下痢の原因と食事法。続く・繰り返す下痢の対処法は?
記事の監修
管理栄養士
稲尾貴子
管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。
「昔からお腹が弱くて…」
「突然お腹が下るから出かけられない」
「下痢かと思ったら便秘になったりするのだけれど、どうしたら?」
お腹に関わる悩みの中でも、下痢、特に慢性的な下痢の悩みは深刻です。
体質だから仕方ないと諦めていたその症状も、原因さえ分かれば改善できるかも?
今回は、繰り返す辛い下痢への対処法と、改善するためのアドバイスをまとめました。
下痢の症状と原因
下痢とは、水分の多い泥状便・水様便の排泄を繰り返す状態のことです。
腹痛や腹部の不快感を伴うことも多く、排便のコントロールがきかなくなるなどして社会生活に影響することも多いといわれています。
下痢の原因
下痢が起こるのは、食べ物に含まれている水分を大腸でしっかりと吸収できなかったときです。原因は大きく分けて4パターンに分けられます。
①食べ物によるもの ・暴飲暴食 ・人工甘味料の摂りすぎ ・消化不良 ・牛乳を飲むとお腹を壊してしまう(乳糖不耐症) |
③精神的な理由によるもの ・精神的ストレス ・自律神経失調症 ・過敏性腸症候群(IBS) |
②食中毒などによるもの ・細菌による毒素の影響 ・食物アレルギー |
④病気によるもの ・甲状腺の病気(バセドウ病) ・慢性膵炎 ・潰瘍性大腸炎 ・クローン病 ・がん |
参考:『下痢の正しい対処法』(日本臨床内科医会)、石倉文信『下痢、ストレスは腸にくる』(大阪大学出版会)
「お腹の風邪」と呼ばれる胃腸炎やインフルエンザ、熱中症などの症状のひとつとして起こることや、女性ならホルモンの影響で生理の頃に下痢をしやすくなることもあります。
また、コーヒーなど特定のものを摂ると下痢をしてしまうという方もいるようです。
受診が必要な下痢は?
食中毒などによる下痢、病気による下痢の場合は治療が必要になります。
次の項目に心当たりがある方は病院を受診しましょう。
- ・便に血が混ざっている
- ・下痢のほかに吐き気や悪寒、発熱などの症状がある
- ・同じものを食べた人も下痢をしている
- ・排便後も腹痛が続く
- ・発熱や体重減少、貧血などの症状がある
- ・動悸がひどい、大量の汗をかくなどの症状がある
食べ物や食べ方が原因となる下痢、精神的な要素が原因となる下痢は、生活の改善で快方に向かう場合があります。
次章から対策をみていきましょう。
食べ物による下痢の場合
下痢になりやすい食べ物や食べ方には次のようなものが挙げられます。
- ・早食いをする
- ・量を食べ過ぎる
- ・冷たいものを大量摂取する
- ・刺激物(香辛料、カフェインなど)を大量摂取する
- ・人工甘味料を大量摂取する
- ・サプリメントなどでマグネシウムを大量摂取する
- ・アルコールを大量摂取する
※マグネシウムは、大腸の浸透圧を高めることで水分を引き出し、便を柔らかくするはたらきがあります。
通常の食事からの摂取では過剰症になることはありませんが、サプリメントなどで過剰摂取すると、下痢を起こすことがあります。
暴飲暴食をすると、食べたものの浸透圧が高まって腸が水分を吸収しづらい状態になったり、腸に刺激が与えられてぜん動運動が必要以上に激しくなったりします。
慢性的な下痢に悩んでいる方は、「食べ方のクセによって下痢になっていた」ということも考えられます。
ご自身の食習慣を一度振り返ってみてください。
下痢になる前に食べたものについてメモを取ってみるのも方法のひとつです。
「焼き肉を食べてビールを飲むと下痢になる」など自分の下痢のパターンに気づいた場合は、身体の声としてしっかり受け止める必要があります。
下痢を繰り返すと腸内細菌も便と一緒に流れてしまい、腸内環境が悪化してしまいますので、まずは腸を刺激するものを避け、傷んだ腸の粘膜や過敏になった腸をいたわってあげてください。
そのうえで、善玉菌を増やす食事や生活習慣を心がけ、悪化した腸内環境を整えていくとよいでしょう。
- 乳糖不耐症について
- 中には、特定の食べ物と下痢が直接結びついている場合があります。
- 「乳糖不耐症」もそのひとつ。「牛乳などの乳製品を摂るとお腹がゴロゴロする」というのがその主な症状で、日本人には比較的多いとされています。
