麹のプロ達が考えるこれからの発酵事情とは?麹の勉強会【3】~助野さん、小倉ヒラクさん、お二人のお話~
話題書「発酵文化人類学」の著者で発酵デザイナーの小倉ヒラクさんに
家庭でつくる麹づくりに関して語っていただきました。
お二人の麹に関する考察や、麹作りにかける思いなど
貴重なトークショーの内容は必見です。
- 第1部 お二人のお話。
- 第2部 質疑応答1
- 第3部 質疑応答2
- 第4部 ナカジさんのお話
2018-08-04
第1部 お二人のお話
- 司会者
- お時間になりましたので、本日の最後のセッションに移らせていただきます。
今日最後のセッションは、小倉ヒラクさんと助野彰彦さんのクロストークになります。よろしくお願いします。
まずはじめに、ヒラクさんから助野さんになにか聞きたいことがあるとお聞きしているのですが。
お二人でお話いただきました
- 小倉
- 今日助さんといっぱい話したいことがあって。去年僕、ぷらっと行ったじゃないですか。
すいませんいきなり。あの時、アドバイスもらったのがすごい大きくて。
あの後一回結構僕、麹づくりのやり方を見直して。場所変えて、今山梨で定期開催してるんですけど、麹づくり。
助さんに教えてもらったやり方入れてから、成功率が15%ぐらいあがりました。
- 助野
- おお~
- 小倉
- で、ポイントがあって、さっきお米の乾燥速度と増殖速度をどうバランスとるかっていう話で。
二つ、僕間違ってるポイントがあった、聞いた時に。僕、治した方がいいと思っているポイントが二つあって、一個は蒸し時間が四十分では足りないっていう問題。
プロはそれでいいんだけど、素人が作る四十分の蒸しだと、どんどん乾いちゃうからもうちょっと蒸した方がいいってのと、もう一個は切り返し。一回菌手入れるのを我慢しろっていうのがわかって。
僕、前のやり方だとだいたい四十分ぐらい蒸して、その跡に切り返しの二十四時間以内ぐらいにやったらいいんじゃないかって言ったんですけど。
それから変えて、蒸しを五十分にして、三十時間近くまで、二十八時間とかくらいまで触るなっていうふうにしたんですよ。そしたら、さっき言った通り多分40℃に近いところで、結構もこもこになってきてから切り返しするんで、お米が乾かないんですよね。
そうすると、皆甘酒の成功率が結構上がって。すごくいい感じになったんだけど、、。(参加者からの)意見で出てくるのは、何もしてないんじゃないかって感じになるんですよね。ほったらかしすぎて。
こんなにほったらかしでいいのか、みたいな。僕の場合だと盛りすらないわけですよ。
そう、だから本当になんにもしないみたいな感じになってくんですけど、それがやっぱね、一番今のところ、今過去最高に、結構みんな甘酒がおいしい状態になっていて、教えてもらってよかったって感じはします。
- 助野
- 結局、何を手腕において麹を作るかっていうことに尽きるんですけど。人の自己判断で作るのか、ちゃんと麹を作りたい、麹の完成、いい麹を作るというのを目的にするのか。
その違いで。僕らは、麹菌が機嫌よく動いてもらうために手助けをしているわけなので。
いい麹を作るのも目的やったら、触らなかったりっていうのは正解で。ただ参加者の人が手を入れたいというのが目的だったら、ちょっと不満なのかもしれないかな。
- 小倉
- おかげさまでもこもこ化が加速しましたね。メソッドにしてから。
だから、前僕がやったときのやり方だと、半々ぐらいだったんですよね。もこもこになる人と、ならない人が。
今ね、七割ぐらいがもこもこなってて。酒麹とかって、割ともこもこ系許されないとこ多いじゃないですか、吟醸系とか。
だけど、あれって相当プロの技で、パラッパラだけど中まで菌が入ってるみたいな、結構難しいことやってる。でも素人だと無理じゃないですか。
お酒の麹は難しい
- 助野
- そうね。
- 小倉
- だから、もこもこのほうがいいんですよね。
お酒の麹について
- 助野
- 今、お酒の麹の話を端的に言うと、お酒づくりの場合は、麹菌を生かさず殺さず育てましょうということなんですよね。
水分ギリギリのところでやるし、乾湿度っていって、室の室温、室の湿気を上げるんです。なので、僕はそれを生かさず殺さずっていってるんですけれども。そういう状態で、カツカツの状態で麹をつくる。
一方で、それ以外の私らがやる米麹づくりは、どっちかいったらと、どうぞどうぞ育ってくださいという。パラダイス状態。野放しにしていくという状態。その違いかもしれないです。
- 小倉
- ちなみに僕の本の中では、生かさず殺さずじゃなくて、半殺しっていってます。
本当に難しい。やっぱり麹って、いろんなところが作ってるんですよね。
実は味噌屋さんと麹屋さんだけじゃなくて、酒屋さんも作ってるし。
色んな発酵食品とか作ってるんですけど、結構スタイルが違ってて。その中で酒麹はすごい得意ですね。非常に得意で、お米の洗い方からして全然違うんですよね。
だからかなり綿密にやるし、あとは麹づくりの哲学で、酒のどういう味をつくるかっていうのがかなりみえる感じで。さっき言った半殺しスタイルは、最近ちょっとそうじゃないスタイルの人たちが出てきていて、割とのびのびとパラダイス状態にしてやる麹で、いい酒つくる人達も出てきているので。
結構麹づくりってファッションに似て、トレンドがあるっていう感じがありますね。
- 助野
- これ今、写したのは月桂冠さんのHPからとってきたんですけど、そこでのってる麹の品用経過で。
前半部分見えてはる、菌糸の成長を阻害するってあるじゃないですか。
阻害してるんですよ。米の表面にまわってほしくない。
米の表面にまわりすぎると、結局お酒にしたとき味がくどくなったり、重くなったりするので、米の表面にあまり菌がまわらずという感じに、できる限り米の中に繁殖させたい。いわゆるつきハゼ麹をつくりたいっていうことなるんですけど、それを目指すとこういう形に。
酒蔵によって種菌の使い方が違う
- 小倉
- こういう月桂冠みたいな使い方…、菌の数量が超少なくて、親方みたいな人が、割と神聖な感じで難しい顔してうんうん、シャッって。
