梅酢とは?作り方や使い方、効果をわかりやすく解説
醤油、みりん、酒、酢。調味料入れのレギュラーメンバーの影で、梅酢はちょっと「使いづらい調味料」と思われているかもしれません。「梅干し作りでできた梅酢、棚にしまいっぱなし」というのもよく聞く話です。
しかし、梅酢は古くから「調味料のエース」であり、調味以外の使い道もいろいろ。おまけに多様な効果効能が期待できるので、活用しない手はありません!
この記事では、梅酢の健康効果と使い方、レシピについて詳しくご紹介します。
記事の監修
管理栄養士
安藤ゆりえ
老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。
梅酢とは
梅酢とは、梅を塩漬けにしたときに梅から出てくるエキスのことです。梅干しの副産物である梅酢は、紀元前600年頃の中国の歴史書『書経』にも登場するなど、歴史の古い調味料です。
料理の味加減を指す「塩梅」という言葉は、塩と梅酢が語源だそう。「塩と梅酢を合わせることでちょうどよい味加減になる」という意味の言葉が残されています。
古くから日本で愛されてきた梅酢について、もう少し深堀りしていきましょう。
赤梅酢と白梅酢はどう違う?
梅酢は次の2種類があります。
・赤梅酢
・白梅酢
梅干しを漬けたとき、最初に上がってくるのが「白梅酢」。白梅酢に赤シソを漬け込み、赤く色づいたものが「赤梅酢」です。
「赤梅酢」にはシソの香りと成分が溶け込んでおり、薬効の高いと言われる赤シソの成分も含み、食材に着色したいときにも使えます。
一方、料理に色をつけたくない場合に活躍するのが白梅酢です。梅と塩だけのシンプルな味で、梅の香りが楽しめますよ。お好みで使い分けてみてください。
梅酢の効果・効能
梅と塩でつくる梅酢ですが、ほかの酢と比べて異なる効果があるのでしょうか?梅酢の栄養素に注目し、どのような効果があるのか確認していきましょう。
効果・効能1 ダイエット効果
梅酢にはダイエットに効果的な成分がたくさん含まれています。まず、梅酢とカルシウムが結び付くと、脂肪の蓄積を防ぐという研究結果があります。カルシウムを含む牛乳やチーズなどの乳製品や小魚などを梅酢と一緒に摂ることで、脂肪の吸収が抑えられます。
また、梅酢に含まれる梅ポリフェノールは食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。血糖値が上がりすぎると、インスリンというホルモンが分泌されて脂肪が増えやすくなってしまうのです。梅酢を食事の前に摂ることで、血糖値の急激な上昇を防ぎ、ダイエットに役立ちます。
効果・効能2 食欲増進・消化促進
梅酢には食欲を高めて消化を助ける働きがあります。梅酢は酸味が強いので、唾液や胃液の分泌を促します。唾液や胃液は消化酵素を含んでいるので、食べ物をよく噛んで唾液と混ぜることや、胃液で食べ物を分解することが大切です。梅酢はこれらの過程をスムーズにすることで、食欲を増進させ、消化不良や胃もたれなどのトラブルを予防します。
効果・効能3 腸内環境の改善
