お酢ってこんなに魅力的!酢ムリエ(R)内堀光康さんインタビュー
多くのご家庭に常備してある「酢」。
今日では健康効果があきらかにされ、調味料としてだけではなく、健康のためにとりいれたいものとなっています。
今回はそんな「酢」の魅力や疑問について、お酢のソムリエこと”酢ムリエ®”として日々酢を探求しつづけている内堀光康さんにお話しを伺いました。
内堀光康さんの書籍には、お酢に対する深い愛が随所に感じられます。
文体からは紳士で柔和な人柄を感じ取れます。
お酢と長く付き合ってきた事で、(お酢を使ったお肉料理のように)内堀さんご自身の人間性も柔らかく仕上がったのではないでしょうか。
プロフィール
◎内堀 光康
オークスハート株式会社 代表取締役
酢ムリエ® No.0001 内堀 光康
1961 年 岐阜県生まれ
山梨大学 工学部 発酵生産学科卒、商社勤務を経て、家業の内堀醸造株式会社入社。
2003年2月ジェイアール名古屋タカシマヤに「ビネガー専門店オークスハート」1号店をオープン。
その後、日本橋髙島屋、大阪髙島屋など全国に店舗展開。2006年開発部門における農林水産大臣賞を個人で受賞。
現在は国内のみならず世界各地にも出向き、’’酢ムリエ®’’としてお酢の楽しさや魅力を広める活動を精力的に続けている。
- お酢の魅力を一言でいうと?
- 人を’’さわやか’’にすることでしょうね。
すっぱいだけでなく、酸味という酢の位置付けは大きいです。
心を’’さわやか’’にできる酢は、人にとってかけがえのないものだと思います。
- お酢との上手な付き合い方は?
- 美味しく付き合うことが大事だと思います。
例えばお寿司。お寿司のシャリだけを食べると酸っぱさを強く感じますが、ネタがのった美味しいお寿司は、酸っぱさを感じることは少ないと思います。酢がおいしいと思うときは酸っぱいと感じないのです。
酸味が目立たない味になった時と言ったほうがよいかもしれません。酸っぱく感じた時は、酢が目立つ味であり、食事や飲み物として’’美味しい’’と言い切ることが出来るかどうかと判断すると、難しいのかもしれませんね。
酸味の加減が、お酢との大事な付き合い方なのではないでしょうか?
- お酢を料理に使うおすすめの方法は?
- 加減酢(カゲンス)がおすすめです。
私のおすすめする加減酢とは、お酢にたっぷりのだし汁やお水を加えて調味したものです。目安としては、お酢を水や出し汁で10倍くらいに薄めたものを仕込み水のように使うと良いと思います。
また、酢を飲みたいと思う方は、500mlの水から30ml(大さじ2)だけ出して、酢15ml(大さじ1)+レモンやライムなどのすっぱい果汁15ml(大さじ1)を水470mlの中に入れて飲むことをおすすめします。
すっぱいものの中にすっぱいものを入れると酢のすっぱさがわかりにくくなり飲みやすくなります。
- お酢を使ったレシピはなにがおすすめですか?
- おすすめの使い方は2つあります。
1つ目は、オイル&ビネガー。
お酢とオイルを混ぜてかける方法です。
サラダに自分のお好みのお酢を少量かけ、その上にお気に入りのオイルをたっぷりかけるととても美味しく召し上がれます。2つ目は、食材の「サラダ化」。
脂肪分を含む食材を、私は「サラダオイル」とした視点で見つめ、その食材に酢をかけて、オイル&ビネガーの感覚で食べてみることをおすすめします。脂肪分を含んだ食材は、お酢との相性が良いのです。
例えばアイスクリーム。
意外かもしれませんが、アイスクリームは、乳脂肪が高いものほど美味しいと言われます。乳脂肪をオイルと考え、アイスクリームに酢(できればデザートビネガー®が理想ですが)をかけて、オイル&ビネガーのイメージで食べるのです。
また、美味しい生チョコも同様です。カカオはカカオバターを多く含みます。
バターは脂肪分が高いので、これもオイルとして考えてみて、酢(できればデザートビネガー®が理想ですが)をかけます。
どちらもお酢との相性が抜群です。是非試してみてください。
お酢の酸味が苦手な方は、お酢をうんと冷やしてしまうか、クラッシュアイスのように凍らせてなにかと一緒に食べることがおすすめです。人の舌は非常に敏感に出来ていますが、冷やすと感覚が鈍りすっぱさがわかりにくくなります。
しめ鯖にお酢を少しかけて、うんと冷やして食べると美味しいですよ。
- 一日にどれくらいの量のお酢をとればよいのですか?
