ぬか床とぬか漬けの作り方|ぬか床の手入れ方法や野菜の漬け方もご紹介
記事の監修
管理栄養士
稲尾貴子
管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。
日本の伝統的な発酵食品の代表、ぬか漬け。
以前はぬか床の入った甕が家の台所に当たり前のようにあり、お漬物が盛られたお皿が毎日のように食卓に並んでいました。
今ではお店でいろいろなお漬物が手に入るようになり、家で毎日ぬか床を混ぜることがなくなってしまいましたが、最近その良さや美味しさが見直されてきています。
そこで今回は、家庭でも簡単に始められるぬか漬けの、基本の作り方やおすすめ野菜、アレンジレシピなどをご紹介します。
ぬか漬けとは
米ぬかに塩と水を混ぜた「ぬか床」に野菜などを漬けた漬物。
野菜に含まれる乳酸菌がぬかに含まれる糖やたんぱく質をエサにして発酵することで旨みが増し、酸性になることで雑菌の繁殖を防いで食品を長持ちさせる役割もあります。
ぬか床の中には乳酸菌以外にも酵母菌や酪酸菌など多種多様な菌が混在します。
さらに混ぜる人の手についている常在菌なども加わるので、家庭によって味わいが変わってきます。
また、玄米を精米した時に捨てられてしまうぬかの再利用や、玄米を食べていた時に摂取できていたぬかに含まれている栄養を摂取することもできるのです。
ぬか床の作り方
すぐに野菜を漬けることのできる市販の「ぬか床」もありますが、ここではまず米ぬかから作る「ぬか床」の作り方をご紹介します。
初心者でも簡単に作ることができます。
ぬか床
材料
- 米ぬか 1 kg
- 塩 100~200 g
- 水 1 L
- 昆布(5cm四方 2~3枚) 5 g
- 唐辛子(2本) 2 g
- 野菜くず(キャベツなどの外の葉や、大根や人参のヘタなど)
作り方
- 米ぬかと塩を容器に入れ、水を少しずつ加えながら混ぜます。ぬかは、生ぬかでも炒りぬかでもどちらでも大丈夫です。
- ぬか床がかたまりの状態になったら水を加えるのをやめます。水が余ったら使い切らなくても大丈夫です。そこへ、昆布と唐辛子を加えます。
- ぬか床に野菜くずを漬け、翌日漬けた野菜くずを捨ててぬか床をかき混ぜ、新しい野菜くずを漬けます。(捨て漬け)くず野菜は、苦みやアクの強いものを避け、鮮度のよいものを使ってください。このくず野菜についている菌が、ぬか床を育てていきます。
- ぬか床は毎日かき混ぜます。発酵が進み、ぬか漬けの独特なにおいが感じられるようになったらぬか床の完成です。目安は1週間です。※ただし、乳酸菌の繁殖はまだまだ続き、野菜を漬け続けることでより美味しくなっていきます。
ぬか漬けの作り方
いよいよここから、お漬物にする野菜を漬けていきます。
初心者の方は、漬かりやすい初夏にきゅうりやなすなど夏野菜から始めるのもおすすめです。
ぬか漬け
材料
- ぬか床
- 漬けたい野菜(きゅうりやなすなど)
作り方
- 洗った野菜をぬか床に沈めます。
- 上からぬかをかぶせてすき間を無くすように少し押します。カビ防止のために、容器の周りについたぬかはきれいにふき取りましょう。
- 夏なら6時間、春や秋は12時間、冬場は1日ぐらいで完成します。ぬか床から出した野菜は、表面についたぬかをさっと水で流してからいただきます。
- 漬かりの浅いものを「浅漬け」深いものを「古漬け」といい、野菜の種類や大きさで漬け時間は変わってきます。お好みの漬け時間で漬けてみてください。
ぬか漬けのような家庭で作る発酵食品は、それぞれ人の手についている「常在菌」や家にいる菌も関係してくると言われており、混ぜる人や置かれている環境で味が変わってきます。