すげー少ねぇなみたいな感じなんですよ。
で、僕の友人の酒蔵とかに行くと、バイトの子とかがバサバサ振ってるみたいなところあって。
結構別なんですけどね。ただこのやり方すると、ちょっと言い方悪いけど、結局できる甘酒がぶとうジュースみたいなものになっていくわけですよ。
だから、僕の日本酒とワイン両方やってる、山梨のワインの醸造地に住んでて、酒蔵に米譲ってるので、両方比較するんですけど、日本酒とワインで何が違うかっていうと、ワインって直接ぶどうジュースを酵母発酵させるじゃないですか。
日本酒って一回麹かますので。
で、麹に絶対普通のお酒にはない回路があるんですよ。それは何かっていうとうまみの回路なんですね。
うまみを作るプロテアーゼっていうのを働かせている回路なんですけど。
酒蔵によって種菌の使い方が違う
- 小倉
-
この月桂冠のやり方って、こっちの回路、切ろうとするんですよ。
だから甘みの回路だけやると、大雑把な言い方だと基本的には、できるお酒がぶどうジュースに近づいてくる。
グルコースがいっぱい入ってるから。で、そうするとそれを酵母で発酵させていくと、綺麗な甘みだったり酸味だったりってのが出てきて、ピュアな味になってくっていう感じ。
で、それを作るときにこのやり方になるっていうか。あんまりもこもこさせない。
もこもこの麹とか間違って作ってたら親方に滅茶苦茶怒られたらしくて。でも最近の日本酒とかは、あえて今まで雑味とされていたものを、うまみと捉えるものが多いですよね。
あとはお米めっちゃ削るのから、最近いいお米有機栽培米とか、地元の昔からあるお米とか作ってる、お米を削んないんですよね。だから日本酒の表記って70%ぐらいなんですけど、三割削るんだけど、三割も削らないで20%ぐらいで止めて、麹もっこもこにしてやると、おにぎりっぽい日本酒になる。
そうすると、ここが、ちょっと間違ってたら助さん言ってくださいね。
もっと上りが早くなる。この辺からこうきて。
- 助野
- そうそう。
- 小倉
- ここで切り返すかちょっと揺れるんだけど。
で、こうピークがあって。ちょっと落とすかこれくらいの感じでいくと、よりアミノ酸回路が出てくるから、お酒としてはうまみになっていく。これはやっぱこの状態の中、如何にしてプロテアーゼを働かせるか、みたいな。こっからもう、純粋にグルコースの回路を働かせて、ピークでやるとできる麹がぶどうみたいになるみたいな。
そういう方法論の違いみたいのがあるんですよね。
どっちの麹も正解というか、麹になってるにはなってるんだけど、結局何を作りたいかっていうもので哲学は変わってくるって感じですね。
米の削りについて
米の削り具合について語る助野さん
- 助野
- で、麹の、お米の削り具合の話をちょっとすると、今も言ってましたが、削らなければ栄養源が米に残るので、麹菌の増殖は速くなる。
当たり前のことですよね。削れば削るほど米に栄養分が減るので、遅くなると。
当然。で、種麹屋の場合は3%しか削らないので、米茶色ですから、だいたい米ぬかって栄養素多い方じゃないですか。
それをできるだけ残したいっていうのであんまり削らないっていうのも一つです。培養時間百二十時間で長い。
要は甘酒のさっきの味に関してですけれど、例えばこの辺売ってる甘酒で、酒屋さん言ったら八海山ですかねぇ。
八海山、あれ確か60…60やったと思うんですよ。
- 小倉
- 結構削ってる。
- 助野
- あと味噌屋さんが売ってはる甘酒も多分・・
- 小倉
- 90%
削り具合で甘さが変わる
- 助野
- そう90%ぐらいなので、きっと甘さを調整して、同じぐらいの甘さにしたときの味っていうのはきっと違うはずです。
もしかしたら、よく言えば酒屋さんのほうがすっきりした甘さで、反対はそういうことです。
- 小倉
- お米と麹の関係性って、結構僕も見てて色々あるなって思ってて、さっきの酒米の話でいうと、山田錦っていう酒米が一番有名です。
他にも五百万石とかね色々あるんですけど。やっぱり山田錦だけは、結構特殊な米で。
色々調べてみると、お米って心白っていわれるんですけど、真ん中のところの部分と、表面についてる、卵の黄身と白身みたいな感じなんですけど、そういうのがあるんですけど。山田錦ってその心白真ん中と周辺部分がすっごい綺麗に分かれてるんですよね。
だから、それをどんどんどんどん削っていって、心白のところまで達すると、たんぱく質が限りなくそぎ落とされているっていう状態。綺麗に分かれているから、だから削った山田錦ってぶどうの実みたいな感じには構造的にはなってる。
もちろん単純な話じゃないんですけど。割と古いタイプのお米とかになると、どういうふうになってくるかっていうと、あんまり綺麗に分かれてないっていう層が。
だから吟醸酒にしようと思っても、いくらお米削ってもやっぱりそれなりにうまみみたいなものは、雑味ともいえるけどとかが出るっていうことになってくるので。
玄米麹のコツを語るヒラクさん
- 小倉
- さっきは菌の話しかしなかったんですけど、どういうお米で麹を作るかっていうことも、非常に麹の質に影響してきます。
で、僕のワークショップでいうと、玄米はやめとけって最初は言ってたんですけど、途中から玄米作りだした人たちがいて、僕も悔しいから研究して、たどり着いた一番楽な玄米麹のやり方は、精米機持ってる人がいたら、精米機で、例えば四合入れたら二合にして一部づき?だから限りなく玄米に近いやつをつくるんですよ。
そうすると、それをね、本当は四合入ってるんだけど、二合分ぐらいにする。
そうすると削りきれないから、ほぼ玄米みたいな、殻が傷ついた玄米みたいな。だから、それで麹を作ると、比較的下処理が簡単に、白米のように玄米麹を作ることができるっちゃできる。で、玄米麹、この中作ってる人いるかどうかわかんないんですけど、玄米麹で甘酒作ったり、塩麹作ったりするときに、やっぱり味の質がかわるんですよね。
甘酒とか作った時はちょっとねっとりするというか。ちょっと濃厚な感じになるので、麹づくり慣れてきたら、玄米の方に挑戦しても面白いんじゃないかなぁって感じます。
助さんこれ何の写真ですか?
