砂糖って本当に健康に悪いの?身体のための選び方、使い方を学び本物の砂糖を知ろう。

砂糖は基本調味料の一つです。
話題のスイーツもロングセラーの和菓子も、その美味しさの決め手の一つは砂糖。

その砂糖が、最近では健康を害する悪者扱いされる傾向があります。
特に精製された砂糖は「白い悪魔」「癌の餌」などと評されることも。

「砂糖はできるだけ摂らないほうが、健康に良いって聞いたけど本当なの?」
「砂糖って料理にどう使えばよいの?」
「黒砂糖、ザラメ、三温糖、、色々有るけど何を買えばよいの?」

かわしま屋ではお客様から砂糖に対しての質問を良く貰います。
今回はそんな疑問を、昭和29年創業の砂糖問屋「竹内商店」の三代目経営者、竹内信一さんにぶつけてみました。

砂糖との上手な付き合い方の参考にしてください。

竹内信一さん

プロフィール

◎竹内信一(たけうちしんいち)

株式会社竹内商店 代表取締役

昭和29年以来一貫して砂糖を専門に扱う卸問屋の三代目経営者。

砂糖を敬遠する昨今の風潮に、もっと砂糖に興味をもってもらいたいという思いでオリジナルブランド「MARUKICHI SUGAR」を立ち上げる。砂糖に関する正しい情報を伝えるべく、調味料マイスターの講座の講師を務めるなど活躍中。

創業66年の砂糖問屋からみた
砂糖業界の問題点

私の会社は竹内商店という、昭和29年に日本橋の方で創業した砂糖専門の卸し問屋です。
私の祖父が創業し、おかげさまで今年66期を迎えました。
今の時代砂糖1本で商売している会社は日本中探しても何社もないと思います。

創業は昭和29年です。
私の祖父が創業した昭和29年は日本橋の小網町界隈に砂糖問屋が軒を連ね、十数軒はあった時代でした。
それから66年経ち、1軒しか残っていないないという状況です。

 

私どもは本当に小さな会社なのですが、砂糖1本にこだわって、低空飛行ながら66年やってきています。
その中で、皆さんはなかなか砂糖の本当の魅力を知らないという実感があります。

私どもはメーカーではないので、残念ながら砂糖は作っていません。
ただ、66年間砂糖を仕入れて販売しているので、様々なメーカーと付き合いがあり、目利きで色々な砂糖を選んできています。
製糖メーカーがなかなか話さない、砂糖の話をしっかり啓蒙していきたいと思っています。

竹内信一さん

砂糖が悪者にされている

・世界の砂糖の消費量について

まず最初に質問させていただきたいのですが、砂糖という言葉からどんなイメージを連想するでしょうか?
糖尿病の人は摂取できない、甘い、色が付いているものの方が健康的など、最近はネガティブなイメージを持たれていると思います。
砂糖自体が悪いものであるとか、摂取しすぎるとよくないという風潮が、日本の中に非常に強く存在しています。

2017年の日本の砂糖の年間消費量は210万トンで、一人当たりの年間消費量は17キロです。

砂糖の年間消費量

その程度ならば使っている実感があると思います。

残りの5分の4は業務用で使われている砂糖で、これを間接消費といいます。
パンや加糖のヨーグルト、チョコレートなどのお菓子には砂糖が入っています。
知らず知らずのうちに間接的に摂取している砂糖を加えると、年間17キロの砂糖を摂取しているということになります。

砂糖の正しい知識が広まらない理由

理由1.砂糖業界があまり小売に積極的ではない

砂糖の正しい知識が広まらない理由

国内の砂糖消費の5分の4は、加工食品に使われている砂糖で、業務用として流通している砂糖です。
5分の1はスーパーで売っているような小袋と呼ばれるものです。
圧倒的な量が業務用として流通しているので、砂糖を作っているメーカーはそちらにしか目が向いておらず、小袋の方に目は向いていません。

