海苔の栄養素とおいしい選び方。消化できるのは日本人だけ?

海苔

日本食に欠かせない名脇役・海苔。
おにぎりや手巻き寿司などに使われる身近な食材ですが、実は考えられている以上に多様な栄養素を含む「日本が誇るスーパーフード」だったんです!
今回は、海苔の栄養やカロリーを中心に、効果・効能から美味しい選び方まで海苔の魅力をたっぷりご紹介します。

海苔について

海苔について

日本人の大好きな海藻、海苔(のり)。
でも、同じ海苔でも「韓国海苔」や「青海苔」など、さまざまな呼ばれ方があって混乱しませんか?
よく耳にする「海苔」には、次のような種類があります。

①海苔(一般的な海苔) 焼海苔、味付海苔などに加工される一般的な海苔。
紅藻のウシケノリ科に属するグループのうち、主にスサビノリ、アサクサノリの2種が養殖されて原料となっている。
②岩海苔 岩に付着している天然のノリを採取したもの。
紅藻のウシケノリ科に属するグループのうち、スサビノリ、オニアマノリ、ウップルイノリ、マルバアマノリなど。
③韓国海苔 岩海苔が主な原料として使われる。細かな穴が開いていることが多い。ごま油と塩で調味されている。
④青海苔 たこ焼きやお好み焼きなどに振りかけられる。
緑藻のアオサ目・アオサ科に属するアオノリが原料とされる。同様の用途で使われるアオサも同じアオサ科の仲間。

日本で主に食べられているのは①の海苔。米や醤油などとの相性がよく、海苔巻きや寿司などの日本食には欠かせません。低カロリーですが豊富な栄養を含み、スーパーフードとしての可能性も秘めています。

「海苔」海外での反応は?
海苔は英語では一般的には”Seaweed”と呼ばれています。”Seaweed”とは海藻全般を指す単語で、このことからも英語圏では海苔を始めとする海藻を食べる習慣のないことが分かります(※イギリスのウェールズ地方など、一部の地域では海苔を食べる文化があります)。
日本と似た食文化をもつアジア圏とは異なり、欧米では一般家庭の食卓まで広がっているとは言い難い海苔ですが、健康志向の方や菜食主義の方の間では栄養豊富な点や旨味のある味が話題となってもいるようです。
海苔はチーズやバター乳製品とも相性が良く、洋食におけるポテンシャルも秘めています。世界中で健康志向の波が広がり、さまざまな食材がスーパーフードとして注目を浴びる現在、日本の海苔が世界の”Nori”として脚光を浴びる日も近いかもしれません。

海苔の作り方

海苔の作り方

ノリの日本での主な産地は、有明海(佐賀県・福岡県)、瀬戸内海、宮城県などです。
ほとんどが施設や海で種付けした後、海の中で養殖されます。

  • ①秋に種付けした網を培養漁場に入れ、翌年春まで育てます。
  • ②ノリ(生ノリ)を収穫し、洗って細断して成形します。
  • ③水分をとり、温風で乾燥させます。これが「乾海苔(ほしのり)」です。

できあがった乾海苔は、さらに火入れや味付けの加工を経て、「焼海苔」や「味付海苔」といった商品になり店頭に並びます。

海苔の栄養とカロリー

海苔の栄養とカロリー

栄養豊富といわれる海苔ですが、具体的にはどんな栄養が含まれているのでしょうか?

<100g中の栄養成分>
カロリー(kcal) たんぱく質(g) 脂質(g) 炭水化物(g) 食物繊維(g) 糖質(g) カルシウム(mg) 鉄(mg) ビタミン
A(g) B1(mg) B2(mg) C(mg)
焼きのり 188 41.4 3.7 44.3 36 8.3 280 11.4 2300 0.69 2.33 210
鶏もも肉 253 17.3 19.1 0 (0) (0) 8 0.9 47 0.07 0.23 1
鶏卵 151 12.3 10.3 0.3 0 0.3 51 1.8 150 0.06 0.43 0
ゆで大豆 176 14.8 9.8 8.4 8.5 (0) 79 2.2 Tr 0.17 0.08 Tr
納豆 200 16.5 10 12.1 6.7 5.4 90 3.3 0 0.07 0.56 微量