お二人のお話で会場も盛り上がりました
- 助野
- 山田錦と日本晴で比較していて、山田錦の方が両方蒸したらコシ…組織の構造が潰れるんやけども、山田錦の方が戻りが遅いという話。
- 小倉
- 戻りが遅いっていうのは
- 助野
- 蒸して、熱が通ることによって、米の組織が壊れるけれども、日本晴は早く戻る…固くなるけれども、山田錦は遅いので、ハゼコミがしやすくなる。
そういうことです。
- 小倉
- お酒作ってる人にいうと、山田錦は手戻りができる米だとかって聞いて。
だからどっかでしくっても、次で挽回できるみたいな。だからそこはこういう特性がるんでしょうね。
比較的、だからお米って熱が入った状態と、熱がない状態だと、おにぎりもそうじゃないですか、固くなってったり。でんぷん質がたんぱく質に変性していくんです。
多分それのやり方が、しかたが山田錦全然違う。すごい特異なものなんですね。
2018-08-04
第2部 質疑応答1
- 小倉
- 先にかわしま屋さんのほうから、話聞いてなんか聞きたいことありますか。すいません司会だけさせて…
- 司会者
- 僕もたくさん聞きたいことあるんですけど、その前に会場の皆さまから色々お聞きしたいことがあると思うので。いくつか聞いてみてもいいですか。
- 小倉
- はい。
- 司会者
- 会場の皆さま。お二人にご質問ある方いらしたら、お手を挙げていただいてもよろしいでしょうか。
- 小倉
- その前に僕の方からかわしま屋さんに質問。今回このイベントをやった意図っていうのはなんですか。
司会者への逆質問も
- 司会者
- なるほどなるほど。一旦ここで会場の皆様にお聞きしたいんですが「かわしま屋」をご存知の方っていらっしゃいますか?(会場の7割程度の方、150人程度が手をあげる。)
おぉ。割といらっしゃいますね。ありがとうございます。ご存知ない方に説明しますと、我々かわしま屋は、食品の小売りを七年ほどやってまして。菱六さんの種麹ももう五年以上、販売をしています。お客様からは、毎年全国から色んな米麹のつくり方に関してのご質問を頂くんですね。
米麹づくりの質問です。毎回色んな質問を受けて、その都度助野さんに聞きながら答えていたんですけど。やはり皆さん抱えてらっしゃるものが共通していて、今回のような麹づくりのイベントをやることで、皆さんがもつ色々な疑問が一気に解決されるんじゃないかと。そう思ったのがきっかけです。
- 小倉
- お客様感謝祭みたいな感じですね。頑張ります。
- 司会者
- ありがとうございます。
では、会場の皆さまでご質問ある方はいらっしゃいますか?
毒性のある菌と毒性の無い菌の違い
質疑応答が始まりました
- 質問者1
- 微生物の学会のお話されていたときの、毒性がある菌と、麹の様に毒性がないっていうところののお話があったときに、菌の毒性の部分っていうのは科学的にどういう違いがあるとかっていうところとかわかれば教えて頂ければ
- 小倉
- マイコトキシンっていう毒があるんですよ。
マイコっていうのは真菌とかキノコとかのことで、トキシンっていうのは毒。アスペルギルス属の菌ははだいたい強い発がん性を持ってるんですけれども、標準で出すんですよ悪いカビは毒を。
だけど、麹カビ出さないし、その近接の種というか今、カタログにあるようなやつはマイコトキシンを出さないですね。僕もメールフォームによくくるのが、私が捕まえた麹カビを思わしきものの毒性はどうやって調べられますかっていうのがあって、そういう人たちと一緒に探してみたんですけど。
マイコトキシン判定センターみたいなのがあるんですよ。
だからちょっとお金かかるけど、普通のね、醸造試験センターとか、大学に持ち込むと嫌がるんだけど、そういうカビの研究センターみたいなところに判定してくれるとこはありましたね。全部まるっと判定してもらうと、すげーお金かかるんだけど、この毒とかだけだったら数万円とかで問いあわせできるんで…。
だからどうしても気になるって人は、ちょっと調べてみるといいんじゃないかなと思います。
カビ毒との違いを語るヒラクさん
- 助野
- はい。じゃあ補足じゃないけど。歴史的なことを言うと、アスペルギルス・フラバスというのが1960年代やったと思うんですけど、イギリスでやんちゃをして、
- 小倉
- そうなんですよね。
- 助野
- 1960年に、七面鳥がいっぱい死んだという話があって。
その原因物質がアフラトキシンだったんですけど、それがどうやら発生源がアスペルギルス・フラバスというカビから出たという話で。
当時日本は、アスペルギルス使っていたので、日本はどうなんやということがあった時に、醸造試験場の村上先生という人が中心になって、種麹屋に使ってる菌株全部出せと。
で集めはって、麹を作って、当時まだ遺伝子で判別できる技術はなかったので、米麹を作って、そのアフラトキシンがどれくらいでてるか、マルかバツかですけど、結局出ないっていう確認をしたという経緯はあります。
でカビ毒ついでにいうと、アフラトキシンというのがあって、オクラトキシンというのもあって、フラバスだけじゃなくて、アスペルギルスニガーっていうのがあって、他数種類のやつが毒を出した。
で今は遺伝子でわかるので、今使ってる菌株は全部種類総研究所に出して、アフラトキシンを出すかどうかっていう検査は済んでます。
あと他のもやし屋さんもみんなやってはるとは思います。
麹の出来を確かめる方法について
- 司会者
- すいません。
今の質問とも通じる内容なんですが、多くの方からいただいてる質問で、こんなものがありまして。「出来上がった麹の出来具合を確かめる方法ありますか?できた麹の雑菌数を、家庭で簡単に確かめる方法や道具があれば聞きたいです。」
というのを。お答えいただけますか?
かわしま屋からの質問
- 小倉
- 難しいな~。
- 助野
- まず麹を食べてみたらどうですかね。
出来た麹。僕らがやっているのは、出来た麹の判別は甘酒を作ってチェックする。その時は麹と水だけでやってます。米入れるとわけわからなくなるので。
- 小倉
- さっきも言ったけど、酸っぱくなってるかどうかっていうのはすごく大きくて、コンタミネーションっていうんですよね、乳酸菌とか。
麹カビっていうのは、他の発効に使う微生物の中でももってる酵素の量がすごい多いですね。
分解するハサミをいっぱい持ってるカビ菌なんですけど。その時に他の微生物のエサも一緒に作っちゃうんですよね。
いっぱい色んな酵素があるので。その中で、一番トップは甘みですね。
グルコースをいっぱい作るので。
麹が酸っぱくなる原因
- 小倉
-