先ほど砂糖があまりいいものだと思われていないと述べましたが、その原因の一つは、業界が砂糖に関して啓蒙をほとんど進めていないということにあると思います。
後ほどお伝えしますが、砂糖には良い部分も沢山あります。

製糖メーカーや業界は啓蒙活動に一生懸命ではありません。
黙っていても業務用・加工用として出荷されていくからです。
実際、私どもも66年間業務用の砂糖の卸しを中心にやっています。
私どもの規模の会社でも年間数千トンくらい砂糖を販売していますが、全部加工用のものです。

メーカーは消費者の方向、いわゆるBtoCに目が向いていません。
あるメーカーが言っていましたが、小袋の流通量が5分の1しかないのに、小売用の商品に対するクレームは10倍あるそうです。
業務用は加工されてしまうので、小売の小袋に比べて圧倒的にクレームも少ないのです。

たとえば、小売用の小袋の場合、1キロの袋の中に少しでも黒い粒が見えただけですぐクレームになると思います。
販売量が少ない割に製造に手間がかかります。
事実、小売用の小袋製品を作っていないメーカーはたくさんあります。
業界全体が小売に対してあまり積極的ではありません。
そして、一般消費者へ砂糖の魅力を伝える機会もあまり設けていないという実態があります。

理由2.砂糖業界が国の保護政策下にある

精製糖

もう一つの理由は、国全体の制度の話です。
「さしすせそ」に含まれている調味料のうち、砂糖だけが国に管理されている事業です。
塩は二十数年前に専売制から自由化され、塩売り場は現在華やかになっています。

一方で砂糖売り場は、昔から1キロの平たい袋で売られていて、黒糖や三盆などが少しだけ売られているという状態が変わっていないと思います。
砂糖だけが未だに製造の自由化がされておらず、海外からも砂糖が入ってこないように国が管理しています。

海外は人件費が安いので砂糖も安いのですが、海外から砂糖を輸入すると、関税が328%もかかるようなシステムになっています。
そのため砂糖を輸入しようと思う人はほとんどいません。
農業政策として農家を保護しなければならないという大きな目標があり、砂糖を国の管理下に置いています。

砂糖を作るには、原料糖というものを使います。
サトウキビを絞った汁を粗く精製したようなものです。
ファインリカーと呼ばれるものになるまで完全に精製するのではなく、サトウキビを絞った汁から絞りカスなどをおおよそきれいにして、結晶缶という容器に入れ、熱をかけて結晶にしたものです。
完全に精製しきっていないので、茶色い汚れも入っています。

この原料糖も国が管理しており、各メーカーに前年の実績に応じて原料糖を割り当てています。
その割り当てをもらえないと砂糖は作れません。
現在、砂糖製造業は日本に13メーカー、12工場稼働していますが、それらのメーカーだけでマーケットを回している形になっています。

例えば私の会社に機械を入れてもっといい砂糖をつくろうと思っても、原料糖の割り当てをもらえないので、砂糖は作れません。
こういった国の保護政策も、砂糖業界が砂糖の知識の啓蒙をすすめる必要を感じていない原因の一つだと思います。

加工品が主で小売に目が行っていない、そして国の政策でも保護されている。
この二つの理由によってなかなか啓蒙が進んでいないというのが、私の実感です。
逆に言うと啓蒙する必要がないということです。
啓蒙しなければ正確な知識は伝わりません。

砂糖はつい最近まで高級品だった

砂糖の正しい知識が広まらない理由

砂糖が日本に入ってきたのは8世紀、奈良時代です。
鑑真というお坊さんがお茶などを持ってきた中に砂糖も入っていたと言われています。
持ってこられた当時は薬として病気の治療に珍重されていたと言われています。

15世紀、室町時代になった時に、茶の湯が流行したことに合わせ、和菓子をお茶と一緒に楽しむという文化が芽生え、そこに砂糖が使われるようになってきました。
八代将軍足利義政がお茶の席で砂糖羊羹を振る舞ったという記述があるそうです。
当時、砂糖は一部の特権階級の人たちだけが楽しめる貴重品・高級品でした。