手でかき混ぜてお世話をすることで、「自分のぬか床」を育て、「自分のぬか漬け」を作ることが出来るのも楽しみのひとつですね。
ぬか漬けに漬ける野菜
キュウリ、ナス、大根、人参など季節の新鮮な野菜がおすすめです。
その他、トマト・アボガド・じゃがいも・ゆでた卵などすこし変わった食材もおいしくいただけます。
材料別 漬け方のポイント
漬ける食材ごとに、美味しくするためのポイントとおすすめの漬け時間をまとめました。
※こちらは目安になります。環境やお好みによって調整してください。
時間を短めにしてサラダ感覚でいただくのも美味しいですし、長く漬けて匂いや酸味が強くなった物も味わい深くなります。
材料 | 作り方・ポイント | 漬け時間 |
---|---|---|
きゅうり | 端を切り落として塩をすりこむ | 夏:12時間、冬:24時間 |
なす | 数か所皮を剥き、塩をすりこむ | 夏:6時間、冬:12時間 |
大根 | 適当な長さに切り皮をむく | 夏:12時間、冬:24時間 |
にんじん | 皮をむいて縦半分に切る | 夏:12時間、冬:24時間 |
白菜 | 水分が出やすいので注意 | 夏:6時間、冬:12時間 |
キャベツ | 芯は漬かりにくいので、葉と芯に分ける | 夏:6時間、冬:12時間 |
セロリ | 長めに切って漬け、食べる時に繊維を断って一口サイズに | 夏:6時間、冬:12時間 |
オクラ | 軸の周りを削りサッと茹でて水にさらして冷ます | 夏:12時間、冬:24時間 |
ズッキーニ | 皮を数か所むく | 夏:12時間、冬:24時間 |
みょうが | 大きなものは半分に切る | 夏:6時間、冬:12時間 |
かぶ | 少し皮をむく | 夏:12時間、冬:24時間 |
おすすめ変り種食材
野菜だけじゃない、ちょっと変わった食材や食べ方も楽しめます。
材料 | 作り方・ポイント | 漬け時間 |
---|---|---|
じゃがいも | 串がすっと通るかたさに蒸して皮をむく | 夏:6時間、冬:12時間 |
ゆで卵 | かために茹でて皮をむく | 夏:6時間、冬:12時間 |
アボカド | 半分に切って種を取る ※漬かりすぎるとやわらかくなるため皮付きのままが◎ |
夏:6時間、冬:12時間 |
魚 (サバやイワシなど) |
野菜のぬか床とは別にして冷蔵庫で漬ける | 1日~2日 |
じゃがいもは切ってそのままでも、つぶしてポテトサラダにしてもおいしくいただけます。 | |
長めに漬けて柔らかくなったアボカドはディップにするのもおすすめです。 | |
イワシやサバなどの魚のぬか漬けは、福井県の郷土料理「へしこ」のような味わいになります。さっとぬかを落としてから焼いていただきます。 |
ぬか漬けの栄養・効果
乳酸菌
ぬか漬けには様々な種類の乳酸菌が含まれています。
乳酸菌には腸内の「悪玉菌」を減らす働きがあり、ぬか漬けの野菜に含まれている食物繊維が「善玉菌」のエサになる為、より効果的に腸内環境を整える効果があります。
そしてぬか床に含まれている乳酸菌は「植物性乳酸菌」。
「乳酸菌」と聞けばヨーグルトなどを思い浮かべますが、元々乳製品を摂る習慣のなかった日本人には「植物性乳酸菌」の方が馴染みがあります。
乳製品を食べることができない方でも安心して摂取できる乳酸菌なのです。
ビタミンB1
ぬかにはビタミンB1が豊富に含まれています。
ビタミンB1は不足すると食欲が低下したり、疲れやすくなります。