だから、後半戦、出来上がっていった麹っていうのは、他の微生物のエサでもあるわけなので、管理をちゃんとしないと、当然色んな菌が入ってくる。
僕の経験則ですけれども、あと理屈の上でいうと、一番やっぱやられやすいのは乳酸菌で。
ヨーグルトっぽいい匂いが入ってくるとは限らなくて、お漬物っぽいやつも入ってくることがあって。そうすると味もすっぱくなるし、匂いもどんどんダメになってくるっていうか。
かなり乳酸発酵は、乳酸菌の混入が進んじゃったやつとかで甘酒作ろうとすると、炊飯器からバイオハザードみたいににおいが出てきたりするから、そういうのはもう見なくても、確実になんか色々やられてるっていうことになる。
で、僕も何回かシャーレで作って、出来た麹とかで、ちょっと酸っぱくなっちゃいそうな酵母みたいなやつ出てきたことはありますね。
雑菌の写真
- 助野
- 麦麹場ですけど、雑菌たちが。
- 小倉
- こんな感じになる。
- 助野
- スーパーで売ってる麹は白くて綺麗なんですけど、3000個ぐらいいます、1gあたり雑菌って。
そんなもんです。で、だいたい塩に弱くて、酸素がなかったらと生きられないので、大丈夫です。
- 小倉
- 塩麹と味噌に使っても大丈夫ていう話ですね。
- 助野
- 知らない方が良かったかもしれない。
- 小倉
- 醤油麹とかがすごいらしくて、
真剣に質疑にお応えする助野さん
- 助野
- そうそうそう。
- 小倉
- 醤油麹とかは納豆菌みたいのがいっぱい入ってたりとか、ちょっとあんまり、皆聞いたらゲンナリするようなコンダミネーションが当然のようにおこったものを発酵するって、液体だしね。
おいしければいいですよ。
じゃあじゃあじゃあ。
- 司会者
- ありがとうございます。
- 小倉
- 甘酒、お米無し甘酒ですっきり甘い。だったらだいたい大丈夫です。
麹の作り方と麹のこれからのビジョンについて
- 司会者
- 他にご質問のある方いらっしゃいますか。帽子をかぶった男性の方。
- 質問者2
- ありがとうございます。今日は京都を超えて、四国の徳島からやってまいりました。
オーガニックファームをやってまして、お米から大豆から、何から何まで作って、毎年お米を使った麹をたてて、それから大豆を使った豆腐作りのワークショップ毎年やってるんですが。
多分かわしま屋さんが販売されたころから長白菌使って麹づくりやってます。
なんですが、三年続けてぐらい、だいたいワークショップでやるのでちょっと多めにと思って欲張って、10kgぐらいの単位でやってるんですけど、失敗したなというパターンが多くてですね。
失敗しても、納豆菌が繁殖してすごくいいにおいがして。
ワークショップに来た人が今日は納豆作るの?っていう感じで来る方がおったりして。失敗してたんですけど、それをにわとりにやったら、廃棄なんですけど、すごく元気になって。
食欲が増して、色が良くなって。毎日タマゴを産むようになって。
はるばる四国からお越しいただいたそうです
- 質問者2
- いい効果を生んでたんで、失敗も、決して失敗に終わらなかったなぁと思ってます。
で、ワークショップするにあたって少しづつ量を減らしているんですけど、まだ納得いく菌の繁殖までいってなくて。できたらこれから、来年の事を考えてこさせてもらったんですけど、量を少なめに作って、冷凍庫でキープしておいて、まとまった量を作ってから味噌づくりとかしようかと思ってるんですけど。
それについて、そのやり方でいいのか、答えて頂けたら嬉しいのと、あともう一つ。
うちで海外からの研修生がたくさん来まして。
今ヨーロッパの方中心に発酵食品に関しての質問とかワークショップに興味ある人たちすごく多くて。うちでは味噌づくりもそうですけど、色んな漬物関係とか発酵食品のワークショップするとすごく喜んでて。
今世界的に食料の問題とか健康問題とかってヨーロッパでも日本食ブームとか沢山あってですね、是非向こうで広めたいというような意見がたくさんあって。これから将来に向けて僕、個人的には発酵食品が世界を救うと思うくらい、すごく情熱を込めて思ってるんですけど。
これから日本も含めて、食べ物と食文化と、食べ物が世界にどのような影響を与えるかっていうのを、もしビジョンがあったらお聞かせ願いたいなと。
麹作りの工程を語るヒラクさん
- 小倉
- 一個目の話。絶対ね、まとめて作った方が楽。僕最初の、さっきメソッド作るときに失敗しまくったっていったでしょ。
あれ、減らしてったから失敗しまくったんですよ。だから、正直1㎏弱、正直難しくて、乾いちゃうし熱出ないから。
だから5kgとか作ると超楽なんですよ。
安定して発酵するんで。だからわざわざ小分けにしていくっていうのは、ちょっともったいない。
だから多分ソリューションとしては、最後の仕上がりが気に入らないんだったら、10kgとかで床っていうかね、大きいので作って、その二日目の切り返し、要は盛り移すときの時間を遅くして、小分けにして、最後仕上げをよくするとか。のほうが僕はいいと思う。小分けはしないほうがいい。
- 助野
- 僕も同じです。10kgに対して菌子を一袋。
で種菌を割って、32か3ぐらいででどうなるか様子見はるのが一つ。それで、床をそうやってとってはるかっていうことですけども、どうとってはるんですかね。
布一枚とか。
- 質問者2
- 布一枚。
- 助野
- で、どんな環境においてはるんですか。
- 質問者2
- 自分で自家製の室みたいなのを作って、毎年一月の後半から二月に行うので、夜になると0℃くらいになる部屋で作るので。
時間はかかるんだなと思いながら、保温はゆたんぽでして、杉の板で箱作って、そこにならべて布一枚で、という感じでやっているんですけども。
- 助野
- 温度計は入れていますか。
- 質問者2
- 入れてます。
- 助野
- 何℃くらい、包んで箱にやったら。
- 質問者2
- 多分、ちょっと低いのかな。
- 助野
- 最後にそれから下がっていってるとおもうんですよ。そこでしょうね。
- 小倉
- 熱源がたりないということもあるでしょうね。
量が多くなると、当然熱源の量も。地熱で始めると自走するんだけど、最初の段階は熱源の量、それなりに多くなってくる可能性があるんで、そこが多分。
- 助野
- うん、だと思います。
- 質問者2
- 前もって温めておくとかいう。
- 助野
- その部屋自体あっためられるのであれば、部屋自身をあっためといた方がいいでしょうね。
- 質問者2
- わかりました。
- 小倉
- そこだけ。絶対ね、いっぱい作った方がいいですよ。小分けめんどくせぇんだよなぁ。
それで、もう一個の二つ目の質問。助野さんありますか?