広く庶民が口に出来るようになったのは19世紀、明治時代です。
明治時代になるまで、一般には流通しませんでした。
8世紀から19世紀までの間、ずっと一部の特権階級の人たちだけが食べられる特別なものでした。
戦で功績を挙げた人に対する褒美の中のひとつが砂糖だったと言う話もあるそうです。

砂糖がどうやってつくられているのか

砂糖の製造方法の話に入っていきたいと思います。
砂糖の製造方法は意外と知られていません。

砂糖の原料1サトウキビ

サトウキビ

砂糖はほとんどサトウキビから作られています。
サトウキビは熱帯の気候を好む植物なので、日本より南で作られています。
一大栽培国は日本の真裏のブラジルです。
日本の近くだとタイです。
あとは南半球のオーストラリアが一大栽培国です。

サトウキビ

生育の良いサトウキビは3メートルくらいの高さになり、節のところに糖分を蓄えています。
蓄えていってると言って10数%の糖分しかありませんが、砂糖全体の7割がサトウキビから作られています。

砂糖の原料2てんさい糖

てんさい糖

あとの3割は甜菜から作られています。
サトウキビとは逆に涼しい気候を好む植物で、別名サトウダイコンやビートと呼ばれています。
日本では北海道だけで作られています。
世界ではヨーロッパやロシア、北米の涼しい地域で作られています。
サトウダイコンという別名がついているので大根の仲間と思われがちなのですが、アカザ科という法蓮草と一緒の仲間の植物です。

成長すると1キロくらいになります。
葉やしっぽには糖分を蓄えてないので、真ん中の白く良い部分だけを使います。
この部分から作られる砂糖がサトウキビ以外の3割です。

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国内のサトウキビで作られたお砂糖は、ほとんど輸入した原料糖から出来ている

原料糖

先ほど述べた日本の消費量210万トンのうちの7割、大体145万トンがサトウキビから作られた砂糖で、65万トンくらいが甜菜から作られた砂糖です。
甜菜から作られた65万トンの砂糖は、全て北海道でとれた甜菜から作られています。
日本で流通している甜菜糖と呼ばれる砂糖は全て国産の砂糖になります。

一方、サトウキビから作られた145万トンの砂糖うち、沖縄で取れたサトウキビから作られる砂糖は15万トンしかありません。
残りの130万トンは海外から原料糖を輸入しています。
日本で流通しているサトウキビで作られた砂糖は、ほとんど海外から輸入された原料糖から作られた砂糖です。
スーパーで買う砂糖は海外のサトウキビの砂糖だと思っていただいて構いません。

砂糖の製造工程

原料糖は砂糖を作る原料なので、スーパーに売っているものではありません。
メーカーが海外から輸入してきて砂糖にしてしまうので、一般の目に触れる機会がなかなかありません。
今日はいい機会なので原料糖を持ってまいりました。

原料糖

色が違うと思います。
この原料糖から砂糖を作っていきます。

原料糖

まず原料糖をお湯に溶かします。
そうすると真っ黒な糖液になります。
それを精製します。
元々サトウキビにはショ糖分と呼ばれる十数%の糖分を蓄えているのですが、そのショ糖分を高純度で抽出する作業が精製という作業です。
これが最終的な目的です。

先ほど原料糖は汚れていると述べましたが、雑分やミネラル分がたくさん含まれています。
ただ、精製という作業においては、ミネラル分すら必要のないものになります。
ミネラルは良いものなのですが、精製では邪魔なものになります。
なぜならば、ショ糖分だけ抽出したいからです。

黒い糖液の色が段階を経ると薄くなっていきます。
石灰を入れて二酸化炭素を吹き込むと炭酸カルシウムという物質が出来ます。
その炭酸カルシウムが出来るときに、糖液の中に浮遊しているゴミなどを全部抱き込んで沈殿します。
そこで一段と綺麗になるので、その上澄みをとります。

