日本の発酵食品に欠かせない麹

麹とは、火を通した米・麦・大豆などに麹菌(麹カビ)をつけて繁殖させたもの。

「糀」とも書きますが、菌の名前としては「麹」の字が使われます。 「糀」と書くのは、特に米に麹をつけたものを指す場合が多いようです。

麹菌はカビの仲間で、日本で約200種が確認されています。 最も代表的なのが「Aspergillus oryzae(アスペルギルス・オリゼー):黄麹菌」で、

日本酒、みりん、米酢、味噌、甘酒などの醸造に古くから活躍してきました。 そのほか、醤油や味噌の醸造に利用される「A.sojae(ソーエ)」、

焼酎や泡盛の製造に利用されている「A. awamori(アワモリ)」、 かつお節づくりに利用される 「A,repens(レペンス)」「A. Glaucus(グラウカス)」なども

麹菌の仲間で七このように、麹菌は日本の発酵食品に欠かせない存在です。

その繁殖適温は25℃〜39℃で、50℃前後で死滅します。

 

 

 

発酵とは何か

細菌類、酵母類、カビ類、藻菌類などの微生物そのものか、 その分泌する酵素類が有機物・無機物に作用して分解し、

特定の物質(アルコール・有機酸などの有機化合物や、炭酸ガス・水素などの無機化合物) を生成する現象で、

それが人間にとって有用である場合を 「発酵」と呼んでいます。

 

 

麹菌の健康効果のカギは「酵素」

麹菌による発酵の場合、麹菌そのものではなく、麹菌から分泌される「酔素」が利用さ れます。

酵素は、たんぱく質をもとにっくられる物質で、人間を含む生体内部での化学反 応における触媒の役割を果たしています。

消化・吸収・代謝・排泄など、生命活動のさま ざまな過程に不可欠な物質です。

その代表的なものが、でんぷんをブドウ糠にう捌牢する「アミラーゼ」と、たんぱく質を アミノ酸に分解する「プロテアーゼ」です。

そのほか、旨肪を分解する「リパーゼ」、食物 繊維を分解する「セルラーゼ」など、

麹菌は約100種類にものぼる酵素を産生します。ほ かの微生物も酵素を作り出しますが、

麹菌のそれは種類も量も段違いに多いのです。そし て、それらの酵素を人間が摂取すると、

おなかの中で消化活動に利用され、栄養の吸収を サポートしてくれます。

 

「酵素」の力をより活かすために

酵素はたんぱく質なので、熱やpHによって変性して活性を失います。

(動植物の酵素の場合、35℃〜60℃ぐらいが好適温度、70℃以上で活性を失う)。

そのため、酵素の働きをなるべく多く体に取り入れるには 高温加熱を避けてそのまま食べるほうが良いのです。

もちろん、加熱調理した場合でも、酵素がすでにある程度は食材を分解してくれている ので、

麹を使わない場合よりも消化吸収しやすく、体への負担を軽減してくれます。

市販の塩麹甘酒の中には加熱処理したものもあるので、

麹パワーを活かすためにも、 塩麹甘酒は手作りがおすすめです。

塩麹・甘酒・味噌

「飲む点滴」とも言われる甘酒

一般的に「甘酒」というと、酒粕をお湯でのばしたものに砂糖を加えたものと、

米麹と米を発酵させたものの2種類がありますが、 ここで言う甘酒は後者のほう。

炊いたうるち米かもち米と米麹にお湯を加え、60℃ぐらいで保温して作ります。

甘酒の甘みは、でんぷんが酵素で糖化されたブドウ糖によるもの。

さらに、もともと米麹に多く含まれているビタミンB群も多く含まれています。

これは栄養補給に使用されるブドウ糖点滴のような成分であることから、

甘酒は「飲む点滴」とも言われます。

実際、江戸時代には、暑さで体力を消耗しやすい夏季の疲労回復、 栄養補給によく飲まれていた そうです。

また、アミラーゼがでんぷんを糖化する過程でオリゴ糖も作られるため、

甘酒は消化吸収を助けてくれるだけでなく、 腸の健康にも役立つ飲み物だと言えそうです。

ただ、甘酒を飲むときに注意しなければいけないのは、飲み過ぎです。

ブドウ糖は血糖値を急激に上げるので、一度にたくさん飲むと 膵臓に負担がかかります。

コップ半分ぐらいにとどめておくか、 血糖値を上げにくいものと一緒に摂りましょう。

 