- 1日およそ15ml〜30mlが摂取の目安です。血圧の高い人などに効果がでるという結果が出ています。
- どれくらいの期間、お酢をとる必要がありますか?
- だいたい3〜4ヶ月ぐらいが目安です。
- ほかにお酢にはどんな効果が期待できますか?
- お酢というのは薬ではありませんから、機能性や効果・効能を目的にするのでしたら、お医者様の指導にしたがってお薬を飲んだほうが良いでしょう。
お酢は食品という点で、体に優しい調味料であり、飲み物にもなります。
お料理などに取り入れてお酢と美味しく付き合うということは無理のない接し方になるような気がいたします。
そのうえでお酢が持っている”代謝を良くする”という働きを期待されてはいかがでしょうか?
あくまでも、”食品のなかで自分の身体を助ける補助的な役割”としての認識に留めておいていただければ良いかと思います。
- 良いお酢の条件・選び方とは
- むずかしいですね。使う用途によって選ぶお酢は異なります。
食事には色々なシーンがありますし、お酢の使われる用途も料理に対する調味料から飲用まで、使い方も幅広くあります。
しいていえば、酢に求めるものとは’’さわやかなテイスト’’であることを踏まえ、用途によって明確な理由をもって「自分の好み」で選ぶことです。
さまざまなジャンルのお酢を試して体験し、好みのものを選ぶのが良いですね。ぜひいろいろなお酢をチャレンジして出会いの数を増やしてください。
お酢は食品なので、いろいろなワインを楽しむようにたしなんでいただければ幸いです。
また酢が余った場合は、台所やお風呂のぬめり取りなどで使えますよ。
ーーーさまざまなお酢が並べられたお部屋。お酢だけでもこんなに種類があるなんて驚きです!
- 製造工程によるお酢の違いは?
- 発酵法によって良いか悪いかのような比較をよくされがちですが、私はどちらも良さがあると思っています。
酢酸発酵は微生物の働きによるものです。
昔ながらの酢酸菌の働きを自然環境に任せる静置発酵は複雑な味わいが残っていることでお酢に個性が出ますし、酢酸菌の働きを管理する通気発酵による醸造方法ではスッキリとした香りの酢に仕上がる傾向があります。
どちらも一長一短あり、区別はできないですね。
ーーー日々お酢を探求し続ける内堀さん
- 開栓後のお酢の上手な保存方法は?
- 毎日使って揺らすことが良いです。
空気中に飛んでいる目に見えない大きさの酢酸菌が酢の表面に付着して増殖することから、酢の香りの劣化につながるのですが、その野生の酢酸菌が酢の中に入ったとしても、酢の液面が度々揺れることで酢酸菌の活動が出来なくなるからです。
揺らさず放っておくと白く濁ったような状態になることがあり、こうなると野生の酢酸菌が増殖して風味が損なわれてしまいます。
また酢酸菌は約30℃近辺で繁殖しやすいため、冷蔵庫で冷やして保存するのがおすすめです。
冷蔵庫の扉に入れると、冷やして揺らせられるのでなお良いですよ。
毎日揺らす事が大変な場合や長期保存したい場合は、塩を1%ほど入れると良いです。これによっても野生の酢酸菌の増殖を防ぐことに効果的です。
これは酢の味が変化するのではと危惧されるかもしれませんが、少しの塩を酢に入れることにより味に締まりが出るのでお料理用に使われる酢としてはむしろ美味しくなるのでおすすめです。
しかし、飲用の酢の保存方法としては、酢に塩を入れるのはおすすめしません。
冷蔵庫に保管していただくことがおすすめです。
- ツンとくる香りが苦手な人はどうしたらいいですか?
- お酢のツンとくる香りは相当な量の水で薄めないと、なかなか思ったほどやわらげることはできないものです。
酢のツンとした香りの主張は力強いものが多いです。
酢の香りの苦手な方には、お好みの香りで酢の香り変えてあげるのも一つです。
中でも私はハーブビネガーをおすすめしています。
沸騰した80度くらいの酢にミントなどのハーブをいれると、酢の香りを優しくしてくれます。
- お酢をとるうえで、注意した方がいいことは?