助野さんも真剣に回答されています
- 助野
- さっき大豆で豆腐って言ってはったので、豆乳、甘酒みたいなやりかたでね、水の代わりに豆乳に麹入れたら結構おいしいものできるんですよ。
いやいやいやいや、テレビで甘酒に豆乳混ぜたらどうのこうのって言ってはるのじゃないですか。
僕らそれを聞くとね、仕事柄ね、いやいや豆乳、麹入れて発酵させた方がええやんってなるんですよ。どうしても。
- 小倉
- おいしそうだなぁ。
- 助野
- というのも、豆乳ってアミノ酸のじゃない、たんぱく質の液体じゃないですか。
で麹には、たんぱく分解酵素ありますよね。じゃあたんぱく質分解しますよね。
でアミノ酸できますね。
健康の重要な要素ってアミノ酸ですよね。じゃあそれでいいじゃないかと。そういう話になります。
一応分析もしてるんですけど。これね、豆乳って、すいませんちょっと小さくしますけど、豆乳ってアミノ酸ほとんどないのは当たり前ですけど、麹を絡ますと、やり方はなんのこともない、乾燥麹1に対して液体を2でやってるんです。
やり方60℃設定で一晩。なんですけど、それで甘酒と同じようになって分析出すと、アミノ酸こんだけ増えるんですよ。
トータルで足すと、こっちは豆乳0で発酵豆乳は1800になる。ちなみに甘酒を対象で出したら、甘酒は870と。
豆乳と麹について
- 助野
-
テレビ的にはこの甘酒と、豆乳混ぜろっていわはるので、870+0を混ぜろというんですよ。
んなもん最初から甘酒を豆乳と麹でやったほうがええやろという。温度的には甘酒とおんなじ温度でいいんです。
なので甘みも出るんですよ。
で、豆乳もともと大豆じゃないですか。だからそうそう失敗はないんですよ。そんなに神経質にならなくてもね。
飲めるんですよ、どっちにせよ。なのでオススメはしてます。
で幸い麹菌が持ってるたんぱく分解酵素っていうのを、大まかにわかると二種類あるので、変な苦みって出ずらいんですよね。今日はここまで喋る気はさらさらなかった。
ついでに言うと、これがその表で、上の方見てもらうと酸性プロテアーゼ酸性カルボキシペプチターゼとっていうのがあるんですけども。酸性プロテアーゼっていうのは、たんぱく質を大まかに切る酵素で、酸性カルボキシペプチターゼっていうのは、たんぱく質をアミノ酸に変えていくんですけど。
アミノ酸の単位でペプチドってたまに健康食品であるんですけど、その中に苦みペプチドってやつがあって、20種類ぐらいあって、苦みを伴うペプチドがあるんです。
でも豆乳に麹をさらせさせても苦みが出なくてちょっと甘いアミノ酸になるものができるので、女性の方は特にどうかなと。
イソフラボンも、研究してないからわからないんですけど、イソフラボンも吸収されやすいかたちにはなると思うので、尚良しかなと。
はい。ちょっと脱線しました。ですので、豆乳やったらあると思うんで。やらはったらいいかなと思います。
たんぱく質について語るヒラクさん
- 小倉
- 今、ペプチドみたいな話が出たんですけど、生物学的に見てみると、たんぱく質ってアミノ酸っていう粒みたいなものだと思ってるんですね。
上がいっぱい紐状についてて、これが立体的になったものが。
ここにかいてありますね。たんぱく質とアミノ酸間っていうか結構短く切れているものがペプチドで。
この辺の、要は人間の舌って結構微妙とも言えるしバカとも言えて、すごく複雑な分子構造をもったものってあんまり味覚が働きにくいんですね。だから、たんぱく質もものすごい大きいたんぱく質になると、味覚が働きにくいんだけど、それがちぎれてペプチド状とかになると、色んな味覚が働く。
ペプチドの形によって動く味覚の部分みたいなのが変わってくるっていうんのが一個あったりして。
発酵食品っていろんな味がするのって微生物が酵素使って長い紐みたいなのを、ここが切ってくんですよね、モデル的に空間的に考えて。そうすると、どんどん繋がりが細かくなって短くなるから、舌の味覚の味覚受容体のところが動きやすくなって、色んな味を感じるみたいな、基本的な理屈ではありますね。
甘酒の持つ健康パワーについて
- 小倉
-
ちなみに僕昔、ちょっと一、二年前くらいに、とあるバイオメーカーと仕事をしていまして、その時に面白い実験結果があって、それは大豆のたんぱく室が麹によって発酵すると、免疫の癖を予防するという研究結果がでたんですね。
それは理屈はまだよくわかってないんだけど。
人間の免疫システムって大きく分けるとセンサーが三つくらいあるんですよ。ケアライフエフェクターっていうんですけど。それが1,2,3例えばあって、その中で全部がバランスよく動いてれば何も問題ないんだけど、例えば1が突出して強くなっちゃったりとか、3が突出してダメになると、例えば花粉症になるとかね。
あとはアトピーみたいになっちゃう、自分と自分の敵の区別がつかなくなってしまうみたいなのがあって。
大豆を麹で発酵させるとなぜか崩れてるものを一部生成する働きが出てくるみたいなことがあったから、多分この甘酒飲んでいると花粉症とかになりにくいみたいな、適当言っちゃいけないんだけど。
なんでそうなっているのかっていうこと自体は、臨床的にはそういうデータ出てるんだけど、何故かっていうのはまだわかってない段階なんですよね。
質問、あともう一つなんかありましたっけ?
- 司会者
- 世界全体で日本の発酵文化が注目されているんじゃないかと。そのトレンドに関してはどう思われますか?っていう点ですかね。
- 小倉
- 助さんとこにも来るでしょ、外国の。
海外でも注目されている麹
- 助野
- はいはい。来はってさっきちょっと紹介した講座でも、海外で麹を作ってる人が来て、向こうでなかなか理解とか浅いんで、ポイントを聞いて帰らはると。
最近は酒屋蔵でもアメリカで、ちっちゃい酒蔵が結構できてて、そこの人が直接来はったりして買って帰られることもありますし。どうもアメリカの人に聞いてると、日本の種麹は向こうでは日本の十倍くらいで売ってるらしくて。
- 小倉
- 結構ビジネスチャンス。
- 助野
- そう。ちょっとそうやって聞くと、ちょっとやりすぎやと。
それをなんとかしたいっていうのをしてて。広がりが大きければ大きいほどさっきの看板じゃないんですけど、日本の菌はしっかりしとかないといけないなというのは思います。
- 小倉
- 僕、今年の九月に、ローマ、イタリアのローマの生物研究所に行って、一緒にプロジェクトをやらないかって言われてるんですけど。
そこはどういう話かっていうと、元々イタリアからデブを減らしたいっていう話で、頼んでくれたおじさんもなかなか恰幅がいいんですけど。今EUってすごく体質病とか成人病ですごく大きな問題が出ていて。
糖尿病とか。ああいうのって一回なっちゃうとずっと通院しなきゃいけないので。医療費もかさんで、国家レベルで問題になっていると。
その時に僕らからするとすごい当たり前なんだけど、毎日の食事で病気予防出来たらいいよねっていう話にもなってきてるんですね。僕は海外に行って衝撃受けたのは、僕はアジアに住んでるから医食同源っていうのは、結構身についている。
食べて体を治すっていうのが。
日本と海外の食文化の違い
- 小倉
-
でも割とヨーロッパではそうじゃなかったりして、おいしいものを食べると健康を害するからサプリメントを飲むみたいな、そういう考え方。
微妙に食べることに後ろめたさみたいなのを感じているのがやっぱりあるみたいで。
僕のプレゼンテーションとか色々話聞いた研究者の方は、どうしてもオーガニックヘルシー志向になっていくと。イタリア料理とか動物性のものとか油をいっぱい使ってリッチな味作るわけですよね。
でもそれが病気のもとになってるから、ガストロノミーというか、美食を諦めなくてもリッチな味を出せる、イタリア的なソウルフードみたいなのを作りたいっていった時に、僕の話聞いて麹に目をつけて、イタリアの食材、麹で発酵させてみねーかみたいな。
それで実験データとってみようみたいな。
で、うまくいったら、あんまり太らなくて、味リッチなイタリア料理ができるぞ、みたいな話があったりとかして。で、思った以上に、僕もよく行ってるんだけど、和食ブームが一回回って、今度は和食の根幹を成している。