次は、活性炭を通したりフィルターを通したりして、色や他のミネラル分をとっていきます。
最終的にはイオンレベルの雑分まで全部取り除き、純水に近いような無色透明の液体が出来上がります。

原料糖

この出来上がったものをファインリカーと呼んでいますが、ファインリカーになるまで不要なものを取り除いていくという作業が精製です。
このファインリカーの中には純度の高いショ糖分しか残っていません。
色も香りもありません。ミネラルもありませんし、当然ゴミはありません。

以上がサトウキビから砂糖を作る作り方なのですが、甜菜から砂糖を作る作り方もサトウキビとほとんど一緒です。
ただ唯一、サトウキビは原料糖から砂糖を作るのですが、甜菜は原料糖にしないという違いがあります。
北海道でしか甜菜糖は作っていません。

北海道に三つ大きな製糖工場があります。
甜菜を刈り取ったら工場に持ち込み、真ん中の白く良い部分だけを取り出してスライスします。
スライスしたものをお湯に入れて煮出します。
煮ると甜菜の中に含まれていた糖分がお湯の中にどんどん抽出されるので、そこからは先ほどの工程と同じような段階を踏み、最後はファインリカーにします。

して同じように結晶缶で炊き、結晶にしていきます。

各製糖メーカーがトータルで130万トン分の原料糖を輸入してくるので、工場は港の近くにあった方が都合が良いです。
そのため、千葉の港や横浜の大黒ふ頭に大きな工場があります。
そういったメーカーは必ず横に船が着けられる港を持っています。
ちなみに、原料糖は糖分が98.5%以下になるので、砂糖にかかる328%の関税はかかりません。

精製糖(分蜜糖)と含蜜糖

精製糖(分蜜糖)と含蜜糖

精製糖と含蜜糖の違い

砂糖は精製糖と含蜜糖という2つのカテゴリーに分けることができます。
精製糖を別の言い方にすると分蜜糖です。糖遠心分離機で蜜分を外にふりだしています。
この作業は分蜜工程と呼んでいますが、それをやることが分蜜糖の特色です。
精製した砂糖は分蜜糖と言い換えることが出来ます。含蜜糖は分蜜していません。

精製糖は別名を分蜜糖といいますが、含蜜糖は文字通り蜜を含んだ糖です。
精製糖の分類には、上白糖、グラニュー糖、三温糖などがあります。
含蜜糖は黒糖や和三盆などが有名です。含蜜糖は精製していません。

まり、溶かすところまでは一緒ですが、ファインリカーまで精製していない状態で砂糖にしています。

 

・精製糖ができるまで

製糖メーカーは自分たちのことを洗濯屋だとよく言うのですが、汚い原料糖をいかに綺麗にして、白くピュアな状態にもっていくかがメーカーの精製の作業です。
純粋なショ糖分だけのファインリカーを、今度結晶缶というものに入れ、70度くらいの温度でブクブク炊きます。

そうすると水分が飛んでだんだん結晶が現れてきます。
ドロっとした糖液の中に結晶ができ、混在した状態を白下と呼びます。
ただ、ずっとその温度を保っても、完全に結晶になる事はありません。
そのため、ドロっとした糖液と結晶を分離する必要があります。

遠心分離機と呼ばれる脱水機のようなものにかけると、結晶にならなかった糖液は外に振り出され中に結晶だけが残ります。
その結晶をクーラーやドライヤーで乾かし、取り出したものがグラニュー糖や上白糖というものになります。

精製糖はどれも品質に差は無い

精製糖

自然作物や植物は、光合成をすることによってショ糖分を溜め込んでいます。
ショ糖分を溜め込んでいる植物を使って砂糖を作っています。
そのため、論理的には光合成が出来る植物であれば砂糖は作ることができます。

長ネギでも5%くらいはショ糖分があるので、長ネギを大量に作れば砂糖も作れると思いますが、ショ糖分を十数%溜め込んでいる植物を使ったほうが効率が絶対良いので、長ネギから砂糖を作るような事をする人はいません。
そのため、ショ糖分を多く蓄えている甜菜とかサトウキビから砂糖を作っています。