梅酢に含まれる梅ポリフェノールは腸内細菌のバランスを整える効果があります。腸内細菌は善玉菌と悪玉菌に分けられますが、善玉菌は免疫力や代謝を高めたり、ビタミンやアミノ酸などの栄養素を作ったりする働きがあります。一方、悪玉菌は有害物質を作ったり、便秘や下痢などの原因になったりします。梅ポリフェノールは善玉菌の増殖を促し、悪玉菌の増殖を抑えることで、腸内環境を改善します。
効果・効能4 高血圧の予防
梅酢に含まれるクエン酸やクエン酸塩は血圧を下げ、血液中のナトリウム(塩分)を排出する働きがあります 。ナトリウムは水分を引き寄せる性質があるので、血液中に多く含まれると血液の量が増えて血圧が上がります。クエン酸やクエン酸塩はナトリウムを尿として排出することで、血液の量を調整し、血圧を下げるのです。
また、クエン酸やクエン酸塩は血管を柔らかくする効果もあります。血管が硬くなると、血液の流れが悪くなって血圧が上がります。梅酢の摂取は血管を柔らかくすることにつながるので、血液の流れを改善し、高血圧の予防に役立ちます。
参考文献:日本栄養・食糧学会誌「梅酢抽出物が高コレステロール食飼育脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットの血圧と脂質代謝に及ぼす影響」
効果・効能5 免疫力アップ
梅酢に含まれる梅ポリフェノールは免疫細胞を活性化させる効果があります。免疫細胞はウイルスや細菌などの外敵から体を守る働きがありますが、ストレスや加齢などで働きが低下することがあります。梅ポリフェノールは免疫細胞の働きを強化するため、感染症やアレルギーなどの予防に役立つと考えられます。
参考文献: 日本防菌防黴学会誌「梅酢ポリフェノールの抗ウイルス活性とその応用(呼吸器感染症予防)に向けた試み」
効果・効能6 防腐作用
梅酢には防腐作用があり、食品の保存に役立ちます。梅酢に含まれる有機酸や梅ポリフェノールは細菌の増殖を抑える効果があります。細菌は食品の腐敗の原因になりますが、梅酢は細菌の活動を阻害することで、食品の鮮度を保ちます。そのため食中毒の予防につながるとも言えるでしょう。
効果・効能7 美肌効果
梅酢に含まれる有機酸や梅ポリフェノールは、肌の水分保持能力を高める効果があります。肌の水分保持能力が高まると、肌の乾燥やシワを防ぎ、ハリや弾力を保ちます。また、梅酢に含まれるビタミンCは、メラニン色素の生成を抑える効果があります。メラニン色素の生成を抑えることで、シミやそばかすを予防し、美白効果が期待できます。さらに、梅酢に含まれるクエン酸は、老廃物の排出を促進する効果があります。老廃物の排出を促進することで、肌荒れやニキビの改善、アンチエイジング効果が期待できます。
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梅酢の作り方
梅酢は、梅を塩で漬けてつくります。つまり、梅干しを作る際に梅酢も一緒にできるのです。具体的な作り方は、容器に梅と塩を交互に入れ、蓋に重しをして梅酢が上がるまで置いておくだけです。梅酢だけが欲しい場合は、漬けた梅を干さずに「梅漬け」のままにしておけばOKです。
赤梅酢の場合は赤シソのアクをとって入れる工程が加わります。手作り梅酢のフレッシュでフルーティーな香りは格別なので、ぜひ作ってみてくださいね。
梅酢の保存方法は?