水溶性のビタミンで体に溜めこむことができないので、ぬか漬けを食べることで不足しがちな栄養を補うことができます。
かつて玄米を食べていた食生活から白米が主流になった時に「脚気(かっけ)」が流行り深刻な問題になったのですが、これはビタミンB1の欠乏が原因でした。
玄米と同じ栄養を補うことができるのです。
ぬか漬けのアレンジレシピ
基本的にはそのまま食べても美味しいお漬物ですが、アレンジレシピをご紹介します。
キュウリのぬか漬けのタルタルソース
材料
- たまねぎ(1/2個)
- 卵(1個)
- マヨネーズ(お好みの量)
- キュウリのぬか漬け(1/3本)
作り方
- 玉ねぎをみじん切りにし、水にさらします。
- しばらく置いたら、ざるに上げて水をよく切ります。
- 卵をゆでてゆで卵にします。
- ゆで卵ときゅうりのぬか漬けをみじん切りにします。
- みじん切りにした玉ねぎ、ゆで卵、きゅうりのぬか漬けを混ぜ合わせます。
- 様子を見ながらマヨネーズを加えていき、好みの硬さで完成です。
ぬか漬けのサンドイッチ
材料
- 丸パン(2個)
- レタス(2枚)
- 卵(1個)
- トマト(1/4個分)
- きゅうりのぬか漬け(1/3本分)
- ハム(1枚)
- カッテージチーズ 20 g
- にんじんのぬか漬け(1/3本分)
- バター(適量)
作り方
- レタスはさっと洗い水気をきる。
- トマトは薄切りにする。
- 卵を焼いてスクランブルエッグにする。
- きゅうり、人参のぬか漬けは輪切りにする。
- パンを横半部に切ってバターをぬる。
- パンに、レタス、卵、トマト、きゅうりのぬか漬けをはさむ。
- もう一つのパンにはレタス、ハム、カッテージチーズ、人参のぬか漬けをはさむ。
ぬか床の管理・お手入れ法
ぬか床は毎日かき混ぜましょう。
ぬか床の中には、空気が無いと活発に増える乳酸菌、空気を嫌う酪酸菌、空気を好む酵母がバランスよく生きています。
このバランスが崩れ、乳酸菌が増えすぎると酸味がきつくなり、酪酸菌が増えると匂いが悪くなり、酵母が増えるとカビのようなものが生え味が悪くなります。
そこで、毎日かきまぜて底の方まで空気を入れることでそれぞれの菌が増えすぎるのを抑制し、ぬか床の中の菌のバランスを保つようにします。
ぬか床がに水分がでてきたら、くぼみを作って溜まってきた水を捨てます。
ぬか床の量が減ってきたら、米ぬかと、ぬかの5%~7%ほどの塩を足して量を増やしていきます。
ぬか床の保管方法
最適な温度は15℃~25℃。
基本的には常温保存ですが、真夏の暑い時期に冷蔵庫に入れる場合は野菜室へ。
温度が下がると乳酸菌の活動が止まるので、冷蔵保存している場合は2週間に1回ぐらいは常温に出して菌の活動を促すようにします。
ぬか床・ぬか漬けのお手入れ方法|お悩み別にお手入れ方法を解説
上手につくって適切なお手入れさえ続けられれば100年、200年と使い続けることができるというぬか床。
ぬか床とつきあう上で大切なお手入れ方法や保存の仕方を紹介しています。
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ぬか漬けに最適な容器
かき混ぜやすいように、ぬかの量より大き目のものを使用します。
(ぬか床1kgの場合は2リットル容器ぐらいがちょうどよい大きさです。)
野菜がしっかり漬かる深さと長さがあるもので、四角い容器は角のぬかが混ぜにくいので丸い容器がおすすめです。角がある容器を使う場合は混ぜる時に気をつけます。
ぬか床容器の選び方|ぬか漬けにおすすめの材質や大きさ、形は?