- 乳糖の分解酵素が少ないことが原因ですので、体質的なものとして受け止めるしかありません。
- 中には「ずっと牛乳が苦手だと思ってきたけれど、冷たいまま一気に飲んでいたせいだった」というようなケースもあるようですので、乳糖不耐症の疑いのある方は一度温めて飲んでみるといいでしょう。
下痢と便秘を繰り返す、過敏性腸症候群
近年増えているといわれるのが、過敏性腸症候群(IBS)です。
なんと日本では国民の5~10人にひとりが過敏性腸症候群であるともいわれています。
腸に炎症やがんといった病気がないのに下痢や便秘を繰り返す病気で、腹痛や腹部膨満
感などの不快な症状を伴うことも多く、特に若い世代に多いそうです。
<過敏性腸症候群(IBS)の症状>
- ・腹痛を伴う下痢を繰り返す(男性に多いタイプ)
- ・便秘が慢性化し、コロコロした硬い便が出る(女性に多いタイプ)
- ・下痢と便秘を数日間ずつ繰り返す(最も多いタイプ)
過敏性腸症候群かな?と思ったときはまず病院を受診して、他の病気でないことを確認してください。
IBSの方のための生活習慣アドバイス
過敏性腸症候群(IBS)の発症には体質や消化管のホルモン、免疫状態なども関係しているといわれていますが、最も大きな原因とされているのが自律神経です。
そのため、改善策も自律神経のバランスを整えることが中心になります。
<IBSを改善する生活習慣>
- ・早寝早起き(過労や睡眠不足を防ぐ)
- ・毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつける
- ・朝食をしっかり摂ることで腸を刺激する
- ・定期的に運動することでストレスを解消し、知覚過敏ぎみになった腸を鍛える
- ・失敗を気にせず、おおらかに構える思考習慣をもつ
特に「常に緊張状態でゆっくりと休まる時間がない」という方は、就寝前はパソコンやスマートフォンなどに触れずにゆったりと落ち着いた時間をつくるなど、副交感神経のはたらく時間を作るように意識しましょう。
「トイレのことが気になってストレス」という方も多いかと思いますが、IBS自体は命にかかわる病気ではないといわれています。職場や学校で上司や教師に話しておくなど、周囲の理解を求めて「上手に付き合う」つもりで過ごすといいようです。
症状が重い場合は薬で軽くすることもできるので、病院へ行って相談してみることをおすすめします。
下痢の間の食事法
下痢をしているときは腸が過敏になっています。
腸を刺激せず、失われた水分を補給できる食事を摂るよう心がけてください。
下痢をしたらまず水分を
下痢で一番怖いのは脱水です。
赤ちゃんや幼い子どもはもちろん、年配の方も脱水によって血が濃くなって固まりやすくなり、脳梗塞などの血栓による疾患を起こす可能性が高まります。
下痢をしたら、まずは十分な水分を摂ることを心がけてください。
スポーツドリンクであればハイポトニックタイプ(ヴァームウォーターなど)が最適で、アイソトニックタイプ(ポカリスエット、アクエリアスなど)であれば水で2倍に薄めて飲むとよいようです。
※ハイポトニックタイプは、アイソトニックタイプよりも浸透圧が低く、効率よく水分が吸収されるので発熱、脱水時におすすめです。
冷たいものを摂るとお腹に刺激を与えてしまうので、水分を摂るときは必ず常温か少し温めた状態で飲むようにしてください。
下痢のときに食べたいもの、食べてはいけないもの
下痢のときは水分をしっかりと摂りつつ、消化によいあたたかいものを食べるようにしましょう。
下痢のときに食べたい食事 | 下痢のときに避けたい食事 |
---|---|
・おかゆや重湯 ・よく煮込まれたうどん ・味噌汁 ・よく煮た野菜スープ ・リンゴのすりおろしたもの |
・冷たいもの ・刺激物(辛いもの、スパイスなど) ・アルコール ・コーヒー ・炭酸水 ・脂肪の多い肉や魚 ・蕎麦や玄米など消化によくないもの ・生野菜や海藻など食物繊維の豊富なもの ・ケーキなど脂肪分の多いもの ・人工甘味料を含むもの |
参考:『下痢の正しい対処法』(日本臨床内科医会)
食中毒などの場合はウイルスを出し切った方がよいこともあるため、下痢は安易に止めない方がよいと言われています。
ただし、脱水や衰弱の具合によっては下痢を止めた方がよい場合も。薬を使うときは医師の判断に従ってください。
赤ちゃんの下痢はどうする?
