カルダモンの効能|使い方のポイント・種類と香りの特徴もご紹介
カレーに数粒加えるだけで、我が家のキッチンを異国の食堂に変えてくれる魔法のスパイス、カルダモン。
そのエキゾチックな香りは多くの人々を魅了し、「スパイスの女王」とも呼ばれて、大昔から今日にいたるまで、世界各地で愛好されています。
今回は、そんなカルダモンに秘められた効果・効能と使い方、カレーをはじめとする香り高いカルダモン・レシピをご紹介します。
カルダモンとは
カルダモンは、ショウガ科の「ショウズク」のさやと種を乾燥させた香辛料。
元となる植物はショウズク以外にも何種か存在しますが、スパイスとしてはまとめて「カルダモン(英語:cardamon)」と呼ばれています。
主な生産国はグアテマラとインドですが、栽培が難しく、サフラン・バニラに続いて価格の高いスパイスです。
カルダモンは、1つのさやの中に黒い種を10粒ほど内包しており、強い香りをもつのはその種。さやごとや種を粉にして、さまざまな料理に使われます。
薬としても古い歴史をもつカルダモン。紀元前4世紀頃のインドの医学書『Ayurvedic』にもその効能が記載されています。
日本でも小豆蒄(ショウズク)という生薬として使われ、漢方薬の原料になっています。
グリーンカルダモンとブラックカルダモン
「カルダモン」はショウガ科の複数の植物から採取されたスパイスをまとめた名称であり、いくつかの種類が存在します。
大きく分けるとグリーンとブラックの2種類で、それぞれ特徴が異なります。
<グリーンカルダモン>
日本で流通しているのは、ほとんどがこのグリーンカルダモン。
ブラックよりも実が小さく、癖のないすがすがしい香りです。
「ホワイトカルダモン」はこのグリーンカルダモンが漂白されたもの。
香りや味もグリーンカルダモンと同じです。
<ブラックカルダモン>
ネパールやインドなど一部の地域で栽培されているブラックカルダモン。ブラウンカルダモンとも呼ばれています。
グリーンよりも実が大きく、スモーキーで爽快な香り。「ミントのよう」とも形容される特徴的な香りです。
カルダモンは日本でも栽培できる?
スパイスとして流通しているカルダモンは、未熟な状態で採取されているため、播いても発芽はしません。
カルダモンを栽培するのであれば栽培用の種を入手する必要があります。
栽培用のカルダモンの種は日本でも流通していますが、カルダモンの原産地は熱帯地方。
育て方は多くの植物の中でもトップクラスに難しいとされています。
半日陰の場所で一年中22℃以上の気温を保つ必要があり、特に温度管理が難しいようです。
たとえ温室があり、日差しや水やりなどをコントロールしたとしても、日本の環境で実をつけさせるのは至難といわれています。
うまく花をさかせ、実をつけたところで、元々収穫量の少ないスパイス。
「自宅で栽培してたくさん使いたい!」という方には、栽培用の種よりもスパイスを購入することをおすすめします。
カルダモンの味と香り
カルダモンの精油には、次のような成分が含まれています。
- ・酢酸テルピニル(針葉樹などがもつ香り)
- ・1.8-シネオール(ユーカリや樟脳のようなスーッとした香り)
- ・リナロール(ラベンダーやベルガモットがもつ香り)
- ・βピネン(マツなどの針葉樹がもつ香り)
- ・リモネン(レモンやグレープフルーツがもつ香り)
これらが合わさって、森林に似た清涼感ある香りと柑橘のような爽やかな香りが混じりあった、カルダモン独特の芳香をつくっています。
味は、同じショウガ科のショウガにも似た、爽やかでマイルドな辛みとほのかな苦みが特徴です。
世界で愛されるカルダモン
カルダモンの原産地はインドやスリランカですが、ギリシア・ローマ時代にはすでにヨーロッパに伝わっていました。
カルダモンが好まれる地域には、原産地であるインドやその近隣に位置するアラブの国々だけでなく、遠い北欧の国々も含まれます。
現地での愛されぶりと使われ方をご紹介しましょう。
カレー、チャイ、臭み消しに。インドのカルダモン使い
原産国であるインドでは、カルダモンは常用されるスパイスのひとつ。インド料理に頻繁に使われるスパイスミックス「ガラムマサラ」の主要スパイスでもあります。
インドでは、カレーをはじめとするインド料理はもちろん、アイスクリームやヨーグルト、プリンなどのデザートにもカルダモンを使います。
甘い紅茶「チャイ」のスパイスとしても有名です。
口臭を消すためにそのまま食べることもあり、消化を助けるという役割を期待して食後に噛むことも多いそうです。
カルダモンコーヒー
材料
- コーヒー(粉)(大さじ2)
- カルダモン(ホール) 1 粒
- 水 200 ml
作り方
- カルダモンを刻みます。
- 材料をすべて小鍋に入れ、火にかけます。
- 沸騰してから1分ほど弱火で煮立たせてから火を止めます。
- そのままカップに注ぎ、粉が沈んでから飲みます。
コツ・ポイント
このほか、中東ではカルダモンをひき肉料理に使うことも多いそうです。
北欧で愛される「カルダモンロール」
スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなど、北欧の国々はバイキング時代からカルダモンを使ってきた歴史があると考えられており、世界の中でもカルダモンを愛好することで知られています。
使い道は、主にパンやお菓子です。
スウェーデンのシナモンロール「Kanelbullar」はシナモンと一緒にカルダモンが使われたエキゾチックな味で、一度食べたら病みつきに。シナモンシュガーの代わりに「カルダモンシュガー」を作ってパンやお菓子に使うこともあるそうです。
北欧のクリスマスには、ジンジャークッキーやスパイス入りのホットドリンクなどにスパイスが多用され、カルダモンが欠かせません。
カレーのイメージが強いカルダモンですが、甘いものとの相性も抜群のようです。
カルダモンの効果・効能
大昔から薬用として使われてきたカルダモン。
武政三男『80のスパイス辞典』(フレグランスジャーナル社)によれば、カルダモンは暑い中近東では身体を冷やす目的で、寒い北欧では身体を温める目的で使われるとのこと。
特に消化促進に有効であるほか、アラブやインドでは性欲を高めるスパイスとしても扱われてきたそうです。
ここでは、現代の医学で研究されているカルダモンの効果・効能をご紹介します。
効果1 抗酸化効果・抗炎症効果
インドで行われた実験では、カルダモンパウダーが人に抗酸化活性を示すことが報告されています。
また、動物実験ではラットの炎症を抑制する結果も出ており、抗酸化効果が抗炎症効果をもたらすと考えられています。
参照:Kandikattu HK(2017)”Anti-inflammatory and anti-oxidant effects of Cardamom (Elettaria repens (Sonn.) Baill) and its phytochemical analysis by 4D GCXGC TOF-MS.”
Rahman(2017)”Cardamom powder supplementation prevents obesity, improves glucose intolerance, inflammation and oxidative stress in liver of high carbohydrate high fat diet induced obese rats”
効果2 消化を助ける効果
カルダモンは日本でも生薬として認められ、健胃薬の原料として使われてきました。
研究でも胃潰瘍を抑制するなどの胃保護効果が認められており、さらにヘリコバクター・ピロリ菌を抑制する可能性も指摘されているそうです。
参照:Jamal A(2006) ”Gastroprotective effect of cardamom, Elettaria cardamomum Maton. fruits in rats.”
効果3 口臭を改善する効果
カルダモンは古くから口臭の改善のために使われてきました。
口臭の予防のために食後に噛まれるだけでなく、大手製菓会社によってチューインガムに配合されてきた歴史もあります。
研究では、カルダモン抽出物が多くの細菌に対して抗菌活性をもつことが報告されています。
試験管レベルの実験では、人の口腔内細菌を54%減少させるという結果も出ているそうです。
参照:K R Aneja(2009)”Antimicrobial Activity of Amomum subulatum and Elettaria cardamomum Against Dental Caries Causing Microorganisms”
Niraj Ghanwate(2012)”ANTIMICROBIAL AND SYNERGISTIC ACTIVITY OF INGREDIENTS OF BETEL QUID ON ORAL AND ENTERIC PATHOGENS”
カルダモンの使い方
カルダモンは、通常さやのままの「ホール」か、さやから種を出して粉にした「パウダー」の状態で売られています。
さやから種を出すと香りが失われやすいため、さやのまま(ホールで)流通することが多いですが、香りが強いのはさやよりも種と聞けば、「どうやって使うの?」と疑問がわいてきますよね。
カルダモンの一般的な使い方をご紹介します。
カルダモン(ホール)の使い方
カルダモン(ホール)は、手で割るか、包丁やハサミで軽く割れ目を入れ、そのまま料理に使用します。
割れ目を入れることで、香りが種から料理に出やすくなるのです。
カレーなどに使う場合は他のスパイスなどと一緒に油に入れて香りを抽出し、そのまま煮込みます。
カレーに入っているカルダモンを噛んだことのある方ならば分かると思いますが、カルダモンは煮込んだ後でもまだまだ強い香りをもっています。
「カルダモンを噛んだときの強烈な香りが苦手」という場合は器に盛る前に取り出しますが、カルダモンの香りを活かしたい場合は取り出さず、入れたまま器に盛ってもよいでしょう。
パンやお菓子に入れる場合は、さやから種を取り出し、すり鉢でするか、ミルサーで粉にして使うのが一般的です。カルダモンロールなどには、種のまま(シード)の状態や、粗挽きの状態で使われることもあります。