私たちの考え方としては、ファインリカーにしてしまえば品質の差はありません。
データを見ても、グラニュー糖はA社とB社とC社が作っても全く一緒です。
そのため、業界では3社が共同で生産工場を作り、ひとつの工場で3社のグラニュー糖を作っているという現状があります。
3社共同生産工場と呼ばれていますが、中身は一緒なのに袋だけ変えて3社が別々に販売しています。

そういったことが業務用の世界では普通にやられています。
先ほど述べた5分の4の業務用の砂糖を使っているメーカーは、A社・B社・C社のグラニュー糖のどれを使っても品質には全く変わりがありません。

三温糖は精製された砂糖の一つ

三温糖

・三温糖ができるまで

遠心分離機で外にふりだした糖液にはまだ糖分が残っているので、もう一度リサイクルします。
結晶缶に戻し、また70度くらいまで温度を上げます。
そうすると再び結晶が出来ますが、全てが結晶にはならないので、また遠心分離機にかけて糖液を飛ばします。
結晶は製品にしますが、外に出た糖液にまだ糖分が残っているので、三度結晶缶に入れてリサイクルします。

こういった作業を3回から4回やっていくと、カラメル化とよばれる砂糖が茶色くなる現象が起きます。
そのため、糖液がどんどん茶色くなっていき、茶色い糖液から出来た結晶も茶色くなります。
それが三温糖です。

一般に小売されている砂糖には茶色い砂糖と白い砂糖がありますが、茶色の方もかなり売れるそうです。
茶色い砂糖の中には、カラメルで色を調整しているものもあります。
そういう砂糖は裏の成分表にカラメル色素と書いてあると思います。

 

・三温糖の種類

三温糖も先ほど述べたようにカラメル化させて結晶にした三温糖と、色を統一するためにカラメルを少しいれて茶色くしている商品があります。
スーパーで三温糖を買うときに、商品の裏面を見てカラメルという記載があれば、少なからず色を着けていると思っていただいて良いと思います。

三温糖はミネラルが豊富だから体にいいと思っている方が多いですが、実は、三温糖はグラニュー糖や上白糖と同じファインリカーから出来ています。
3、4回温度をかけたら茶色くカラメル化してしまったというもの三温糖です。
あえて語弊のある言い方をすると、出がらしのようなものです。
そのため、残念ながら三温糖にはミネラル分はありません。

茶色いとナチュラルで体に良さそうというイメージがあると思います。
三温糖は独特のカラメル臭があるので、煮物などに使うとカラメル臭が煮物にほっこりとした味わいを与えます。
そのため、三温糖を煮物に使う意味はありますが、残念ながらミネラルが豊富という事はありません。

含蜜糖の魅力

黒糖

・ミネラルなど栄養成分が豊富

含蜜糖は、水に溶け込まないしぼりカスやゴミなどを細かいメッシュのフィルターに何回も通して取り除いて作ります。
ただ、水に溶け込んでいるミネラル分や香り、色はうまく残すことができます。

徹底的に汚いものをろ過で取り除き、綺麗になった糖液を攪拌しながら熱をかけ続けると、水分が飛んでどろどろした液体になっていきます。
そして、最後は瞬間的に冷却すると、蜜分も含めてサラサラの粉になります。
そのため、含蜜糖と呼ばれています。含蜜糖には精製糖とは違った味わいがあり、ミネラルも残っています。

 

・やさしい甘さとコクのある風味

先ほど精製糖には色がないと述べましたが、香りもありません。
白い砂糖やグラニュー糖の袋を開けて匂いを嗅いでも甘い香りはなく、全く匂いがないはずです。
精製糖は匂いすらも取り除きます。
含蜜糖は甘い匂いなど、それぞれ別々の匂いがします。
そういったものを残した形で作っています。

黒糖は一番自然に近い砂糖です。サトウキビを絞り、布巾などでカスを取ります。
残った糖液を直火などでぐつぐつ煮て、最後に石灰を入れて冷やし固めます。
そして、固めたものをそのまま切って売っています。

