化するために使用されます。

味の素の原料は、サトウキビやトウモロコシに含まれる糖質です。微生物の力で発酵させてグルタミン酸を生成します。

グルタミン酸とナトリウムを結合させたものが、味の素の主成分のグルタミン酸ナトリウム（MSG）です。これをさらに結晶化して製品化します。

かつてはMSG症候群の原因とされていた

味の素の主成分であるグルタミン酸ナトリウム（MSG）は、かつてはMSG症候群（中華料理症候群）の原因とされていました。しかし現在の科学的研究ではMSG症候群との関連性は否定されています。

1960年代に、アメリカでMSGを含む中華料理を食べた人々が、頭痛や発汗、顔面の紅潮などの症状を訴える事件がありました。これがMSG症候群として広まりました。

そのため多くの人がMSGを避けるようになったのです。

国際的な食品安全基準では安全性が認められている

味の素の主成分であるグルタミン酸ナトリウム（MSG）は、国際的な食品安全基準で安全性が認められています。

MSG症候群の調査のために多くの科学的研究が行われた結果、通常の食事量ではMSG摂取が健康に悪影響を及ぼすという明確な証拠が見つからなかったからです。

アメリカ食品医薬品局（FDA）はMSGを「一般に安全と認められる（GRAS）」物質として分類しています。またヨーロッパ食品安全機関もMSGの安全性を評価し、通常の食事での使用が安全であると結論付けました。

そのため味の素を料理に使用しても健康に安全性に問題はありません。

天然のグルタミン酸を含むおすすめ調味料3選

味の素を料理に使っても健康への危険性はありません。しかし身体の中に入るものは、より天然に近い食材を選びたいものです。ここでは天然の旨味成分を含むおすすめ調味料を3つ紹介します。

• 醤油
• 味噌
• 昆布

それぞれ見ていきましょう。

醤油

醤油には、独特の深い旨味と香りがあります。製造の過程で、天然のグルタミン酸が生まれるからです。料理に使えば、醤油独特の風味や旨味を加えられます。

高品質な醤油は添加物無添加なので安心して料理に使えるのが特徴です。原材料は大豆と小麦、塩のみで、長期間の発酵と熟成を経て作られます。

日々の食事に使うのであれば、無添加の醤油を選ぶと良いでしょう。

味噌

味噌は、深い旨味と栄養価を持つ調味料です。大豆を主原料とし、発酵と熟成を経て作られます。そのためアミノ酸やビタミン、ミネラルなどの栄養素が豊富です。

また味噌の製造過程で発酵が進むと、グルタミン酸が生成されます。味噌は料理に深い旨味を加えるだけでなく、高い栄養価で健康に良い影響を与える食品です。

味噌にはさまざまな種類があるので、品質にこだわった無添加の商品を選ぶのがおすすめです。

昆布

昆布はグルタミン酸を豊富に含む海藻であり、料理に深い旨味を加えます。昆布はミネラルや食物繊維も豊富で、栄養面でも優れているのが特徴です。

昆布には複数の種類があります。もっともグルタミン酸を含んでいるのが羅臼昆布です。少量でも良いだしが取れるので、選ぶのであれば品質の高い羅臼昆布をおすすめします。

グルタミン酸を活かした減塩レシピ

グルタミン酸を多く含む食品に関するQ＆A

グルタミン酸とは何ですか？

グルタミン酸は、天然に存在するアミノ酸の一つで、食品に旨味を加える役割があります。特に昆布や醤油などの食品に多く含まれています。

グルタミン酸ナトリウム（MSG）とはどのようなものですか？

グルタミン酸ナトリウム（MSG）は、グルタミン酸にナトリウムを添加して作られる調味料で、食品に旨味を加えるために使用されます。主に加工食品に使用されており、味の素が代表例です。

グルタミン酸ナトリウムは安全ですか？

グルタミン酸ナトリウムは適量の摂取であれば安全です。米国食品薬品局（FDA）やヨーロッパ食品安全機関（EFSA）などの国際機関が安全性を評価しています。

グルタミン酸を多く含む食品は何ですか？

グルタミン酸は昆布、トマト、パルミジャーノレッジャーノチーズ、醤油などに多く含まれています。特に昆布には高濃度のグルタミン酸が含まれています。

グルタミン酸の過剰摂取による危険性はありますか？

グルタミン酸の過剰摂取は神経変性疾患のリスクを増加させる可能性があります。また、一部の人にはアレルギー反応を引き起こすこともあります。ただし日常的な食事量であれば、過剰摂取の心配はほとんどありません。

グルタミン酸の健康効果にはどのようなものがありますか？

グルタミン酸は、食事の塩分使用量を減らす効果、筋肉の成長促進、免疫機能の強化、腸内環境の改善、食欲増進などの健康効果があります。

グルタミン酸を含む天然の調味料にはどのようなものがありますか？

醤油、味噌、昆布などがグルタミン酸を含む天然の調味料です。これらは料理に旨味を加えるだけでなく、栄養価も高いため、健康的な食生活に役立ちます。