赤ちゃんの下痢はウイルス性の腸炎が原因であることが多いといわれています。
次のような場合はすぐに病院を受診してください。
<病院を受診する目安>
- ・熱や嘔吐など他の症状がある
- ・便に膿や血液が混じっている
- ・便の色が黒い
- ・便から腐ったような臭いがする
<脱水症の疑いがある場合>
- ・嘔吐があり、水も飲めない
- ・顔色が悪くぐったりしている
- ・皮膚や唇が乾いている
- ・けいれんを起こしている
家庭でケアする場合には、次のポイントに気をつけてお世話をしてあげましょう。
<赤ちゃんの下痢のケア>
- ・脱水が心配なので、水分補給に気をつけてください。
- ・激しい下痢のときは、スポーツドリンクや乳児イオン飲料ではなく、薬局で売っている電解質濃度の高い飲料や塩を加えたリンゴジュースなどを与えましょう。
- ・おしりはシャワーや座浴で清潔にし、かぶれないようにタオルで拭いてあげましょう。
- ・おしっこが出ていない場合は脱水の可能性も。水分がとれていない場合は病院に連れていきましょう。
腸内環境を整えて、繰り返しにくい身体に
過敏な状態になっている腸を穏やかな状態に戻すためには、腸内環境に気を配ることも大切だといわれています。
下痢の症状が落ち着いたら、速やかにバランスのよい食事に戻して腸内の善玉菌を育てましょう。
<善玉菌を育てる食材>
- ・野菜や果物、海藻などに含まれる食物繊維
- ・オリゴ糖
- ・ヨーグルトや発酵食品
ビフィズス菌や乳酸菌を含む整腸剤やサプリメントを摂るのも効果的です。
乳酸菌サプリメントは継続して飲んでも副作用がなく、妊娠中や授乳中の方、幼児でも安心して飲むことができます。
2週間ほど継続すると効果が実感できるといわれていますので、いろいろと試して自分の腸に合ったものを続けてみましょう。
- 抗生物質が下痢を引き起こす?
- 腸内細菌のバランスが乱れると下痢になりやすくなります。
- 感染症などにかかって抗生物質を投与したあと、下痢や便秘に悩まされた方も多いのでは? あれは腸内細菌が一気に死んでしまい、腸内フローラのバランスが崩れるからなのです。
- 抗生物質や保存料などの摂取は必要最小限にとどめ、腸内環境のバランスを守りましょう。
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●管理栄養士からのコメント
冷たいものや脂っこいもの、香辛料などの摂りすぎは下痢の原因となりやすいので、控えることが大切です。
控えていても下痢になってしまう方は、自律神経が乱れていたり、他の病気が原因となっていたりする場合もありますので、病院の受診をおすすめします。
下痢が続くと、腸内の善玉菌が減ってしまう可能性があります。
腸内環境を整えるためには、野菜類や海藻、きのこ類などに含まれる食物繊維をしっかり摂ることや、大豆や牛乳、バナナなどに含まれるオリゴ糖を摂ること、また、ヨーグルトや味噌やぬか漬けなどの発酵食品に含まれる乳酸菌を摂ることが大切です。
管理栄養士プロフィール
◎稲尾 貴子
管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。パン作りが趣味の2児の母です。食欲旺盛なこども達のためにパンを作り始めたところ、パンの奥深さに魅了されています。
下痢についてのQ&A
- 牛乳を飲むと下痢をしてしまいます。
- 乳糖不耐症の可能性があります。あたたかくして飲んでも下痢を繰り返す場合は、摂取を控えてみましょう。
- お酒の摂取と下痢は関係あるのでしょうか?
- アルコールは腸に刺激を与えるため、大量に飲むと下痢につながります。飲むときはほどほどに。
- 下痢が長期間治らない場合はどうしたらいいですか。
- 一度病院を受診して、病気が隠れていないかどうかを検査してみるとよいでしょう。
- 下痢と同時に高熱が出ました。
- 食中毒などの可能性があります。病院を受診しましょう。
- 過敏性腸症候群です。下痢になったらと思うと外出するのが怖くなってしまいます。
- いざというときは薬でコントロールすることもできますので、医師に相談してみましょう。
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