 

甘酒の作り方

(1)米麹のみで作る場*すっきりした甘さに仕上がります

[材料]

乾燥麹または生麹 200g/60〜70℃ぐらいのお湯 200ml

[作り方]

ほぐした麹にお湯を入れてなじませ、55〜60℃で6時間保温。

炊飯器の保温モードで、ふきんをかけてフタを少し開けた状態にしておくと、

60℃ぐらいが保てる。 温度が上がりすぎないように注意。

その後、鍋に移して70℃ぐらいまで加熱すると、糖化が進んで甘みが増す。

飲むときには水で2倍ぐらいに薄めて。

 

(2)米麹とお米で作る場合一より甘みが強い仕上がりに

[材料]

乾燥麹また生麹200g ご飯(うるち米またぼもち米)1合分 60〜70℃のお湯

[作り方]

炊いたご飯に倍量のお湯を入れて混ぜ、全体を60〜70℃にする。

ほぐした麹を加え、よく混ぜてなじませ、55〜60℃で1O〜12時間保温。

炊飯器に入れて保温モードにする。 ふきんをかけてフタを少し開けた状態にしておくと、60℃ぐらいが保てる。

もち米で作ると、うるち米よりもデンプンが多いため、仕上がりがより甘くなる。

どちらもできあがったら冷蔵庫で保存。約1か月は保存可能。

 

 

うまみたっぷり調味料、塩麹

 

塩麹は、麹と塩、水を混ぜて発酵させたものです。

塩分濃度が高いので麹菌そのものは死滅してしまいますが、

麹菌が分泌した酵素がたくさん含まれています。

塩麹自体が美味しいのは、麹がアミラーゼやプロテアーゼで自己分解してできたブドウ糖やアミノ酸を 含むからで、

塩麹に食品をつけ込むと美味しくなるのは、

それらの酵素が食品に作用して分解し、 ブドウ糖(甘み)やアミノ酸(旨み)をつくり出すからです。

 

塩麹の作り方

-乾燥麹の場合-

[村料]

・乾燥麹:100g

・塩:25〜30g

・水:150m1

-生麹の場合-

[村料]

生麹:100g

・塩:20〜25g

・水:100〜120m

l *麹がひたひたになるぐらい 麹をよくほぐして塩と混ぜ合わせ、水を加えて混ぜる。

1〜2日に1回かき混ぜながら、そのまま暖かい場所に10口〜2週間置くとできあがり

(寒い冬季には2週間でもできない場合があります)。

塩かどがとれ(塩辛さが和らいで)、旨みや甘みが感じられるようになり、 麹そのものが柔らかくなるのができあがりの目安。

麹が水を吸収するため、翌日ぐらいに見ると水が少ないようにも感じるが、 発酵が進むにつれて水分が出てくるので、そのまま様子を見る。

数日経っても水が少ないと感じたら、少し足してみても良い。

塩分があるので容器は金属製を避け、プラスチックやガラス製のもので。

できあがったあとは冷蔵庫で保存し、1〜3か月を目安に使い切る。

 

※早くつくる裏ワザ ・30℃ぐらいで保温すると2〜3日 ・40〜50℃ぐらいで保温すると12時間〜1日

・最初に麹と水のみを60℃で1〜2時間保温、甘みが出て麹が柔らかくなったら塩を加える

 

 

塩麹の塩分濃度

 

麹100g+水150mlに塩30gで10.7% 塩25gで9%

*参考 濃口醤油15〜16%/信州味噌や八丁味噌10〜12%/白味噌5〜6%

 

塩麹活用レシピ

 

塩麹は、炒め物、和え物、スープなどの味付けにも使えるほか、

食卓調味料として、例えば冷や奴に乗せて食べるといった使い方もできます。

 

