玄米の栄養成分と効果効能・白米との違い【管理栄養士監修】
玄米は白米よりも栄養価が高く、ダイエット効果や抗酸化効果、生活習慣病の予防効果などが期待されるため、ここ数年で玄米食を選ぶ人が増えています。しかし、素材自体は白米も玄米も同じなため、栄養素や効果にどのような違いがあるのが疑問に思う人もいるでしょう。
そこで本記事では、玄米の栄養成分と効果効能、白米との違いを詳しく解説します。より効果的な食べ方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
記事の監修
管理栄養士
安藤
老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。
白米と玄米の違いは胚芽とぬか層にある
玄米は上の画像のような状態です。精米によって胚芽とぬか層が取り除かれ、胚乳だけになったものが白米です。胚芽とぬか層には栄養が豊富に含まれているため、玄米の方が多彩な栄養を摂取できます。
一方、ぬか層などの外皮は食物繊維が多く食感が硬いため、しっかり噛まなければならないという特徴もあります。
玄米と白米の栄養成分を比較
上記は白米と玄米の栄養素の差をグラフにしたものです。ビタミンやミネラル(カリウムや鉄など)は玄米の方が多いことがわかります。また、近年の研究では近年の研究により、フィチン酸や、γ-オリザノールなど、健康維持や美容に効果のある成分が含まれていることも分かってきました。
1日に必要なミネラルの多くをまかなえる
玄米ご飯を1日に2杯(1杯150g換算)食べると、1日に必要なミネラルの摂取目安量のうちの大部分をまかなうことができます。詳しくは次のグラフをご覧ください。
とくに多いのはマグネシウムです。海藻や魚介類、ナッツ類に多く含まれています。マグネシウムは骨や細胞に必要で、排便を促す作用もある栄養成分で、不足すると不整脈や虚血性疾患などにつながります。海藻・魚介・ナッツを食べる習慣がない人は、主食を玄米にするのがおすすめです。
ビタミンが豊富
玄米なら、糖質・アミノ酸の代謝に関わるビタミンB1、栄養素の代謝に関わるビタミンB2を白米よりも多く摂取できます。とくに注目したいのは、白米には含まれないビタミンEです。
ビタミンEは脂質の過酸化を阻止し、細胞壁や生体膜の機能維持にも関わる重要な栄養成分です。マグネシウムと同様にナッツ類には多く含まれています。その他、モロヘイヤ、カボチャ、しそ、アボカド、ツナ缶、うなぎなどでも摂取できます。
ビタミンEは過剰摂取すると副作用もありますが、不足すると神経機能が低下するなどのリスクがあるので、食品でバランスよく摂取したい栄養成分といえます。
玄米の5つの効果
玄米と白米の違いがわかったところで、玄米の具体的な効果を見ていきましょう。いずれの効果もただちに現れるわけではありませんが、続けることで実感しやすくなるはずです。
美肌効果
玄米には抗酸化物質であるフェノールとフラボノイドが含まれています。
これらの物質は次のようなリスクの防止に役立つとされています。
・フリーラジカルによる細胞の損傷
・体内の炎症
・生活習慣病
・がん
・老化
また、玄米に含まれているビタミンB2・パントテン酸は、皮膚を丈夫に保つ効果があるといわれています。
ダイエット効果
ある実験では、肥満の女性を2グループに分け、同じ量の玄米と白米を食べさせたところ、玄米を摂取したグループでは体重、ウエスト、ヒップの周囲、BMIの減少がみられたそうです。
また、玄米に限った話ではありませんが、大規模な統計調査においても、繊維の豊富な全粒穀物を食べる人の方が、精白した穀物を食べる人よりも体重が少ないことが分かっています。
不溶性食物繊維が多いと噛み応えがあるため、満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防げることが理由の一つと考えられます。
心疾患リスク低減効果
玄米には心疾患のリスクを低減させるリグナンという物質が含まれています。
また、玄米に豊富に含まれるマグネシウムも血管を拡張させる効果をもっており、心血管系の健康に重要な成分です。
血糖コントロール効果
食物繊維を豊富に含む玄米は白米と比較してGI値が低く、食後の血糖値上昇が緩やかな食品です。
食事中の玄米を白米と置き換えることで2型糖尿病のリスクを低減できるという研究があります。
悪玉コレステロールを減らす効果
玄米に豊富に含まれている食物繊維は、胆汁酸の排出を促し、コレステロールの再吸収を抑えることで、血中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減らす効果があります。
また、玄米に含まれるγ-オリザノールは、コレステロールの吸収を抑える効果があるといわれています。
参考文献:Is Brown Rice Good for You?