他の含蜜糖とは比べものにならないほどミネラル分が多いのですが、その分エグ味などのネガティブな味わいもあります。
料理に使えなかったり、たくさん食べられなかったり、酸っぱかったり、塩辛かったり、そういった味が黒糖には含まれていますが、一番自然に近いのはやはり黒糖です。

含蜜糖の上手な使い方

含蜜糖の上手な使い方

・組み合わせる食材によって味わいが変わる

今日紹介する本和香糖は、沖縄の原料糖だけを使って作った含蜜糖です。
そのため、原料糖の色に近い色をしています。
少しミルク感も感じる、お菓子のような複雑な味わいがするはずです。
砂糖は本来これだけ味わいが違うものです。
精製してしまうと、ただ甘いだけになってしまいます。

シンプルに甘さを添えるときに精製糖を使うのは良いと思いますが、含蜜糖を知ると砂糖の味わいにあわせて、組み合わせる相手を選んだり、使いわけたりする選択が広がってくると思います。
例えば、本和香糖の使い方として私どもがオススメするのは、クッキーなどのミルク系のお菓子に使ったり、酢の物に少し入れたりする使い方です。

実際、本和香糖は、無印良品さんがとても気に入ってくださっている砂糖で、去年の9月から無印良品のPBになり、全店舗販売していただいています。
無印良品のカフェで、本和香糖のソフトクリームやチーズケーキが売られています。
本和香糖の名前を出していただいています。
やはり、そういったミルク系のものに、非常に合うと思います。

Q&A

竹内さんにとって良い砂糖とはどのようなものでしょうか。
私は良い砂糖、悪い砂糖という区別はしていません。
それぞれ作り方の違いと異なる役割があり、それは良いとか悪いとかの基準で一概に区別できるものでは無いと思っています。
「白い砂糖は身体に悪いと聞きますがどうなんですか?」「茶色い砂糖は健康に良いんですか?」という質問をいただく事も非常に多いです。

良いか悪いかは聞いた話で選び分けるのではなく、それぞれの砂糖の製造方法や特徴・成分をしっかりと知れば自分の用途にあった砂糖が選べるはずです。
そういったことが伝わっていないので、良い・悪いという単純な判断基準になってしまうと思います。
一概に良い砂糖、悪い砂糖と決めてお答えすることはできません。

茶色い砂糖は健康的で、白い砂糖は不健康というイメージをもっている人が多いというお話がありました。
「白い砂糖=精製糖」、「茶色い砂糖=含蜜糖」という分け方をされる方が多いと思います。
含蜜糖(茶色い砂糖)と精製糖(白い砂糖)で健康に与える影響に違いはあるのでしょうか?
健康に良い、健康に悪いという観点で言えば、「とり過ぎは身体に悪い」というのはすべての食品について言えることだと思います。
それは砂糖も同じではないでしょうか。
ただし、砂糖を選択する上で、「国産にこだわりたい」という事であれば、甜菜糖を選んだほうが良いでしょうし、「ミネラルを含んだものが欲しい」というのであれば精製糖ではなく含蜜糖を選んだほうが良いと思います。

白い砂糖は健康に悪い、茶色い砂糖は健康に良いと断言できれば分かりやすいですし、納得しやすいのでしょうが、実際はそれほど単純なものでは無いと思っています。
ちなみに、世間では茶色くて健康に良さそうなイメージをもっている方が多い三温糖は精製された砂糖です。
ミネラル分は含まれていません。

黒砂糖、ザラメ糖、和三盆、てんさい糖、きび糖、オリゴ糖、洗双糖、マスコバド糖、三温糖、上白糖、グラニュー糖など色々な種類がありますが、何を基準に選べばよいのでしょうか?
「この砂糖は良い・悪い」「この砂糖は使う・使わない」のゼロイチの発想ではなく、砂糖にはそれぞれの特徴があるので、それらを踏まえた上で、作る料理に合わせて砂糖を選ぶべきだと思います。
塩の場合は、感度の高い人達も含め、多くの方がすでにやっているはずです。
それぞれの特徴を知ることで、目的に合わせた選び分け、使い分けができるのではないかと思います。
それが上手な使い方ではないかと思います。