さやから取り出して粉にするとすぐに香りがとび、劣化してしまうので、さやから出すのは使う直前にしましょう。
カルダモンパウダーの使い方
- ・水切りヨーグルトに振りかけてインドのヨーグルトデザート「シュリカンド」風に
- ・ミルクティーに振り入れてチャイ風に
- ・アイスクリームに振りかけてインド風デザートに
- ・タンドリーチキンやミートボールに使うスパイスのひとつとして
- ・レモンなど柑橘系のハイボールにひと振りして「カルダモン・ハイボール」に
カルダモンは香りが強いので、「少ないかな?」と思うくらいの分量を使うのがポイントです。
魅惑のカルダモンレシピ
「カルダモンを買ったはいいけれど、持てあましぎみ…」
そんな方をもめくるめくカルダモンの芳香世界に誘う、魅惑のカルダモンレシピをご紹介します。
カルダモン香るインド風チキンカレー
材料
具材
- 鶏手羽元 1 kg
- 玉ねぎ 1 個
- にんにく 3 かけ
- しょうが 20 g
- トマト 1/2 個
- 植物油(大さじ1+1/2)
- 水(適量)
- 塩(適量)
ホールスパイス
- クミンシード(小さじ1/2)
- カルダモン(殻を割っておく) 4 粒
- 赤唐辛子(輪切り) 1 本
パウダースパイス
- ターメリックパウダー(小さじ1)
- チリパウダー(小さじ1/2)
- クミンパウダー(小さじ1)
- シナモンパウダー(小さじ1/2)
- ブラックペッパー(ひとつまみ)
- クローブ(ひとつまみ)
作り方
- 玉ねぎをみじん切りにします。
- 鍋に油を熱し、クミンシード、カルダモン、シナモンの順に入れます。
- そこに玉ねぎと赤唐辛子を入れ、焦がさないように中火で炒めます。
- 玉ねぎが飴色になったら、にんにくとしょうがをすりおろして入れます。
- 鶏肉を入れてさらに炒めます。
- パウダースパイスとトマトを入れて混ぜます。
- 適量の水を加え、味見をしながら塩で味を調えます。
- 鶏肉に火が通り、全体が一体となったらできあがりです。
カルダモン入り本格チャイ
材料
- 紅茶1 10 g
- しょうが(薄切り) 2 枚
- シナモンスティック(割る) 1 本
- カルダモン 4 粒
- クローブ4個 4 個
- 水 400 ml
- 牛乳 400 ml
- 砂糖(好みで)
作り方
- カルダモンのさやを割り、すり鉢などで種を潰します。
- すべてのスパイスと茶葉、水を鍋に入れ、強火にかけます。
- 沸騰したら弱火にして、5分~10分間煮出します。
- 牛乳と砂糖を入れ、温めてから濾してできあがりです。
カルダモンとシナモンのクッキー
材料
- 薄力粉 75 g
- アーモンドパウダー 50 g
- シナモンパウダー(小さじ1/2)
- カルダモンパウダ(ー小さじ1/2)
- ナツメグパウダー(ひとつまみ)
- 無塩バター(常温に戻しておく) 60 g
- 砂糖 90 g
- 卵(常温に戻し、溶いておく) 1/2 個
作り方
- 薄力粉、アーモンドパウダー、シナモンパウダー、カルダモンパウダー、ナツメグパウダーを合わせてふるっておきます。
- バターをボウルに入れてやわらかく練り、砂糖を加えてすり混ぜます。
- 溶き卵を少量ずつ加えてなじませ、しっかりと混ぜます。
- 1を一気に入れ、ゴムベラで切るようにしてひとまとまりになるまで混ぜます。
- 生地をまとめて丸め、ラップに包んで冷蔵庫に入れて1時間ほど寝かせます。
- オーブンにオーブンペーパーを敷き、160℃に予熱します。
- 生地を取り出して4mmの厚さにのばし、好きな形に抜いて天板に並べます。
- 160℃で25~30分焼き、粗熱をとってできあがりです。
カルダモンについてのQ&A
- カルダモンがない場合は他のスパイスで代用できますか?
- カルダモンの芳香は独特で、他のスパイスで代用することはできません。
お菓子やデザートにカルダモンが使われている場合は、シナモンで代用する方もいるようですが、風味は全く異なります。
- カルダモンの精油やアロマにはどのような効果があるのですか?
- カルダモンの精油には鎮静作用があり、気持ちを落ち着ける効果があるとされています。不安やイライラを鎮める効果が期待できそうです。
- カルダモンは妊娠中でも食べられますか?
- カルダモンは生薬としても使われていますが、生薬「ショウズク」については妊婦に対しての安全性が確立されていないようです。生薬としての利用法とスパイスとしての使用法、また摂取する量や回数によっても安全性が異なると思いますので、妊娠中の方はかかりつけ医に相談してください。
- カルダモンを摂りすぎるとどうなるのか教えてください。副作用はありますか?
- カルダモンは世界中で長く使われてきたスパイスですが、摂取量と副作用については科学的に証明された明確なデータがないようです。持病やアレルギーなどをお持ちの方は、かかりつけの医師に相談しましょう。
- カルダモンがダイエットにいいって本当ですか?
- ラットによる実験の結果から、カルダモンには肥満やメタボリックシンドロームを改善する可能性があることが示唆されています。
参考文献:武政三男『80のスパイス辞典』(フレグランスジャーナル社)