梅酢は、次のことに気をつけて保存しましょう。
- 直射日光を避ける
- 塩分20%で漬けた場合は常温保存OK
- 市販の減塩梅酢は冷蔵庫で保管する
- 酸で侵食される恐れがあるので、金属やプラスチック製の保存容器の使用は避ける
梅酢を使ったレシピ
食欲を刺激してご飯をおいしく感じさせてくれる梅酢は、マンネリ化しがちな食卓に変化をもたせてくれる優れもの。色が綺麗なので漬物に最適で、酸の効果で骨まで柔らかくしてくれるため、鶏の手羽元や煮魚などの料理とも相性がよいです。ぜひ気になるレシピを作ってみてください。
梅酢ドレッシング
材料
- 梅酢 大さじ 2
- しょうゆ 大さじ 1~2
- お好みのオイル 大さじ 2
- 刻んだシソやすりごま 適量(お好みで)
作り方
- 材料をすべて混ぜ合わせます。乳化してトロッとしてきたら完成です。
腸活!ひじきの梅酢サラダ
材料
- 乾燥ひじき 15 g
- 玉ねぎ 1/2 個
- オリーブオイル 大さじ 1
- 梅酢 大さじ 1
- 調理酒 大さじ 1
- しょうゆ 適量
作り方
- ひじきをぬるま湯で戻す(約10分)。ひじきが戻ったら、ザルにあげ、水を切る。
- 玉ねぎを薄切りにする。
- フライパンにオリーブオイルを入れて熱し、玉ねぎを加えしんなりするまで炒める。
- ひじきと梅酢としょうゆを加え、3分くらい炒めればできあがり。
コツ・ポイント
梅酢に含まれる有機酸が整腸効果を後押ししてくれる腸活レシピです。
梅酢の福神漬け
材料
- 大根、きゅうり、ニンジン、しいたけ、レンコンなど 適量(お好みで)
- シソの実 適量
- ショウガ 1 片
- 唐辛子 1 本
- ★昆布 5 cm
- ★しょうゆ 100 cc
- ★みりん 100 cc
- ★てんさい糖 大さじ 1~2
- 梅酢 大さじ 1
作り方
- 野菜は乾燥させると縮むので大きめに切ります。
- 1をザルに広げ、1日干します。
- 鍋に★の材料を入れ、沸騰させます。
- 3に干し上がった野菜とショウガを入れ、火を止めて冷めるまでおいておきます。
- 4にシソの実、唐辛子を入れて清潔な瓶に移します。
- 冷蔵庫に2日ほど入れておき、味がしみたら完成です。
梅酢ごはん
材料
- 白米 2 合
- 梅酢 大さじ 4
- 水 適量
- 白ごま・しらす・シソ 適量(お好みで)
作り方
- お米をといで、いつもと同じ水加減になるまで梅酢と水を入れます。
- 20分ほど浸水させてから炊き上げます。
- お好みで白ごまやしらす、シソなどを混ぜ込んで完成です。
コツ・ポイント
鶏むね肉の梅酢和え
材料
- 鶏むね肉 1 枚
- きゅうり、ニンジン、レタス、水菜、大葉など好みの生野菜 適量
- ★めんつゆ 大さじ 1
- ★梅酢 大さじ 1
- 酒 少々
作り方
- 鶏むね肉は皮をとり、フライパンで酒蒸しにします。
- 1を食べやすい大きさに手で裂き、★を合わせた調味液に漬けておきます。
- 生野菜を一口大に切り、食べる直前に2と和えてできあがりです。
サンマの梅酢煮
材料
- サンマ 4 尾
- 梅酢 50 cc
- 酒 50 cc
- しょうゆ 大さじ 1
- 水 100 cc
作り方
- サンマは下処理して1尾を2~4切れほどに切り分けます。
- 圧力鍋にサンマと調味料をすべて入れ、蓋をして強火にかけます。
- 圧力がかかったら、弱火で10分加熱し、火を止めます。
- 圧力が抜けたら、崩れないように注意してサンマを取り出します。
- 残った調味料を好みの濃度まで煮詰め、サンマにかけたら完成です。
コツ・ポイント
梅酢としょうゆで煮る簡単レシピで、さっぱりと食べられるそんなレシピになっています。お好みで柚子こしょうなどをプラスするのもおすすめです。
梅酢ドリンク
材料
- 梅酢 大さじ 1~2
- 水や炭酸水など 100 cc
作り方
- コップに梅酢を入れます。
- 水を注ぎ混ぜ合わせます。
- 氷を入れて完成です。
レシピで使った梅酢
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梅酢の料理以外の使い方
さまざまな効果が期待される梅酢。実は、食品として利用する以外にも、さまざまな用途があるのです。特におすすめの5つの使い方を紹介します。