- 身体に良いからと言って、お酢を過剰に摂取するのはおすすめしません。
「過ぎたるは及ばざるが如し」と申します。
お酢は、たくさん摂るほどに良いと思われがちですが、酸味を特長とする酢です。美味しいと思える量の範囲でお召しあがりいただくことがおすすめです。(1日15〜30ml程度)
お酢の酸が歯のエナメル質に悪い影響を与えるのでは、と心配される方もいらっしゃいますが、お酢が口の中に入ると、一般的には唾液がたくさん出て酸が中和される傾向にあります。
常識の範囲でのお酢の利用の場合には問題ございませんが、唾液の出にくい方はお酢をお摂りになった後にはお水でお口をゆすぐようにして飲んでいただければ、一層ご安心いただけるとものと存じます。
ーーー内堀さん「私は酢をたくさんとっていますが、唾液もたっぷり出ているせいでしょうか?おかげさまで歯を悪くしてはいません。」
- 野菜などを漬けるとき、気をつけるべきことは?
- 2〜3日で食べてしまうのであれば、フレッシュな野菜をそのまま酢漬け用の合わせ酢に漬ければ良いです。
冷蔵庫で長期保存される場合は、酢漬け用の合わせ酢を熱く熱して、熱に強いビンの容器に入れた野菜に熱いまま合わせ酢を入れていただくことがおすすめです。
野菜の雑菌が繁殖しにくくなります。
- 酸っぱい味をつける以外にもお酢を料理で使えますか?
- 先ほど申し上げました、加減酢を使うと良いでしょう。
酢を水やだしで10倍にして薄めて水として使います。酢の苦手な初心者の方は30倍に薄めても結構です。隠し味に酢を少し入れるという理屈はわかっても、ほんの少しの酢をお料理全体に広げるには技術が必要です。
しかし、加減酢(お料理を作る時のお水に少し酢)をお使いくだされば、ほんの少量の酢がお料理全体に行き渡りやすくなります。
蒸す・煮る・炒める、いずれにも使え甘みが増したように感じます。
お料理のpHがわずかに酸性に傾きますから、甘み(旨味)が引き立ってきやすくなります。
- お酢を飲むと体が柔らかくなるんですか?
- まったく関係ありません(笑)
昔、サーカスの人達が疲労の回復に酢を飲んでいるのを見た人達が、サーカスの芸が出来ることと酢を飲むことが関係すると勘違いされて、酢を飲むと身体が柔らかくなるという噂が広まったと言われています。
ちなみに、私は立ったまま両手が地面に付きます。
- 酢の賞味期限はどれくらいですか?腐ることはあるのか?
- 未開封の穀物酢、米酢、黒酢、りんご酢等の醸造酢は、時間の経過と共に色合いが徐々に濃く変化していきます。
その結果、同じ商品で色合いの違う酢が店頭で隣同士に並ぶと、別の商品に見えてしまいます。その誤解を避けるために、色合いの変化による期間に応じて賞味期限が設定されているケースが多いです。
また酢は直射日光を浴びると、ひなた臭という不快な香りが発生することがあるので、ご注意ください。
醸造酢はこれ以上発酵することは希ですが、酢のご使用に関しては各製造者の賞味期限に沿ってご利用ください。
ーーー色合いが異なっているけれどどちらも同じ酢であると仰る内堀さん
- 酢にはダイエット効果が有るのですか?
- 代謝を上げるという意味から、お酢はダイエットに効果があると言われています。
適切な量を守った上で、代謝をあげるという理由で酢を飲むと良いと思います。
酢を飲めば痩せるのではなく、痩せやすい体になるための手助けをしているという認識をしていただければ幸いです。
- お酢をとるタイミングはいつが良いのでしょうか。
- 人間の身体は、寝ている間に身体及び脳の疲れを休息させ、修復させると言われています。
そういう意味では、夕食の後に酢を飲んで代謝を上げることは良いタイミングと言えると思います。
でも、あえて言うならば私は朝をおすすめします。
一日の始まりに、代謝をあげて健やかな1日をお過ごしください。
朝食にヨーグルトに酢をかけるなどして召し上がっていただければと思います。
酢は腸の運動を刺激し、お腹のリズムを良くすると言われています。
お腹を軽くして、快適にお過ごしください。本当でしたら気分をリフレッシュさせてくれるお酢は朝昼夜ととっていただきたいです(笑)
- 黒酢をつかったおすすめレシピはありますか?