さっき言った根源ですよね。根源を成してる発酵っていうものに興味を持つ人が集まっている。
ただ課題として、僕の農大の先生達とかから、僕たちが受け継ぐパターンだと思うけど、あんまり海外向けに発信してこなかったんですよ。だから、びっくりするぐらい、麹とは何かって海外では知られてないし、微生物学会とか行っても、食品学会とか行っても。
で、どれだけ麹が大事なのかっていうことも、全然知られてないし、カビっていうと毒だろって話なので。
僕らの世代の一つの課題。いやそうではなくて、実は、僕たちには僕達の歴史があって、そこにいっぱい色んな健康機能とかね。
文化的な背景があるんだってことを、向こうの人たちにももちろん共有できるような形で、メソッドを発信したり、一緒に作っていたりしようかなっていうふうに思ってます。
- 質問者2
- ご意見ありがとうございます。是非頑張ってください。私も頑張りますので。
- 小倉
- 僕はプレッシャーに弱いんで、ぼちぼちやりたいと思います。
2018-08-04
第3部 質疑応答2
- 司会者
- ありがとうございます。他にご質問ある方…
- 質問者3
- こんにちは。今イタリアの話が出たんですけど、知人のイタリア人が、ひよこ豆で味噌を作ったっていって、
- 小倉
- かわいいですね。
- 質問者3
- すごく上手にできましたっていう。
これはちょっと私事なんですけど。質問がありまして、私もその方と同じような感じで、地元で田んぼとか畑とかやって、大豆・小麦・米・古代米とかを作って、例えば古代米を削って、麹作って味噌仕込んだり、あと醤油も同じ形で麹で作ってまして。
それがもう広がっちゃって、前回の農閑期は、毎週醤油搾り、醤油麹仕込みか、みたいな感じで、すごい忙しくなっちゃったんですけど。
田んぼに稲麹が、黒いの、つきまして。
イナダマについて
- 小倉
-
どうしてもあれを見ると、先ほど、手を出してはいけないってイナダマで、麹を、種麹を作るみたいな。
どうしても誘惑にかられてしまうんですが、それはやられたことがありますかっていうのと、やっぱり危険なものなんでしょうかっていう、ちょっと聞きたいなと思います。あとできればもう一つ、菱六さんの種麹を長年毎回使ってるんですけど、実際どうやって作ってるのかなっていうのをよく知らなくて。
創業三百六十年ということなんですが、三百六十年前の作り方と、今の作り方はもちろん違うと思うので、その辺を簡単に教えていただければと思います。
- 助野
- イナダマでしたっけ。別に使はってもいいと思いますよ。
出すとこに出さなかったら。出すとこ出して、検査でて、大丈夫やったら使はったら。
- 質問者3
- 自分で、椿のはいとかで。結構簡単にできるもんなんですか。
- 助野
- さぁー、俺もやったことないでねー。運が良ければですかねぇ。
- 質問者3
- もしやったことがある方がいらっしゃたら、懇談会の時にでも教えてください。
麹の検査について語る助野さん
- 助野
- ねぇー。さっき検査結果は全部もらってますって言ったんですけど、これが検査結果なんです。
一株一万円ででてくるんですけど、検査出すとね、グループ1、2、3に入ってれば、大丈夫ですという話になって。
ここから外れると、それはアフラトキシンに使うんですねっていう話になるんですけど。種類総研究所に出すか、あとは静岡に、ちょっと名前忘れたんですけど、同じ検査をしてくれる会社があるので。
そこでやらはってもいいのかなと思います。それでオッケーだったらいいんじゃないですか、と思います。
あとはその株を形態培養していって、ちゃんと麹になれば、そこがあれですけど、はい、とは思いますね。で、種麹の作り方は、ベースは昔と変わってないです。
菱六三百六十年とか言ってるのは、根拠的なものが一個だけあって、同業者が書いた書き物があって、私ら大体口伝でやり方を引き継いでいくんですけど。近藤家がやってた会社が、もやし屋さんが、どうもそれが出来なかって、種麹の作り方を全部書いて残されました。
で、それがうちにもコピーがあって、見てると大体作り方は同じでした。例えば米は、滋賀の米が良くて、できることなら小粒の方がいいと書いてあるんですけど、確かにそうなんです。
表面積が多い方がいっぱい胞子作るので。今はそんな選べないんですけど。で、あとは温度経過は、さすがにその当時、三百六十年前は温度計がないので、指を突っ込んで何秒したらこんな感触があるとかね。
そんなことが書いてあるんですけど。ベースは変わってなさそうでした。読む限りは。
で、作り方はあっさり言っちゃうと、米にカビつけてはやしてるんですけど、後は麹づくりとほぼ一緒で、最初は床が30℃くらいから初めて、翌朝40℃になったら麹の種振って、あとは、そのあとの温度経過は僕もちょっと試行錯誤なんですけど。麹蓋に盛って広げ終わったら33℃か34℃くらいにしてですね。
でそっから六時間経ったら36、7℃?でそこそこしまってきたら、ちょっと手を入れて。で、夜に38℃くらいまで上がって、翌日に麹室の場所を変えて、品温をできるだけ30℃まで下げると。
麹菌の胞子着生に最適な温度は、30℃なんですよ。増殖の最適は36℃、5℃なんですけど、そんなようにしてやるかなって感じですかね。
1gあたりに胞子が五億個ぐらいつけばいんじゃないかな。でも、私ら種麹も乾燥さすんですよ。
日持ちさすためにですね。なので、そこはきっとやられる時は、凍結、冷凍保存になるんじゃないかなぁと。だから小分けにして、冷凍保存。
ぐらいしかもたせる手段はないのかもしれないですね。
あとはどうやってそれを維持していくかでしょうね。一回作ってはいできたわー、じゃないレベルで多分、やってはると思うんで。
その菌株を確実に保存して、毎回使える状態にしないといけないと思います。想像つかないですかね。
きっとね。
またうまくいきよらん時は言ってみてください。
ヒラクさんのイナダマを使った麹づくりについて
- 小倉
- 僕もおろしてきたことあるんですけど、イナダマとか。イナダマは一勝一敗です前回ので。
やっぱね、多分甘酒できて麹っぽくなったけど毒があったっていうのって多分なくて、失敗する時ってすげえわかりやすく失敗するの。お米が緑色にどろどろに溶けたみたいな。
あ、もうこれ麹にならんみたいな感じなんですよね。
うまくいくときはだいたい結構麹っぽく、確かになるんですよね。だから、酵素がそれくらい強いかとか測ってみないとわからないので。
で、イナダマとかは、麹菌に愛されたおじちゃんとかおばちゃんとかいるんですよ。あのおじちゃんがとってきたやつはだいたい味噌になる、みたいな。
ナウシカみたいな。
いるんですよね。イナダマはそういう感じで、おろしてくるのは、はいが無くても結構できて、おこわみたいな状態にしとくんですよね、盛って。
それでやっとくと、炊いたご飯になると虹色になるんですよ、色んな菌がついて。
蒸しておこわ状態のやつだと、そもそも水分がぼちぼち絞られているので、比較的麹菌に近しい生体のやつがやってくるので、青・緑・黄色みたいな。比較的陽スペクトルが似てるみたいな状態になるので、その中で一番麹菌っぽいやつをまずとってきて、もう一回純粋培養に近いこと、スクリーニングっていうんですけど。
やっていくと、確かに麹菌っぽいのができて、それにじゃあ、5、600g、それこそもやしに近い状態にしてやってみようかって、やっていくと出来ますよ。
はいかけると確かにいいんだけど、そのはいかけなくても別にできるし、水分を絞っておけば。
あとは、いそうなところに置くっていう。
結構季節が大事。
季節が。冬とか絶対多分無理で、比較的あったかい時いいんじゃないですか。
湿気あったり。
かなぁっていうのを感じますね。僕の経験則ですけど。多分この中にもっとマニアックな人がいるかもしれない。
- 質問者3
- ありがとうございました
2018-08-04
第4部 ナカジさんのお話
- 司会者
- ありがとうございます。
今日は発酵文化研究家で麹の学校主催のナカジさんがいらしてるんですが。ナカジさん、よろしければ一言なにか、コメントか質問頂いてもいいですか?