いつもの料理の塩や醤油に代えて、 いろいろと活用してみてください。

 

塩麹蒸し鶏

[材料]

鶏むね肉/塩麹(材料の重さの10%)

[作り方]

鶏むね肉に塩麹をまぶし、1晩以上置きます。10分ほど蒸してそのまま冷やせば、

しっとり柔らかな蒸し鶏のできあがり。 鶏肉を塩麹につけ込んでおけば、いろいろなアレンジが可能です。

1枚そのままか、一口大に切って塩麹をまぶして1晩以上置き、 お好みでグリルやソテーでもどうぞ。

バジルやタイム、オレガノなどのハーブ類を加えた洋風アレンジもおすすめです。

塩麹は焦げやすいので、焼くときの火加減には注意してください。

また、つけ込んだ鶏肉を蒸して白髪ねぎを添えたり、季節の野菜と一緒に蒸し焼きにしても。

鶏肉は、むね肉のほか、ささみ、もも肉でも美味しくできます。

塩麹は鶏肉だけでなく豚肉や白身・青背の魚類ともよく合いますが、

特に鶏肉の場合は旨 みの素となるグルタミン酸が増えるため、より美味しく感じられるようです。

 

塩麹ディップ(蒸し野菜・生野菜・肉や魚に)

[材料]

塩麹 大さじ3/オリーブオイル 大さじ3〜4

[作り方]

塩麹とオリーブオイルを混ぜ、ミキサー/フードプロセッサーなどで撹拌すると、 マヨネーズ状になります。

蒸した野菜や生野菜につけるほか、ソテーした肉や野菜のソースにし ても美味しく召し上がれます。

塩麹の半量程度の酢を混ぜればドレッシングにもなります。

 

・豆腐の塩麹漬け

[材料]

豆腐1丁(300g)/塩麹 大さじ1.5〜2

[作り方]

豆腐は半分に切り、1時間ほど重しをして水を切ります。

塩麹を全体にまぶしてラップで包み、さらにキッチンペーパーで巻いて、 タッパーやジッパー付き保存袋に入れ、冷蔵庫で保存。

3日以上で食べ頃に。1週間ぐらい経っても大丈夫です。

豆腐から水が出てくるので、キッチンペーパーで吸収しきれず袋にたまっていたら、 その都度捨て、キッチンペーパー も交換してください。

豆腐はもめんでも、きぬでも。

 

・きゅうりの塩麹漬け

[材料]

きゅうり1本/塩麹 大さじ0.5〜1

[作り方]

きゅうりを食べやすく切って塩麹で和えるだけです。 すぐに食べても、1〜2日冷蔵庫で置 いてもそれぞれ違った味わいが楽しめます。 すぐに食べる場合は

,きゅうりを薄切りにし て塩もみ風にしても美味しいです。 きゅうり以外の野菜もお試しください。

 

甘酒活用レシピ

 

甘酒はそのまま飲むほか、砂糖代わりに調味料としても使えます。

また、塩を加えれば塩麹のように野菜や肉の漬け床にもなります。

・ヨーグルト甘酒・生姜ジャム添え

[材料]

プレーンヨーグルト:適量/甘酒 :ヨーグルトの半量ぐらい 生姜 適量/砂糖 生姜の半量

[作り方]

生妾ジャムは、みじん切りにした生姜に半量の砂糖を加え、弱火で煮詰めてとろみがつい たらできあがり。

プレーンヨーグルトに甘酒を混ぜ、生姜ジャムを乗せてどうぞ。

 

甘酒シャーベット

甘酒をそのまま冷凍庫で凍らせます。夏のおやつに。

 

・鶏肉の甘酒漬け

鶏肉に薄く塩をふり、1枚(約300g)につき大さじ2〜3の廿酒に1晩以上漬け込みます。

焦げないように注意しながら焼くと、さっぱり味の照り焼きのようになります。

 

・野菜の甘酒漬け

大根、にんじん、かぶ、長芋などの野菜に少し多めに塩を振り、チャック付き保存袋に入 れて浸るぐらいの甘酒に漬け込みます。





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