玄米の効果的な食べ方
玄米は栄養豊富な食品ですが、食べ方によってはリスクを伴うこともあります。また、すべての栄養をまかなえるわけではありません。効果的に食べるためには、次のポイントを覚えておきましょう。
- 無農薬の玄米を選ぶ
- 12時間以上浸水させる
- よく噛んで食べる(玄米一口あたり、30〜50回が目安)
- 玄米に不足している栄養素をおかずで補う
玄米はぬか層などの外皮を取り除かないため、農薬を使用していると摂取してしまう可能性があります。精米せずに玄米として食べる場合は、無農薬のものを選びましょう。
また、しっかり浸水させることで、やわらかくモチモチした食感になります。白米ほどではありませんが、食べやすくなるでしょう。それでも軽く噛んで飲み込むと消化に時間がかかり胃腸の負担になるため、しっかり咀嚼することは大切です。
味に慣れないときや噛むのが大変な場合は、白米と混ぜて炊くことをおすすめします。なお、玄米だけでは補えない栄養素もあります。次の項目を参考に献立を考えてみましょう。
玄米を主食にした献立を考えよう
玄米だけでは足りない栄養成分と多く含む食品は次のとおりです。
栄養素 | 主な食品 |
---|---|
ビタミンA | レバー、バター、卵黄、にんじん、モロヘイヤ、うなぎ |
ビタミンB12 | しじみ、レバー、あさり、いくら、牡蠣 |
ビタミンC | パプリカ、キウイ、ブロッコリー、菜の花、いちご |
ビタミンD | 鮭、さんま、ぶり、あじ、きのこ |
ビタミンK | ブロッコリー、モロヘイヤ、小松菜、納豆、海藻 |
タンパク質 | 魚、肉、大豆製品 |
玄米でもタンパク質は摂取できますが、1日に必要な量をまかなうことはできないため、肉・魚・大豆製品を食べましょう。上記の食品を参考にした献立は次のとおりです。
- 主食:玄米
- 主菜:肉・きのこ・卵の炒め物
- 副菜:小松菜のおひたし
- 汁物:しじみの味噌汁
このように、不足している栄養をバランスよく組み合わせた食事を意識してみましょう。忙しいときなど副菜まで準備できないときは、スープや野菜炒めなどさまざまな食材を使えるレシピにするのもおすすめです。
玄米とバランスの良い食事で健康に
玄米は白米と比べてさまざまな栄養を摂取できることがわかりました。肌の悩み・ダイエット・病気の予防におすすめです。しかし、玄米だけ食べていれば良いというわけではありません。不足する栄養も意識しつつ、多彩な食材をバランスよく食べることが大切です。
また、咀嚼が足りないと消化に時間がかかり、胃腸の負担となることもあります。十分に浸水させてやわらかくしてから、しっかり噛んで食べることを心掛けましょう。
●管理栄養士からのコメント
毎日食べる主食「お米」は長いスパンで見ても、他の食材と比べて多くの量を食べることになります。
そんなお米を食物繊維やビタミン、ミネラルなど栄養価の高い玄米に変えることで健康維持に大きく役立つでしょう!
玄米を取り入れたいけど…と迷っている方は、食べやすい炊き方や便利な市販品もあるので、自分に合った取り入れ方を試してみると良いですね。
栄養面だけでなく白米よりも食感があるので、噛む回数が増えて満腹感を得られやすく、あごも鍛えられて小顔効果も期待できますよ。
管理栄養士プロフィール
安藤
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老人保健施設の管理栄養士を経て、健康を維持するためには若いうちからの食生活の大切さを実感。
2016年フリーランスとして活動を開始。レシピ開発や栄養指導、料理教室、食に関するコラムの執筆などを行っている。
また「食を見直すならまずは毎日使う調味料から」をコンセプトに地元愛知県三河のみりんや味噌などの伝統的な調味料の素晴らしさを伝えるセミナーなども開催。
食や栄養に関すること全般ですが特に
・調味料について(みりん、味噌や醤油などの製法やどんなものを選ぶと良いかなど)
・体に優しいスイーツの選び方、作り方
・ダイエットレシピの考案
・時短レシピの考案を得意としています。
- 玄米を食べるならいつがいいですか?
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基本的にはいつ食べても効果に大きな違いはありません。ただし、白米より消化しにくいため、消化時間を確保するために寝る4時間前までには食べ終えましょう。
- 1回に食べる玄米の量は何グラム?
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成人男性の場合は200g、成人女性の場合は150gが目安です。ただし、1日の運動量や体格などによって差があります。消費したエネルギーなどを考慮し、栄養不足にならないように適宜調節が必要です。
- 玄米は体に良いからいっぱい食べても良い?
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カロリーは白米とそれほど変わらないので、食べ過ぎれば肥満になる可能性があります。玄米に限らず、どんな食材でも食べ過ぎには注意が必要です。
- 妊婦は玄米を食べた方がいいって本当?
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玄米には葉酸や鉄分など妊娠中に必要とされる成分が白米より多く含まれています。また、食物繊維が豊富なため、便秘になりやすい妊娠中にもぴったりです。