ぬか床を作る時に最適な容器の選び方を、素材や大きさ、形について詳しく解説しています。
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●管理栄養士からのコメント
古くから日本人にはなじみの深いぬか漬けは、日本が誇る伝統の味です。
幼い頃から食べていて好きな方や、幼い頃は苦手でも、大人になってからはおいしく食べられるようになった方など様々な方がいらっしゃることでしょう。
ぬか床の管理は大変というイメージがあるかもしれませんが、底からしっかりかき混ぜて、毎日空気を含ませてやることと、定期的にぬかと塩を足すことさえ忘れなければ、おいしいいぬか漬けがいつでも食べられます。
特に夏は、ぬか漬けに最適な旬の野菜がたくさんあります。
腸内環境を整えてくれる乳酸菌。乳酸菌が豊富なぬか漬けを、是非毎日の食卓に取り入れてみてくださいね。
管理栄養士プロフィール
◎稲尾 貴子
管理栄養士として病院や保育園に勤務した経験があります。延べ1万人以上の栄養指導実績があり、得意分野は糖質制限や塩分制限、減量などの栄養サポートです。パン作りが趣味の2児の母です。食欲旺盛なこども達のためにパンを作り始めたところ、パンの奥深さに魅了されています。
ぬか漬けのQ&A
- ぬか漬けの賞味期限を教えてください。
- ぬかから取り出す前なら、きちんとぬか床のメンテナンスがしてあればしばらく漬けっぱなしでも特に問題ありませんが、塩気や酸味は徐々に強くなります。
ぬかから取り出した後は酸化してしまうため、すぐに食べきるか冷蔵庫で保存してできるだけ早めに食べてください。
- 1週間以上の外出時、ぬか床はどうすればいいですか?
- 中の野菜を取り出し、冷蔵庫で保存しておくことをおすすめします。
容器が大きく冷蔵庫に入らない場合は、塩を多めに混ぜ、表面にぬか3:塩1を混ぜたものをしいてその上に塩をまきます。
水分が多かったり塩分が少ないと雑菌が繁殖しやすいので、ぬかと塩を足し(足しぬか)、水分を減らし塩分を増やしておきます。
足しぬかの場合は、ぬかの5%~7%の塩を混ぜたものをぬか床に足します。
復活させる時はぬか床をよく混ぜ、塩分量が多くなっているので何回か捨て漬けをしてから使い始めましょう。
- ぬか床が水っぽくなってしまったらどうすればいいですか?
- コップなどでくぼみを作って溜まった水を捨てるか、ぬか床の量が減っていれば足しぬかをします。
足しぬかの場合は、ぬかの5%~7%の塩を混ぜたものをぬか床に足します。
- ぬか床にカビが生えてしまったら?
- カビが少量の場合はカビの生えている部分を多めに取り除き、そのまま使えます。
大量にカビが発生してしまった場合は、カビの部分を取り除いた後ぬか床を容器から取り出し、容器を洗浄・熱湯消毒してからぬか床を戻し、足しぬかをして毎日かき混ぜます。
- 表面の白い膜はカビなのですか?
- これはカビではなく「産膜酵母」と呼ばれる酵母菌の一種です。
食べても害はないのですが、味や臭いが悪くなるのでその部分は取り除き、毎日かき混ぜるようにします。
- ニンニクなどの強い臭いの素材をぬか漬けしたい場合はぬか床を分けた方がいいですか?
- ニンニクはたくさん入れすぎると香りが移ってしまいますが、2~3片ならぬか床に良い風味を与えてくれます。少量ならいつものぬか床に一緒に漬けるのもおすすめです。
- 野菜以外のものもぬか漬けにできますか?
- 肉や魚、卵やチーズなどを漬けることができます。野菜のぬか床とは分けて漬けましょう。
- ヨーグルトで手軽なぬか漬けが作れるという話を聞きました。
- 味噌とヨーグルトを混ぜたペーストに野菜を漬け込むと、ぬか漬け風の漬物を楽しむことができます。また、ぬか漬けの副原料としてヨーグルトを入れる方もいるようです。
- ぬか漬けを食べ過ぎるとどうなりますか?
- ぬか漬けには副作用はありませんが、塩分が含まれていますので大量に食べることはおすすめしません。あくまでも「毎日少しずつ」を継続してください。
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