- ナカジ
- お二人に質問??急に!?
- 司会者
- ええ。質問でもコメントでも何でも良いですよ。
ナカジさんからのご質問
- ナカジ
- こんにちは、ナカジです。
麹の学校っていう名前で、麹作りをしてるんですけど、助野さんとかもね、ヒラクくんとも一緒に麹蔵行ったりとかして。よく発酵とか、麹っていうテーマでお話させていただいてます。
さき、質問あったらしてくださいねって言われたんですけど、助野さんと僕、もう5,6回以上くらいずっと一緒に東大イベントとか一緒の勉強会とかやってて、
- 助野
- 癒着してるんです。
- ナカジ
- 質問…。一緒にご飯食べたりとかはする。
飲んだりとか、くだらない質問とかはするんですけど、こういう真面目な場で、何聞こうかなって、新しいことが浮かんでこなかったんですけでも。僕が一個思うのは、僕もヒラクくんとか、同じくらい、その前後ぐらいで一緒に麹のワークショップって初めて、僕も何年ぐらいになるだろう?
六年か七年ぐらい前に始めたんですよ。
その時ってすごいマニアックな世界で、自然食とか手作りとか自然食通信読んでる人、とか。知ってます?自然食通信、ていう本があるんですよ。
本読んでる人とか、天然酵母でパン焼いてる人とか、そういうマニアックな人とか。麹のコツとか発酵のコツとか興味ある人いなかったんですけど、この二、三年ですごい広がってきて、一般の主婦の方とか、サラリーマンの人とか、都会生活者のひとがすごい増えたんですね。
なので、こういう麹づくりがテーマっていうだけで、こんだけ今日人が集まったのは、この二、三年で驚異的だなって思いました。
- 小倉
- 僕も全く同意見で、すごいよね
- 助野
- 僕もそう。
- ナカジ
- 本当は五、六年前まで、世間のアンダーグラウンドな世界だったんですよね。
助野さんとかは三百年とか四百年単位でアンダーグラウンドな世界。
- 助野
- ちなみにいうとね、僕は2002年に会社入ったんですけど、その四月入社じゃないですか、普通。
四月入ってすぐに、ガラガラっと戸を開けておっちゃん達着て、もやしって書いてあるんですけど、どこのラーメン屋にもやし納めてるんだって。
そんなもんですよ、最初は。
ナカジさんも麹の流行を感じています
- ナカジ
- 種麹屋さんが、秘伝中の秘っていうか、一子相伝の世界なので、酒屋さんからしても、種麹屋さんってもう、技術が絶対出ない。
その中で、この二、三年で助野さんがぽって出てきて。何でも教えるよ、みたいな感じで。
種麹のことを伝えてることも、この二、三年のすごいことだなって思うんですよ。
- 助野
- まぁ。肝心な事はまったく言ってないですが。
- 助野
- 麹のこととか、助野さんがこうやって種麹屋さんが基本こうやって表に出てくることとか。
あと麹ってのも、去年のレストランの、レストラン業界の中では、流行のキーワード対象みたいな感じで、海外で。今の料理業界のトレンドは麹でして。
2017年今麹っていうのは発表されて。三ツ星のレストランとか、ガストロノミーの人たちも麹使ったりしたんですよ。
でそれがさっきね、ヒラク君が言ったみたいに、だしブームから麹づくりブームにヨーロッパの人がね、海外料理業界の人がなってきて。で、実際麹を作るっていうところまで、海外の料理のシェフ達が入っていきましたよと。
僕が今回ね、聞いてみたいなぁと思ったのは、これから麹ってのも、ゆくゆく種麹の技術とかも、日本だけじゃなくって、海外に広がっていくと思うんですよ。日本では、日本語では結構出てるから、でも海外では多分出てないんですよね。
なので、でも、日本語ででてるやつも、どんどん海外に出て英訳されたりとか、本とかネットの情報とかSNSとか、どんどん海外に出ていくと思うんですけど。種麹とか、麹の技術とかが日本だけじゃなくて海外に広がっていく、っていうところで、ポジションな面もあるし、ネガティブな面もあるし、両方あると思うんですけど。
そこらへんについて、どんどん広がっていくっていう流れが来ているってことについて、助野さんとかヒラクくんとかどう思うのかなぁっていうのをお聞きしたい。
アメリカでも研究が進んでいるそうです
- 助野
- お酒って杜氏さんがよく作らはると思うんですけど、南部杜氏講習会っていうのが毎年あるんですよ、岩手で。
私今回行ってきて、そこで最終日、岩手、岩手か。南部美人ってあるじゃないですか。
そこの社長の講演会。で聞いてると、アメリカ入った時に、初心者レベルの酒造りの話をしにいくつもりでいかはったら、どうもそれでは物足りないらしい、ぐらいのレベルにはアメリカはなっていて。
日本の新入社員に話すぐらいのレベルの酒造りの話を、結局切り替えてやられたみたいなんですけど。
向こうのアメリカで酒をつくっている人たちに言わせると、あと十年くらいしたら、もしかしたら俺らのほうがいい酒つくるかもしれないぜっていう。セリフを残して帰っていった。
それぐらい、向こうの方で酒つくってる人たちは、今は知識は乏しいかもしれないけど、熱意があって、いっぱい失敗をしてはるみたいなんですよね。そこはもしかしたら大きく伸びはる要因なんじゃないかと。確かに十年は無理かもしれないけど、十五年くらい経ったら、もしかしたらもしかするかもしれないなっていうのはありました。
- ナカジ
- この前、レポートがあったんですよ。
海外の小さい酒の品評会とかあって、それを日本の酒の鑑定士が、鑑定しましたっていうイベントとレポートがあがってたんですけど。今の、さっき助野さんが言ったのと同じなんですけど、ちょっと雑菌数が多いので、雑菌数が多いなら、乳酸発酵しちゃったりとかしちゃって。
日本のお酒にはない香りとか、異臭とか、若干まいる。
っていうお酒が今のところ多いっていうレポートが描かれていてんですね。それは、蒸しの機材の問題とか、衛生面の問題とか、日本人と観点が違うからっていうのはあったんですけど、そこらへんは向こうの人ってすっごい調べるし、すごい研究するんですよ。
だから、日本の好きな人より、よっぽどマニアックな人多いので。