- 醤油に少しいれて黒酢醤油にして召し上がっていただくこともおすすめです。
醤油って実は酸っぱい味を持っているのでお酢との相性が良いのです。醤油に酢を入れることで醤油の味に塩角が取れてまろみがでます。
醤油に少量の黒酢を足して、それを醤油として味わっていただいているうちに、いつの間にか酢の大好き人間へと変化していく可能性も生まれてくると思いますよ。
ーーー醤油に酢を入れて試飲させていただきました。飲めるほどまろやかな味わいに驚き。
- 黒酢とりんご酢の効能のちがいは?
- 基本的に、酢の健康効果の由来の大半は酢酸になりますので、りんご酢も黒酢も酢酸による効能は同じです。
厳密に比較すれば、りんご酢には黒酢には少ないりんご酢特有の成分があり、黒酢には黒酢特有の成分もあります。
しかし私は”どちらが良い”といった比較することを酢に求めてはいません。黒酢には黒酢のよさ、りんご酢にはりんご酢の良さがあります。
それぞれに良い部分がありますので、例えば黒酢はお料理によく合うとか、りんご酢は飲用やマリネに使うとか、それぞれの酢の持つ「美味しさ」に着目して使い分けていただくと良いでしょう。
ーーー八朔とシークヮーサーの果汁を発酵させてできた果実酢を使用した酢ドリンクをいただきました。
酢のすっぱさが感じられず、すっきりとした味わいでごくごくと飲めました!自然な甘みと柑橘類のほのかな苦みが心地よかったです。
酢=すっぱい調味料という今までの概念が覆されます。
「お酢は体に良いですが、その効果・効能を求めすぎて酢本来の美味しさを探求するのを忘れがち。お酢はとっても美味しいものですから、食品としてぜひいろいろなお酢を試してみて、新たな美味しさを発見していただきたいです。」と熱く語ってくださった内堀さん。
酢のお話をする内堀さんは楽しそうで、インタビューの間は終始、酢への愛情がひしひしと伝わってきました。
試飲させていただいたお酢に感動し、帰りにさっそく日本橋にある高島屋へ!(笑)
ショーケースに並んだカラフルなビネガーに心踊らされます。
今年力作だというシャルドネの酢を買ってみました!
また、内堀さんからお土産にと他の種類のものもいただきました。誠にありがとうございます。
身近にある調味料ですが、知れば知るほど魅力に溢れている「酢」。
ワインを楽しむようにお酢も楽しんで欲しいと仰っていた内堀さんの言葉が心に残りました。
今まで「健康のために…」とお酢を口にしていた方も、お酢本来の美味しさに目を向けることで楽しく継続的にとり続けられそうですね。
お酢に自分を合わせるのではなく、自分の好みや目的にあったお酢を選ぶことが大事なのだと今回の取材で痛感させられました。
お忙しいところ快く取材に応じてくれました内堀さん、ありがとうございました!
その他色んな種類の酢について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
お酢のおすすめ商品
かわしま屋の取り扱い商品をご紹介いたします。
イタリア産 有機にごり リンゴ酢 1000g(1000ml)| 無添加・無ろ過・発酵助剤不使用のアップルサイダービネガー -かわしま屋-_t1
リンゴ作りに最適な気候で名高いイタリア最北のトレンティーノ地方で有機栽培された最高品質のリンゴのみを用いて発酵させた、ほのかな甘みとまろやかな深みが理想的です。添加物を一切加えていない、本物のリンゴ酢をお楽しみください。
1000 円(税抜)
国産純リンゴ酢無濾過にごり酢・180日間静置発酵 (長野県産リンゴ100%)-1000ml-かわしま屋-
生きた酢酸菌が入っている、国産のりんご酢です。生のりんごを使用したりんご酢で、180日間静置発酵させています。
2180 円(税抜)
佐賀県産 純米酢 無濾過にごり酢|長期間発酵・熟成させた純米酢 (佐賀県産米100%)-1000ml- かわしま屋
生きた酢酸菌が入っている、国産の純米酢です。九州産の米だけを使用した純米酢で、1年間発酵熟成させています。
1780 円(税抜)
佐賀県産 純柿酢 無濾過にごり酢・1年間発酵・熟成させた酢 (富有柿100%)-1000ml - 【送料無料】 かわしま屋
生きた酢酸菌が入っている、国産の柿酢です。九州産の富有柿だけを使用した柿酢で、1年間発酵・熟成させています。
2380 円(税抜)