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

まず特筆すべきはそのたんぱく質です。
100g中のたんぱく質量は大豆や鶏もも肉よりも多く、なんとそれらの2倍以上も含有しています。鶏卵や納豆など代表的なたんぱく源と比較しても海苔のたんぱく質量は圧倒的です。

また、現代人に不足しがちとされる食物繊維はゆで大豆の4倍、カルシウムは牛乳の2倍、鉄はほうれん草の10倍以上とミネラルもふんだんに含んでいます。ビタミンAの含有量はニンジンの3倍、ビタミンCはイチゴの3倍となっており、その栄養バランスのよさには目を見張るものがあります。

さらに、アミノ酸の一種であるタウリンから青魚に含まれるとされるEPA、妊娠中の方に摂っていただきたい葉酸や亜鉛まで、海苔は多種多様な栄養素を含む稀有な食材です。

もちろん海苔は一度に大量に食べるものではありませんので、海苔だけで必要なたんぱく質やミネラル、ビタミンを摂るのは現実的ではありませんが、普段の食事に海苔を加えるだけで、摂取する栄養素の種類を気軽に増やすことができます。
朝食に味付海苔を加える、和え物や汁物に焼海苔を振りかけるなど、日常の食卓に積極的に加えてみてください。

海苔の健康効果&効能

健康効果1 腸内環境改善効果

腸内環境改善効果

ノリに多く含まれる水溶性食物繊維は腸内環境改善に役立つといわれています。また、海苔に含まれるジガラクトシルジアシルグリセロール、グリセロールガラクトシドといった成分には、動物実験で腸内環境改善効果があることが報告されています。

 

健康効果2 がんの抑制効果

がんの抑制効果

アサクサノリに大腸がんの抑制効果が見られたという動物実験があるほか、ノリの成分であるポルフィランには腫瘍の増殖を抑える効果があるという報告もあります。今後ヒトでの詳しい研究が期待されています。

 

健康効果3 糖尿病予防効果

糖尿病予防効果

海苔料理は血糖値上昇を抑制することが報告されています。また、動物実験によって、ノリに含まれるポルフィランという成分の摂取が2 型糖尿病に効果があることが分かっています。

 

健康効果4 抗酸化効果

抗酸化効果

ノリにはさまざまな抗酸化物質が含まれています。これにより、生活習慣病の予防効果やアンチエイジング効果が期待できます。

 

ノリに含まれる抗酸化物質

ポリフェノール、ポルフィラン、フィコビリン、カロテノイド、シノリン、カルノシン、アンセリンなど

海苔を消化できるのは日本人だけ?

日本人だけ?

海外の論文を元に「海苔を消化できるのは日本人だけである」という話が出回っています。
インターネット上には海藻を食べ続けてきた日本人だけが特別な腸内細菌を持っているのだとまことしやかに書いてある文章も見かけますが、実際はどうなのでしょうか?

この説の元になった論文は2010年4月にNature誌に掲載されたもの。
アマノリ属の海藻を栄養源とする海洋微生物の遺伝子が複数の日本人の腸内細菌から発見されたという実験結果を示し、日本人の腸内細菌が海藻を消化する遺伝子をもつのは長年海藻を食べることによって海洋微生物を腸内に取り込んできた結果ではないかという結論に至っています。

ただしこの実験に参加したのは北米人18名と日本人13人のみで、韓国など他の海苔を食べる文化をもつ国の人々は参加していません。参加人数も少なく、この実験だけで「日本人にだけ」という結論を導くことはできないでしょう。

さらに、この腸内細菌がいなければ消化しづらいといわれるのはいわゆる「生ノリ」だけで、焼いた海苔であれば問題ないのだそう。
「外国人の人に手巻き寿司を振る舞いたいけれど、海苔を使っても大丈夫?」「外国へのお土産に海苔を持っていっても大丈夫?」と悩んでいる方も、焼き海苔であれば安心して振る舞うことができそうです。