あるとき、沖縄では黒砂糖を何に使っているかという話になりました。
沖縄ではラフテーや豚の角煮、黒糖の羊羹などに使われています。
「向こう側が強いものと組み合わせて使うのが良い」と言われています。
そういう意味では、何にでも使えるけど「コーヒーには入れない」とか「紅茶には絶対合わない」といったことははっきりしていると思います。

健康に良いか悪いかという議論はなかなか難しいと思います。
何を軸にして語るかが問題です。
先程も述べましたが、例えばミネラルが身体に良いから、ミネラルが含まれてるほうが健康に良いという前提で話をするのであれば、含蜜糖のほうが健康に良いという話になるかもしれません。
しかし、前提条件がないと、分蜜糖と含蜜糖のどちらが健康に良いかと言われても、どちらも健康には悪くないという結論になってしまいます。

竹内さんが今注目している砂糖の生産者様はいらっしゃいますか?

・宮古島でサトウキビの有機栽培

宮古島に有機でサトウキビを育てようとしてる人が作る砂糖が本当においしいです。
ただ、その人は一人でオルタナティブファームをやっているので、一人で六次産業をしなくてはいけません。
彼はもともと京都の自動車メーカーにいた技術者でした。その方が作る砂糖が本当においしいです。

栽培は有機ですが、そこから先の加工は委託しているので、有機の認証をとることができていません。
誰かがお金出してくれたり、一緒にやってくれたりする人がいて、大々的にできれば、有機の認証も取れて面白いことができるかもしれませんが、凄く高価なものになってしまっています。
ジャパンメイドのオーガニックシュガーにどれだけニーズがあって、どれぐらいの商業ベースに乗るかが問題になってきます。

・熊本で黒糖をつくるNPO法人

熊本で黒糖を作っているNPO法人があります。
昔から熊本で細々と黒糖を作っています。

そこは有機ではないのですが、化学肥料や農薬、殺虫剤を使わず、竹からとれる竹酢液を使っています。
障がい者を活用して、地道にシュッシュッとかけています。
本当は根元から刈れば、サトウキビからたくさんの糖分が取れるのですが、端はおいしくないので、中心部しか使いません。
そういう理由もあって、手刈りでやっています。

そこは障がい者の人材を活用するなど、様々な取り組みをしています。
黒糖なのであまり売れません。たとえ地元のものでも、土産物で黒糖を買う人は少ないです。
買う人がいないとは言いませんが、それほど馬鹿売れはしません。

なかなか高くは売れませんが、障がい者の人達に少しでも還元していくために、高く売れるような仕組みを作り、利益が取れるようなサイクルに持って行くという取り組みをやっています。
具体的には、私たちは成形する技術をもっているので、その黒糖を『くまモン』の形に成形して『くまもとん黒糖』という商品を作りました。
それを土産物として空港などで500円くらいで販売する予定です。

この2つが具体的なケースです。
他にも今後おもしろい動きが出てくると思っています。
砂糖の正しい知識の啓蒙と並行して、面白い砂糖商品も出てくると良いと思っています。

お砂糖の上手な選び方や、付き合い方をとてもわかりやすく教えていただきました。
減砂糖が叫ばれていて久しく、何となくお砂糖を敬遠してきた。
イメージで何となく白砂糖を悪者扱いしていた。
そんな方々もお砂糖の正しい知識に触れて、上手にお砂糖と付き合ってみてください。

お忙しい中、お時間をいただきました竹内信一さんありがとうございました!


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この記事を書いた人

東京都出身。酉年生まれ。2児の父。趣味は読書と散歩と足のつぼ押し。
洗濯物をたたむのが苦手。煮豆と井上陽水が好き。