もう、二、三年ぐらいでそこらへんはどんどん、クリアしていけるんじゃないかなって思いましたよね。っていうのはありました。
海外の麹事情について
- 小倉
- 僕もよくわかんないまま、色んなところに広げてしまって、農大の先生に怒られそうな感じだから、なんとも言えないんですけど。
例えば日本酒って、お酒ってポータブルになりえる発酵のケースと、どうしても老化とかから離れられない発酵のケースっていうのがあって、日本酒って実はポータブルなんですね。
なんでかっていうと、お米研がないとまずいでしょ。で、麹自体も、その土地でしか絶対つくれないってもんじゃない。
ワインとかってその逆で、ぶどうって遠くに運ぶとどんどんダメになっちゃうから、ぶどうがとれてすぐ作った方がやっぱいいんですよ。そういうのがあるから、日本酒って潅漑をもったビールみたいになれるってわけで。
麹をつくるっていう技術は要は、モルトつくるってことと結構近しいので。それが標準化されていくと、もしかしたら日本じゃ全然ないとことで、すごくおいしい日本酒ができるって可能性は十分ありえる。
多分中国とかでも、もうできてると思うんですけど。っていう話もあります。でも、もう一個技術的な側面だけで、文化が変わるかっていったらそうではなくて。僕もそれで最近イタリアとか縁があって行って、色々話したりしているんですけど。
じゃあ日本のイタリア料理はちゃんとイタリア料理、イタリアンしてるかったら、以外にそうでもねぇ、みたいな。おいしいところはあるんだけど、でもナポリタンのピザとか、じゃあイタリア料理なのかっていったら別にそういうわけではなくて。
イタリアでも注目される麹
- 小倉
-
食材として、メニューとして、それがもってかれる。
要は部品としてもってかれるってことと、文化としてもってかれるってことは違うレベルだと思うんですよね。だからそこは僕は、むずかしいところでもあり、面白いところだと思っていて。じゃあ、和食というものが、きちんと入っていくためには、多分その技術的な問題以外がすごい長い時間がいる。
それはその歴史的背景とか、食べるシチュエーションとか、味覚の美意識とかっていう、技術が提示する問題って浸透していくのに時間がかかるので、それはそれでハードルがあるでしょうっていう話は合って。それはちょっと大変なところ。
で面白いとことは、向こうの人は向こうの人の発想で使うでしょう。それさっき言ったイタリア料理って話とか、そうすると、日本に追いつけ追い越せっていうよりは、日本がもともとルーツではあったけどしれないけど、もう別物になって、またちがう花開き方をするっていう可能性があるような気がしていて。
僕はどっちかっていうと最近、酵素の方が面白いなって思い始めて。
それは海外の人達と結構ずっといるからなんですけど。そうすると、僕たちがとても思いつかなかったような、すごい麹の使い方とか、お酒の合わせ方とかっていうのをつくって、そもそもなにがおいしいかっていう基準自体を変えていくっていうことがあるかもしれないですよねぇ。
インドの人達、ココイチ行ったら、超おいしいとか。うめぇ!って。全然インドカレーと違え!そういう未来が待っているような気がします。
海外での体験談
- ナカジ
- ヨーロッパの酒造の話で、どぶろくの話なんですけど、面白いことがあって、今、寺田本家の杜氏の寺田優さんもこちらにいらっしゃってるんですけど。
優さんと五年ぐらい前にでしたっけ、七、八年前にスローフード、イタリアのスローフードっていうムーブメントあるじゃないですか。
二年に一回、隔年で世界中のスローフード協会の人が集まる大会があるんですよ。食のオリンピックみたいなのがあって、その時に、向こうでオーガナイズしてくれた南フランスに住んでる日本人の方々がいて、その方が寺田本家を呼んでくれたんですけど。
その人達が、寺田本家の醍醐のしずくっていう、室町時代の製法で作ったどぶろくみたいなお酒があるんですよ。その菩提酛と同じやり方で、南フランスで菩提酛の日本酒つくったんですよ。それをもってきてくれたんですよね。あれがすごい驚異的だったんですよ。
- ナカジ
- おいしかったんですよ。で、香りが南フランスで菩提酛っていう方法で。
菩提酛ってどういうことかっていうと、生米と炊いたご飯と水ではって、それを空気中の乳酸菌とかを酵母菌によって呼び寄せて、その水を仕込み水にして、どぶろくろつくるっていう製法なんですけど。日本でやると、日本語でどぶろくらしいものが出来るんですけど、南フランスで菩提酛作ったら、そのお酒はシャンパンの香りがするんですよ。
なんだろう、すごい上等な白ワインの熟成させたような、高級白ワインの香りがして。
やっぱり同じ五大元でやっても、酵母とか乳酸菌がフランスだったんですよね。あれびっくりしました。
あれはすごいおいしかったんですよ。
海外のそういうお酒作る人、発酵が好きな人って、ナチュラリストとか、オーガニック系の人とか、自然界志向の人が多いので。お酒作る場合も、そういう個性とか、自然な菌を求めていく方向に走る、流れてる人も多いのかなと思うので。
その中で、海外は海外で菩提酛とか、どぶろくとか、酵母菌も自然界から取り入れてみると、お米で作っても全く違う。日本のイタリアンとか、日本のイタリアンの種類も、ミュシュランの人とかもいますけど。そういう海外の、海外でしかできない日本酒ってのがそのうちでてくるんじゃないのかなって思ってます。
- 小倉
- 時間ですか、もしかして。
最後までお話の尽きないトークイベントとなりました
- 司会者
- はい。そうですね、ありがとうございます。まだまだ聞きたいことは沢山あるんですが、
続きはまた、来年という事で(笑)。また来年このお三方をお招きしてやりたいと思います。よろしくお願いします。ヒラクさん、助野さん、麹の学校のナカジさん、ありがとうございました。
イベントのほうは、これにて終了となります。今日は長い時間どうもありがとうございました。
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