梅酢の使い方1 梅酢でうがい
10倍程度に薄めた梅酢でうがいをします。飲み込んでしまっても害はないので、妊婦さんや小さなお子さんでも安心です。
梅酢の使い方2 梅酢スプレー
外出先で使いたいという方には、梅酢を薄めた液を入れたスプレーにするのがおすすめ。喉がイガイガするときや風邪をひきたくないときにどうぞ。
梅酢も薄めるため傷みやすいので、小さめの容器に入れて早めに使い切ってください。
梅酢の使い方3 まな板の消毒
魚などを扱ってまな板ににおいがついてしまった、というときにも梅酢が使えます。まな板に梅酢の原液をかけ、しばらく置いてから熱湯で洗い流すとしつこいにおいもさっぱり。
赤梅酢を使うとまな板に色がついてしまう可能性があるので、木製のまな板には白梅酢を使ってください。
梅酢の使い方4 掃除
梅酢に含まれるクエン酸には、水垢をきれいにする作用があります。シンクなどの気になる部分にキッチンペーパーを敷き、そこに梅酢を垂らして数時間置いておきます。その後こすると汚れがきれいにとれますよ。
まな板と同じく色のつきやすい素材だと着色してしまいますので、白梅酢を使うのが無難です。
梅酢の使い方5 おにぎりの手水
おにぎりを握るときの手水に梅酢を使うと、ほどよい塩味がつき、殺菌効果でおにぎりが傷みにくくなります。赤梅酢を使うとほのかにシソが香って食欲をそそります。
梅酢についてのQ&A
- 梅酢とは何ですか?
-
梅酢とは、梅を塩漬けしたときにできるエキスのことです。梅と塩だけでできる「白梅酢」と、白梅酢に赤しそを加えて作る「赤梅酢」の2種類があります。
- 梅酢にはどんな効果や効能がありますか?
-
梅酢には、ダイエットや消化促進、高血圧の予防、免疫力アップ、防腐、美肌などの効果や効能があります。これらは梅酢に含まれるクエン酸や有機酸、梅ポリフェノールの働きによる作用です。
- 梅酢の作り方を教えてください。
-
梅酢の作り方は簡単です。まず、完熟した梅を洗って水気をふき、塩をまぶしてビンに入れます。次に、ビンの口をふさいで日陰に置き、1か月ほど置きます。すると、梅からエキスが出てきて梅酢ができます。そこに赤しそを加えると赤梅酢になります。
- 梅酢はどんな料理に合いますか?
-
梅酢は、サラダや和え物、漬物、炒め物、スープなどの料理に使えます。また、水や炭酸水で割って飲むのもおすすめです。さっぱりとした味わいなので食欲が減退しやすい暑い季節にぴったりですよ。
- 梅酢はどれくらい保存できますか?
-
20%ほどの塩分がある一般的な梅酢は、冷暗所で保管すれば長期間保存できます。ただし、次第に退色し、風味も抜けてしまうので、おいしくいただくなら早めに使い切るのがいいでしょう。
●管理栄養士からのコメント
梅の様々な効果がぎゅっと詰まった梅酢。
醬油味ばかりなどマンネリ化する献立の中でも梅酢を使用することで味わいに華を添えてくれます。
きゅうりとわかめの酢の物でもいつもの酢の代わりに梅酢を使うだけでバリエーションも広がります。
また、インフルエンザが流行する時期には5倍に希釈してスプレーボトルに入れてお出かけ前にのどにシュッと吹きかけます。
強い抗菌作用が期待でき、わたしも生まれてこのかたインフルエンザにはかかったことがありません。料理に使うだけでなく効果万能な梅酢は健康の維持のためにも大変おすすめですよ。
管理栄養士プロフィール
安藤 ゆりえ
老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。
2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。
また「食を見直すならまずは毎日使う調味料から」をコンセプトに地元愛知県三河のみりんや味噌などの伝統的な調味料の素晴らしさを伝えるセミナーなども開催。
食や栄養に関すること全般ですが特に
・調味料について(みりん、味噌や醤油などの製法やどんなものを選ぶと良いかなど)
・体に優しいスイーツの選び方、作り方
・ダイエットレシピの考案
・時短レシピの考案を得意としています。
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