海苔と日本人
古くから海苔を食べてきた日本人。その歴史は飛鳥時代にまで遡り、数百年以上もの付き合いになるそうです。
当時海苔は貴族の食べ物。天然の岩海苔を佃煮にしたり、汁の具にしたりして食べていました。
江戸時代には需要の増加とともに養殖が始まり、板状の「浅草海苔」が誕生。手巻き寿司などの料理も生まれ、さらなる海苔の普及につながったようです。現代ではお菓子やおつまみなどへの利用も増えています。

海苔を食べ過ぎるとどうなる?

食べ過ぎ

栄養豊富な海苔ですが、食べ過ぎると身体に害があるのでは?という懸念も。
多く見られるのは「海苔を食べ過ぎるとヨードの摂りすぎになる」という情報です。
ヨウ素は摂りすぎると甲状腺機能低下症などの原因となりますが、実は海苔に含まれるヨード(ヨウ素)の量は1枚で0.12mg。成人におけるヨウ素の耐容上限量は3mgとされており、海苔25枚分です。それほど神経質になる必要はないでしょう。
なお、同じ海藻である昆布にはヨウ素が豊富に含まれており、その量は佃煮5gで10mgにもなりますので要注意です。

海苔の保存方法と賞味期限

賞味期限

海苔は高温多湿の場所を避けて冷暗所に保存するのがおすすめです。
特に湿気には弱いので、一度開封したら乾燥剤と一緒に密封できる保存容器(チャック付きのポリ袋などなるべく空気が入らないもの)に入れて早めに使い切ります。

焼海苔は乾燥しており微生物の繁殖しづらい食品なので、未開封であれば賞味期限が過ぎたものであっても特に問題がないことが多いと考えられています。
ただし、未開封でも賞味期限を大きく過ぎると湿気てしまったり、風味が落ちたりすることも。できるだけ早く食べることをおすすめします。

海苔の美味しい選び方

選び方

<海苔の外見>

濃く黒々としており、密度がある海苔の方が栄養分が高く美味しいと言われています。
艶があるものがおすすめです。

<海苔の収穫時期>

最も高級なのは「初摘み」「一番摘み」「早摘み」「若摘み」などと呼ばれる収穫時期の早いもの。
柔らかくて口どけがよく、味わいも深いといわれています。その後は「二番摘み」「三番摘み」「四番摘み」と続きます。

一般的に、海苔のグレードは価格に反映されます。
香りや歯切れのよさ、口どけを楽しむ料理には初摘みなどの高級な海苔を使い、佃煮やお弁当のお握りには普段使いの海苔を使うというように用途によって使い分けるのもよいでしょう。

海苔についてのQ&A

妊娠中に海苔を食べても大丈夫ですか?
海苔には妊婦にとって重要な葉酸などの栄養も含まれています。適量を摂取するのはおすすめです。
猫が海苔を食べたがるのですが、与えても害はないでしょうか?
尿路結石や腎不全などの持病をもっていない猫については、少量与える分には問題がないといわれています。与える場合は味のついていない海苔を小さく切って与えるようにしましょう。心配な場合はかかりつけ医に相談してください。
海苔はいつから離乳食に使えますか。
海苔は離乳食後期から与えることができるとされています。そのまま与えると喉に貼りつくことがあるため、柔らかく煮込んであげるとよいでしょう。
海苔はダイエットに向いていますか?
海苔はカロリーが低めで食物繊維が豊富に含まれ、旨味もある食材。チーズなどと組み合わせて糖質が高いおやつの代用とするなど、効果的に摂ることによってダイエットに貢献することができるでしょう。
「あおさ」と「海苔」は何が違うのでしょうか?
一般的な板海苔は、スサビノリ、アサクサノリからできています。一方の「あおさ」はアオサという植物からできており、植物の種類が異なります。

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この記事を書いた人

パン作りと温泉をこよなく愛する2児の母。老後は伊豆で大きな犬と暮らすのが夢です。豆乳が好き、猫は苦手。